山荘日記

その29春ー2008年卯月

 


卯月1週・・・15年目の山荘・



杏子富士

西畑の杏子に続いて
奥庭の杏子も
おずおずと花弁を
開き始めた。

春霞に浮かぶ雪富士が
花弁に挟まれた空に
溶けるような影を落す。

春の晴れた朝は
細胞の1つ1つが生命を
主張して肉体が
勝手にスキップしてしまう。

山荘眼下、慈雲寺の
糸桜も
咲き出したに違いない。
朝トレーニング前に
ちょっと覗いてみよう。
4月5日(土)晴 奥庭から



夜明けの糸桜

南に延びる山脈の
影からゆっくり
日輪が昇り始める。

上空の最初の光りが
七部咲き
花弁を捉える。

南斜面にある山荘と
異なり慈雲寺は
北斜面にある為夜明けが
山荘より遅い。

山荘の夜明けに
眼下を見やると盆地は
暗い影の底に
沈んでいる。
その影の奥に慈雲寺は
眠っているのだ。
4月5日(土)晴 慈雲寺



光に染まる枝垂

樹齢300年の糸桜のある
この慈雲寺は
夢窓疎石が700年前に
開いたとされる。

『夢窓疎石』といえば
3ヶ月前の1月1日の
乾徳山でお馴染み。
恵林寺と一緒に開いたので
あろうか。

衆生の求めに応じて
33の変身を成す菩薩で
阿弥陀如来の脇侍とされる
のが聖観世音菩薩。

でそれを本尊とする臨済宗
の中の妙心寺派の
お寺が慈雲寺だとか。
ふむ、知らんことばかり。
もう少し
地元探訪せねば。
4月5日(土)晴 慈雲寺



寺子屋・慈雲寺

甲斐国
山梨郡中萩原村。

なんとも厳めしい甲斐国で
始るこの住所こそ
かの樋口一葉の両親の
出生地であり
慈雲寺の所在地でもある。

この地で百姓をしていた
一葉の父親である
樋口則義は
慈雲寺の寺子屋で
知り合った古屋家の娘
多喜(あやめ)に恋をした。

が許されず江戸に出奔。
そこで生まれたのが
樋口奈津。
後の樋口一葉である。
両親は一葉に
この寺の糸桜の美しさを
語ったのだろうか?
4月5日(土)晴 慈雲寺





4月5日(土)晴 見返り桜

句点の極端に少ない長く垂れ下がった文章の
元祖は若しかするとこの糸桜の幻影か?

そういえば評論の最後は「詩人の心で表現した
無類の美しさを持つ」と結ばれている。
確かに糸桜は無類の
美しさなのだ。
川上未映子138

「廻れば大門の見返り柳
いと長けれど・・・」

「卵子というのは
卵細胞って呼ぶのが
ほんとうで・・・」

前者は美登利登場の
「たけくらべ」
後者は緑子が語る
「乳と卵」の冒頭である。

《・・女性のその苦悩の
実体に肉迫して
リアルな
女性像を創出した・・・》

と評されて
近代文学史上特筆大書
の価値を持つとの一葉作品。

それに惚れて書かれた
川上未映子の「乳と卵」が
第138回の芥川賞を
先日受けた。



15年目の山荘新装

《山荘開き》は14年前の
4月17日。
山荘眼下は桃の花が
緋の雲海となり
正に桃源郷そのもの。

流石に14年も経ると
外壁塗装は傷み始める。
今月15年目を迎える
山荘に感謝を込めて
まっさらな衣装を
プレゼントしよう。

と考えて2年前に
塗装講習の講義と実技を
受講し自ら衣装製作を
行おうと着々と準備。

だが実行するにあたって
技術的な問題に直面。
それは総計300mにも及ぶ
コーキングの
剥離と充填作業である。
4月2日(水)晴 外装工事開始



現場リポート

当初はログハウスの
建設に較べれば
屁の河童と高を括っていた。

だがパネル間の古い
コーキング材を剥離する
難しさと再充填の
デリケートさは半端では無い。
と解りついに断念。

業者に依頼することにして
地元の5社と交渉。
山荘開きの4月17日完成を
目指して工事開始。

足場を組んで先ず
古いコーキング材の剥離。
現場のデジカメ画像を
業者がパソコンで
送ってくるので
目白に居ても工事が
手に取るようによく解る。
4月4日(金)晴 コーキング 撮影:相川工務店



仮面再生

まっさらな衣装を
着せるとなると
当然外壁アクセサリーも
新調せねばならない。

が、外壁に飾ってある
この大型の密教仮面
そう簡単には手に
入らない。

それにこの仮面は
年代を経るに従って
重みと風格を増し時空を
蓄え凄みを発するのだ。

アクセサリーを代える
訳にはいかない。
微妙で細かい作業だが
再生を試みるしかない。
4月5日(土)晴 陶房にて



新作アート

再生させねばならぬ
仮面は4面。

オリジナルを尊重して
出来る限り忠実に
失われた彩を再現させる
のも必要だが
2面目は思い切って大胆な
再生を試みよう。

イスラム教の隆盛により
インド仏教は
追い込まれ生き延びるために
イスラムを取り入れた。
蠱惑(こわく)的な秘密仏教・
密教の誕生である。

このイマージュを表出
させるには先ず
青でマスクを覆ってみよう。
4月5日(土)晴 陶房にて



SL桃源郷を走る

先日亡くなった
A・C・クラークを偲んで
「イルカの島」を
読んでいた。

異様な巨大な黒い塊が
車窓を覆う。
グレートバリア・リーフの
珊瑚海から現実・中央線の
車窓に引き戻される。

「なんだ?あれっSLだ。
此処はどこだ?
塩山駅か」

早速山荘に着いてから
調べてみる。
桃の花咲くこの時期
断続的に5日間だけSLが
甲府ー塩山間を
走るらしい。
4月6日(日)晴 中央線にて





4月6日(日)晴 東山梨陸橋下
イベントD51

今日は甲府から塩山へ
3本のSLが予定されてる。
甲府発8時22分が
一番列車だ。

バイクに乗って東山梨の
陸橋に行ってみると
最早鉄道ファンがカメラを
構えてびっしり。

桃花の咲き乱れる
上空に黒煙が龍のように
くねり棚引き
SLの接近を告げる。

平行線の無限遠点に
煙を吐きながら
黒塊が姿を現す。
どよめきと歓声が上がる。

懐かしい石炭の燃える匂いを撒き散らし
哀しそうな汽笛を響かせ黒い塊が突進する。
怖いほど勇壮だね。
終わってしまった
鉄の時代のシンボル。




雌雉襲われる

狐だろうか?
それとも待ち伏せしてた
イタチかテンか?

深い森の中なので鷹に
襲われることは無いはず。
襲撃者の痕跡を探すが
羽以外は見事に
何も無い。

1枚だけ翼に使われる
大きな羽が残っていた。
雌の雉羽だ。
茶の横縞間の白地に散る
黒点で判別できる。

先日森で拾った
尾羽はこの5倍もの
長さがあって
山荘のエレクトーン上に
乗せてある。
若しかするとあの時の
雌雉だろうか?
4月6日(日)晴 北の森



ぼくセブンです

15年目を迎える山荘に
新しいファミリーが
加わることになりました。

名前は06年12月7日に
生まれたのでセブンです。
母親は王室の犬
コーギーですが正確には
ウェルシュ・コーギーの
カーディガン種です。

父親は柴犬です。
母親が家畜犬で父が
山岳を走る獣猟犬ですから
何しろ活発で
走り回っていないと
落ち着かないのです。

そこで週末だけ山荘に
棲んで
山荘主と一緒に
森や山を走ることに
なりました。
どうぞ宜しく!
4月6日(日)晴 村里にて



片栗一番咲き

とっても控えめで
いつも俯いていてひっそり
咲くので
忘れられてしまう。

この場所は片栗と
決まっているのに何故か
水仙の球根を
植えてしまい今春は
水仙の陰で更にひっそりと
3輪が花開いた。

折角何年も掛けて
10輪程に増えたのに
これじゃ滅びて
山荘から消えてしまう
恐れ充分にあり。

しっかりしてよ!
山荘主君!
4月6日(日)晴 山荘前庭にて



もう咲いてます

上条の森は
山荘の数ある森の中でも
とびきり素敵な森。

でも山荘から一番離れた
東の奥にあるし
森の数が多いので
どうしても
足繁くは通えません。

朝トレーニングの場所は
いつも朝起きてから
天気や森の様子を観て
決めるんですが
上条の森だけは前の晩に
決めることが
多いのです。

ドキドキしながら
いつもより早く起きて
森に入るとやっぱ
片栗が咲いていました。
4月6日(日)晴 上条の森にて



村の水源

森の中に苔生した
小さな円筒形の貯水枡が
水を湛えている。

いつも美味しそうな水が
溢れていて円筒の周辺を
綿水苔がびっしりと
覆っている。

あんまり美味しそうに
苔が水を吸っているので
近づいてパチリ。

PCにアップしてみたら
あれっ!
小さな赤い実が
1つ2つ・・・9つも着いてる。
驚いたな、苔にも
赤い実が成るなんて。

この上条の森の村人は
枯葉や苔に濾過された
自然の水を
毎日飲んでいるんだ。
4月6日(日)晴 上条の森にて



森のハーモニー

どうしてこんなにも
然り気無く美しい光を
投げかけることが
出来るのだろう。

ハープだろうか?
フルートの音色だろうか?
いや二胡の物悲しい
響きかも知れない。

聴覚でしか聴こえないと
思っていた音色が
光になって
視覚に流れるなんて!
4月6日(日)晴 上条の森にて



壇香梅雌花

妙なる音色に誘われて
森に分け入る。
上条峠にやっと顔を出した
ばかりの夜明けの
光を浴びて
壇香梅が静かに微笑む。

でも変だね!
先週座禅草の森で逢った
壇香梅はつんつんと
沢山の雄蕊が
溢れていたけど。

うん!そうなんだ。
壇香梅には雄株と雌株が
あって別々の花が
咲くんだ。

雄花は3.5cmもあって
大きくて華やかなんだけど
雌蕊が退化してる。
これは小さな雌花だけど
静かな気品があるね。
4月6日(日)晴 上条の森にて



早春の六樹幹

すっかり湖の水が
涸れてしまって落ち葉の
湖になっているね。

上条峠に来ると
この不思議な6本の幹
支えられた湖が
必ず声をかけるんだ。
「ねえ!ちょっと来て」

水が涸れてしまったので
なんだか苔も元気が
なくてしょんぼり。

もう直ぐ
あと1、2週間もすれば
君達6つ子も小さな
蒼い芽を吹き天空に向かって
ぐんぐん伸びていくんだ。
4月6日(日)晴 上条峠にて



ムンク《叫び》

ふと訪れる
身の置き所のない不安に
世界をつんざく声が
響き渡る。

その声が自分の喉から
生まれたものだと
当の本人でさえも後から
気付き恐れ戦くのだ。

「叫び」1893より

エドヴァルド・ムンク
に逢った記憶で一番
新たなのは確か昨年12月
上野の森
その前はヒマラヤの
8125m峰・ナンガ・パルバット

高所キャンプへの途中の
氷河断面が
日々刻々と表情を変え
《叫び》そのものの
アートを描いたのだ。

上条の森にもあなたは
影を潜めていたんですね。
4月6日(日)晴 上条の森にて





尻尾が出ました!

枯葉の上の黒いのが
見えるかい?
左の細長い白い雲のような
ふわふわは
役目を終え壊れてしまった
卵塊のバリアー。

よーく観てご覧。
黒い奴に尻尾が生えてるよ。
先週頭とお腹だけだった
あの卵が
減数分裂を繰り返し
生命を爆発させているんだ。

無数の星々が
超新星のように煌きながら
飛び散り銀河を形成し
やがて黒い銀河そのものが
泳ぎだすんだね。.

30億年後の
アンドロメダと我々の
銀河系のように
30日後には2つの銀河が
合体して新たな生命の
詩を歌うんだろうね。
4月6日(日)晴 山荘池にて



卯月2週・・壮大な野外劇



積雪と枯葉

新装するための
高圧洗浄を屋根から開始。
ついでに設置以来
8年間一度も洗ってない
太陽光パネルも洗浄。

と言っても山荘主は
目白に居て
業者の送ってくる
PCの画像を見ているだけ。

樋に詰まった大量の枯葉も
一気に吹き飛ばされ
あっと言う間に綺麗に
なってしまう。

あれま!綺麗になったは
好いけれど樋がかなり
変形している。

毎年の積雪の重みで
変形したらしい。
樋全体を新品に交換せねば
樋が落ちてしまう。
よし仕方ない新調しよう。


4月11日(金)晴 高圧洗浄と樋
撮影:相川工務店




4月13日(日)曇 前庭の新塗料

光触媒TiO2

酸化チタン(TiO2)が
魔法のような
不思議な能力を秘めて
いるなんてすっかり
忘れていた。

随分昔に酸化チタンが
光を受けて強い酸化作用や
超親水作用を発すると
言う事は聞いたことが
あるような気がする。

まさかそれが応用されて
塗料になって大活躍してる
なんて知らなかった。

この塗料が光を受けると
強い酸化作用で
塗面を殺菌するので
この塗料を塗った
病棟、手術室はいつも清潔。

又一方では
超親水作用で壁やミラーに
水滴を作らず
油性の汚れを定着させず
光を触媒として
セルフクリーニングする。

それだけではない。
水に入れると水を水素と酸素に分解し水素燃料を生み
太陽光発電さえ出来る。
正に奇跡の物質なのだ。

その奇跡の塗料を山荘の二階ベランダに塗って
セルフクリーニングを
実験しようと山荘主は考えた。
さてどうなるか?



新装ベージュ

グレーとホワイトの
ツートンカラーだった外装を
ベージュとほんの僅か
茶の入った白の
ツートンに変えて塗装開始。

高圧洗浄で綺麗になった
外壁に先ずプライマーと
呼ばれる基礎塗料を塗る。
それだけでもうピカピカ。

その上に第一回目の
上塗りを行い
更に乾いてから2回目の
上塗りを施す。

屋根は黒から
濃いグリーンに変えた。
これも二度塗り。
ベージュとグリーンで
山荘は幹と葉のイメージ。
森との同化を願っての
試みなんだが・・・
4月13日(日)曇 上塗りシリコン




初トレーニング
4月12日(土)晴 小倉山

もう嬉しくて嬉しくて思わず笑みが零れてしまう。
山荘の新しいファミリー・セブン
と初めての森のジョギングです。



赤い糸

記念すべき第1回目の
セブンとの登山は小倉山。

セブンは母親が
いつも走り回っている
家畜犬で
父が獣猟犬なので
森や山を走るのが大好き。

でも里の飼い主は
山などには連れて行かない。
嬉しいのは山荘主
だけでない。
セブンなど気が狂わんばかりの
歓びよう。

きっと君と山荘主は
前世から赤い糸で
結ばれていたんだね。
4月12日(土)晴 小倉山山頂



狂気するセブン

野生動物を発見しようが
他の犬と遭遇しようが
決して吠えない。

全身を神経にして唯
一心に集中し次に何を
すべきか考え一瞬にして
次の行動に移る。

そのセブンが里の家に
繋がれている時は
番犬の役目を心得ていて
やたらと吠える。

もう3度目の訪問なのに
山荘主が近づいても
吠え続ける。

だが散歩用のリード(紐)
見せるや否や
狂喜し飛び上がり
鉄砲弾のように飛び出す。
4月12日(土)晴 小倉山





4月12日(土)晴 
前庭にて
辛夷全開

森の薄暗い闇に映えて
眩いばかりの白銀。

秋から咲き続けた
山茶花が終わり暗い影と
なって辛夷(こぶし)の白銀を
一層引き立てる。

何だか思い出そうとして
決して思い出せなかった
遠い記憶の
フラッシュバック。

で、その記憶とは
甘い香りの母の胸に
抱かれた
決して記録されぬ記憶。

乳房の谷間に
顔を伏せていた時
脳内を駆け巡っていた
不安のエンドルフィンが
未記録の白紙に
甦ったのだろうか。

山茶花の闇と辛夷の光の
どちらににも
同時に属する
うつせみの不安の出現。



突然の開花

早春の愉しみの1つに
三つ葉躑躅
芽吹きがある。

目を皿のようにして
森を駆け巡り
一番先に彩を着ける木を
探すのだ。

実は先週上条の森へ
出かけたのも
本当の目的は
この三つ葉躑躅にあった。

山荘の三つ葉躑躅は
先週まで花芽すら
確認出来ず未だ先の事と
見向きもせずにいた。

ところがどうだ。
杏子の白を背景に
この通り
一気に咲いてしまった。
4月12日(土)晴 前庭にて





4月12日(土)晴 
前庭にて

そこで可哀そうだが入り口を粘土で封鎖したのだ。
ところがその厚く硬い粘土に
トンネルを掘って蜂が蜜を求めて出てきた。
凄い生命力!
菜花と日本蜜蜂

越冬した山荘の野菜達
2週間前に紹介したけど
覚えていますか?

その時、青々していた
青梗菜、冬菜、小松菜、白菜は
どれも黄色い菜の花を
いっぱいに着けて
杏子の薄いピンクと絶妙の
ハーモニー。

これだけ見事に咲いたら
日本蜜蜂
黙っているはずがない。

畑への降り口の石垣に
巣くった日本蜜蜂が
信じられぬ土木工事を
完遂させたのだ。

西洋蜜蜂と異なり
簡単に飼育出来ない
日本蜜蜂は貴重な昆虫だが
畑の入り口に
巣があっては危なくて
出入りできない。



プラムも突然

林檎も梨もプラム
花芽が僅かに
色付いた咲く前の一瞬が
感動的である。

その瞬間を見逃すまえと
先週も裸の木々を
訪ねては声をかけた。

「未だですね。
来週あたりでしょうか?
花芽が覗くのは」

プラムも今週は
未だ花芽が膨らむだけで
咲かないはずだったのに
急な暖かさで
すっかり開いてしまって。

色付いた花芽は
撮れませんでした。
4月12日(土)晴 奥庭にて





4月13日(日)曇 
Tルート森にて
野生動物発見!

さて、2回目のセブンとの
朝トレーニングは
何処にしようか?

上条山の稜線から
森を下って反対の北の
山稜へ出るのも悪くはない。

だが全く昨日と異なる
T(鉄塔)ルートから
T1ピークを目指すのもいいな。
セブンに聞いてみる。
「どうだいセブン?」

もう、セブンたら問いかけに
振り返りもせず
いきなり全力で走り出す。

結局セブンにとっては
何処でもいいのだ。
唯より長くより困難であれば
ご満足なのだ。

そのセブンがぴたりと
動きを止め森の奥を睨む。
どうやら狐か猪を
発見したらしい。



小川に突入

小川に出合ったとたん
冷たいのに何の迷いも無く
飛び込む。

枯葉の下に頭を入れて
生命の痕跡を追う。
かと思えば
ばしゃばしゃと歩き回り
水を飲み寝転がり
枯葉を蹴散らす。

時々片足上げて
自らのテリトリーを記す
小便サインを付ける。
これがなければ
とても犬とは思えない。

まるで野生の動物
そのものの荒々しさに
嬉しくなる。
4月13日(日)曇 Tルートにて



岩場登山を終えて

果たして急な岩場を
セブンは登れるか?

T1ピーク直下は
岩場混じりの急斜面が続く。
試すにはもってこい。
でもコーギーは脚が短いので
急斜面は無理かな。

ところがどっこい。
セブンは恐れるどころか
ぐんぐん登り澄ました顔。

帰りの森で早くも
朝トレーニングの終わりが
近いのを悟ってか
立ち止まり何やら言いたそう。

『やだよ、帰るの
もっと走りたいよ』
4月13日(日)曇 Tルート稜線にて



石楠花精彩無し

2年前の石楠花を見て
驚いた。
瑞々しい生命の
鮮やかさに胸が疼く。

同じ石楠花とは思えぬ
眼前の蕾の何と
精彩に欠けていることか!
改めて過ぎ去った時の
重みを実感する。

確かに奥庭は
陽射しが強く半日陰を
好む石楠花には
苛酷な条件ではある。

だが730日の日射だけが
原因ではあるまい。
もっとメンタルな何かが
あるのかもしれない。
4月13日(日)曇 奥庭にて



滅びた木瓜

階下へ降りる時
目の前の大窓いっぱいに
北の森が広がる。

四季を通して
森の表情はいつも豊かで
思わず階段で
足を止めてしまう。
贅沢で豊かな一瞬である。

色彩の乏しい早春の森で
目に染みる紅を
ぽつんぽつんと散らす
木瓜(ぼけ)は正に山荘の
早春賦であった。

でも今年は全く目に
することも出来ず寂しく
早春は終わってしまった。
いったい山荘の森に何が
起こったのだろう。
4月13日(日)曇 東森林道にて



山荘から消える

石楠花、木瓜に続き
何処にでも蔓延る菫さえもが
姿を消しつつある。

こりゃ大変と奥庭を
ウォッチングしたら芝生に
一株咲いていたが
激減したことは間違いない。

山荘周辺の森の小道や
林道では沢山見かけるので
どうやら山荘だけが
石楠花や木瓜、菫に
敬遠されているらしい。

こんなにも可憐で高雅な
紫が山荘から消えて
しまうなんて・・・

15年目を迎えた
山荘主のマンネリ気配が
単に生命に伝染してるだけで
あるのならばここらで
心機一転。


4月13日(日)曇 
東森林道にて

山荘を飛び出して外から改めて山荘を
客観視するもよし。
よし、それじゃ手始めに笛吹川の野外劇にでも
行ってみよう。

とか脈絡不明なセリフをぶつくさ呟きながら
山荘主は447年前の川中島合戦場へと向かったのである。




壮大な野外劇
4月13日(日)曇・川中島合戦


絶叫し苦痛に顔を歪め流れに沈み込む兵士。
傷ついた兵士に最後のとどめを刺さんとする緋縅の武者。
折れた太刀、斬られ流された下半部の着衣、換えの草鞋が虚しく揺れる。
凄絶な殺し合い。
447年の時空を超えた壮大な野外劇。



逃げる武田軍

度迫力の殺し合い
が眼前に展開。
総勢900人による
迫真の戦闘劇に血が騒ぐ。
劇場は山荘近くの
笛吹川とその河川敷。
447年のタイムスリップに酔う。

川中島合戦の
主な戦闘は、計5回
12年余りに及ぶ。

実際に戦闘が行われた
のは第2次、4次で
特に4次は激戦で
上杉三千余、武田四千余の
兵が死んだ。

武田の策士・
山本勘助も死んだ
この4次の
合戦を再現しようとの
壮大な野外劇が
千曲川ならぬここ笛吹川で
今始まった。
4月13日(日)曇・笛吹川



冷たい雪解水

切り殺された兵士が
雪解の冷たい流れに倒れ
息絶え
岩に打ち上げられた。


447年前
1561年(永禄4年)9月10日

深い霧と共に
運命の日はやってきた。

上杉政虎(影虎)の強さを
知る信玄は攻撃に慎重で
山本勘助馬場信春
上杉軍撃滅の
作戦立案を命じた。
2人の立てた策は
啄木鳥戦法

作戦・「啄木鳥戦法」を
実戦するため
武田軍は政虎の篭る
妻女山に霧と夜陰に乗じて
攻め入る。

しかし妻女山の城は
もぬけの殻。


4月13日(日)曇・笛吹川



鶴翼の陣で戦う

緋縅(ひおどし)の武田に
切りかかる
黒の上杉軍兵士は
勇猛果敢に本陣に迫る。


もぬけの殻と知った
高坂昌信・馬場信春らが
率いる別働隊1万2千は
急遽妻女山を下る。
作戦・「啄木鳥戦法」は破れ
武田本陣は危機に陥る。

信玄率いる本隊8000は
八幡原に鶴翼の陣
布陣した。
だが影虎勢は13000の
兵士で猛攻撃を
仕掛ける。
信玄危うし!

主戦場は
武田菱の陣幕の張られた
笛吹川左岸下流。
何故か激戦場の真っ只中で
マイクを使って
実況中継する時空の旅人在り。
4月13日(日)曇・笛吹川・左岸



車懸りの陣

火縄銃の轟音の応酬で
始った戦いも
このような乱戦になると
銃は役に立たず
唯ひたすらに斬り合う。

切り殺された兵士を
良く観ていると暫くして
生き返り
再び戦闘に加わる。

そりゃそうだ、何しろ
7千以上の兵士が
死んだのだから9百の役者
ではとても足りない。


政虎は、猛将・柿崎景家
先鋒に、車懸りの陣
(車輪のスポークのように
部隊を配置し
次々攻撃する陣形)で
武田軍に襲いかかった。

武田軍は完全に裏を
かかれた形になり
鶴翼の陣を敷いて
応戦したものの
信玄の弟の信繁山本勘助
諸角虎定、初鹿野源五郎
らが討死するなど
劣勢であった。
(Wikipediaより)


4月13日(日)曇・笛吹川・左岸





4月13日(日)曇・笛吹川・右岸
外人部隊混入

車懸りの陣で
次の攻撃に備え待機する
影虎の若手軍勢。

良く観ると黒人の女の子
フランス人、米人も
鎧に身を固め戦闘に
加わっている。
影虎軍勢は時空を超えた
外人部隊なのだ。


それにしても何故
作戦・「啄木鳥戦法」は
破れたのか?

影虎は濃霧の出る直前
武田陣の炊煙が
いつもより多い事から

出撃を察知し静かなる
下山を開始したのだ。

影虎は一切の物音を
立てることを禁じて
夜陰に乗じて密かに
妻女山を下り雨宮の渡しから
千曲川を対岸に渡った。

これが、頼山陽の漢詩
『川中島』の一節
「鞭声粛々夜河を渡る」
である。(Wikipediaより)



毘沙門天出陣

毘沙門の旗を
翻して信玄本陣へ
突撃する外人混在部隊。
敵は僅か8千

影虎勢はそれより5千も
上回る猛将姉崎の
精鋭を先鋒とする13000。
勝てぬはずは無い。


高坂昌信・馬場信春らが
率いる別働隊1万2千が
妻女山を下って
信玄本陣に加わる前に
壊滅せねばならない。

毘沙門天は四天王の
一人で甲冑を着けた
憤怒の形相をした武将。
北方世界の守護神で
正に影虎にぴったり。
4月13日(日)曇・笛吹川・橋上





現川中島合戦場
右:犀川 左:千曲川 手前:落合橋
(Wikipediaより)



乱戦に次ぐ乱戦

白刃が閃き死者累々。
苦痛に顔を歪め
篝火(かがりび)の横に
川の中に
そして橋の上に死者が
倒れ伏す。

僅か8千の兵は
総て出払ってしまい
信玄本陣の武田菱陣幕内に
信玄は一人残された。


一人となった信玄の本陣に
影虎が斬り込みをかけた。
放生月毛に跨がり
名刀、小豆長光
振り上げた影虎は
床机に座る信玄に三太刀に
わたり斬りつけ
信玄は軍配をもって
これを凌ぐが肩先を負傷し
信玄の供回りが
駆けつけたため
惜しくも討ちもらした。
4月13日(日)曇・笛吹川・橋上



最後のとどめ

午後になり別働隊合流。
武田は多勢に
物言わせ上杉勢を
押し返し次々と
兵士にとどめを刺していく。

信玄陣幕内の
影虎勢も篝火も消え
戦いは終息に向かう。


朝8時に霧が晴れ
激戦となる。
武田の別働隊1万2千が
戦場に到着する12時頃
までは
影虎が優勢。

その後信玄本陣と

別働隊に挟撃された影虎は
形勢不利となり
兵を引き犀川を渡河して
善光寺に退いた。

信玄も午後4時に追撃を
止めて八幡原に兵を
引いた。
8時間に亘る
激しい戦いは終わった。


4月13日(日)曇・笛吹川・橋上

その後上杉軍は川中島北の善光寺に
配置していた兵3000と
合流して越後国に引き上げた。
7千を超える死体の血で
染められた戦場には恐ろしいまでの死の静寂が訪れた。

7千を超える生命と引き換えに得られたものは
何であったのか?




4月13日(日)曇・笛吹川・合戦場

主催者 笛吹市観光連盟
開催日(期間) 4月13日(日)
料金 観覧無料、参加費:1名3,000円(笛吹市民の参加者は無料)
会場 笛吹市役所前笛吹川河川敷
山梨県笛吹市石和町市部
壮大な舞台

右手下流に信玄勢
切れているが左上流に
謙信勢が配陣し
中央の八幡原
で主戦が行われる。

笛吹川の流れを挟んで
右岸の土手が観客席となり
小さな橋が戦場に到る。

信玄や影虎の所作は
左岸中央の大型
スクリーンに映し出される。

闘いは右岸、左岸、橋、水中
到る所でなされ
観客は壮大な舞台に戸惑う。

これを単なる客寄せの
観光イベントに
終わらせないで
唐十郎や亡き寺山修司
演出させたとしたら
どんな実験劇になるか
考えただけでぞくぞくする。

観劇料金を観客でなく
逆に出演者が払うからこそ
あれだけの迫真の
演技が可能なのだろうか?

彼らは参加費の元を
取らんとばかりに
戦国武者に徹するのだ。



おりゃ勘助だ!

突如山荘主が狂った。

人通りの絶えたホテル前で
山本勘助の鎧模型を
見つけるや否や
兜に顔を突っ込み
吼えたのだ。

どうも山荘主は興奮すると
劇と現実の見分けが
つかなくなり
在らぬ世界へ突っ走って
しまう傾向が強いのだ。

《週末は山梨に居ます》
と言うキャンペーンを
最近あちこちで見かける。

確かにこれだけ面白いと
山ばかりの山梨も
棄てたものではない。

粋人に再発見され
週末は人が溢れるかも等と
妄想するのである。


4月13日(日)曇・石和温泉のホテル前



卯月3週・・花宴・注文の多い料理店



ピンクの絨毯
4月19日(土)曇・山荘眼下



新しいドレス

大地がピンクに染まり
無数の花弁の海に
家々が方舟の
ように漂う。

さて!山荘の工事は
どうなったかな?
山荘主にとっても
1週間ぶりの山荘来訪。

今日の《花宴》に
間に合うようドレスアップ
したのだが?

屋根のグリーンとベージュ
のツートン上下。
ダークオークのテラス。

新しいドレスは
森の仲間に入れてもらえる
だろうか?
4月19日(土)曇・東の森から(翌週27日画像と差し替え)



庭での陶芸

うーん花も綺麗だし
とても暖かいし
陶房で土をこねるよりも
思い切って
庭に作業台を出して
太陽をいっぱいに浴びて
作陶と洒落よう。

轆轤をまわす?
それとも紐造りにする?
簡単なのはたたら造り。

「それじゃ簡単なたたらで
お皿を造ろうかしら?」

4時間半もかけて大阪から
新幹線でやって来た
岩本さんが
おもむろに土を
こね始めました。
4月19日(土)曇・ログから



作陶を愉しむ

本日の山荘活動の
選択肢は4+1。

その1
ログハウスの屋根と壁の
高所での
恐ろしいペンキ塗り。

その2
畑一面に咲いてる
美しい菜の花との闘い。

見る分には
正に早春の情緒たっぷり
の菜の花。
だが耕運機をかけると
なると大変な重労働が
待っているのだ。

その3
本日の花のうたげに
具えての7人分の料理作り

これは責任重大。
誰にでも出来る訳ではない。
常連の名シェフ宮沢君が
今回は欠席。

3日前からスペアリブを
仕込んで中野から
持ってきてくれた村上さん
にお任せしよう。


4月19日(土)曇・奥庭

その4
浮世の憂さを忘れて大地そのものを手でこねて
創造活動に勤しむ作陶。

ぷらす1は何かって?
山荘会員なら誰でもがご存知。
選択の余地無しの愉しい愉しい森の散策ですよ。



怖えー!

驚いたのなんの。
山荘活動デビューの
伊藤君が
4つの選択肢から選んだのは
ログハウスのペンキ塗り。
てっきり楽な作陶を
選ぶと予想してたのに。

扇山山腹の森を
切り開いて造った山荘と
盆地との高度差は
300mもある
見晴らし抜群のロケーション。

その倉庫の上に建てられた
ログは更に
高度感たっぷり。

で、そのログの屋根での
ペンキ塗りは
まるで鳥になったよう。
4月19日(土)曇・ログ屋根



笑って誤魔化す

若しかして
伊藤君は
山荘会員勧誘魔の馬渕君に
騙されて
『山荘に行くとな
美味しい料理と
手造りワインの
飲み放題なんだぜ』
とか言われて・・・

そうなんです。
でもその裏に馬渕さんは
何か意図的に言い忘れて
いることがあるような
気がするんだけど。

それに今
気がついたのかな伊藤君!
もう遅いね。
ほら笑いがどこか
引きつっているよ。
恨むなら馬渕君だよ。
4月19日(土)曇・ログ屋根



僕も怖いんです

芽を吹き出したばかりの
木々の梢にふわっと
浮かんだ仕掛人・馬渕君。

今回の山荘合宿仕掛人が
屋根の反対側で
振り返る。

眼鏡の奥で目が
凍りついたまま敢えて
伊藤君に笑いかける。

『ほら景色抜群だね。
素晴らしいだろ
こんな体験中々出来ないよ』

無言の笑いで誤魔化した
伊藤君はこの後
何故か馬渕君を屋根に
1人残して
山荘主と共にトンズラして
しまったのである。
4月19日(土)曇・ログ屋根



俺!監督

1時間近くも屋根に
1人残された馬渕君は
怒り心頭に発し
帰ってきた伊藤君を
顎でこき使う。

「今度は切妻破風だ。
俺は下で見てるから
しっかり塗るんだぞ」

「ハイ先輩!
でもこんなに扱使われて
会費まで取られて
最初と話が違うんじゃ
無いんですか」

「そうだ。犠牲者は多い方が
いいんだ」
「でもほんとに料理は
美味しいんですか?」
4月19日(土)曇・ログ



ようこそ!
注文の多い料理店へ

やっと気がついたかね。
伊藤君!ここは
《注文の多い料理店》。

食べられるのは
君達なんだよ。
美味しいものは君達自身の
肉体と精神そのもの。
働くほどよく熟して
肉体も精神も美味しく
なってディナーの最高の
アラカルトになるのさ。

庭で陶芸に勤しむ岩本さんも
キッチンで調理に
精を出す村上さんも
2人を見上げてニコッ!。
4月19日(土)曇・玄関



山春の祭典

左隅にほんの少し
顔を出してるピンクの芝桜。
その上ではグミ
満天星(どうだんつつじ)
白い花が満開。

小さくて見えないけど
赤いチューリップの奥には
片栗も咲いてるし
苺の白い花もたくさん。

去り行く水仙と
今を盛りのチューリップも
注文の多い料理店に
やって来た
若い2人を大歓迎。

「あー早くうたげが
始らないかな」
4月19日(土)曇・前庭



どう私のドレス

伊藤君て
フルマラソンもやる
スポーツマンでその上
ピアノも弾くんだって!

『戦場のメリークリスマス』が
レパートリーなんだって
誰か言ってたよ。

そう、それじゃ
久しぶりに山荘の
エレクトーンも大活躍ね。

今夜のドレスは
これでいいかしら?
情熱の真紅に鮮やかな
黄金と黒ライン。
4月19日(土)曇・前庭



忘れられた椿

それに花嫁募集中の
32歳なんだって。

それを聴いた奥庭の
すっかり忘れ去られていた
白の椿が
むっくり起き出して

ちょっと咲くのが遅れたけど
私も今夜のうたげに
参加させてもらえないかしら。

ちょっと
放ったらかしておいたら
少し錆びついたけど
まだまだ気品と色気あると
思わない?
4月19日(土)曇・奥庭



遅れましたけど
私林檎の蕾です

そりゃ無理と言うもんだ。
この私をご覧よ。
赤い蕾の下の産毛のような
軟らかな花被。

これから益々美しくなって
その上
大きくて美味しい赤い実を
付けるんだよ。

この私こそ今夜の
《注文の多い料理店》の
うたげのプリマドンナに
相応しいわね。

当然、伊藤君を魅了するのは
私よ。
4月19日(土)曇・西畑



コーディネートどう?

西畑の林檎の呟きが
風に流れたのか
山荘池の山吹が聴きつけて

問題は調和の美しさよ。
本当の美しさは
自然の生命との
アンサンブルにあるのよ。

私に恋焦がれて
山吹色になった池の鯉を
見てご覧。
私の魅力は恋する人の
肉体まで
変えてしまうんだよ。

これに木蓮や牡丹、芍薬
アイリスまでが
加わったら山荘の庭は
恋の戦場だね。
4月19日(土)曇・山荘池





4月19日(土)曇・山荘池
大きくなったでしょ!

しばらく
姿が見えなかったので
心配になって池の枯葉を
そっと動かしたら
やっぱり隠れていたんだ。

2週間逢わなかっただけで
尻尾がこんなに
長く延びて
すっかりお玉杓子。

4月6日山荘日記の私を
見てください。
黒い芥のような点にしか
見えなかったけど
細胞が爆発を繰り返し
こんなになりました。

山荘主が
鯉に食べられぬよう池に
バリアーを築いてくれたので
今年は蛙になれそうです。

今夜の宴には
間に合わないけれど
6月になったら御礼に
カエルの恋のコーラスを
山荘に響かせますので
お楽しみに!



黄昏の散歩

岩本さんの楕円のお皿も
完成したし
ログの塗装も床まで
塗り終わったし

村上さんの料理も
下拵えが終わったし
いよいよ待ちに待った
森の散歩に出かけようか。

この瞬間を一番
待ち焦がれていたのは
勿論セブン。

山荘主の顔を見た途端
ジャンプして
飛び掛り首の鎖を
引きちぎらんばかり。

さてセブンそれでは
山荘会員を紹介しよう。
みんな君の家族に
なる人達だから宜しく。
4月19日(土)曇・座禅草公園



階段征服

座禅草が青々と繁る
暗い森を抜けると
小倉山の山頂は目の前。

5人の家族に囲まれて
セブンの張り切りること。
いつも以上に
全力疾走で山頂まで
駆け抜け
あれ程怖がって決して
登ろうとしなかった
階段もついに征服。

ほらセブン
怖いことなかったろ!
なんでもやってみることさ。
そうすればいつだって
途は拓かれるんだ。
4月19日(土)曇・小倉山山頂



結婚おめでとう!

小倉山山頂から戻り
スペアリブがオーブンから
美味しそうな匂いを
漂わせ
総て宴の準備万端整う。

テラスのテーブルには
沢山の料理やグラスが並び
照明が森の闇を切り裂き
いよいよ花の宴が始る。

その絶妙な瞬間
168時間後に結婚式を
控えた小村君と明子さんが
森の闇を破って登場。

なんと心憎いまでの演出。
だが憎いのは
時間だけではない。

花嫁、花婿の登場には
出迎えの従者が必要と
山荘会員勧誘魔の馬渕君は
伊藤君に命令した。



4月19日(土)曇・一階テラス
『車で下の里まで2人を
お迎えに行くべし』


かくして秀生、明子
御両人は深い森の
闇の中から
従者を2名引き連れての
劇的な登場
となったのである。

此れほどまでの
心憎い演出は綿密な
打ち合わせをしても
中々出来るものではない。
流石だね
山荘会員勧誘魔の馬渕君!
花の宴当日の献立
                              
メーンディッシュスペアリブ
シーフードサラダ(エビ、ホタテ貝柱、クレソン他生野菜)
ブロッコリー新じゃがの明太ソースかけ
ワカメ、とりささみ、シメジの和風サラダ(畑の春菊入り)
菜の花のおひたし(畑より)
たけのことしいたけの煮物、厚揚げとしいたけの中華風炒め(しいたけ山荘産
こんにゃく木の芽味噌(山荘の新山椒の芽
 
デザート
スイートポテト(生クリーム添え)・・山荘主作
スティームド・コーン(山荘での収穫コーン)・・会員共同作品
スイートババロアキウイ添え(山荘での収穫キウイ
干し柿のワイン漬(山荘での収穫柿)
苺(九州あまおう)馬渕さんこだわりのお土産
ピスタチオ、むき栗(伊藤君の差し入れ)

ドリンク
山荘特産ビア・ラガー&スタウト
山荘特産ワイン・ゆぴてる赤2006年&07年
ゆぴてる白2007年
紅茶・サバティー(ボルネオ島サバ州産)

Chef:Eiko・M
いつものシェフ宮沢が居なくて村上さん1人での
調理ご苦労さんでした。
心から感謝します。





4月19日(土)曇・ログ2次会
お控えなすって!

テラスでの宴を終えて
2次会はログハウス。

昼に伊藤、馬渕両君が
恐怖と戦いながら
2人のために
オイルステンを塗って新装した
ログに入るや否や
秀生君が
いきなり仁義を切る。

「お控えなすって!
手前生国発しまするは・・」

「生国なんてどうでもいいの。
問題はどうやって11歳も
若い女の子を
口説いたかに尽きるんだよ」

40歳誕生日を先日迎え
未だに独身の
勧誘魔の馬渕君が喚く。
32歳独身の伊藤君が
「そうだそうだ」と
言わんばかりに深く肯く。



えっ!11歳も
若いの!!


「要はだな
権力乱用ってやつだ。
男はなんたって権力よ。
おりゃ彼女が入社試験を
受けた時の
面接官だったのさ」

「おもむろに彼女に
こう切り出して迫ったのさ。
○○○○・・・」

京都大学でヨーロッパ史を
学びいつも優しくて
温厚な若紳士の秀生君が
権力乱用だなんて
とてもあり得ないと
誰でもが知っているだけに
この告白はやんやの
喝采を受けたのでした。


4月19日(土)曇・ログ2次会

おいおい馬渕君!
いくら親友でもそんな捏造をHPに載せたら
人権問題で告発されるぞ。

最後に岩本さんの一言
「結婚したら男は
女を大切にせにゃいかんよ。泣かしたらあかん」



すっかり山荘家族

夕刻7時から延々と
翌日に至る時刻まで宴は
続き寝た瞬間に朝。

山荘起床時間は
どんなに呑んだくれようが
夏は5時冬は6時と
決まっており起きたら
愉しい朝トレーニングが
待っているのだ。

セブンが未だ
行ったことのない山を
走りたいと言うので
北山稜山腹から上条の森
更に上条山へとジョック。

急に増えた家族に
すっかり慣れてセブンは
おおはしゃぎ。
4月20日(日)曇・上条峠



煌く紫の森

昨夜のワイン酔いの残る
陶然とした心象に
早春の森がひたひたと
光を打ち寄せる。

三つ葉躑躅の高貴な紫
に目をやりながら
伊藤君の心象盗撮を
試みる。

昨日の恐怖のペンキ塗りで
抱いた会員勧誘魔への
伊藤君の懐疑は
ワインや料理の美味しさで
解消したのだろうか?
それとも・・・

4月20日(日)曇・上条山



シャネル7

くんくん臭いを嗅いでいた
セブンが落ち葉の下から
何やら見つけた。

暫く警戒していたが
やおら背中を大地に着け
狂気したかのように
その物体の上に
体を擦り付ける。

何だろうと注意して
良く見ると
何と黒く干乾びた古い糞。

何の糞か解らないが
地図にも載っていない
上条山の深い森の中の糞と
あっては野生動物の
可能性が高い。

シャネル5は有名な香水。
セブンを狂わすこの
香水はシャネル7に違いない。
4月20日(日)曇・上条山



シャネル7落し

この森には多くの鹿が
走り回っている。
麝香かも知れないと
鼻を近づけると
もの凄い悪臭。

何だよセブン!
これじゃ臭くて堪んないよ。
丁寧にも全身に
香水着けちゃって。
この臭いで雌犬の関心を
惹き付けようとか・・・。

そうだセブンは水を見れば
飛び込むので
池に連れていこう。

だがいつもと違い
水浴をためらうセブン。
よっぽどこの香水が
気に入ったんだな。
4月20日(日)曇・座禅草公園池





4月20日(日)曇・西畑
終わらない!!

さて今回の合宿での
残されたプログラムは2つ。
作陶と畑仕事。
どっちにする?

そうかそうか
やっぱ畑仕事がいいか。
ところで2人は耕運機
使ったことある?

伊藤君が質問する。
「耕運機の運転は免許
要らないんですか?」

うん、いまどきを象徴する
面白い質問だ。
「耕運機に乗って運転
する訳ではないから
いらないんだ」

「それじゃ耕運機をかける前に
この菜の花を抜いて
果樹畑に運ぼう」

一見易しそうなこの作業
かなりの重労働で
果てしなく続くとは露知らず
2人はニコニコと
作業開始。



あれれ何処行くの?

菜の花の強烈な花粉に
咽ながら
西畑総ての菜の花を
運び終わったら
既に午後2時。

いよいよ耕運機の出番。
先ずキャブレターのコックを
開いてスイッチをONに。
次にチョークを引いて
コイルスターターの
コイルを引いてエンジン始動。

アクセルを調整して
クラッチを握れば前進する。
手本を示してから
さあ!伊藤君の初挑戦。

あれれ!駄目だ。
こいつ勝手に行きたい所に
いきゃあがる。

「あっ!そっちはだめだめ
じゃが芋が
芽を出したばかりで
耕運機かけたら
全滅しちゃうぞ」


4月20日(日)曇・西畑





4月20日(日)曇・西畑
余裕のポーズ
実は止まってる

「あのーすいません。
休んでもいいですか?
もう動けません」

そういえば朝トレーニングで
セブンに引かれながら
セブンよりも
荒い息を吐いて
ゼイゼイハーハーしながら
山荘に着くや森の
テーブル
に腰掛けて
暫く動かなかったな。

フルマラソンを趣味にしてる
伊藤君にしては
中々の演技だなと
思ってみていたが
どうも演技では無く本当に
ギブアップしてるのかも?

どう?馬渕君やってみる?
桃源境をバックにして
中々のポーズだよ。
そりゃそうだ。
耕運機止まってるもんね。



お土産は山荘特産
ワインと椎茸


石テーブルに座って
ティータイム。

山荘活動では1日2食で
どんな重労働しようが
日中は飲食は無し。

しかし初体験の伊藤君には
それは酷な話。
ボルネオで手に入れた
香りの強いサバティーを
たっぷりいれて
数種のビスケットを
摘まみながらのんびり
ティータイム。

その後森で採った沢山の
椎茸を干して
今日の作業はお終い。

山荘会員への
お土産は山荘特産の
ワインとさっき採ったばかりの
椎茸でした。

さて伊藤君は
勧誘魔・馬渕君に騙されて
再び山荘活動に志願
出来るでしょうか?



4月20日(日)曇・前庭



えっ!
帰っちゃったの?

僕寂しい


みんなが帰って
山荘には再び静寂が
戻りました。

森の散歩は又セブンと
2人です。
と言っても山荘主も
山荘の後片付けをしてから
帰らねばなりません。

セブン又1週間お別れ
だけど最後の
ジョックは
どの森にしようか?

セブンは視線を逸らし
哀しそうに在らぬ方を
見つめたまま
別離への
無言の抵抗を示します。
4月21日(月)晴・東の森


静寂の生命

森の生命が
生まれたばかりの
薄い萌黄の霞になって
緩やかにたなびく。

生命のいっぱい詰まった
緑の銀河のようだね。
ほら
上に伸びた萌黄は
まるで《アンドロメダの涙》
2つの樹木の萌芽が
重なり合って出来たんだ。

あの涙は8億年前に
小銀河がアンドロメダに
衝突して
出来たんだって!

筑波大・宇宙物理学の
森正夫準教授達が
最近突き止めたんだ。

セブン、森はまるで
宇宙そのものだね。


4月21日(月)晴・東の森



卯月4週・・・原始の森



最後の菜の花

中畑から見上げると
菜の花に包まれて
山荘が黄色い
スカートを穿いた様。

先週西畑の菜の花は
何とか刈り取って
有機肥料として果樹畑に
運んだがこの
中畑は未だ手付かず。

このまま待てば
菜の花の種が収穫出来るし
日本蜜蜂も
大喜びなのだが
夏の野菜達の準備に
かからねばならない。

今日でお別れ!
4月27日(日)晴・中畑



山荘の守護神

うーん、実に豊かな
完結した表情だね。

まるで山荘の
この壁に飾られるのが
前世からの宿命で
あったかのように
山荘そのものに
なりきっているね。

この仮面を求めて
カトマンズの
タメル地区を彷徨い
3年目にして
ついに手彫り職人の
店で遭遇。

あの時の静かなる
興奮が甦るよ。
参照:3週間前・4月5日の日記 4月27日(日)晴・一階テラス


闇に笑う髑髏

冠として頭に付けた
5つの髑髏に
初めて出会ったのは
22年前のブータン。

我々ブータン遠征隊を歓迎し
この仮面を被っての
マスクダンスの宴を
ブータンが開いてくれた。

我々が滞在した城(ゾン)の
中庭で繰り広げられた
ドゥルダと呼ばれる
骸骨仮面の激しい舞踏は
正に生と死
漆黒の闇と眩い光明の
幻想であった。

今、山荘の縁の下の闇に
鎮座ましまし
方舟・山荘の行方を見守る。
4月27日(日)晴・一階テラス下


君子蘭最後の艶

アマルティア、カリスト
イオの各部屋と
この浴室に数鉢ずつ
置かれている君子蘭。

どれも1ヶ月前から
咲き競い絢爛豪華な花弁で
山荘を彩った。

山荘の旅人の心象風景に
一滴の彩を落し
咲き誇った花弁は
ある瞬間にポロリと
一瞬にして落ちてしまう。

一番遅く咲いた
浴室の花弁も落ち始めた。
咲き終わったら
鉢の土を換えてあげよう。
4月27日(日)晴・浴室



春を愛でる躑躅

切ないまでに
太陽に恋焦がれて
光に向いて傾いたまま
蓮華躑躅が咲いた。

この花を見ると
『躑躅』という決して読めない
漢字がよぎる。
敢えて読むとしたら
『テキチョク』

躑は2,3歩、歩む
躅はじっと立ち止まる。
合せると躑躅は
2,3歩、歩いてじっと
立ち止まるの意である。

何故それがツツジなのか?
実はこいつ毒種があって
羊が食べると
2,3歩、歩くと動けなくなる
のだそうな。
4月27日(日)晴・奥庭



萌芽・生命の森

慢性化した
アキレス腱鞘炎が
復活し痛みが
酷くなってきたので
のんびりセブンと森の
散策に出かけた。

「いいかいセブン
今日はいつものように
走ったりしないんだよ。
ゆっくり歩きながら
森の生き物に耳を傾けて
お話するんだ」

「僕の耳を見てごらんよ
いつだってピンと立てて
どんな小さな音だって
聞き逃さないんだよ」

「そうだったね
それじゃ今日はセブンの
耳の動きに森の音楽を
教えてもらおうかな」
4月27日(日)曇後晴・上条の森



自然倒木の昂ぶり

あれれ!
セブン約束違反だぞ。
走っちゃ駄目だって最初に
お話しただろ!

自然倒木と枯葉に
覆われた森は
猪や鹿、熊のお気に入りの
獣道が所々走っていて
セブンにとっては
音どころの話では無い。

そうだったね。
聴覚以上にセブンは嗅覚が
発達していて
1つ1つの臭いが
言語のように語りかけるのを
解読出来るんだ。

それでこの獣道は
兎、猪、鹿それとも熊?
で、何て言ってるの?
4月27日(日)曇後晴・上条の森



原始の森

ほら見てご覧よ。
此れほどまでに無数の
倒木に覆われた森は
そう、ざらにはないぜ。

累々と重なる木々の屍と
その上に
生まれたばかりの萌黄。

生と死の幻想的な
コントラストが
ぞくぞくとするような予感を
伴って何か
語りかけてこないかい?

「うん、語りかけてくる。
このまま真っ直ぐ進めば
野兎の巣穴で
左の奥に行けば
猪の風呂場に出るし・・・」

そうか、やっぱセブンには
嗅覚言語しか
解読出来ないか。


4月27日(日)曇後晴・
上条の森



一人静

森の底で
不意に灯りが灯った。

白い光の銀河が
累々と重なる木々の
屍の下から
生命の存在を
高らかに告げる。

「この花は静御前の
白拍子姿や美しい舞姿に
例えられているが
私は勝手に森の妖精だと
思っている」

誰かがそんなコメントを
HPに載せていたが
セブンもそう思うかい?
4月27日(日)曇後晴・上条の森



杉苔の園

深い森を背景に
杉苔が雄器と雌器を
無数に伸ばして
生殖のハーモニーを
奏でている。

普通の花は花弁の中に
雌蕊と雄蕊があって
生殖は容易に可能だけど
こいつは雄器と雌器が
別々なんだ。

生命の坩堝と言われる
デボン紀に栄えた土筆
同じように4億年前の
時空を引っ張って
雄と雌の意味を
問いかけているんだよ
セブン!

セブン「!!!???・・・」
やっぱセブンは
嗅覚言語か。
4月27日(日)曇後晴・上条の森



枝垂れ桜終焉

「どうだったセブン
この森
中々良かっただろう?」

「うん、気に入ったよ。
猪、鹿、兎それに
熊の臭いだってあるし
なんたって僕の大好きな
沢があって
いくらでも泳げるし」

「あーあー又
ビショビショになって
ほら枝垂れ桜が笑ってるよ」

「いくら笑われても
いいんだ。
それよりまさかもう
森の散歩は終わりだ
なんてないよね」
山荘主「!!!???・・・」
4月27日(日)曇後晴・上条の森入り口



リラの秋波

セブンの里の家と山荘を
繋ぐ小道は
春になると花々が
咲き乱れる。

今朝もリラの香りが漂い
花桃の緋が
小道に溢れる。

人口過疎になり
人影の絶えた花の小道で
珍しく里人に逢った。

「綺麗ですね。
誰がこんなに
植えたんですか?」

「今だけね。後は
お化け屋敷さ」
表情も変えずにぼっそり
老いた里人が答える。

どんなにリラに惚れ込んで
いるか隠したって駄目。
その無表情の顔に
ちゃんと書いてあるんだから。


4月27日(日)曇後晴・
里の花影道



山荘のリラ

「私も山荘に
昔から棲んでるリラよ。
て、言うかリラより
美味しい花よ。
誰だが分かる?」

さて山荘を訪れる
皆さん
何の花か分かりますか?

実は山荘主も接写した
この画像を見た時
余りにもリラに似ているので
驚いたのです。

茱萸がこんなに
心惹かれる容姿をして
秋波を送っている
なんて知らなかったのです。
4月27日(日)曇後晴・前庭



早春の訣別

菜の花を沢山抜いて
大きく成り過ぎて
開花してしまった
ほうれん草も残念だが
引き抜いて
中畑に耕運機をかける。

秋に発芽し山荘の厳しい
冬を越えた
奇跡のスーパー野菜
人参と春菊を残して
土を掘り返す。

明後日からスル海へ旅立ち
暫く山荘に来られない。
西畑に植えたトマトや
茄子、胡瓜、西瓜、メロン
オクラ、ピーマンも
水不足で枯れてしまうかな。
セブンともお別れだし・・・

きっとこの木蓮も
牡丹も帰る頃には
咲き終わっているんだ。


4月27日(日)曇後晴・
前庭




月末からパラワン島、ボルネオ島、スル諸島に囲まれたスル海まで、ちょっと出張です。
マニラからプエルトプリンセサへ飛び
そこからボルネオエクスプローラー号に乗り換えて
クルージングを開始。トゥバタハリーフでDVの予定です。


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