その39冬ー2009年衣更着
2月1週・・・・生の鼓動にひそむ終焉の宇宙
(新PC・FMVNFB50YでのVista使用開始)
森の目覚め 8つの樹影・T もしかすると もう暁はやって来ない のかも知れない。 ・ 闇はそれほど 果てしない深遠を 精神に刻み込み存在から 認識を奪う。 ・ 漆黒に侵食された肉体は 抗う術も無く 存在空間を闇に明け渡し おもむろに 認識の解体を始める。 ・ 漆黒に侵食された 肉体にとって払暁の光は 認識の復活であり 生の鼓動との再会でもある。 ・ 払暁の森の奥で 燦爛たる光を 発するのは何だろう? |
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太古の潮騒 8つの樹影・U 確かあそこには 小さな泉が湧き出していた。 生の鼓動はあの泉から とっくんとっくんと 微かに響いて来るのだ。 ・ あの泉の深奥に 行き着くことが出来るなら 漆黒に 侵食された肉体は 未だ認識を 支えられるかも知れない。 ・ 森の樹幹を貫く光が 大地に8つの影を落とす。 8つの影を成す光を追って 泉の深奥に 行くことが出来るだろうか? ・ 先ず1本目のこの樹木に 身を委ね 光を追う為の力を 分けてもらおう。 |
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大地への回帰 8つの樹影・V 光を透過し 血の色を滲ませながら 1つ目の樹木は 優しく軋る。 ・ 漆黒に侵食された肉体は 血を蘇らせ徐々に 闇を駆逐し泉へ歩み出す。 ・ 朽ちて幹から剥離し 大地への回帰を待つばかりの 樹皮に生の文様が 光を浴びて広がる。 ・ 2つ目の樹木が 肉体に更なる血を注ぎ込み 凍てついていた肉体は 仄かな熱さえ帯びる。 |
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2月8(日)晴 北の森 |
漆黒への象嵌 8つの樹影・W 三畳紀に爬虫類から 進化し新生代に生を謳歌した 哺乳類の祖先を呼び出し 3本目の樹木は 7千万年の揺籃となって 激しく軋る。 ・ はらりと落ちた 1枚の葉が7千万年の 時を累積して漆黒に抗い 闇に浮く。 ・ 彩を失い生の軌跡文様と 明暗で構成された葉の なんと美しいこと。 ・ 4つ目の樹木は 美しい葉に肉体を乗せて 更に泉へといざなう。 |
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2月8日(日)晴 北の森 |
凍土を貫く蕗2つ 8つの樹影・X 闇が内在する 絶対零度への囁きを無視し 硬い凍土を突き破って 2つの≪蕗の薹≫が 光の空間に躍り出た。 ・ 相対し凍土の下で 根を絡み合わせ5本目の 樹木の軋る律動に 根を共鳴させる。 ・ そうすることによって 生が増幅され 泉の深奥への接近は 更に確かになるのだろう。 ・ 5本目の樹影は 軋りながら影を実在に変え 泉へとなまの肉体を 一直線に横たえる。 ・ 闇の分身の支配を 断ち切った5つ目の樹木。 2つの蕗の薹は 実在する樹木に寄り添い 高らかに歓喜を詠う。 |
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デボン紀の生殖 8つの樹影・Y 6つ目の樹木の土筆 への独語 ・ 暖かな茶色の落ち葉絨毯が 敷き詰められた 北の森の徑,足元にふと 見つけた白と黒の一枚の葉 ・ そっと拾い上げ持ち帰る。 そうだ『決壊』の頁の 何処かに忍ばせ 栞にしよう。 白黒の装丁の本の中から 取り出した瞬間 この異形の葉脈栞こそが 漆黒の闇へと 還る日のための片道切符で あることに気付いてしまった。 ・ 切符を手渡す日が 何時なのか 未だ私には読めないが・・ |
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《決壊》:平野啓一郎 |
暁に微笑むログ鹿 8つの樹影・Z 小倉山の頂稜から 発する燦然たる光りが 森の泉に乱反射し ログの鹿を照らし出した。 ・ 中央アジア・チベットの 首府ラサ中心部に在る パルコルの雑踏。 露天商の犇めく雑踏から 黄銅の鹿は 山荘にやって来た。 ・ 微笑む鹿は7本目の樹影に 語りかける。 【遥々と60の星と霜を 超えてようこそ! 森の泉はいつだって あなたを待っています】 |
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2月8日(日)晴 ログハウス |
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創造の歓喜 8つの樹影・[ 泉の深奥を目前にして ビオロンの音色が流れます。 8つ目の樹木が ミューズとなって 歓喜を奏でているのです。 ・ 8つの樹影を追って ついに此処までやって 来たんですね。 造りたてのテーブルが 朝日を浴びて 輝いています。 ・ 何処を見ても 完成された生に満たされ 漆黒の翳りなんて 見当たりません。 ・ それなのに敢えて あなたは8つ目の樹木に ビオロンを奏でさせ 泉を求め続けるのですか? それほど漆黒に 怯えているのですか? |
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犬小屋からの移転 犬小屋が本来は 陶芸作品の飾り棚であった なんてすっかり忘れて あたかも 犬小屋が先で後から 作品棚が出来たような顔して 犬達は棚に君臨。 ・ ジャンプして 上段の棚に鎮座し 作品を蹴散らし落とし割る。 割られた作品が庭に散在。 ・ 確かに作品棚を改良した 犬小屋なので 住み心地は悪いのだろう。 ・ そこで予てから計画 していた犬小屋を 造って作品を移動しようと 重い腰を上げた。 作品、だいぶ減ったけど ログテラスに新たに展示。 |
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犬小屋完成 発情期で不在 「発情期に入りましたので 今週は犬の外出は 出来ません」 ・ オーナーからの連絡が 入ったので これはチャンスと即 犬小屋造り開始。 ・ と言ってもテラス工事に 追われて 犬小屋造りに充てられる 時間は僅か1日。 ・ 先ず鉄パイプを組み立て 2連棟の大きさを 横幅2m、高さ1mとして着手。 ・ さてどうなるか? |
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2月9日(月)晴 奥庭 |
ペンキ塗りたて 鉄骨板壁仕様 あれれ、屋根板の 長さが足りなくなっちゃった。 うーん、屋根と 側壁の間に隙間が 出来たぞ。 ・ 試行錯誤は続く。 何しろ犬小屋造りなんて のも初体験。 オーナーには一応 アドバイスをとメールして おいたのだが・・・ ・ こんなのでどうだろう? 入口がやや大き過ぎる? それならドアを 付けてもいいかな。 ・ オイルステンを塗って 最後の仕上げ。 どうかな気に入ってくれると いいのだが・・・ |
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昨日の出来事なのに今はもう遥かな 過去となってしまった8つの樹影との旅が 愛しくて胸が痛みます。 ・ コスモスとは秩序と調和を持つ造形。 造るという行為はコスモスへの志向であり 宇宙へ通ずる途。 |
生の鼓動にひそむ 嬉しいもんですね。 造るって行為は 生そのものなんですね。 ・ ログハウスを造り テラスを造り そこに陶芸作品を置くと とても不思議な 感慨に襲われます。 《これがコスモス》 ・ なんだかあの泉の深奥から 響いてくる とっくんとっくんと 言う鼓動が聴こえるような 気がするんです。 ・ 同時に鼓動に潜む 終焉の宇宙が 計り知れぬ圧倒的な 深遠さで 心象風景に迫ります。 ・ カオスへの回帰 はいつだってコスモスに 内在しているんです。 カオスこそ 存在を超え宇宙さえ 自在に生滅させる次元の 原点なのです。 |
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つみきのいえ 仏アニメ映画祭で最高賞 そうそう 嬉しいニュースが 届きました。 ・ 岩本さんのあの山荘絵が 第18回全日本 アートサロン絵画大賞展に 入選したのです。 ・ 東京と大阪で 展示会が開かれているので 早速観てきました。 岩本さんも あの絵と対峙しつつ 生の鼓動を 聴いたのでしょうか? ・ 仏アニメ映画際で 最高賞をとった加藤久仁生の 《つみきのいえ》も3階で 上映してました。 ・ 無声の12分作品でしたが 静かに心に 染み入るファンタジーでした。 《つみきのいえ》を連想させる 逆円錐の 国立新美術館でひたひたと 迫る来る水位を 全身で感じつつ私も 煉瓦を積み続けねば・・・ |
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2月2週・・・・獲物を追って!
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衣更着の夏日 甲府で24.8℃ 南からの低気圧が 雨と風をもたらし足早に 通り過ぎた後、好天。 厳寒期だというのに夏が 来て全国で2月の記録更新。 ・ 静岡市清水区で26.8度 神奈川県小田原市で26.1度 千葉県茂原市で 25.7度まで上がり、夏日に。 ・ 山荘テラスは日向でもあり 34℃まで上昇。 森の動物も植物も吃驚。 例年今頃は 雪と氷の間から顔を 覗かせている座禅草は どうなっているのだろうか? ・ 居た居た! 未だ小さいけど森のあちこちで つんつん飛び出して 「しまった。遅すぎたか!」との 呟きが聴こえるようです。 |
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悪食悠絽も警戒 なにしろスカンクキャベツと 呼ばれてるくらい 臭くて虫は喜んで集まるが 人は顔をしかめてしまう。 ・ 悪食の悠絽も 恐る恐る近づきクンクン。 「どうもこりゃ食べられそう も無い。駄目だな。 又吐いちゃうと辛いし」 ・ そりゃそうだ。 何でも食べちゃ駄目だよ。 今朝から何度か吐いたので 驚いて見たら 吐瀉物は青緑のプラスチック。 ・ どうもオーナーが与えた 犬の玩具を食べて 山荘にやって来たらしいのだ。 |
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2月14日(土)雨後晴 座禅草の森 |
あれ!新しい家だ さてどうするか悩んだ 犬小屋の扉。 横に付けるとリードに 引っかかりそうなので 思い切って上下に 開閉する扉にしました。 ・ 開けておけば床板になって 邪魔にならない。 雨や雪が激しい時に 扉を閉めても内側から 簡単に開くし。 ・ 使われない時は 扉を閉めておけるし これ中々のアイディア。 さて問題は当の犬達。 ・ 「なんだか変だなこの家。 あの大きな家は 何処へ消えたんだろ?」 |
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2月14日(土)晴 奥庭 |
うん、中々いいね! どっちがどっちの小屋に 入るか愉しみ。 全く同じ造りなので 中に敷かれている毛布の 好みによって 選ぶのかな? ・ 夜こっそり覗きに行ったら 東部屋に悠絽、西に 舞瑠が入ってました。 ・ 1歳年上ですが 繊細で気配りする舞瑠は 悠絽の希望をいつも 優先させます。 ・ 今回もきっと先に悠絽が 東部屋を選び 残った西部屋に舞瑠が 入ったのでしょう。 |
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夜の森とテラス 目白で焼いた作品を持って 夜のログテラスに 上がってみた。 ・ 森のライトをつけたら 幻想的な夜の森が浮かび テラスが森に同化 していた。 ・ ログの室内から 眺める夜の森は異次元。 ここではテラスが異次元に 繰りこまれてしまう。 ・ もう少し暖かくなったら このテラスで 山荘ワインを開けて 森の宴を愉しもう。 ・ 夜行性の動物達にも 招待状を出せば 来てくれるかな? 山猫に頼んでも やっぱり駄目だろうな。 |
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量から質への止揚 森の反対側の闇では 里の灯が 小さな優しい光を灯す。 ・ 山荘眼下に渺茫と広がる 闇と雲海を見るたび 山荘が上昇する水位に 追われる方舟で あると認識せざるを得ない。 ・ 《つみきのいえ》は 上昇する水位に抗って 煉瓦を積み続けるが 山荘もこうして 煉瓦を絶え間なく 積み続けるしか生き延びる 術は無いのだろうか。 ・ だが永遠に積み上げることは 出来ない。 質的変換を遂げ方舟に ならぬ限り山荘は 溺死を免れないのだ。 |
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2月14日(土)晴 ログテラス |
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勇敢繊細な舞瑠 感性の豊かさ 敏捷さ持続力のどれを とっても舞瑠は悠絽より遥に 優れている。 ・ だが常に悠絽を先にたて 自分は控えめである。 悠絽に出来ないと判ると 初めて先に立つ。 ・ ログテラスは梯子でしか 登れないので 恐れて悠絽は登らない。 舞瑠も恐れていたが ついにテラスに立った。 ・ かっこいい! まるで狼みたいだね。 「ようこそ舞瑠! テラスへの初めてのゲスト」 |
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レミントンM4 強力ライフル銃 山荘周辺の山々は まるで 山荘の庭の延長で 滅多に人に出逢わない。 ・ 1年に1度逢うかどうか くらいである。 逢うとしたら冬の狩猟期。 鹿、猪、熊を追って 猟師が山に入るのだ。 ・ 最近の猟師は趣味で 日曜に活動する程度である。 従って猟師との遭遇も 狩猟期の日曜には あり得るのである。 ・ 実はこれは恐ろしい。 山を走っていると 獣と間違えられ撃たれて しまう惧れがある。 ・ 早朝から山を 走り廻っている人間が 居ると猟師は 思っていないのだ。 |
汗を滴らせた猟師とばったり山稜で逢った。 「このライフルはレミントンM4」と答えた猟師に 悠絽がじゃれる。 |
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ベレッタだ! 今日は14人でチームを 組んで獲物を追っているとか。 北峠から下ると 枝を地面に立てて銃座にし 獲物を待ち伏せする 猟師に出逢う。 ・ こちらの銃はベレッタとか。 レミントンは ライフルとして有名だが ベレッタは拳銃名の筈。 ・ 確かベレッタは米警察の 制式拳銃だが ライフルまで造っていたとは・・ レミントンは米軍等で 使われている高性能ライフル。 高い命中精度 単純堅牢な構造の狙撃銃で 世界に名を馳せている。 ・ ライフルに興奮して 荒い息を吐き 早くも猟犬気分になった2頭。 |
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私達も獲物追おうよ 枯葉を除いて正方形に 地面を露出させているのを 森でよく見かける。 ・ 猪や鹿の仕業にしては おかしい。 正方形の概念が 彼らにあるとは思えない。 ・ 前から気になっていたが これは猟師がつけた印で ここに銃座を設け 獲物を待つのだと初めて 分かった。 その正方形の地面に 座って猟師と話す。 ・ 「そんなのどうでもいいから 私達も狩に行こうよ」と しきりに訴える2頭。 |
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見つけたぞ! 優れた探知能力 舞瑠が優れていると 述べたが実は 野生の本能は悠絽の方が ずっと強い。 ・ 森に入った途端に 悠絽は全身がセンサーに なって獲物の臭いや 音をキャッチし 舞瑠より早く獲物を探し出す。 ・ 急な崖の岩下に巣穴を 見つけ悠絽が逸早く 突進する。 舞瑠も獣の気配には 気付いたが為す術を知らない。 ・ 果敢に突っ込む悠絽。 だが何としても メタボなので穴に入れない。 「ダックスフントのように 脚が短ければ」と ぼやく悠絽。 |
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穴熊か狸か! 可笑しいね。 いつもはおっとり構えて ぼけーとしているのに 獲物を見つけると まるで人が変わる、否 犬が変わってしまう悠絽。 ・ この真剣な動作。 リードを離したらきっと 最後の最後まで 獲物を追い詰めて捕える かも知れないね。 ・ 走らせれば足の肉球を 直ぐ傷めるし 息が荒くなってゼイゼイ ハーハーとなる悠絽。 ・ 獲物を捕えるには 全力疾走出来る体力も 付けなくてはね悠絽! |
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2月16日(月)晴 北の森 |
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くっそ!逃げたか この悔しそうな格好が 余りにも人間的で 思わず笑ってしまった。 ところで 獲物の正体は何だろう? ・ 先日地元の造園業者が 「こりゃ笹熊が掘った 穴だな」と 山荘の森で話していたが その時は笹熊が 「穴掘り」とも呼ばれる 穴熊のこととは知らなかった。 ・ 穴熊は頭に2本の黒縞を 着けているので 直ぐ判るのだが未だ 山荘近辺で見たことはない。 ・ 完全な夜行性なので 今度夜の散歩に 悠絽をけしかけてみよう。 逢えるかもしれない。 |
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寒気復活 最後の氷花 強い北風が吹いて 山荘の2階のテラスに当り ひゅーひゅーと 風が口笛を吹きました。 ・ 暖かな南風は去って 冷たい北風小僧が ひゅるるんひゅんひゅんと やって来たのです。 ・ アクセル不調のバイクを 犬橇にみたて オーナーの家まで4km 犬を走らせ寒風をついて 山荘に戻りました。 ・ 寒さでカチカチになって 森に目をやると 氷花のしもばしらが 咲いていました。 ・ きっと今冬最後の 氷花でしょうね。 |
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2月3週・・・・淡雪の森
淡雪の森 2月22日(日)晴 上条の森 光が森の木々に弾かれて旋律を奏でる。 淡雪が加わり光は蒼く燻した銀の音色となって大地に枯葉とのタピストリーを描く。 悠絽と舞瑠が2本の弦を張り詰めハープ奏者になって光を震わせる。 さあ!いよいよ森のコンサートが始まります。 ・ 森での光のシンフォニーを聴いたことありますか? |
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森から森へ 静寂に流れる 風がざわざわしていると 光のシンフォニーは 聴こえません。 ・ 葉がたくさん繁っていても 駄目なんです。 木々の枝が総て弦になる 冬がいいんです。 ・ 光が自在に舞えるよう 大気が透明になって キーンと冷えた未明でないと やはり聴こえません。 ・ 手袋の中の指が寒さで凍え 痛くて堪らなくて 泣きそうになってそれでも 森へ行くと突然 序曲が流れるんです。 |
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山稜の目覚め 背後に潜む音楽 少し急がないと やはり聴こえません。 ・ 南の峠から 光が溢れて一気に森の 梢に散乱するその瞬間に 間に合わないと 決して聴くことは出来ません。 ・ ほら森の後ろの山稜に光が 満ちてきたでしょう。 もう直ぐあの光が森の梢に やって来て 光のシンフォニー序曲が 始まるんです。 ・ 木々が音合わせを 始めているのが聴こえれば あなたは光のコンサートに 招待されているのです。 |
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2月22日(日)晴 座禅草の森 |
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頂の暁光 さて次はどの山? 実はこの山頂には 996mの三角点が記されて いるだけで無名なんです。 だからほら この山頂標識にも何も 書いてないでしょう。 ・ 左へ行くと上条峠で 右はお馴染みの 通いなれた小倉山です。 ・ 無名なので 訪れる人は殆ど居なくて ひっそりと静まり 光の囁きに包まれています。 ・ 悠絽と舞瑠は何やら 真剣な顔して 光の声に 聴き入っているような。 ・ でも本当は次の山に 早く行きたくて 待ち切れないんだね。 |
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早春の兆し さるのこしかけ 大きなテンガロンハットに チョコ茸をくっ付けて 暗い顔しながら 微笑んでいるのは 森の時を告げる番人だな。 ・ 微笑んでいるのは もう直ぐ春が来るからだと 解るけどその チョコ茸は先週14日の 名残りかい? ・ で、そのチョコは 誰にやったんだい? 所々チョコが採られているね。 小鳥かな? それとも鹿に食べられたの? ・ それともさっき通った 悠絽と舞瑠が 本物のチョコと間違えて 齧ったのかな? |
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森とのお話 天空への回廊 むかしむかし此処には 大きな白樺が すっくと空に向かって 立っていました。 ・ 枯れ果てた根に顎を乗せて 悠絽と舞瑠に 山荘主がお話を始めました。 ・ この雪を被っているのが 昨年倒れたお父さんで 大鹿の角のような 茶色の根はきっとそのお父さん つまりお祖父さんだね。 ・ 枯葉の下には子供の白樺が 生まれている筈だけど 見えないね。 ・ 子供はね、たくさんの枯葉や 倒れた木々から 命をもらってお父さんのように 遥か彼方の天空を 目指してぐんぐん伸びるんだ。 ・ どうしてかって? そりゃ天空の彼方には 太陽が居るからさ。 |
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どう!新しいリード 谷川岳一の倉沢中央稜 「ふ〜ん、木は太陽が 好きなんだ」 ・ 木だけじゃないよ。 夜、森の中で光を灯してごらん。 太陽と間違えて いろんな虫達が集まって来るだろ。 ・ 生命はね 太陽から生み出されたことを 誰もが知っているんだ。 だから木でも虫でも太陽に 恋い焦がれるのさ。 ・ 新しく作ってもらったリードを 垂らして静かに舞瑠が 耳を傾けます。 ・ それじゃ次にそのリードのお話を してあげようか。 山荘の本棚に《K2へ》という 鶯色の本が置いてある。 ・ その253ページを開くとね 16年前・1993年6月の谷川岳の 記録が載っているんだよ。 山荘が出来る1年前さ。 一の倉沢中央稜凹状ルートの記録だ。 ・ 《新幹線を使っての日帰りクライミイング。 凹状ルートの入り口で 腐ったハーケンが抜け7m程 坂原が落ちる。 錆びてボロボロになったハーケンで チェックさえすれば 問題なかったのに初歩的ミスである。 そのまま上部まで登り放置ザイルを 1本回収して下る》 |
そう、落下した瞬間絶命したかも知れない クライミングの記念ザイルさ。 その回収ザイルを使って犬橇に使える 長めのリードを作ったんだ。 気に入ったかい? |
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噛み砕く舞瑠 獲物ゲット 淡雪の森で 光のシンフォニーを聴いたり 太陽や新しいリードの お話を聞いたりして充分に 森の散歩を堪能した舞瑠が 枯葉の中から 大きな骨を見つけました。 ・ どうやら鹿の太腿骨の ようです。 この森にはたくさんの鹿が 居ますが鹿を襲って 食べるような動物は居ません。 ・ きっとあの高芝山で見た 鹿のように何かの事故で 負傷し動けなくなり その後肉食の鼬やオコジョに 食べられたのでしょう。 ・ 高芝山では怯えて 恐る恐る近づいていたのに 骨となるとこの通り。 |
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雪の座禅草 夏から冬へ 先週の夏日から 一転して雪が降り座禅草の 森は残り雪に覆われ すっかり冬の斑模様。 ・ これで初めて 座禅草の必殺武器の 発熱遺伝子が スイッチオンされ 早春の森の虫達を誘う ことが出来るでしょう。 ・ 久し振りの寒さで 手の指も足の指も耳朶も じんじんと 痛む程でしたが 夜明けの森は光と 生命の予感に満ちて 心躍りました。 |
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2月22日(日)晴 座禅草の森 |
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早春賦・T さんしゅゆ 山荘に戻ると 例年より1か月も早く 山茱萸(さんしゅゆ)が黄金の蕾を 輝かせていました。 ・ 22日には何かが在るとの 予感が閃めいたのは ふと脈絡もなしに 初登頂したヒマラヤの チョー・サブの 7022mが浮かんだからかも 知れません。 ・ あの最後の初登頂以来22が 深くインプットされました。 回文素数、5番目のリュカ数 2番目のレピュニット・・・ でもある11の倍数でもあり 22は忘れられない数 になってしまったのです。 ・ 若しかするとこの山茱萸の 光がその何かかな? |
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早春賦・U すいせん 毎年真っ先に 小さな花をつける目立たない 水仙も咲きました。 ・ でも22の予感にしては インパクトが弱くて 「森の光のシンフォニー」には とても及びそうもない。 さて庭の早春賦でも 森のシンフォニーでも無い としたら22の予感は いったい何なのか? ・ そうそう山荘庭に 幾つか在る水仙の群落が やっと芽を吹き出し 犬小屋近くの群落が 犬のベッドになりそうで 急いで立ち入り禁止の 垣根を巡らしました。 ・ 水仙の群落が花開く日が とても愉しみだな。 |
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早春賦・V そらまめ これだ! ビアのつまみに欠かせない 空豆の花だ。 ・ 空豆は晩秋に種を蒔いて 冬越しさせて 春から初夏にかけて 収穫するんだ。 ・ 何回か山荘でも 苗を植えて冬越しに 挑戦したんだけど寒すぎて 枯れてしまった。 ・ 思い切って今回初めて 種植えで育て ペットボトルを被せて 保温したりしたけどうまくいかず 諦めかけたら 数本が生き残りついに 花開いた。 ・ これは小さな出来事だけど 山荘有機栽培にとっては ビッグニュース。 これが22の予感か? |
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早春賦・W くれそん クレソンが覚めた モノローグをぽつり。 ・ 「違うね。予感は先週の 国立新美術館で既に あったのさ。 珍しくもないこと。 誰もが期待しながら 予感してたことなんだ。 ・ 2009年2月22日 場所は米国ロサンゼルス。 米映画界最大の祭典 第81回アカデミー賞であの 《つみきのいえ》と 《おくりびと》が日本初の アカデミー賞に輝いたのさ。 ・ マイナーな光を追う 加藤久仁生が認められたのが そんなにも嬉しいのかい?」 ・ そうでしたこの日 生命を描いた2つの秀逸な 日本作品が オスカー像を授与され 23日の日本の巷は この話題で持ち切りでした。 |
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枯葉集め 助っ人出現! 山荘の仕事は あって無い様なもんですが 実は限りなく 山積しているんです。 ・ それもいつも季節に追われ 遅れると山荘の 自給自足に即、響いて 食べるものが無くなったり 畑や庭が野草に侵略されて お化け屋敷になったり・・・ ・ 陶房が機能しなくなって 陶芸が出来なくなったり 倉庫が溢れたり ビアやワインが造れなくなり ワインセラーが 空っぽになって・・・。 ・ 枯葉集めだって年間計画では 12月には終わってる 筈なのです。 でも葡萄畑の準備が 忙しくて手が回りません。 ・ そこへ助っ人が突如 出現したのです。 |
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有機肥料造り うん鹿が匂うな 「助っ人って 僕たちのことかいワン!」 ・ 君達が助っ人? そんな訳ないだろ。 もっとも手伝いはしないが 一緒に仕事に参加 してるのは事実でとっても 励みになるから 助っ人と言えなくもないけど。 ・ ほらこうやって集めた枯葉を 足でぎゅうぎゅう 押し込んで固めて 一杯になったら畑に運ぶんだ。 ・ 畑の隅に枯葉のプールが あるだろう。 あそこに沢山溜めて 鶏糞や土を混ぜて 2,3年寝かせるんだ。 |
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悠絽の眼差し 食べられないかな? そうすると兜虫が 卵を産んだりそれを狙って 夜鷹が飛び交ったり・・ そうして2年も経つと とっても美味しい有機肥料に なって畑の野菜が たくさん採れるのさ。 ・ 「なんだか鹿の匂いが するんだけど 食べられないのかな?」 そりゃまだまだ ずーっと先のことさ。 ・ 先ずこの枯葉が肥料になって それが野菜になって 畑にやって来た鹿が食べて それを猟師が撃って その肉を山荘主が分けて もらって食べ残した 骨がやっと君達に回るのさ。 ・ 悠絽も舞瑠も 黙ってしまいました。 |
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光のシンフォニー 2009年2月24日(火) 月周回衛星「かぐや」より By Jaxa 《おくりびと》 ガンジス河のほとり・ベナレスの露天火葬場に立ち衝撃を受け もっくんの胸中に燻ぶる《生と死》は 8年の歳月を経て映画《おくりびと》に結実したとか。 ・ 都内で今冬初めて霙のびちょびちょ降る日、朝一で観に行った。 既に満席で夕刻のチケットしか取れず霙の中2度も池袋メトロポリタンのシネへ チャリンコを走らせた。 ・ 哀しい場面は幾つもあるのに何故か 雪の月山を背景に弾くもっくんのチェロに泣けた。 ヒマラヤ登山の帰途に何度か通ったベナレスやカトマンズの露天火葬場が チェロの音色に静かに流れ 滂沱として流る涙に為す術も無かった。 死より生の哀しさに胸がひりひりと痛んだ。 ・ アカデミー賞なんてコマーシャリズムに汚染された評価が 「おくりびと」や「つみきのいえ」を敢えて捉えたことにアカデミー賞の 限りない未来を覚え嬉しい限りであった。 ・ 《淡雪の森》、《光のシンフォニー》、《アカデミー賞》が 3日前に月で撮影された地球のダイヤモンドリングと重なり 心象風景に深く刻まれ、忘れられない1週間となった。
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世界で一番小さな猿・眼鏡猿(ターシャ)の棲む島、ボホールまで、ちょっと出張です。
ボホール島の南西にあるバングラオ島に滞在しダイビングの予定。