その40春ー2009年弥生
3月2週・・・・山荘を駆け巡る愉老
3月14日(土)雨後晴 居間 | |
潮騒のクライマー バリカサグ島の骨貝 無数のバラクーダや鯵の描く トルネード(大旋回)に 酔い痴れて船に上がると 島のおばちゃん達が お店を広げて待っていた。 ・ 見たことの無い程細く繊細な 美しい棘を輝かせ 骨貝が囁く。 《どこか遠くへ連れてって!》 ・ 確かあなたは英名で ヴィーナスの櫛(Venus's Comb)と 呼ばれる海底の貴婦人。 それでは山荘に 連れていってあげよう。 ・ 何処に飾って欲しいんだい? えっ、ヒマラヤの石に 登りたいって! ・ |
1981年に初登頂したムスターグ北峰(7427m)の石には 微かに海の青が混じっているから 此処でどうだい? ・ うん、中々の名クライマー。 |
3月14日(土)雨後晴 居間 | |
明日は山荘会員やおばあちゃんや冨美代さんも来るので このスイート・K2珊瑚バージョンを 御馳走してあげよう。 幸子さんにもマンゴワイン漬を届けてあげよう。 |
マンゴのワイン漬 ボホールDV土産 さてもう1つの珊瑚海の お土産・マンゴは 何をして欲しいんだい? ・ そうだ山荘ワインに 漬けてあげよう。 熱帯の甘酸っぱさに 山荘の香気を加えるんだ。 それを山荘スイート・K2の トッピングにしよう。 ・ 薩摩芋を圧力釜で茹でて 裏漉ししバターと パプアニューギニアの 黒ラム(Dark Rum)を 加え、うーんいい香り。 ・ 甘さを抑えるには 生クリームよりヨーグルトを 使ってその上に ワイン漬マンゴを乗せてと さあ、これでどうだ。 ・ |
芽吹き・馬鈴薯 倉庫での発芽 ログテラスの下に 造った新倉庫への荷の移動が 一段落し馬鈴薯の籠を 覗いてみると どの芋も青い芽を出して 《早く植えて》と訴える。 ・ 忙しくて畑まで 手が回らずついつい放って おいたメークインも これ以上待たせるわけには いかない。 ・ 久しぶりに大地が 凍りつく寒い朝になったが 山荘会員に早起きして もらって朝トレーニング前に 畑に繰り出そう。 |
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3月15日(日)晴 西畑 |
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凍った土の草取り 朝6時起床の仕事 村上映子 早朝の凛と この瞬間不意に |
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春一番の植え付け メークイン種芋 朝の小さな流れのほとり。 |
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やっと散歩だぜ 待ち草臥れた2頭 スペアリブの残りの骨が お気に入りで あの硬い骨をがりがりと 噛み砕いて食べてしまう。 ・ 昨夜もスペアリブを与えたら 悠絽が犬小屋の下に 1本目を隠して 直ぐ戻り2本目を狙う。 ・ 舞瑠は1本目に夢中で 食べ終わるまでは 2本目の存在に気がつかない。 ・ 同時に別の器で与える 食事も悠絽は直ぐ 舞瑠の器に侵入する。 でも決して舞瑠は 逆らいはせず悠絽に譲る。 ・ だが舞瑠が譲らないものがある。 散歩の先頭である。 少しでも悠絽が先に出ると 俊敏に疾駆し トップに躍り出るのだ。 あれ!悠絽が先に出たぞ。 さてどうする? |
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3月15日(日)晴 座禅草の森 | |
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老いは愉し・T お婆ちゃん来る 山荘にも老いがやって来た。 15年目の定期点検の 結果報告書を携えて 大和ハウススタッフが来訪。 ・ マンゴワイン漬の スイート・K2を賞味しつつ スタッフが資料を示す。 構造、外壁、屋根、床下、水周り 全てが完璧で 修理すべき箇所は無し。 ・ そんなに誉めて ゴマすっても駄目。 この特性スイートは 5千円だよ。 と言ったらスタッフの笑顔が 突然引き攣った。 ・ どうも完璧なのは 本当らしい。 つまり老いてもケアさえ しっかりすれば どうやらいつまでも新築 に近い状態が保てるらしい。 さて人間はどうなのだろう? ・ |
88歳になったおばあちゃんを筆頭に 山荘主ともども些かくたびれた愉快な活発人間が 座禅草を観に集まったので観察してみよう。 |
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お得意Vサイン 老いは愉し・U 観察その1 大正ロマンを描いた画家 竹久夢二の《永遠の恋人》と 言われた彦乃の妹で 今年88歳のおばあちゃんは いつもの笑顔でVサイン。 ・ 現代女性文化研究所の理事で 夢二と彦乃の 資料整理に明け暮れ 3部屋に溢れる資料に 埋もれて暮す。 88歳でも ご覧の通り元気もりもり。 ・ 観察その2 ちょっと老いた演出も 偶には必要と 朝食後の紅茶に悪戯を 仕掛けた犯人も どうやらこの中に混じって 居るらしいのだ。 ・ テラス卓に乗せられた 大量の濡れた紅茶の葉に 驚いたのは座禅草の森から 山荘に戻った時である。 |
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3月15日(日)晴 座禅草の森 | |
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舞瑠のキッス 老いは愉し・V どうやら紅茶の葉を 干しているようだ。 葉を入れたサーバーに湯を 注がず紅茶缶に 湯を注いでしまったらしい。 そこで山荘主の反応を 試みているのだろうか? ・ と言うのはこの紅茶は 唯の紅茶ではないのだ。 以前はカトマンズで買った ダージリン茶を 飲んでいたがどうも あの人工的な香りに 辟易した山荘主。 ・ 探しに探して やっとボルネオ・サバ州で 見つけた お気に入りのサバティー。 Mtキナバルの山麓で 採れた紅茶さ。 ・ |
大袋で5本も纏めてコタキナバルにて購入。 分缶して大切に飲んできたその紅茶の最後の1缶に 湯を入れて葉を全滅させたらさて 山荘主はどう反応する? ・ その悪戯を仕掛けたのは誰か舞瑠、探しておくれ。 おばあちゃんにキスしても駄目だね。 その時おばあちゃんは居間に 居なかったから違うよ。 |
3月14日(土)雨後晴 居間 | |
・ だいたい老い、老いと言うけど単なるミスで 老いとは関係ないかも知れないし。 そう言って老いから逃れようとするのは老いの特徴さ。 かと言って何でも老いのせいにするのも老いの兆候なんだよ。 ・ 《老いは愉し》とばかり疑惑は山荘を駆け巡る。 塩っぱくて食べられないパンと濡れてしまって使えない紅茶作品を 前にして15年目の定期点検が必要なのは 山荘ではなくて人間かもねと、しみじみ感じたりしては 老いのエキスパートにはなれないな。 老いの作品を山のように積み上げて大いに老いを愉しむべし。 |
老いの作品か? 老いは愉し・W 観察その3 悪戯は実は前夜から 既に開始されていたのだ。 ・ ワインの栓を開け 晩餐を始める6時30分に 合わせて山荘産の 人参パンの仕上げをセット。 ・ 炊き立てのほかほかの パンと山荘ワインは 最高の組み合わせなのだ。 ・ ところがパン焼き器を 開けて吃驚。 この通り全く発酵してない カチカチのパンが・・・ 食べてみると 酷く塩っぱくて食べられない。 ・ パンを仕込んだ犯人も 老いたふりをして さり気無く砂糖の代わり たっぷり塩を入れ 山荘主の反応を愉しんで いるらしいのだ。 ・ ちょっと待って! まるで山荘主は 犯人では無くて被害者を 装っているけど 一番怪しいのは山荘主かも。 |
三椏の開花 観てください。 あの日のミツマタの花が やっと開きました。 4つの黄色い花弁が 優しく優しく花心を包んで 光に満ちています。 ・ 2頭の犬と3人の人間だけが この一瞬の 光に逢えたんです。 ・ このさり気無い一瞬に 逢うために 激しい雨と風の中を敢えて 遠い地から岩本さんは やってきたんですね。 ・ そんな一瞬が山荘には 幾つもあって その愛おしさが見えると 山荘から離れられなく なるんです。 ・ そのことを岩本さんは 誰よりも良く 知っているんですね。 |
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あれ!どうしたの? 必死で招くヒヨドリ 目は少しも 怯えていません。 体の何処にも傷らしき物は ありません。 ・ それなのにじっと動かず 抱かれるのを 待っているようなのです。 ・ そっと両手で包み込むと 目は確かに何かを 伝えようとしています。 ・ 山荘には沢山の野鳥が やって来ますが 決して近づくことはありません。 ましてやこんな風に 人が来ても動かないなんて あり得ません。 ・ 何を伝えようとしてるの? |
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3月15日(日)晴 前庭 | |
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飛び去る鵯 手のひらで包むと 高い体温を伝える羽の中で 強く高い心臓の音が とくとくと響いています。 ・ 暫くして芝生の上に 置きました。 ゆっくり立ち上がり じっと私の目を覗きこみ やはり何かを 伝えようとしています。 ・ でも言葉が解りません。 さあ、舞瑠や悠絽に 見つからない内に 飛んでおいき。 ・ すると想いが通じたのか 沙羅の木に羽ばたき 2度振り返り 山荘から飛び立ちました。 ・ もしかすると珊瑚海の 骨貝のように 《どこか遠くへ連れてって!》 と言ってたのかな? |
そう言えば確かに山荘主はたくさんの人の願いを聴き入れて いつも《どこか遠くへ》連れて行ってました。 て、言うか山荘主の強烈な願いに人々を巻き込んで どちらかと言えば 無理矢理連れて行ったのでしたかね。 ・ カラコルムやインドヒマラヤ、天山山脈、アフガニスタンや チベット、南米アンデスの峰々やアマゾン、アラスカ、アフリカの キリマンジャロ更には宮澤賢治の世界や珊瑚海の中まで。 ・ きっとそのことを知ってヒヨドリは何処かへ連れて行って もらえると思って山荘の庭で待っていたんだね。 でもどうして、そんなことをこのヒヨドリは知っていたんだろう? ヒヨドリさん、いったい誰に聴いたんだい? |
3月3週・・・・夜明けの疾走
夜明けの疾走 3月23日(月)晴 座禅峠 絶望から隔離された安住の地を投げ捨てなければ 夜明けの光に逢うことは出来ない。 さあ舞瑠、悠絽、闇と凍てついた大気を劈いて山稜の彼方へ疾走しよう。 |
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森の夜明け 漆黒の夢の中で 唇を重ねながらスラムを 走り続ける。 ・ 甘い唾液が一条 暗渠から溢れ出た汚水の 微かな反射光を受けて 唇を走る。 ・ 甘い唾液は例えば シューベルトの弦楽四重奏 「死と乙女」であり フランス印象派 P・A・ルノワールの 《眠る浴女》でもあり 子宮と繋がる臍の緒であり 具体的に 若い女の印象でありながら 茫漠として 具象を超えているのだ。 ・ そんな漆黒の夢を蹴破って 迎える森の夜明けの なんと荘厳であることか! |
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神々の払暁 座禅峠を超えて 山荘テラスの 神々の仮面を 闇から浮かび上がらせる 払暁の光。 ・ すっかり塗料が剥げて 長き星霜を物語る 右下のチベット仮面。 ・ 仮面の背面を見せて 雪富士と正面に向き合う 中米コスタリカの アステカ仮面。 ・ 右目と額の慧眼を光らせ 口を開き 新装テラスを見下ろす ネパール仮面。 ・ 3つの仮面に チベット高原のヤクと雪富士が 加わり新テラスも又 神々の荘厳な朝を迎える。 |
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疾風の舞瑠 闇の残る森を衝いて 荒い息を吐きながら2頭が 風を切って走る。 ・ いつもは野生動物の匂いを 追って藪や枯葉に 突っ込み寄り道する2頭が 脇目も振らずに 時にはバイクを強く曳いて 唯ひたすらに疾駆する。 ・ ガラパゴスの島で傷めた 右膝の半月板が 3ヶ月を経ても痛みが取れず 山荘主は走行禁止。 ・ コンドロイチン、グルコサミン セサミン等のサプリを 服用しても膝は回復せず。 ・ 仕方無い。山麓までは バイクで走り 山稜を一緒に歩こう。 |
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初めての朝餐 完成した4つ目の テラスでの初めての朝餐を いつ摂るか 愉しみにしていたが ついにその朝がやってきた。 ・ 最初に出来た2階テラスや 1階テラスも皆さんお気に入り。 点在する森や山稜、街を 見下ろしながらの 食事はまるで山頂の宴。 ・ 3つ目のログ西テラスなんぞは 空中に浮くがごとくの気分。 その西テラスに続く この東テラスは高芝山を 正面に据えた こんな素敵な食卓になった。 ・ さてそれでは 森と山に乾杯! |
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ワインのBatik で、グラスを持とうとしたら 白ワインに くっきりと浮く7つの花弁。 ・ このテーブルクロスは インドネシアの伝統バティック (ろうけつ染め)で 確かバリ島の工場見学で 手に入れたもの。 ・ 嘗ては王侯貴族のみに 着用が許されていた 正真正銘の《ジャワ更紗》。 ・ 花更紗と呼ばれる このプカロンガン産バティックは 華麗な花文様が多い。 ・ 藍とソガ(茶)の2色で 描かれるソロ産 中国文様のチルボン産 花文様のプカロンガン産 この3つが インドネシア伝統の 《ジャワ更紗》である。 ・ ジャワからようこそ! 山荘の森や山にとても良く 調和しているね。 |
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踏んじゃったよ 森の中で真っ先に 早春賦を謳う いつもの春蘭が見当たらない。 ・ もうとっくに咲いている筈。 と気にはしていたが またしても失敗して 踏んずけてしまった。 ・ 俯いてひっそり咲くので 中々気付かないが この新しいテラス周辺の森は 無数の春蘭が 例年咲き誇るのだ。 ・ 今度プカロンガン産の バティックの花が 森の食卓に加わったので よろしく! |
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3月21日(土)晴 北の森 |
やっと咲いた紅梅 山荘ビアの絶妙な味は 奥庭の梅で造った 梅ジュースの フレーバーに鍵がある。 ・ もう1つの鍵が 2次発酵させる砂糖 Priming Sugarの量にある。 ・ ここ数回失敗が続く。 量が多すぎて 爆発ビアとなったり 反対に少なくて沈黙ビアとなり 全く泡の立たぬ 気の抜けたビアが出来たり。 不味くて 賞味に堪えない。 ・ 白梅の隣りで咲き始めた 紅梅を横目で見やり ビア仕込み樽を倉庫から 母屋に運ぶ。 春一番のビア仕込み開始。 これ以上失敗は 許されないぞ。 |
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白梅も遅いぜ 山荘での食事は昼食無しの 1日2食である。 ・ 早朝の畑仕事を軽くこなし 山へ朝トレーニング。 朝風呂を浴びてから テラスで食事をとり 夕刻までティータイムなしで 畑や庭の外仕事。 その後犬と共に再度 夕刻トレーニング。 ・ たっぷり汗をかいた体を 太陽光の湯にドブン。 ぺこぺこになったお腹の 最初の御馳走はいつも 山荘仕込みのビア。 ・ この最初のビアは 市販ビアを遥かに超えた 美味しさが要求される。 |
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3月21日(土)晴 奥庭 |
一斉に開花 逆にその美味しいビアが 在るからこそ 1日2食の山荘スタイルに 意味があるのだ。 ・ そのビアが失敗作となると 山荘生活には陰りが 生じてしまう。 ・ ワインという手もあるが ワインは発汗後の 脱水症状近い肉体にとって アルコールが強すぎる。 夕刻最初のハードドリンクは ビアが相応しいのだ。 ・ 昨年造った梅ジュースを たっぷり入れて ドライラガーを仕込んだ。 ・ 東の窓から白梅が 前庭では水仙が 心配そうな顔して見つめる。 「今度こそ大丈夫ですか?」 |
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白菜も開花 パンも焼かなくてはと 畑に人参パンの 材料となる人参を掘り出し に行ったら白菜が いつの間にか満開。 ・ つい先日まで鍋ものに 入れて愉しんでいた 白菜がすっかり菜の花に 変身してしまった。 ・ こりゃ大変と隣の小松菜や 青梗菜、蕪を見ると やはり蕾を沢山つけて 菜の花に変身中。 ・ この蕾を摘んで 軽く茹でると、いと美味なり。 早速摘んで 今夜のビア摘みにしよう。 |
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3月21日(土)晴 西畑 |
高雅に満開 菜の花に負けじと 空豆が気品高い紫の花を 次々と開いた。 ・ 1か月前の あのおずおずと咲き始めた 空豆と比べると 随分美しくなったね。 ・ 失敗を繰り返し 15年経って初めて開花に 成功した空豆。 とっても嬉しいな! ・ 若しかすると実が成って 今年こそ 空豆を摘みにして ビアが呑めるのかな? |
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3月21日(土)晴 西畑 |
碧眼の登場 池から静かに浮上し 深い海のような 宝石の瞳を 水面にぽっかり。 ・ ガマガエルの目が こんなに碧く輝くなんて 見たこともない。 ・ その碧い目で 雌を惹き付けさては 交尾を企んでいるな。 ・ そういえば先ほどから 盛んにゲコゲコと 鳴いていたけどラブコール だったんだな。 |
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3月22日(日)雨 山荘池 |
カチューシャ おや! 鼻の上にカチューシャを 着けおめかしして 雄の碧い目に魅かれたの? ・ それともラブコールに 吸い寄せられて やって来たのかい? ・ やめておきな。 ネフリュードフに近づくと 大変なことになるよ。 ・ トルストイの名作《復活》を 読んだことあるかい? あれを読めば あなたの未来が総て 解かってしまう。 ・ 今なら未だ間に合う。 カチューシャの役を おりるんだ。 |
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こちらは春爛漫 ほらごらん! やっぱりネフリュードフは あなたを狙っていたんだ。 ・ 100ルーブルで犯されても カチューシャは 本当はネフリュードフが 好きだったんだね。 ・ 私生児を生んで 娼婦になって 事件に巻き込まれ 無実の罪を着せられる。 ・ しかもネフリュードフら 陪審員の手落ちによって シベリアへ徒刑される 羽目になってしまう カチューシャ。 |
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3月22日(日)雨 山荘池 |
池に大集合の蛙 産卵後の骨皮蛙 随分やつれてしまったね。 抱きついているのは ネフリュードフではないよ。 単に死んでしまった 恋(コイ)に過ぎないのだ。 ・ あまりの深い絶望に 身も心も枯れ果てて もう何も見えないんだね。 ・ でも過ちに気付き ネフリュードフはあなたを 救うために 自分の総てを賭けて 復活への途を歩むんだ。 ・ そうか蛙に 私生児とか過ちとか 関係ないか! ・ 実は主題は2人の恋では ないんだ。 未だ読んでなかったら 是非読んでごらん。 |
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第二陶房の完成 轆轤専用室 このプレハブ倉庫を 陶房にしようと 企んでから早十数年。 ついに実現した。 ・ 1か月かけてテラスを 造り更にその下に 倉庫を1か月かけて築き 倉庫移転。 ・ 重い轆轤を奥庭の陶房から コロと梃子を使って 倉庫に運び 床を板張りにして配線。 ・ さあ!最初の作品を 何にするか ワクワクするな! |
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3月22日(日)雨 倉庫 |
僕もお手伝い 猫の手も借りたい 昨年の誕生日に 森からプレゼントされた 広い大地が 春になると一気に 雑草に覆われて侵入さえ 不可能になりそう。 ・ せめてその前に 余ったメークインの種芋を ブドウ畑の下に 植えようと鍬を持って 犬を連れ出動。 ・ 「お手伝いするよ。 あれ!ハート型の芋だ。 これを植えると ハート芋が採れるの?」 ・ 駄目だね。普通の芋しか 出来ないけど 収穫したら美味しい コロッケ作ってやるから お愉しみに! |
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森のシロフォン 椎茸菌の仕込み まだまだ山荘の仕事は 沢山あるんだよ。 椎茸の原木に菌を 植えつけるのも、もう 待った無しのタイムリミット。 ・ 3月を過ぎると 暖かくなり過ぎて椎茸菌が 死んでしまうんだ。 ・ 千個も菌駒が在るから 先ず千個の穴を 原木に開けてそれから 菌駒を千個打ち込むんだ。 ・ 木槌で打ち込むと 丸太がシロフォンになって いい音が森に響いて 森の演奏会だね。 |
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3月21日(土)晴 北の森 |
ほら夕日が こんなに延びて でも千個もあるから いつまで経っても 終わらないんです。 ・ 「ほら夕日が ぐんぐん落ちて木の影が こんなに長く延びて 未だ終わらないなんて これじゃ散歩に 行けなくなっちゃうよ」 ・ 数えてごらんよ。 あと6本で終わるぞ。 そうしたら 夕日で赤く染まった山に 連れてってやるから。 |
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3月21日(土)晴 北の森 |
冬子も春です 昨年植え付けた 椎茸菌が 春の気配を感じて つんつんあちこちから 芽を出したよ。 ・ 冬の寒い時に芽を出すから この時期の椎茸を 冬子と言うんだ。 「ふゆこ」ではないぜ。 《どんこ》と読むんだ。 ・ 寒くて中々大きくならず 収穫までに 時間が掛かるけど その代り硬く締まって とても美味しい椎茸が 出来るんだ。 |
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3月21日(土)晴 北の森 |
弦を弾く雪山 シロフォンの音色が 北の森を超えて 鉄塔山まで流れて ほら、山の弦楽器と 何か耳打ちしているよ。 ・ あんまり悠絽と舞瑠を 待たせたから 慰めようとシロフォンと 天空の弦が 一緒になって演奏会? ・ シューベルトの弦楽四重奏 「死と乙女」でも 始めようとしてるのかな? ・ 《私はおまえを 苦しめるために 来たのではない。 お前に 安息を与えに来たのだ》 ・ 確か死は乙女に そう語るんだったね。 |
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3月4週・・・・早春の大追跡
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高芝山と杏子 咳止めや風邪の 予防の生薬(日本薬局方に収録)と して用いられる杏子が 高芝山を背景に 山荘で満開になった。 ・ 食べて美味しいだけでなく 生薬にもなり その上こよなく美しい杏子。 ・ 果実を実らせたいのだが 異種の木からの 他家受粉をさせないと 結実せず 今年も虚しく花開くのみ。 ・ 中国古代、呉の国に 董奉(とうほう)という 仁医がいて貧乏人からは 治療代金をとらなかった。 ・ かわりに症状の軽い 患者には杏を一株 重病者には 杏を五株植えさせた。 ・ 数年にして家のまわりに 杏の林ができた。 それ以来、「杏林」は 医者の尊称となったとか。 山荘の庭も何とか 杏林にせねば。 |
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葡萄畑の植樹 そうだ。考えてみれば 杏子の隣は 広い葡萄畑なので ここに異種杏子を植えれば きっと沢山の実が成るのだ・ ・ その前にこの葡萄畑を 再度耕して 昨年12月から 西畑で仮植えしておいた 葡萄苗を植えねば。 ・ と思案の結果 実に久しぶりに地下足袋を 履いて耕運機の エンジンを始動させる。 ・ う〜ん、いい音。 早春の大地讃頌の序曲だ。 |
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3月24日(金)晴 葡萄畑 |
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カベルネ・フラン 葡萄畑に初めて カベルネ・フランを植えると 言ったらJA玉宮の お兄さんが飛んできた。 ・ 先ず1m位まで深く掘って 横幅も1m程広げて 有機肥料と土をよく混ぜて その上に土を被せて平らにする。 それから苗の根を よく広げて植えます。 ・ 悠絽は一応静かに 畑仕事を観ていたが 仕事が終わると もう帰れと言わんばかりに お兄さんに吠えたてる。 ・ 「うわー怖えー」と JAのお兄さんは悠絽を避け 遠回りして帰りました。 折角無料奉仕で 来てくれたのに可哀想。 ・ カベルネ・フランは フランスのボルドー地方で 栽培されているけど どうも砂礫の大地に適して いるらしく この赤土では無理かな? |
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白ワイン 甲斐ブラン カベルネ・フランは 純フランス産の 赤ワイン醸造用葡萄である。 ・ これを3本,畑の山側に 白ワイン用の甲斐ブランの 3本は谷側に植えた。 ・ 甲斐ブランは フランスのピノー・ブランと 甲州の交配種で 甲州より優れたフルーティーな 白ワインになるらしい。 ・ この白ワインは甲州種で 造ったワインであるが 香りと甘さが 朝用ワインとしてピッタリ。 良く見ると氷の結晶が 浮いている。 此処まで冷やして飲むと最高。 ・ これより美味しい フルーティーワインが 出来るのは嬉しいけれど いったい何年後? |
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あれっ!リードは? 森や山を走るのが まるで命であるかのごとく 突っ走る舞瑠。 ・ リードを自ら外し 自由の身になっているのに 庭から出ず 森や山に興味を示さず ご覧の通りゴロリ。 ・ リードに繋がれた悠絽も 別に羨ましがらず のんびりと構えている。 ・ いつも無条件に 森や山に行きたがっていると 思っていたが どうもそうではないらしい。 ・ だが山荘主が庭に出ると 飛びついてきて 森に行こうと熱心に訴える。 つまり主人と一緒に 出かけたいのだ。 ・ それにしても折角リードから 解放されたのだから もう少しあちこち ウオッチングしても よさそうなもんだが? |
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3月27日(月)晴 奥庭 |
穴熊か狸か? 狩猟期が2月15日に終わり 猟師と猟犬が 山から消え、再び森に 鹿や猪、熊が戻ってきた。 ・ 耳をピンと立て 鼻をひくつかせ 森の奥を凝視し 全身をセンサーにしたまま 静止画像になる。 ・ 本能に目覚めた この瞬間の 2頭は実にカッコいい。 ・ どんな微かな音でも 匂いや影でも逃さじと自らを 静止画像にし 同時に強靭な瞬発力を 蓄え爆発の瞬間を待つ。 |
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3月27日(月)曇 北の森 |
いたぞ! その爆発の瞬間は 山荘の庭でゴロリとしている 姿からはとても 予測出来ない。 ・ 凄まじい力で 弾丸のように飛び出す。 2頭が同時に 飛び出すととても静止は 出来ない。 ・ 爆発の瞬間が予測できるなら 1頭のリードを 外しておくべきである。 リードを付けたまま離すと リードが木々に絡み 犬が動けなくなり犬が 帰れなくなる恐れがある。 |
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3月27日(月)曇 北の森 |
メービウスの帯だ しかしリードを外すと 狩猟期には もう1つの危険が生じる。 獲物と間違えられ 猟師に撃たれてしまう 可能性があるのだ。 ・ だが狩猟期が終わったので 犬を獲物と間違える 危険な猟師や猟犬は もう居ない。 ・ 安心してリードが外せる。 リードを外した途端 文字通り弾丸になって 森を飛ぶ舞瑠は 実に優雅で美しい。 ・ 「マアル!」と一声叫ぶと 一陣の風のように 飛び帰って来る。 |
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名残り雪 雪の残る稜線から 暫く下る。 2本のリードを両手で持って 2頭の速さをセーブ。 ・ その時、右の谷間に 白い毛を尻に着けた 大きな鹿が突然 身を躍らせた。 ・ 獲物を狙う静止画像無しに 2頭は瞬時に爆発。 リードを外す余裕など無く 強力に飛び出す。 ・ 谷から山へと 急斜面を逃げる鹿を追って リードを付けたままの 2頭が猛追する。 |
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3月27日(月)曇 P2稜線 |
犬橇バイク やばい! リードを付けたままでは 犬が危険に陥る。 必死に呼び戻すが あっという間に山稜を超え 視界から消える。 ・ 急いで稜線まで登り返し 声を限りに 呼びかけるが反応なし。 猟師に撃たれる心配は 無いがリードが 木に絡んだら犬の動きは 封殺されてしまう。 ・ 急いで山荘に戻り オーナーと連絡を取り 夜の捜索に備え ライトを準備していたら 弾丸のようにすっ飛んで 2頭が帰ってきた。 良かった! |
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3月25日(土)晴 鉄塔山 |
ネフリュードフ 森の空が ミルクを流したように 池面に反射し 蛙の卵を包みこみます。 ・ 沈んだ落ち葉が 夕日を浴びて 蛙の黒い卵が 淡い影を落としてます。 ・ これが先週の ネフリュードフの過ちの 結果ならば 過ちはなんと美しいのか! |
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3月26日(日)晴 山荘池 |
カチューシャ カチューシャとは カチューシャ役・松井須磨子 が舞台で着けた ヘアバンドで カチューシャの唄と共に 一世を風靡したのだ。 ・ 驚くことなかれ 「カチューシャの歌の日」 までありそれが本日 3月26日なのである。 ・ 95年前の1914年のこの日 島村抱月によって 舞台化されて大人気を呼び 444回の公演を 重ねた《復活》は初演された。 ・ 若しかすると あの雌蛙は須磨子で 雄蛙は 早稲田大学教授の 名誉も地位も そして妻子までも捨て 須磨子を追った 抱月だったのか? |
ならばこの卵は二人の過ちから 生み出された芸術座?黒い卵は無数の観客? 《過ち》はいつだって アバンギャルドへの限りない可能性を秘めているんだ。 |
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