山荘日記

その20夏ー2007年文月

 


文月2週・・・梅雨のページェント


 





7月8日(日)晴 山荘前庭にて
萼紫陽花

ぐいと
心を鷲掴みにされる。

いつも山荘の紫陽花は
そうなのだ。
藍の美しさが
一直線に脇目も振らず
肉体に飛び込み
刺し貫き
感性を麻痺させる。

前庭の紫陽花群に
近寄るだけで
瞳は藍に
吸い寄せられ
自由を奪われる。

藍に純白が散ると
漆黒の空間が
更に闇を深める。

45億年の時空に
十数日の生命が
鮮やかに拮抗する。

零と無限に等しい対比に
何の遜色も無く
拮抗する生命が
私の肉体を刺し貫く。

あー
お前の藍には
45億年の時空を超えた
深さが
潜んでいるんだね。

時空の永遠の旅人
n次関数は
極値近傍で
最大値、最小値をとり
激しい変化をみせるが
残りの無限の時間を
漆黒の闇に奪われる。

そう例えば
y = x2を考えてごらん。
原点近傍で最小値をとり
無限の過去から一心に
減少しつつ極値を目指し
一瞬後に増加に転じ
未来永劫の闇へと
消え去ってしまう。

絶望的な孤独を
引っさげて生命を誇示する
藍だからこそ
肉体なんか一瞬にして
刺し貫くんだ。



紫陽花幻想


トパアズいろの
香気が立つ
その数滴の
天のものなるレモンの
汁は
ぱっとあなたの意識を
正常にした。


トパアズいろでなく
アントシアニンの藍なのに
智恵子はきっと
この紫陽花を目にして
狂気の彷徨を
中断したのであろう。
智恵子がそんなにも
待っていたのは
レモンではなく
この瞬間の
紫陽花だったのだ。

何の根拠も無く
ふと、そう思った。

冥界の深い闇を
従えて
蒼い宇宙の誕生を
静かに告げる紫陽花は
哀しいまでに
心をうつ。

智恵子の紫陽花の絵は
神戸文化ホールの
壁画となって
僅かに『根拠』の
手ががりらしきものを
残している。
何故
山荘の紫陽花は
智恵子の狂気を
孕んでいるのか
私には解らない。


いや、そうではない。
潜在意識の彼方で
気づいているのだろう。

この藍に囚われた
山荘主は
囚われた刹那に
智恵子となり
檸檬は紫陽花に変容し


あなたはそんなにも
紫陽花を待っていた。


のだと。
7月8日(日)晴 山荘前庭にて


オーロラ山荘

山荘が完成して
8年目の2000年3月
フェアバンクスへ
オーロラを訪ねる旅に出た。

俄かマッシャーとなって
犬橇を走らせ
連日オーロラを追った。
それ以来オーロラの
虜になった。

そのオーロラが山荘で
見られる日が
来るなんて考えても
みなかった。

オーロラ発生器が
新聞紙上に載った5年前
山荘主は即入手。


寝室に満つ光


高速の電子が寝室の
酸素原子や窒素原子に
激しく衝突する。

激突された原子は
電子のエネルギーを受け
励起し不安定になり
0.7秒後に光として
余分なエネルギーを放つ。

それがかくも神秘的
幻想的なアートを
地球の極地に描くのだ。

山荘主の寝室では
高速電子のかわり
発光ダイオードをつかって
オーロラを再現。
ベッドに置かれた
発生器が回転しながら
天井に向かって
ダイオードの光を投げる。

光は次々と形を変え
3次元造形を展開しつつ
激しく色彩をくねらせる。

このオーロラに包まれ
オーボエを聴きながら
山荘主は
異次元の眠りに就く。

とは言え
ワインが効いているので
いつも数分で
山荘主は白川夜船。
オーロラもオーボエも
唯虚しく寝室の天空を
流れるのみ。
7月8日(日)夜 寝室にて



ほたるの巻
源氏物語 第二十五帖 


夕顔の娘・玉蔓の香りが
すーっと流れた。

そうだ未だ源氏蛍が
飛んでいるかもしれない。
急いでバイクに跨り
水神池の先の小川まで
突っ走る。

居た居た!
光源氏が薄絹に包んで
放った蛍が
優雅に舞っている。

雌を追い求めて
唯ひたすらに輝く
源氏蛍は正しく
光源氏そのもの。

光生殖


蝶のDNAは
色彩と文様を雄に与え
その美しさを手段にし
大いに生殖せよと
命を下した。

鳥のDNAは
色彩と文様だけでなく
音楽も取り入れ
雌との交尾を促した。

絵画も音楽も
小さな生命達の生殖手段。
芸術の根源は
生殖そのものなのだ。

蛍や深海に棲む生命は
新たなる芸術を生み出した。
彼らは生殖手段として
光源氏のように
オーロラの光を
手に入れたのだ。
7月8日(日)夜 山荘下水田にて
僅か10歳にして継母の藤壺と性交し継母を孕ませ
罪の子を産ませる。
このスタートからして徒ならぬDNAの陰謀を予感させるが
その後の光源氏の生殖活動は色彩や文様、音楽を手段とするだけでは
決して到達できぬ熾烈を極めた究極の性域に達する。
継母の姪に目をかけ未亡人の六条御息所、人妻の空蝉、その義理の娘
と交接し、更には弟の小君との男色関係を続け
光源氏は光を明滅させながら性の深海を漂う。
源氏物語に隠されたもう1つのテーマは光源氏の《光生殖》なのだ。



蛍の邑

源氏蛍の生命は短い。
山荘周辺の源氏は
毎年6月20日前後
10日間程光を乱舞させ
その後、姿を消し
平家蛍に代わる。

源氏蛍

青森〜九州まで
流水域に生息。
ヘイケボタルと並んで、
日本でよく見られます。
名前の由来は
諸説ありますが、
ゲンジのほうが
ヘイケよりも
強く光ることから、
繁栄する源氏と
没落する平家に
なぞらえたという
説が有力。

約15〜17mm
胸の部分が
淡い紅色で、
黒い十字紋がある
5月〜7月中頃
オスは飛びながら
2〜4秒ごとに点滅。
メスはほとんど飛ばず
光も弱い
7月9日(月)曇 竹森川にて



蕨にょきり

たった2週間の不在だと
言うのに
これこの通り。

DV出発直前に刈った芝は
ふさふさと繁り
蕨がにょきにょきと
あちこちで飛び出し我が物顔。

果樹畑、下の中畑、西畑等
見るのも恐ろしい。
が、
見ないわけにはいかない。
覗いてみると
雑草の繁茂も然ることながら
鹿の足跡、糞が
畑を蹂躙

枝豆、唐黍、南瓜の葉が
食い荒らされ悲惨!
7月7日(土)晴 中庭にて



長胡麻斑髪切虫

ばら科、くわ科、ぶな科
みかん科、かえで科
やなぎ科などなんでも
食害する。
  ギリギリと鳴く。
庭木の大敵
  永遠の敵だ。
成虫は7〜8月に出現
  見つけたらすぐ殺す事。
放置すると
あとで痛い目に合う。

思わず笑ってしまった。
これをHPに載せた
編集氏の顔が浮かぶ。
きっと酷い目に
あったのだろう。
不在だった山荘の庭でも
永遠の敵発見!
青花むぐり

太陽を反射し
甲冑をキラキラさせて
黄金虫も庭を闊歩する。

しかしこいつは花に潜って
花粉を食うだけで
髪切虫のように庭木を
枯らしたりはしない。
まあ
永遠の敵も解放したので
こいつも
自由にさせとこう。
7月7日(土)晴 中庭にて




枇杷芳香

仄かな
甘い香り!
枇杷がやっと実を付けた。
不在でも枇杷は
美味しそうに
実ってくれたんだ。

「随分、能天気ね!
いつ髪切虫に
食われてしまうか
戦々恐々としてるのに。
害虫退治の農薬も
撒いてくれないし
捉まえた害虫も
逃がしてしまうし。
それでいて豊かな
実りだけは期待するの?」
キウイ坊主

「まあ、まあ、そう
熱り立たないで!
あたしなんか今年は
受粉さえしてもらえず
蝶や色々な昆虫が来て
花粉を運んでくれたり
風さんが仲人してくれたり
そりゃ寂しいもんだったよ」


『山荘主の弾劾裁判を
日本国憲法第64条によって
行うべし!
罪状は
山荘に遍く存在する生命に
対しての怠慢』
7月8日(日) 前庭・西畑にて



茄子尽くし

あれれ!

ちょっと待ってくれよ。
遍くというと
永遠の敵・髪切虫も
入るから山荘主は
罪を免れてしまうぞ。

問題は
遍く存在する生命を
認識しながら尚
豊穣を期待する矛盾に
気づかぬ
山荘主の無知にある。

頭を抱えて
果樹の論争から逃げて
畑に降りると
野菜がどっさり。

胡瓜シーフード

茄子の塩もみサラダ
焼き茄子、煮物と
どう調理しても採りたての
茄子は美味しい。

茄子の隣で胡瓜が
ぶらぶら。
これは薄切りにして
刺身用の海老を剥いて
レタスと一緒にして
シーフードサラダにしよう。

茄子と胡瓜がチクリ。
「たくさんの虫が食べに
来たけど山荘主さんの
手抜き有機農法の
おかげでどうにか
ここまで成長致しました。
無農薬の美味しさを
堪能してね」

男爵ごろり

中畑のメークインが
収穫期間近になっても
大きくならない。
そうだ追い肥をやるのを
すっかり忘れていた。

収穫をもう少し伸ばして
馬鈴薯三昧の楽しみは
お預けにしよう。

玄関のチャイムが鳴った。
森の道の終点にある
山荘の訪問人は
極めて稀である。

村の農夫がどっさり
男爵を届けてくれたのだ。
さては貧弱なな馬鈴薯畑を
見られてしまったか?
7月8日(日) 奥庭にて





文月3週・・・瞬間最大風速40m(東京八丈島)
             マグニチュード6.8
(新潟中越沖地震)



メークイン収穫

一週間遅らせて収穫。
大きな細長い
メークインが土の中から
次々に出てくる。
大きなのは17cmもある。
大きさごとに仕分け。
さあ!食べるぞ。

薄皮が捲れ上がり
粉を吹いたように澱粉質が
弾けほくほくなのだ。

一目で
尋常な芋でないことを
示している。
圧力釜からもどかしく
大皿に移し食卓に乗せ
ワインの横に置く。

美味しくて、美味しくて
こんな馬鈴薯
食べた事ありません!
7月16日(月) 奥庭にて



唯一の李

昨秋
大きくなり過ぎた果樹を
思い切って
切り詰めたので
李、林檎、洋梨いずれも
結実せず
寂しい夏になった。

良く見たら李の樹陰に
赤い実が1つ。
貴重な唯1つの李を
枇杷と一緒に
朝食のテーブルに乗せる。

枇杷は上品な香りと
驚く程の甘さ。
残念ながら李は
例年の美味しさは
何処へやら。
山荘兜虫全滅
それでも林檎は
幾つか実を付けた。

朝トレで見つけた
兜虫の雌を果樹畑に
放してやった。

例年は山荘のあちこちで
姿を見かける兜虫も
今年は全く見かけない。

兜の幼虫を育む
西畑のチップ山に
異変が起きたのだ。
枯葉を集めその上に
発酵鶏糞をばら撒き
更に枯葉を厚く敷いたら
幼虫が黒く変色し
全滅してしまったのだ。
この雌の兜に
来年を期待しよう。
7月15日(日) 果樹畑にて



畑のアート

あんまり面白いので
何気なく切り株に
乗せてみた。
そしたら急に
お喋りを始めた。

『山荘主は
メークインだ、茄子だ
胡瓜だ果樹だと騒いで
私をシカトしてるけど
いつもは大根葉が
一番美味しいと
言ってるじゃない。
偶には私も話題にしてよ』

解ったよ。
だからこそこうして
特等席に飾って
あげたんだよ。
7月15日(日) 居間にて



白素麺茸

小倉山の稜線で
白素麺茸と再会。
この得体の知れぬ茸の
名を求めて図鑑巡りを
したのは1年前。

名前さえ解れば後は
コンピューターの出番。
幾らでも情報は集まる。
で早速PCスイッチオン。

驚いた!
昨年載せた当山荘日記の
白素麺茸が
yahooのHPに
『山荘3』として
7番目にアップされている。

しかしこのページは長く
茸の画像に
辿り着くのは大変!
鱒 茸
サーモンピンクに
どっきり!
その名も鱒茸。

誰しもがこの茸を
目にするとサーモンを
連想するのであろう。

白素麺茸が食用なのは
理解できるが
このけばけばしい色の
茸が食べられるとは驚き。

『猿の腰掛』の仲間は
漢方薬として
よく使われるが
薬効果もあるのだろうか?
7月16日(月) 小倉山にて



癌患者の死

死者3人、行方不明
負傷者多数を出し
大型台風4号は15日
東の海上に去った。

山荘池は台風で増水し濁り
癌患者が死んだ。
大きな癌腫瘍が
刮げ落ち紫陽花の
花影に永眠した。

癌の住人達は
何処へ去ったのか?
自らの住まう星の死を知り
赤い星を捨て
増水し濁った水に乗って
新たな星を求める
旅に出たのか?

死んだ星を弔ってやろう。
7月16日(月) 山荘池にて



七つの子で-す

未だ目が見えないんです。
鳴き声も出ないんです。
生まれたばかり。
でも口だけは
目立つように大きくて
黄色くて。

お母さんとお父さんが
この大きな口に
餌を運んでくれるんです。

申し遅れましたが私達
3週間前にこのHPに
卵で登場した
四十雀でーす。
今度こそ何とか
此処まで育ちました。
7つの子
宜しく!
テラスで息を潜めて
ビアを傾ける。

ほんの少しの動きにも
警戒して親鳥は
巣箱に入らず
餌を銜えたままウロウロ。

沙羅に架けられた巣箱は
テラスからほんの
数メートルしか離れていない。
ビアを呑んだ途端
親鳥と目が合ってしまう。

ごめんよ。
明日は東京に帰るから
直ぐ静かになるよ。
来週末は巣立ってしまって
もう逢えないかもね。
7月16日(月) 前庭にて



又の名はペンキ屋

海水温が30度を超えると
台風はそのエネルギーを
吸い込んで発達する。
その時期は例年9月。

しかし今年は
『ラニーニャ現象』が発生し
早くも台風は大型化。
梅雨前線とデュエットし
3日間も連続して
大雨が降り続いた。

山荘で雨が3日も
続くなんてとても珍しい。
これではテラスが
腐ってしまうと、傷つき
露出した木目が訴える。

仕方なく急遽
ペンキ屋になることに決定。
床、フェンス、作品棚と
塗る場所はかなり広い。

そうそう、ペンキは
駄目なんだよ。
木は呼吸してるから
呼吸可能なオイルステンを
塗るんだ。

7月16日(月) テラスにて



あまるてあ

アマルテアと
名付けた山荘の寝室。
山荘主が35歳になるまで
アマルテア
木星に最も近い衛星。

そのアマルテアから
木星を観ることが
山荘主の
決して叶わぬ夢であった。

叶わぬ夢の実現は
木星とアマルテアの
創造にあった。
1994年山荘主は森の中に
木星を建て
アマルテアをセットした。
今、夢の映像が光を放つ。

アマルテアから
木星を初めて見たのは
ガリレオ探査機。

1995年から7年間
木星軌道に棲み付いた
ガリレオはアマルへの
フライバイを行い
精密な画像を地球に送った。

その画像を忠実に辿り
大型油絵にして
山荘寝室の壁面に
セットしたのである。

アマルの2つの岩山と
木星の大赤斑に
オーロラを放ったら
夢の映像が不意に出現。
余りにもリアルな臨場感に
息を呑む。
7月16日(月) アマルテアにて



燃ゆる大赤斑

赤いオーロラが
大赤斑を包み
壁面全体に木星を映す。
アマルの下方にまで木星の
巨大な姿態が蠢く。

《木星は生きている》
強烈な実感!
どうして今まで
生きてることに
気がつかなかったのか?
その愚かさに
思わず舌打ちする。

A・C・クラークが木星に
モノリスを置いた映像が
鮮明に甦る。
『2001年宇宙の旅』が
再び始まったのだ。

静かに満ちてくる
白きカオス。
方舟となって山荘は
認識の彼方へ
旅立たねばならない。

ひたひたと
打ち寄せて来る
白きカオスの気配を
濃厚に感じる。

山荘眼下に拡がる雲海は
単なるHOの分子の
凝集ではない。
ある意思の表出なのだ。

白きカオスが
2つの岩山の山巓を覆う。
岩山は山荘となり
カオスの意思に呑み込まれ
やがて姿を失う。
その前に方舟となって
旅立たねばならない。
7月16日(月) アマルテアにて




山荘主モノローグ


『ラニーニャ現象』は大型台風4号を育み、7月15日午前に東京八丈島で
観測史上初めての瞬間最大風速40.3mを記録。
沖縄から東北にまで被害は及び、死者3名、怪我人は70人を超え29棟が半全壊した。
その翌16日午前10時13分にマグニチュード6.8の強烈なパンチを放って
柏崎沖の日本海海底の大陸側プレートが動いた。
死者10人、負傷者1308人、全壊家屋944棟と被害は台風4号を遥かに上回った。

ラニーニャ現象もプレートの動きもガイヤにとっては、ほんの僅かな欠伸にも及ばぬ生理現象。
ガイヤはやがて目覚め欠伸後に動き出すのだ。
木星の大赤斑のような数百年も活動する超強風の渦を発生させ、プレートを激しく動かし
大気温をマイナスからプラス数百度にまで激変させ
ガイヤは咆哮するのだ。

ガイヤの激しい活動も50億年後には、老いた太陽の膨張により呑み込まれ
やがてガイヤそのものが失われてしまう。
ガイヤの咆哮に耐え赤色巨星を目にする前に、ガイヤの知的生命は方舟を創って
新たなる旅に出発出来るのだろうか?




文月4週・・・太陽系外の惑星に水の存在



Oの存在
太陽系外の惑星

降り続いた雨が
大きな竹煮草の葉に
沢山の銀河を産んだ。

未明の微かな光を
孕んで
銀河は生命を夢見る。

子狐座の近くで
2年前に見つかった惑星
HD189733b
水が在るんだって。

欧州宇宙機関と米国等の
国際チームが
7月12日に発表したんだ。
7月24日(火) 小倉山の森にて



一条の光

惑星と水は
勿論生命のキーワード。

国際チームが
英科学誌ネイチャー
最新号に
載せた論文によると
地球から63光年離れた
その星は
木星よりやや大きく
ガスで出来た惑星との事。
初めての太陽系外での
水の発見に興奮!。

森に差し込む
一条の光がNASAの
スピッツァー宇宙望遠鏡を
連想させる。

国際チームに集積した
頭脳は
こんな風にして頭脳を
光に代えて
スピッツァー宇宙望遠鏡で
63光年の彼方に
水を見出したんだ。

森の闇を
切り裂く光が
無数の生命の存在を
明らかにし
光の像として認識体に
伝えるように
光はいつだって無限の
情報を流しているんだ。

その頭脳はね
水分子が
特定の波長の赤外線を
吸収する事を
利用したんだよ。
7月24日(火) 小倉山の森にて
そう、一致したんだ。
その惑星も同じ波長の
赤外線を
吸収してたんだって。



生命誕生

深い闇の中から
生命が
静かに姿を現す。

惑星と水分子が
太陽系の第3軌道に
放たれてから
45億年。

こんな風にして
生命は徐々に姿を
成してきたんだね。
時空の果実

何とつぶらな瞳!
惑星と水分子の
45億年の時空の果実。
ようこそ地球の森へ。

総てがマシュマロのように
柔らかく透明感に
満ちていて
生まれたての香りがするね。

この後2週間程
森の中で詩を歌い続け
生殖し
枯れ木に産卵するんだ。

翌年の梅雨の頃
孵化した幼虫は木から落下し
長ーい素数年の地下生活に
入るんだね。
7月24日(火) 小倉山の森にて



満ちてくる光

ゆっくりと森に光が
満ちてくる。
さあ!
飛んでお行き。
地下生活に決別し
生命の詩を謳っておいで。

7年、13年、17年。
蝉が地中で過ごす時間。

北米の北に棲息する
17年蝉は
17年毎に一夜にして
大量発生し
その数1エーカーに
150万匹。
つまり1平方mにすると
何と1223匹。

蝉は公約数の無い素数に
生命の存続を込めて
生殖を託す。

蝉は素数がお好き
光が森を満たすと
先ず蜩(ひぐらし)
音合わせの一声を放つ。

哀しい透き通った声が
森に木魂し
朝の森の
コンサート開始を告げる。

生命の音色に身を委ね
山荘主は
嘗ての生徒に語りかける。

例えば6と9の最小公倍数は
54ではなくて18だね。
3と言う公約数が無ければ
6年と9年の周期蝉が
同時に発生するのは54年毎。
でも公約数3があるから
実際は18年で同時発生。

ほら13と17の素数では
公約数が無いから
最小公倍数は221だろ。
つまり221年経たないと
同時発生しないんだ。
解ったかな?
7月24日(火) 小倉山の森にて



卵 茸

朝トレを終えて
椎茸の森を登ると
足元に幾つもの鮮やかな紅。

根元に白い殻が
着いてるのが解るかい?
最初はその卵のような
白い殻に包まれていて
『あれ!卵が
落ちている』と
勘違いしてしまう程。

卵の殻を破って
出てくる最初の紅の美しさは
天下一品だね。
思わず引き込まれて
暫く動けないくらい。
午後になり
どうしたかな?と思い
覗いてみたら
もう笠を開いていたんだ。
紅から黄色へと
色変わりを始めていたよ。

毒々しいまでの紅で
よく紅天狗茸と間違えられる。
とても食べられるとは
思えないけど
こいつ滅法旨いらしい。

オリーブオイル・ソテー
なんて書いてあるけど
試してみる気はしないね。
7月24日(火) 椎茸の森にて



休暇の芳香

奥庭の百合
マルコポーロが咲いて
もう1ヶ月も経つのに
山百合が未だ開かない。

この強烈濃厚な香りが
流れると
山荘の時間は休暇モード。

こいつを見つけないと
逆に夏休みは
やって来ない気がする。

朝トレのコースを変えて
山百合の香りを追う。
やっと見つけた。

球根が美味なので
鹿、猪に食われ絶滅寸前。
逢坂草
節黒仙翁
フシグロセンノウと読む。

夏山でこれを見つけると
何故かいつも
ちょっと胸がときめく。

この花の別名が
オオサカソウであることに
不満を感じていた。
大阪草だと勘違い
していたのだ。
本当は逢坂草だと知って
ほっと安心した。

京都と津の境にある
逢坂山に咲いているので
この名が付いたとか。
愛しい人との逢引の山に
咲く花なんだね。
7月24日(火) 東の森にて



合歓の乱れ

合歓の花を見ると
熱帯の火炎樹を想い
火炎樹の赤を目にすると
山荘の合歓を想う。

ずーっと前から
山荘の森で
咲き誇っているのに
中々近くで見られない。
森のてっぺんで
花開くので
カメラが届かないのだ。

でも
もう花が終わってしまう。
凛とした直線が
こんなに乱れてしまって。
のうぜん蔓
凌霄花・・・
リョウショウカ
とでも読むのであろうか?
これをノウゼンカズラと
読ませるのは無理。

霄はミゾレや
太陽の周りに現れる雲を
意味し更に天空を表す。


つまり天空を超えて
遥かな高みへと
昇り続ける花を
意味するのだろうか?

山荘デビュー2年目の
ニューフェースです。
宜しく!
7月24日(火) 前庭にて



DNAは神だ!

惑星の卵
時空の剣で
3つに断ち切り
内部に潜む知的生命の
カオスを見たいとの
強烈な衝動。


惑星と水分子の
45億年の時空の果実を
見たいと
心から願ったのに
四十雀の卵は
野生動物に奪われ
カオスは
減数分裂することなく
消滅してしまった6月25日

あれから1ヶ月
別の雛が育ちました。
今週はもう巣立ってしまって
逢えないと諦めていたけど
未だ巣箱に居ました。

目もしっかり開いて
羽だってこの通り。
脚もしっかり大地を踏みしめて
いるでしょう。
後は飛び立つばかり。

でも巣箱がおんぼろで
蓋が腐っていて
簡単に開いてしまいそうで
気が気でないんだよ。
1日も早く巣立っておくれ。

以前にも
飛び立つ寸前の雛が
壊れた蓋から侵入した蛇に
食われてしまった事が
あったけど今度こそ
無事巣立っておくれ。

7つの子の中で
1番大きなお兄さんです。
あれっ!お姉さんかも。
元気一杯で
盛んに飛ぶ練習をしています。

水分子を含んだ
原始惑星から
こんなにも精巧な生命が
産み出されるんだね。

君が卵の中で最初の
減数分裂を始めた時
山荘主は
こんな風にメモしてるよ。

時空の剣で断ち切った
ゲル状カオスが
激しく蠢き鳴り響き
複雑な形状の生命を
形成し始めたのだ。
7月24日(火) 前庭にて




猛暑の夏

先週の八丈島での
観測史上初の風速40m
どころの話ではない。

東欧ブルガリア中部では
この日・7月24日
120年の観測史上初の
45.6度の
最高気温を記録し
死者35人に達したと報道。
いよいよラニーニャが
猛威を振るいだした。


45.6度といえば
体温より10度近くも高い。
嘗てヒマラヤキャラバンの
砂漠で
体温以上の猛暑の
経験があるが
触れる物総てが熱いのだ。

この日山荘も31度まで
7月24日(火) 奥庭にて
気温上昇したが
芝生と森が熱気を吸収し
風を流してくれ爽やか。

大紋鼈甲

芝刈りの終わった芝生で
何やら蠢く。
オオモンベッコウ
自分より遥かに大きい
硫黄走り蜘蛛を捕らえ
巣に運ぼうとしているのだ。

どうしたらこんな大蜘蛛を
捕らえられるか?
1人で食っちまうのか?
疑問は尽きない。

こいつの正体は麻酔屋。
尻の強烈な麻酔針を
打ち込んで眠らせる。
蜘蛛の体内に卵を産みつけ
そいつを巣穴に埋めて
土を被せ
幼虫の餌にするのだ。

如何にも殺し屋という
風情でカメラを警戒して
威喝するのである。

ゲル状カオスには
君たちもプログラムされて
いたんだね。



オーロラ・イオ

イオの部屋には
イオから観た木星の
大型油絵が懸かっている。

高さ100kmに及ぶ
硫黄を噴出する火山が
木星の大赤斑を
ダイナミックに断ち切る。

ここに先週のオーロラを
照射したらどうなるか?
『2001年宇宙の旅』の
試みは
アマルテアからイオへ。

静かに静かに
感動の波が
押し寄せてくる。
今確かにイオから木星を
私は観ているのだ。
イオ幻想
ガイヤの知的生命は
方舟を創って
新たなる旅に
出発出来るのだろうか?


方舟の寄港惑星を
捜し求めていた知的存在は
最初の第一候補を
発表した。

その原始惑星の名は
子狐座のHD189733b。
方舟打ち上げは
1万年後を予定。

但しそれまでにガイヤが
激しい活動を開始せず
生命の存在を
許せばの話である。
7月24日(火) イオにて




週末からパプアニューギニアまで、ちょっと出張です。
      ソロモン海とビスマーク海を目の前にしたマダンの珊瑚礁を巡ります。



Index Next