山荘日記

その43夏ー2009年水無月

 

6月2週・・・・光のワルツに酔う

  6月12日(金)曇 山荘池 
走れ狼の末裔
時速30kmの快走

バイクに繋ぐ
リードをピーンと張って
今や遅しとばかり
出走の瞬間に耳を澄ます。

バイクの始動音と同時に
全力で飛び出す。
1本のリードにプルジック
結んだ悠絽が
速い舞瑠を牽引して
ぐんぐん飛ばす。

1本のリードに
2頭の犬の力走が伝わり
時速40kmのバイクが
更に引っ張られる。

オーナーの家から山荘まで
の4kmは総て登坂。
特に最後の1kmは
かなりの急勾配できつい。

トップに躍り出た舞瑠が
この急坂でうっとりするような
優美な快走を見せる。
なんとバイクの速度計は
時速30km。


山荘に着くや否や悠絽は即、池の浅瀬に飛び込み
脚と下半身を水に浸けクールダウン。
水の苦手な舞瑠は唯ひたすら激しい呼吸で汗を吐き出す。
そうやって嘗ては獲物を追っていたんだね。



6月12日(金)曇 奥庭
新兵器・虫コロ

池から犬小屋に
行ってからも暫くは
荒い呼吸に身を委ね
動こうとしない。

熱い体温をキャッチして
襲ってくる蚊に
刺されては可哀そうなので
青い防虫ライトを
点けてやったが気付かず。
ヘトヘトなんだね。

昨年は犬用の蚊取線香を
点けていたが
どうもこの『虫コロ』の方が
効きそうなので
先々週からテスト使用。

毛布の下も湿らないように
スノコを敷いて
ふかふかベッドにしてあるし
ゆっくりお休み。
そうだその前に
源氏蛍を観に行こうか。



おいらの光が一番

あんまり美しいので
蛍袋の代わりに
ビニール袋に入れて
提灯の灯りにして山荘まで
持ち帰りました。

山荘の池に放つ前に
ちょっとその明るいお尻を
見せておくれ!

「はいポーズ」と云ったら
一斉にごろんと寝転んで
ピカピカとお尻を光らせるので
びっくり!
この蛍、人間語が解るんだ。

でもよく観るとライトが明るすぎ
昼と間違えて
どうも眠ってしまったようです。
そうだよね。
言葉が解る蛍が居たら
昆虫界の革命だ。

6月13日(土)曇 山荘池



6月13日(土)曇 扇山山麓
蛍の飛翔

眠りから徐々に覚め
大きな欠伸を
1つしたかと思うとやおら
羽を広げて
2度3度羽ばたきました。

赤地に黒十字の源氏蛍の印を
背中に輝かせ
硬く黒い翼を直角に開き
薄い羽根を取り出し
飛翔準備完了!

さあ、それでは
ライトを消して
いよいよテイクオフ。



五匹の光の乱舞

蛍はアーティストだったと
知っていましたか?

布地カンバスの代わりに
カメラに内蔵した
感光版を与えればほら
この通り。

お尻を振って自由自在に
豊かな感性で
無尽蔵の作品を
感光版に創り出します。

先ず3匹の蛍が
対角線上に並び2匹が
反転して黒い背で
暗黒星雲を描きます。

2匹が急接近し
更に更に光を増して
未知なる生命に
熱いメッセージを放ちます。

「この光が見えるかい?
見えたらおいでよ。
おいらの光と合体させて
生命を生み出すんだ」

2つの光が交尾して
1つになった途端
中核の白い輝きが黄身を
帯びて美味しそうな
ペペロンチーノになりました。
そうですあのサエコの
万引きしたチーズです。

未知なる生命って
酵母と牛乳が交尾した
フォルマジオ・アル・
ペペロンチーノのことなの?

山荘の冷蔵庫に在る
あのチーズがそうなの?


6月13日(土)曇 扇山山麓





6月13日(土)曇 扇山山麓
光のワルツに酔う

観てごらん。
幻想的な光が幾つも幾つも
暗黒を舞台にして
舞っているのに蛍の森には
誰も居ません。
ところが自宅目白では・・・

よく散歩や読書に行く
自宅近くのお気に入りの
森の1つに
椿山荘の森があります。

この時期,森では
無数の蛍を庭園に放ち
『ほたるの夕べ
ディナーバイキング』などと
称して客を集めています。

都心に拉致された蛍は
唯ひたすら健気に
輝き続けるけれど
この人口庭園では決して
生き延びることは出来ない。
死あるのみ。

でもその光に魅せられ
例えば『源氏蛍』なんぞと
名づけられた料理を
食べに人々がやって来ます。

蛍の光は
大したもんさ!
『源氏蛍』と云うだけで
料理は18400円もするんだぜ。
飲み物だってホタルと
名がつけばカクテルだって
1杯1980円さ。

ちょっと料理を食べて
1杯カクテルを呑んで
庭の蛍を観ると
1万円札が
2枚も取られるんだぜ。

それでは山荘でも
椿山荘の真似をして蛍の
カクテルを作って
冷蔵庫のペペロンチーノで
オードブルをと・・・。
料金は締めて2千円でどう?

椿山荘の蛍

椿山荘ドリンク
『ホタル シャンパンナイトカクテル』 
1,980円

目白・椿山荘三重の塔
(後方は新宿高層ビル群)

椿山荘料理メニュ−
『源氏蛍』  18,400円
『平家蛍』 14,950円
『姫蛍』 12,650円


   6月13日(土)曇 扇山山麓
星々の生誕

蛍の交尾で生まれた
ペペロンチーノが
光の層を幾重にも連ね
高貴に光輝き・・
唯々うっとりと見つめました。

こんなに美しいものを
口にして良いのだろうかと
訝りながらも
そっと歯を立ててみました。

続けて深い森の
香気漂う山荘赤ワイン
口に含み
ペペロンチーノに
赤い衝撃を与えてみました。

何故ワインにはチーズと
言われるのか
試してみたのです。

あー、その瞬間総てが解りました。
ワインとチーズのアンサンブルこそ究極の
エクスタシーだったと。




6月13日(土)曇 奥庭
再び生命が

あれっ!
微かに巣箱から雛の声が
聴こえます。

でも犬小屋の横の
李の木に懸っている
巣箱なので
犬を惧れとても用心深く
親鳥は中々巣箱に
入りません。

犬達を前庭に連れて行って
暫くしてから
奥庭に戻ると親鳥は
盛んに巣箱に出入り。

大きく育った雛が居ると
思って巣箱を覗くと
なーんだ。未だ卵です

先週、前庭の沙羅樹の
山雀の雛が
野生動物に食べられて
しまったので
今度こそ守ってやらねば。



  6月14日(日)晴 前庭 
白い妖精
山法師

ところでと
ペペロンチーノと云えば
唐辛子を入れた
パスタ料理と誰しも思う。

が実はナチュラルチーズに
この唐辛子を入れた
チーズがあり
これもペペロンチーノ。

日本では中々
お目にかかれないチーズ。
因みにペペロンチーノとは
伊太利語で唐辛子。

新宿高島屋
 タイムズスクエア B1Fに
置いてあるのを
ついに発見したね。
これぞペペロンチーノ。

山法師の白が
不意にナチュラル・チーズ
の白と重なり
更にブータンの山奥での
23年前の出逢いを
回想させる。



遊牧民の娘が1人テントで造っていた白いナチュラルチーズ。
超辛を好み唐辛子1つでご飯を食べるブータン人が
その大好きな唐辛子を白いチーズに入れて造った辛子チーズ。
1986年ブータンの味を山法師が連れて来る。




6月13日(土)曇 奥庭
薔薇アーチ開く
 
『日常が
これでよいわけがない。
そう自答する』

と朝日朝刊に寄稿した
『犬と日常と絞首刑』と題する
6月17日付オピニオンで
辺見庸は結んだ。

添えられた画像は
青空にはためく白い洗濯物と
絞首刑のロープの影で
日常と死刑を象徴している。

白い洗濯物と薔薇のアーチが
瞬時に摩り替る。
1年前、深紅の薔薇が咲いた日
秋葉原で17人の血が
流され7人が殺された。

犯人の加藤智大が
死刑になることによって
この事件は
終わるのだろうか?
 



更に拡大した畑
赤星病対策

然りげない日常の背景に
潜む《容量をこえる悲しみ》を
辺見はこう述べる。


「私もまた悲しむ
ことのできる悲しみしか
悲しんではいないのだ」

死刑が決して許されない
蛮行であることは
明明白白である。
その余りにも透明な理念と
乖離する
ジャパネスクな文化。
その文化に天皇制を絡ませ
辺見節は続く。

さて辺見が脳出血の
後遺症で不自由になった
肉体を使って
犬の世話をしているうちに
私も林檎を赤星病から
守るために
有害な農薬を散布せねば。

6月13日(土)曇 林檎畑


6月13日(土)曇 葡萄畑   
なんと5年後
JAは語る


ついでに葡萄にも
オーシャイン水和剤なる
農薬を散布してるけど
変じゃない?

元々山荘の理念は
《農薬を使用しない》では
なかったの?
《農薬無しで育たぬ野菜は
栽培しない》では
なかったの?

そうなんだよ。
野菜については確かに
理念を実行してる。
でも林檎、梨など果実は
害虫が着き病気に
なり易く農薬無しでは
収穫出来ないんだ。


だから果実栽培はすっかり断念していたんだけど
醸造用葡萄が手に入らなくなり
昨年からワイン造りが困難になり仕方なく
葡萄の栽培に着手したのさ。
葡萄の収穫には5年もかかるとJA職員は言ってたけど
5年も農薬を撒き続けるなんて憂鬱。
いっそのことワイン造りを止めてしまえばいいのだが・・・



  6月13日(土)曇 葡萄畑 
薩摩芋の苗植え

「犬と眼が合う。
私はなごみ、同時に
ぞっとする」

そして辺見は
「日常が
これでよいわけがない」と
結ぶのである。

僅かであっても農薬は
大地に浸み込み
やがて竹森川に流れ込み
蛍の幼虫を殺し
山椒魚を絶滅させ
魚を餌とする翡翠や鶺鴒を
追いやってしまう。

農薬は選ばれた生命に
益をもたらし
同時に多くの弱者の
生命を殺す。

そして或る日突然
選ばれた生命をも危機に
陥れる可能性を孕む。



おや、仮植えしておいた薩摩芋の苗が髭根を出しているぞ。
それじゃ畑に移して本植えしようか。



 6月13日(土)曇 葡萄畑  


30本の苗植え完了。
次は枝豆の種蒔きをしようか?
夏畑の最大の敵・蚋(ぶよ)にやられぬように完全武装した
村上さんが早速枝豆用の畝を作り始めました。
悠絽がお手伝いしたいのか、近寄って頻りに話しかけます。
さあ!次は枝豆よ
完全装備


難しいのだ。
薩摩芋の苗は。

と、これが解るまでに
10年以上を費やすなんて
信じられる?
水が切れると薩摩苗は
根付かず直ぐ枯れてしまう。
又新たに苗を植える。
この繰り返しが続く。

そこで3年前から
白い髭根が出るまで
湿った池の縁に仮植えし
髭根の発生を確認して
畑に植える事にしたのだ。

本には「薩摩苗は強く
滅多には枯れない」とあるが
とんでもない嘘。
こんな簡単なことを
知るまでに多くの苗を
枯らしてしまった。



丸太椅子塗り

大変だ!
ちょっと油断して
丸太椅子の防腐剤塗りを
怠っていたら
白蟻らしき小さな奴が
丸太を食い荒らしているでは。

確か前回塗ったのは
3年前かな?
放っておくとやがて蟻は
大繁殖し
テラスや家の柱を
食い荒らしてしまう。

最優先して防腐剤を
塗らねばと
農夫変じて塗装屋に。
12脚もあるので
中々塗り終わらず。

ギャラリーの犬達も飽きて
きたらしく
「早く散歩に行こうよ」と
時々前足で
お尻をひっかくのだ。

6月14日(日)晴 前庭



6月14日(日)晴 奥庭
さらば冬毛よ

舞瑠が変なのだ。
腰の辺りの
茶と黒の毛並みが乱れて
抜け始めている。

こりゃ散歩の前に
塗装屋から床屋に変身して
冬毛を
梳いてやらねば。

抜けるは抜ける。
まるで抗癌剤を呑んだ
後の如く
ばさばさ抜ける。

すっかり奇麗になった
舞瑠は毛並みをぴかぴか
輝かせて早くも心は
森の中へ。

悠絽は毛脚が短いせいか
あんまり抜けないな。
でも気持ちいいのか
毛梳きを止めると「もっと!」
とせがむのだ。




折れちゃったね!

久しぶりの大好きな
上条の森に
悠絽も舞瑠も大はしゃぎ。

「あれーこんなに太い
大きな白樺
折れてるぞ!
どうしたんだろうね?
嵐も無かったし
老化現象にしては余りにも
若々しいし。

なんだかメリメリと云う
音が聴こえてきそうだね。
若しかすると
これって有史以前の
原始共同体の起源と共に
あった死刑かな。

つまり法以前の自然の掟で
森なる原始共同体
によって
集団の利益を損なう者
として
処刑されたのかな?」

6月14日(日)晴 上条の森



6月14日(日)晴 上条山稜線
こんな顔?

《死刑は共同体、宗教、
戦争の起源とも
どこかで通底する、
こういってよければ人類史上
‘普遍的,な行事だった》
(辺見のオピニオンより引用)

つまりさ森がこの
大きな白樺を何らかの理由で
集団である森の利益に
反すると判断し
処刑したのは森の宗教
みたいなもんなの?

判断したのはこの木?
なんだかこれ
顔のような複雑な表情で
如何にも怖そう。

「お前はこの原始共同体に
反する言動が目立つ。
よって処刑する」
なんて言い出しそう。


東菊勢力拡大
ヒペリカム消滅


前庭の美容柳(ヒペリカム)
隣に植えた東菊が
次々と勢力拡大。

先ず東畑への通路を
超えて橋の縁に。
更に前庭の中央へまで飛び
まるで数年にして
繁殖した欧州連合(EU)のよう。

EUの加盟条件の1つに
《死刑廃止》がある。
戦時を含む総ての状況下での
死刑の完全廃止が
加盟条件なのだ。

従ってこの松葉菊
どれ程美しく豊かな共同体で
あっても日本は
加盟出来ないのである。

この時期に黄金の光を放つ
美容柳は東菊の隣で
枯れてしまった。
それって何処かの国のこと?

6月14日(日)晴 西畑



6月14日(日)晴 奥庭
山椒の実でね
何を作るの?

料理大好きなシェフが
奥庭でなにやら
物色しています。
目線はどうやら山椒に
あるようです。

舞瑠は期待してます。
シェフは残った野菜や肉で
いつも美味しい犬料理を
作ってくれるのを
知っているんです。

「今日は何かな?」と
畏まってシェフを観ています。
山椒の実を摘んで
スパイスを作るのかな?

山椒の実を茹でてから
水に曝して灰汁を抜き
お酒と醤油で煮詰め
とてもホットな
スパイスが出来ました。



美味茱萸アート!

緑の海の中で
キラッとルビーが光りました。
存在すら忘れていた
茱萸
(ぐみ
宝石になって無数の葉に
漂っています。

茱萸の下では苺が実を付け
そろそろブラック・ベリーも
熟し始める頃。

東菊を一輪摘んで
ルビーで囲み
環を作り食事準備完了。

長い柄を持って
口に含むとぜりーのような
黄色い果肉が
とろーと溶けてエグ味が
仄かに広がります。
山荘の初夏がやってきました。
6月14日(日)晴 前庭



6月14日(日)晴 前庭   


暮れなずむ薔薇のアーチが夏至近い長い昼の終わりを
更に際限もなく引き伸ばし、白夜を追う。
アルコール度の高い山荘ビアに酩酊し弛緩した肉体が
アーチに便乗して白夜そのものの背景に迫らんとする。
白夜からその背景に到るにはメービウスの帯上を走らねば。

だが酩酊した肉体は最早メービウスへの入り口を
見出すことは出来ない。
弛緩した肉体は徒に帯の片面のみを走り回り
背景実在への疑惑を募らせる。
やっと晩餐だ
ヘトヘトでーす


朝5時から活動開始。
ストレッチと筋トレに30分
畑の開墾と散水に1時間。
犬と一緒に森を駆け抜け
山に登り1〜2時間。

朝食に1時間かけ
その後、夕方6時近くまで
昼食も休息も無く
汗を流し土にまみれ
山荘活動は続く。

今日は畑を耕し
重い根っ子を一輪車で運び
芋苗を植え
庭木や森の木を切り
芝刈りをして
塗装屋になって犬の床屋に
なって・・・

もうグウの音も出ない程
疲れてヘトヘト。
でも疲労の大きいほど
晩餐の最初のビア
実に美味しいんだな。




 

6月3週・・・3日間雨、雨、雨・・・



捉えられた雨
 蜘蛛の巣宇宙


黒い球体の中央を
直角の黒い影が断ち切る。

如何ほど想像を
逞しくしても
この直角の黒い影の
実像に迫るのは至難だ。

土台この漆黒の背景の
意味が解けない。
黒い壁なのか?
それとも深海なのか?
何億光年も離れた
未知なる宇宙なのか?

その闇に浮く
輝ける縁取の黒い存在は
何を意味するのか?

存在の原点に
垣間見える不可知が
暴露されたのか?

6月21日(日)雨 寝室テラス
 




6月21日(日)雨 寝室テラス
重力レンズ此岸
予感する乳房

恰も黒い球体の
通信網であるかの如く
漆黒の背景に
無数の毛細管が走る。

この毛細管はある2次曲面に
沿って1つの決意を
隠蔽して広がる。

2次曲面を切断するアングルに
視座を変えると
黒い球体は輝く乳房になり
直角の黒い影が
4本の平行線になった。

黒い球体の実像は
露わになったが
依然として球体の映し出す
黒い影である
もう1つの世界・彼岸は
認識の彼方にある。



  6月21日(日)雨 西畑 
瀬戸際の大洋
里芋の葉上

あーどうしても
見たい、見たい。
輝く乳房に在る彼方を
見てみたい。

黒い球体が重力レンズなら
彼岸は私の眼球と
球体を結ぶ線分の延長上
にあるのだ。

球体の途轍もない重力に
よって曲げられた光が
延長線上の一点に収束し
彼岸の実像を
幻出させるかも知れない。

2階テラスで試行錯誤開始。
眼球と黒い球体を結ぶ
線分を延長すると
収束点は西畑の里芋の葉に
定まった。



超巨大な大洋が今、正に葉上から落下する瞬間。
これが彼岸なのか?
隠蔽された1つの決意とは
輪廻の無限連鎖にではなく衝突を繰り返し巨大化し
落下寸前を迎えた水滴そのものにあるのか?



6月21日(日)雨 西畑
花弁の泡宇宙
西瓜の花開く


ヤナーチェックの
シンフォニエッタで始まる
村上春樹の「1Q84」が
山荘にもついに
上陸した。

愉しみにしていた
一か月前の発売日。
なんと本屋の前には
行列が・・・
ミーハーの気分になって
並ぼうかとも思ったが
あっさり断念。

マスコミの垂れ流す
「1Q84」豚インフルエンザの
罹病者になって
列に連なるのは止めよう。
馬鹿騒ぎを避け
暫くの静観後に読もう。

冷たい雨に打たれ
打ち震える西瓜の花弁と
水滴を見つめていたら
画像上に亀山郁夫が重なり
「1Q84」がやってきた。



  6月21日(日)雨 前庭 
雨を慕う花弁
 やっと紫陽花が


長く降り続く雨が「私は
読書と音楽の
使者である」と執拗に
訴える。

亀山の次の一言が
更に加わり
「暫く静観」の決意をいとも
簡単に打ち砕く。


『1Q84』の読後感は
圧倒的だった。
G・マーラーを最高の
再生装置で聴くみたいな、
小説が言葉で書かれている
ということさえ忘れて
しまいそうな痺れるような
陶酔感覚を伴った。

亀山のこの論評を
目にした途端
我慢出来なくなって本屋へ。
そっと1ページ目を開く。
シンフォニエッタと
奇数章の女・青豆が登場。

青豆は凄腕の殺し屋。
女を虐待する男の仕置き人。
のっけから殺し。
 

うーん、やっぱり雨の日は読書に限る。
やっと色付き始めた紫陽花
シンフォニエッタになって読書の世界に忍びよってくる。
そうか、貴女も待っていたんだ。よし一緒に読もう。
管弦楽のユニゾンの作り出す美しい響きに変容して
「1Q84」のページを自在に舞うがいい。




6月21日(日)雨 石段
凛として蘭開く
竜舌蘭科・君が代蘭

シンフォニエッタ第一楽章の
金管楽器の
ファンファーレは任せてくれと
読書に介入してきた竜舌蘭

第3楽章でトロンボーンとなり
第4で愉快なトランペット
を奏でる竜舌蘭。
You Tubeで聴くより
いい音色だね。

読書の合間に
石段の竜舌蘭に目をやると
なんだか
本当に白銀の蕾を震わせて
シンフォニエッタを
演奏しているような・・・
そんな雨の日の読書でした。



   6月21日(日)雨 奥庭
雨が降ります
 雨が降る。遊びに・・


ところで読書をしてる
山荘主はいいとして
この雨の中
犬達はどうしてるのかな?

雨の鉄塔山登山で
濡れた毛はすっかり乾き
毛布の上に鎮座。
なにやら物思いに
耽っているような眼差し。


「原始的な生命の感覚を
失った人間が
代償として手に入れようと
するもの、それは2つ。
集団的な狂騒への没入か
アナムネーシス(想起)
への回帰かのいずれかだ。」

 

と亀山は「1Q84」論評冒頭で述べてるけれど
君達が原始的感覚を失った代償で得たもの・アナムネーシスを
そんな目をして表しているのかい?
となると君達は限りなく人間に近いけど
どうせ森の散歩に出ればケロリ忘れて狼に戻るんだよね。




 

6月4週・・・・梅雨の晴れ間に




夏至の太陽
 6月27日(土)晴 
廊下東出窓


恍惚の極致が23度26分18秒に昇った。
先週の夏至が雨だっただけに久々の快晴に歓びは増幅され
北回帰線の数値が歓喜に刻み込まれる。

いや夏至から6日を経たので数値は再計算せねばならない。
先ず23度26分18秒を秒に換算すると8万4378秒。
この赤道傾斜角を3カ月で移動するので1日の角速度は16分03秒。
6日分の移動角は1度36分18秒となり恍惚の極致は21度50分0秒となる。

だがその瞬間がどれほど掛替えのない大切なものであっても
正確な数値に置き換えることさえ出来ない。
赤道傾斜角は4万年周期で変動し更に太陽や月の重力の潮汐力で18年周期で9秒の
振幅を繰り返し、基礎となる回帰線の緯度そのものが数値化出来ないのだ。

《すべては幻》との飛躍しつつも迫真するイマージュが美しき闇に跳梁する。
 

(Image by Przemyslaw "Blueshade" Idzkiewicz.)

夏至の地球


この23度の太陽の旅が解りそうで解らない。何故北極が白夜に、南極が極夜になるのか・・・
だがこの地球儀を地軸で回してみると一目瞭然である。
北回帰線の走る台湾上の接線が太陽光線と直交するのも明瞭で納得。(左太陽光線中央矢印)
現在、図の日本は日没直後であり夜の短さが視覚的によく解る。




6月27日(土)晴 廊下東出窓
高芝山の夜明け

この恍惚の極致を祝って
世界各地では
火祭が行われる。

英国では夏至の祝い火の
周りを人々は踊り歩き
火を跳び越えたり
酒を飲んで大騒をし
仏国のプロバンス地方では
子供たちが
火焚きの薪を集めて歩く。


日本の小正月に行われる
どんと焼きが夏至にあるのだ。
更に独国プロシア地方では
夏至の祝い火は
落雷除(よ)け、魔法除
牛疫除けと信じられている。


夏至の火祭は
これを過ぎると日が
だんだんと短くなるので
これを防ぐために
火を焚いて太陽の活力の
衰えるのを防止する
にあったといわれている。
(yahoo百科参照)

  6月27日(土)晴 寝室出窓 
南回帰線へ

山荘の土を入れて
焼いた壺
夏至の日輪を背景に
深い闇を切り抜く。

東出窓の高芝山を覆う
中央アジアの壺
右肩の漆黒の闇を光に
裂かれ把手は
夏至の日輪に融かされつつ
それ故に尚一層
底知れぬ深淵な闇を作る。

壺の注ぎ口に乗せられた
水晶蓋が光を
呑み込み
闇を跳梁するイマージュを
壺の闇にとどめんと・・

だがどんなに足掻いても
半年後に迫り来る闇
北極圏の極夜を
壺の中に閉じ込めて
置くことは出来ない。



跳梁するイマージュは闇で培養され
世界から光を奪う。
如何なる盛大な火祭も迫り来る闇に
成す術は無いのだ。



6月27日(土)晴 奥庭
1Q84
緋のマルコポーロ百合


1Q84年---
私はこの新しい世界を
そのように呼ぶことにしよう
青豆はそう決めた。

Qはquestion markのQだ。
疑問を背負ったもの。
・・・・・
新しい森に放たれた
動物と同じだ。
自分の身を護り
生き延びていくためには
・・・
(村上春樹1Q84より)

夜明けの
底知れぬ深淵な闇は
すっかり影を潜め
マルコポーロが夏至の光を
孕み一気に開花する。

さあ、深淵な闇と対峙して
生き延びていくには
1Q84年と云う疑問符付きの
時空を受け入れねば・・



   
あれ、なんだ!
 

バイクをぐんぐん牽き
山荘目指して
走り出したのも束の間。
バイクは途中の
ホームセンターで停止。

そこで4mもある雨樋や
樋の支持具やビスやら
買い込んで軽トラに乗換。
僕たちは助手席に
乗って、走らず山荘着。
らくちんだな。

何を始めるのかと思ったら
どうもログハウス
樋を付ける工事をするらしい。
長い樋をログに運び上げ
何やらおっ始めたぞ。
お手伝いしたいけど屋根上
だから無理だな。

6月27日(土)晴 奥庭



6月27日(土)晴 ログテラス
子供部屋準備

雨が降ったらログには
行かない。
従ってログに樋を付ける
必要が無く放っておいた。

だが来週から夏合宿に
やって来る子供達の
宿舎になるログハウス
梅雨のこの時期樋無しでは
濡れてしまう。

せめて通路側だけでもと
雨樋工事を開始。
と云ってもこれまた樋工事
なんてやったことはない。

その前に庇の汚れを落として
防腐剤を塗り直し
久々のリニューアルをせねば。

次に排水をどちらに流すか
決めて勾配設計。
更に支持具の位置を決めて
ドリルでビスの穴あけ。

高いので緊張するな!



雨に備えて

あれ、ここから
活発に無駄なく機能してる
母屋の屋根が
よく見えるな!

東の屋根には太陽パネルが
設置され水を湯に変える。
北側の開閉屋根は
大型望遠鏡の設置が可能で
山荘ぷち天文台。

南と西屋根は太陽光パネル
最大3.91kwhの電力
発電していて
屋根も無駄なくフル活動。

さて、樋支持具も5か所に
取り付けたし
後は樋を乗せて固定すれば
ログの樋設置完了。
 

6月27日(土)晴 ログテラス


6月27日(土)晴 ログテラス   


ところでどうしていつも頭上の髑髏は
笑っているんだい?
雨樋設置のお礼に教えておくれよ。
さあ、完成だ!

チベットの密教仮面
笑う髑髏を頭上に従え目を
剥き出して作業を
じーっと見つめる。

「どうやら出来あがった
ようだね。
雨が降ると目の前に
水の簾が出来て
折角の絶景が遮られて
見えなくなってしまう。

まーそれも風情があって
悪くはないが
これからは雨の日の雲海が
存分に見られると思うと
嬉しいな!」

そうかそう云えば仮面君は
ログの住人だから
雨樋無しの屋根に悩まされて
いたんだね。
気が付かなかったな。



  6月28日(日)曇 前庭 
鹿の子蛾の恋

どうだい
胴体の太さの違いが
一目瞭然だね。
上の太いのが勿論、雌。

雄は翅の色も悪いし
痩せてみすぼらしいな。
雌の出す性フェロモンに
操られて恋をしたものの
なんだか交尾後には
昇天しそうだな。

蛾は夜行性が多く
専ら性フェロモンによって
恋の相手を見つけるが
鹿の子蛾は昼行性。

だから視覚刺激も
大きく関与している筈。
この鹿の子斑
配偶行動にどう関わって
いるか解析中らしい。



胴体の黄色い2本の縞は二帯泥蜂黄帯土蜂の擬態で
「近寄ると刺すぞ」との脅し。
勿論針も無いし、よたよたしてて蜂とは似ても似つかず。



6月28日(日)曇 北の森
コスモス移植成功

せっせと花の種を
蒔いたが全然発芽せず。
そこで第2段として
畑に蔓延るコスモス
移植を計画。

果して地中深くまで
掘り起こし肥料の絶えた
赤土でコスモスが育つのか?
案じつつ開発地に移植。

北の森の小さな開発台地
を見にいったら
移植大成功!
移植した数百本のコスモスは
1本も枯れることなく
数本は開花を始めている。

奥庭の生ゴミで作った
有機肥料を含んだ土。
これを掛けたのが効いた
のかも知れない。
嬉しくて
スキップしたい気持ち。


サリチェフ火山
高度337km ISSから By NASA 2009・6・12
(撮影:若田光一)

うわー地球にが生えたぞ!
森の茸も地中の小さな生命が爆発して出来るのかな。 



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