その8ー夏:2006年文月
文月・4週・・・梅雨の花々
7月22日(土)晴時々曇 於 ログハウス
森の葉が 深遠な宇宙の闇に流れ 闇の彼方に 光を結実する。 ・ 朱の光はやがて帯になり NEB北赤道縞を形成し その右隣に STB南赤道縞を生み出す。 深い闇の中から STBに乗って 悠然と大赤班が姿を現す。 ・ そうか! ゆぴてるは 森から生まれたんだ。 |
|
---|---|
森に流れる木星 |
7月15日(土)晴後雷雨 於 ログハウスのテラス
底知れぬ闇から 全容を現したゆぴてるは ログテラス上で 太陽からの光を 弱弱しく投げ返す。 ・ 昼に太陽光を 一杯に吸い込んで たっぷり充電した ソーラー燈が 青い光を放ち ゆぴてるの赤い光に 呼応するように踊る。 ・ 宇宙が 葉の細胞の中に 自らの肉体の中に 存在することに気づいて 数十年。 やっと回り逢えた映像。 |
|
---|---|
テラス幻想 |
7月23日(日) 曇り 於 東の森・田園道(朝トレーニング)
不意に濃厚で 妖艶な香りに襲われた。 甘く切ない絡みつくような 郷愁を誘う 妖しい美女の香り。 ・ 小倉山に向かう田園道で 立ち止まり美女を追う。 居た! 猪の侵入を許さない 疎水と石垣に守られて 凛として 咲き誇る山百合。 更に進むと数箇所で 一面に乱れ咲き。 ・ 山百合の根は美味。 猪などの野生動物に 食い荒らされ絶滅状態。 頼りの綱は 先週、大月市で開かれた 《山百合サミット》 |
|
---|---|
妖艶な山百合 |
7月23日(日) 曇り 於 前庭・田園道(朝トレーニング)
数年掛かりで やっと手に入れた 凌霄花がついに咲いた。 ・ 山荘を建て 週末に通うようになって 町に溢れる 花々の多さに感嘆! 花の少なくなる 梅雨から初夏にかけて 見かける橙色の花樹には 特に心惹かれた。 ・ その名が ノウゼンカズラであると知り あちこち求め続け 今春植樹。 ついに咲いてくれたね。 |
|
---|---|
ついに咲いた凌霄花 |
7月22日(土) 晴時々曇 於 ログハウス下(朝トレーニング)
北の森の天辺が ピンクに染まり始めた。 ぷち天文台の ガニメデからは遠くて 何の花か分からない。 ・ ログ下の森や 西の森入り口で 同じピンクを見つけた。 何だ。眠之木だったのか! ・ 花火のように飛び出した 雄蕊が雌蕊を捉えると 15センチにもなる 長い豆果が出来る。 ・ 夜になると子葉は閉じて 水分の蒸散を防ぐ。 それが眠るように 見えるんだね。 |
|
---|---|
合歓木の目覚め |
7月23日(日) 曇り 於 ログハウス下(朝トレーニング)
待ーてど暮ーらせど 来ーぬ人は 宵待草のやーるせなさ。 今宵は月も出ぬそーな。 ・ 竹久夢二に詠われ 大正ロマンの シンボルとなった待宵草。 私の義母の姉は 竹久夢二の 想われ人・笠井彦乃。 ・ そんなせいもあって この花を見ると 夢二の描いた美人が 花弁に二重写しとなり ホログラムとなって 浮かぶ。 |
|
---|---|
宵待草・・・大待宵草 |
7月22日(土) 晴時々曇り 於 前庭
自ら光を 発しているかのように 蒼い海の色を湛えるはず。 でも今年の紫陽花は 花期が2週間も遅れ 花数も少なく発色しない。 ・ 万葉時代から愛でられた 紫陽花も 冷たい初夏と長雨の 異常に気づき 萎縮してしまった。 ・ 1株から挿し木を繰り返し 随分増えたが これでは今年の 挿し木は出来そうもない。 |
|
---|---|
顎紫陽花 |
7月23日(日) 曇り 於 ログハウス下(朝トレーニング)
この宝石は いったい何なんだ! 蝉の抜け殻が生んだ卵? そんな馬鹿な。 それじゃ抜け殻から 出る前の蝉が 産んだのか? 成虫になっていないのに 産めるはずないな。 ・ 蝉は枯れ枝の中に 卵を産み 孵化した幼虫は 地中に潜る。 最も長い蝉は17年も かけて変身への途を歩む。 ・ 成虫になって羽ばたく 数日間に較べると 数年間は無限に近い。 その意味を知る前に 宝石の謎を 解かねばなるまい。 |
|
---|---|
変身と宝石 |
7月23日(日) 曇り 於 上条の森(朝トレーニング)
明日から紅海へ ダイビング。 アフリカ大陸と アラビア半島に挟まれた カラカラに干乾びた砂漠に 食い込んだ海。 暫く森の生命とはお別れ。 出発前の最後の朝トレに 上条の森を選んだ。 ・ 森の底で 広葉樹のオブジェに逢った。 かつて数千万枚の葉に 地中から生命を送り続けた 広葉樹の根。 今は樹種を同定出来ぬ程 朽ち果て任務を終え 唯静かに横たわる。 ・ 珊瑚は自らの死骸を 積み重ね しばしば島を造る。 この根は再び 森を造るのだろうか? |
|
---|---|
森の終焉 |
7月23日(日) 曇り 於 東の森(朝トレーニング)
走り去る目に 小さな光が 飛び込んできた。 朝露が葉に結露し 地球の強大な重力に さり気無く抗い 球形のまま落ちもせず 水惑星を形成している。 ・ この危ういバランスが 実は宇宙を支えている。 そしてたぶん 私の精神構造をも 支えているのだ。 |
|
---|---|
水惑星誕生 |
7月23日(日) 曇り 於 奥庭
夏の芝は 2週間毎に刈らねば 悲惨なことになる。 ・ 芝刈り機が長く伸びすぎた 芝を受け付けず 無理して刈ると 刃に絡みつきモーターは 停止してしまう。 ・ そうなると 芝刈りどころではない。 分解して 絡みついた葉を取り除き 再び 組み立てねばならない。 ・ 普段は狭い庭なのに 芝刈りを始めると 途端に広大な庭に変身。 刈っても刈っても 終わらない。 俺って芝の召使? |
|
---|---|
芝との闘い |
7月21日(金) 雨 於 アマルティア
光ファイバー? そんなもん有る訳 ないじゃん。 ADSL? 竹森は 塩山市の中継点から6`。 限界が4`だから まあ無理でしょう。 騒音は50デシベルが上限。 お宅は59デシベル。 まあ無理でしょう。 ダウンは出来てもアップ は駄目ですね。 ・ やはり山荘に コンピューターを入れるのは 不可能か? ・ 試行錯誤の結果 50Mb/秒の伝達速度が 0.4Mb/秒、つまり0.8% に落ちたが 辛うじて通信可能。 やったね。これで山荘は 世界と繋がったね。 |
|
---|---|
山荘にPC誕生 |
文月・3週・・・嵐来る
7月15日(土)晴後雷雨 於 扇山より北稜線(朝トレーニング)
氷の粒が 数千mの上空で煌き 朝の太陽を浴びて 巨大な鬼糸巻?になった。 ・ 扇山山頂から 山荘上空を悠然と飛翔し 鉄塔の山上で送電線より エネルギーを奪う素振りで 更に北方を目指す。 ・ 甲武信岳の天空に 新たなる鬼糸巻?出現。 さては 何か企んでいるな! |
|
---|---|
鬼糸巻?:オニイトマキエイ(manta) | 鱗雲・高積雲 |
7月15日(土)晴後雷雨 於 山荘テラスより
黒い夏富士が 激しく積雲を吐き出す。 暫く東へ流れ やがて北方の 巨大な鬼糸巻?に気づき 山荘方向に進路を変え 積雲は発達を加速。 ・ 膨大な静電気を生み出し 鬼糸巻?軍団に 接近する積雲。 天空に集積されつつある 膨大なエネルギーは 絶大な権力者である 大地への儚い 反逆を企てる。 |
|
---|---|
嵐の予感 |
7月15日(土)晴後雷雨 於 前庭石卓
何と体温を超え 大気温は38度Cに達した。 朝から不穏な動きを見せ エネルギーの集積を図る 鬼糸巻?と積雲は 熱された大地から更に 大量の熱源を吸収する。 天空は 高エネルギーに満たされ 一触即発の瞬間を待つ。 ・ 蜩と鳥達が不意に 鳴き止み 森と山荘が 静寂に支配された。 |
|
---|---|
蜩:ひぐらし | 38度C・・・嵐の前の静けさ |
7月15日(土)晴後雷雨 於 テラス
天が裂け 強烈な光と大気を揺るがす 雷鳴が大地を襲う。 ・ 大きく開け放たれた 総ての窓から 激しい風と雨が吹き込み ログも山荘も 瞬時にして水浸し。 山荘畑の唐黍も全倒。 ・ 中央線が不通となり 米国からやって来た トム・ハンクス一家も 木村隊員も駅で足止め。 ・ 力を使い果たした嵐が 去った後 全員が山荘に揃い乾杯! |
|
---|---|
嵐後の宴 | トム・ハンクス:右から2人目 |
7月16日(日)曇時々雨 於 坂脇峠ゲレンデ
(ルート:チベッタンスラブ取り付き)
米国永住権を得 プール付きの大邸宅を手にし トム・ハンクスに変身した 栗田陽介と久しぶりに ザイルを組んだ。 ・ 風雪のヒマラヤ 氷の頂で坂原の手繰る 赤いザイルに導かれ 喘ぐ陽介。 やがて 登頂と歓びの抱擁。 ・ 夜の下降となり 坂原の墜落事故発生。 全身打撲で瞬時失神。 ・ そう、あれ以来の アンザイレンだ。 |
|
---|---|
アンザイレン:ザイルを結ぶこと | トム・ハンクスの挑戦 |
7月16日(日)曇時々雨 於 坂脇峠ゲレンデ
(ルート:チベッタンスラブ中段)
坂原のヘルメットを被り 陽介二世・広介が 垂直岩壁に挑む。 ・ 手掛かりの無い つるつるの垂壁を恐れず 何度か 宙吊りになりながらも 高みを目指す。 ・ 絶対権力者への反逆を 自らの使命と心得え 父・陽介を「ジジイ!」と 呼び捨てる 頼もしい7歳児。 |
|
---|---|
7歳児クライマー |
7月16日(日)曇時々雨 於 坂脇峠ゲレンデ
(ルート:チベッタンスラブ下降)
英語の本であろうと 日本語の本であろうと 本でありさえすれば 読みまくる兄・大介は 文弱の9歳児。 ・ 広介と異なり 直ぐ「泣き」が入る。 天は文弱少年に 試練を課すかのように 岩壁を雨で濡らす。 つるつるの岩壁が 更に滑りやすくなり 大介は自らの不運を嘆く。 ・ しかし数百回の泣きの後 遂に完登。 |
|
---|---|
スラブ:大きな一枚岩 | 雨のスラブ完登 |
7月17日(月)雨 於 山荘より俯瞰
嵐は去った。 エネルギーを失った雲海は 最早、鬼糸巻?にも 積雲にもなれず 絶対権力者への反逆も 企てず唯、渺漠と漂う。 ・ 雲は成長して 大人になった のであろうか? それとも 唯、エネルギーを 失っただけの事なのか? ・ 安定を求める 下の層雲は大介で やはり高みを目指す 上の層雲は広介? |
|
---|---|
重層雲海 |
文月・2週・・・Vita
7月10日(月)曇 於 小倉山山頂(朝トレーニング)
森・Mori が 死であるならば 森を再生させる光は 生・Vita. ・ 森に光が差し込む瞬間に はっと、息を呑むのは 心象風景のいずこかで 死の 再生が閃光するのだ。 ・ 深く重い闇の森を抜けて 達した山頂での光は 余りにも弱弱しく 明らかに再生の力を 失っていた。 ・ 森は唯ひたすら 待たねばなるまい。 |
|
---|---|
Vita: ラテン語で生命の意 Mori: ラテン語で死の意 |
霧の小倉山山頂 |
7月8日(土)晴 於 前庭石卓
沙羅は朝開き 夕べには落ちてしまう。 沙羅が開くのを 虫達は待ちあぐねる。 朝の光に射抜かれて 沙羅が優雅に花開くと 虫達が群がる。 ・ 光は純白な花弁を 突き抜けて 沙羅の生・Vitaを 映し出す。 Vitaの溢れる光の中で 虫達は酔い痴れ 狂乱する。 ・ 森は静かに やがて 高らかに再生の詩を 詠い始める。 |
|
---|---|
命短し沙羅 |
7月8日(土)晴 於 陶房にて
再生の詩は光と共に流れ 森のVitaを揺する。 ・ 朝の光を一杯に 吸い込んで 桔梗も花開いた。 天空の蒼と 珊瑚海の藍を映した 桔梗の花弁に 虫のシルエットが浮かぶ。 ・ 君は宇宙船になって 深遠な宇宙へ Vitaを運んで行くんだね。 |
|
---|---|
桔梗の蜜を狙って |
7月8日(土)晴 於 果樹畑にて
ヒマラヤの 遠征準備が始まると 色付き熟すプラム。 ・ 今年度計画は夏ではなく 秋の ポストモンスーン実施に 変更されたのに やはり色付き始めた。 まるで 来週のヒマラヤ合宿を 知っているかのよう。 ・ 若しかすると 君達は隊員達に 食べてもらって 自らのVitaを 隊員に託し 一緒にヒマラヤに 登るつもり? |
|
---|---|
ヒマラヤの果実 |
7月8日(土)晴 於 前庭石卓にて
そう言えば君達は 人体が生合成出来ない Vita-amineを 持っているんだね。 ・ 動物が成長を遂げるには 不可欠なVitamin。 動物の生・Vitaは 君達のVitaの 援け無しには 在り得ないんだ。 ・ 60兆個もの細胞が 互いに連携して人体宇宙を 形成しているように きっと総ての生命も 連携して1つの星を 創っているんだね。 |
|
---|---|
初めての枇杷 |
7月8日(土)晴 於 果樹畑にて
5年目にして 初めて実を付けた枇杷に 見とれていたら 洋梨が揺れた。 ・ 「毎年、美味しい 沢山の実を熟すのに。 私だってたっぷり Vitaminを含んで あなた達に Vitaを与えているのよ」 ・ 「分かった分かった。 でもね 君達が美味しくなる 頃はチベットに行ってて 食べられないんだ。 森の動物達にVitaを 分けてあげて。」 |
|
---|---|
葡萄酒色の洋梨 |
7月8日(土)晴 於 西畑にて
早春の芽吹から3ヶ月。 ・ 誕生から数億年を経て 安定した星々のように 君達も球状に成長したね。 この姿からはあの 超新星爆発の芽吹きは とても想像できないね。 ・ タイムマシーンに乗って 4月16日に戻ってごらん。 ほら、あの日は 朝、雪が降ったんだね。 そんな寒い中で 僅かに色付いた花芽が 固い決意を秘めて 深遠な宇宙へ 旅立ったんだね。 |
|
---|---|
林檎・球状星団 |
7月8日(土)晴 於 前庭石卓にて
山荘の収穫は いよいよ初夏の実り。 苺、桑の実、グミ ブラックベリーと朱や黒を 滲ませた小さな果実が プレリュードを奏で 杏子が収穫の歓びを歌う。 ・ 気がつくとプラムは すっかり食べごろ。 初めて山荘に登場した 枇杷の何と初々しいこと。 ・ 蜜をたっぷり含んだ 無花果も髪切虫に 幹を食われながらも もうすぐ収穫。 |
|
---|---|
髪切虫との闘い |
7月10日(月)曇 於 座禅草の森にて(朝トレーニング)
光の奥に 稜線の鞍部がある。 夜明けの光が 鞍部から差し込み 先ず森の梢に流れる。 直立する木々は五線譜に 光は音符になって 森のVitaに囁きかける。 ・ 光はゆっくり高度を下げ 梢から森の中へ。 やがて森・Moriは 死からの再生を開始する。 ・ 朝トレで出逢う この瞬間の森には いつも心を抉られる。 |
|
---|---|
朝霧の森 |
7月10日(月)曇 於 小倉山山稜にて
朝霧に煙る山稜の 朽ちた丸太段を 登っていたら いきなり挨拶された。 「初めまして!」 ・ そういえば確か 先週には見かけなかった。 というよりか ここ13年間も 見たことない。 今、菌糸類の図鑑を 毎週見てるけど 何処にも載ってないぞ。 ・ 「気にしない気にしない 森はいつだって 未知なVitaに 満ちているのよ」 |
|
---|---|
白素麺茸・Clavaria Vermicularis Fr |
7月9日(日)曇時々雨 於 坂脇峠ゲレンデ
(ルート:勤労感謝取り付きスラブ)
さあ! 林檎に倣ってもう一度 タイムマシーンに乗って。 行き先は5ヶ月前の 2月11日。 氷壁に辿り着いたかい? ・ 森があんまりにも 素敵なので ついつい森に入り浸って すっかりご無沙汰してた 垂直の世界へ 久しぶりに 戻ってきたんだ。 ・ 氷壁や岩壁の垂直には 迸る自由が 満ちているんだ。 |
|
---|---|
氷壁から岩壁へ |
7月9日(日)曇時々雨 於 坂脇峠ゲレンデ
(ルート:勤労感謝ハング中段)
重力呪縛から 解き放たれる世界 といえば珊瑚海の ダイビング。 ・ 垂直の登攀は 重力との闘いそのもの。 なのに登るほどに 心は呪縛から開放され とても自由になる。 ・ 特に垂直以上に 覆いかぶさった オーバーハングを 乗り越える時は 堪らなく愉快だね。 ダイビングにはないぜ。 |
|
---|---|
垂直への回帰 |
7月9日(日)曇時々雨 於 坂脇峠ゲレンデ
(ルート:勤労感謝上部ハングフェース)
最後のハングした岩壁。 ここで失敗し墜落すると 軟な肉体はクラッシュし Vitaは 呪縛に捉われてしまう。 ・ 精神は研ぎ澄まされ 岩壁の僅かな突起を追う。 昔打ち込んだ 錆びたハーケンを 凝視する。 ・ 総ての音が消え 静寂に満たされた肉体に 心臓の鼓動のみが 響く。 |
|
---|---|
重力の呪縛 |
文月・1週・・・生命の神秘
7月1日(土)曇 於 扇山山頂
霧は世界を 重く深くする。 確かに光は存在するが その根源は 0次元から3次元へと 拡散してしまう。 ・ 光が0次元の点から 差し込むことによって 多くの生命は 自らの存在位置を 確認する。 ・ 朝霧の山頂にありながら 存在位置を失い 生の座標消失に 唯うろたえる。 |
|
---|---|
朝霧の山頂 |
7月1日(土)曇 於 北の森にて(朝トレーニング)
数冊の図鑑を捲って オペラ座の怪人の正体を 追い求めた。 しかし何処にも 怪人の片鱗すら 見出せなかった。 ・ 我々が目にする 多くの生命体は 地球重力の支配を受け 対称形を余儀なくされる。 怪人は地球重力を 鼻で笑った。 《植物でも動物でもない 第3の闇を食う 生命体だと言ったろ》 ・ 生まれて初めて 目にした生命に唯驚愕! |
|
---|---|
オペラ座の怪人 |
7月1日(土)曇 於 前庭石卓
生まれて始めての 生命体に2度も逢うなんて 奇跡としか 言いようが無い。 ・ だがこちらはどうにか 仲間を突き止める ことに成功。 「狐の絵筆、狐の松明 縞犬の絵筆」 似てはいるが 先端部が決定的に異なる。 ・ 悪臭を放って 蠅を呼び寄せ胞子を 運ばせる戦略は 同一であるが 仲間は帽子を 被っていない。 もしかすると 闇を食う新種? |
|
---|---|
狐の絵筆 |
7月1日(土)曇 於 中庭石壁上にて
カリストの書庫で 図鑑を選んでいたら 出窓の方から いつもと異なる気配が 忍び寄る。 ふと中庭を見下ろすと 極彩色の鳥が 羽根を休めている。 「あれっ!山鳥かな それとも雉子か?」 ・ 尾の多数の黒帯は 共通だが山鳥には 黒白の斑があるはず。 とするとこれは雉子かな? よし下に降りて もっと近づいてみよう。 |
|
---|---|
珍客の訪問 |
7月1日(土)曇 於 2階東側出窓
あっ!雌も」居る。 山鳥は峰を隔てて 寝ると言われているのに 雉子はいつも一緒なの? ・ 山荘周辺では年に数回 見かける程度の鳥だが 山荘訪問は初めて。 何が目的? さては芝生が気に入って 巣作り偵察にでも? そういえば雉子は 畑や野原の平地を好んで 巣を作るとか。 ・ 中庭の石壁の突端に立ち 暫く展望を 楽しむかのように佇み やがて2羽揃って 眼下の盆地に消えた。 |
|
---|---|
雉子の雌 |
7月1日(土)曇 於 中庭石段にて
君が代蘭 この気品溢れる麗人は 何を隠そう 山荘のニンフなのだ。 13年前、この高台の森に 山荘を建てた後 庭の至る所に芽吹き 花開き 巨大鈴蘭の如く 山荘を彩ったのだ。 |
|
---|---|
しかもその繁殖力は 凄まじく 他の植物の 共存を許さない。 その強靭な根は 鉈で叩き切っても 生命を復活させる。 −10度の冬の寒さの中で 平然と緑葉を保つ。 ・ 今年も又 不死鳥の麗人が 山荘の初夏を謳う。 |
|
竜舌蘭科ユッカ属君が代蘭 |
この雄蕊の数に 圧倒される。 たった1本の雌蕊に 50本もの雄蕊が群がり 高雅な銀河を構成する。 ・ 星々は風に流れ 蝶に運ばれ果てしも無い 宇宙空間を旅し 一途に雌蕊を目指す。 ・ 何故星が旅するか 知らぬまま 星の小さな住人となって 私も又 旅をする。 |
|
---|---|
美容柳・ヒペリクム |
7月1日(土)曇 於 山荘下農道にて
ブラックホールの中央に 白熱する雌蕊。 周辺から奔流する 激しい光。 ・ 群青と漆黒の花弁に 象徴される深宇宙を 切り裂く光は 時間や空間そのものが 定義出来ない特異点を 予感させる。 ・ アインシュタインや ホーキングが 知力を尽くして 追い求めた世界を さり気無くこんな風に お前は 教えてくれるんだね。 |
|
---|---|
光の奔流 |
7月1日(土)曇 於 夜のテラスにて
3本のレーザー光線を放ち 射千玉の闇に踊る 精巧な宇宙ロボット。 ・ レーザーを紡ぎ 紡いだレーザーに 自ら乗って 深遠な宇宙に飛び出し テリトリーを拡大する。 宇宙空間に適合した 新素材のアームが 滑らかに動き 次々にレーザーを 固定する。 信じられぬ早さで 宇宙基地が造られていく。 ・ こんな光景を 宇宙の彼方から観測できる 機会を与えてくれた 夜の山荘に感謝! |
|
---|---|
射千玉(ぬばたま) | 闇の建築家・棚蜘蛛 |
7月1日(土)曇 於 奥庭果樹畑展示棚
鬱っとおしい梅雨雲を 通して光が 果樹畑の展示棚に届いた。 林檎とプラムの樹間に 2番窯で焼いた酒壷が 姿を見せた。 ・ 取っ手と注ぎ口で 平凡な容姿がほんの少し 救われたものの 死んでしまったと 諦めていた 酒壷に命が宿った。 ・ 未熟な果実が寄り添い 中絶してしまった生命を 酒壷に語る。 寡黙な酒壷は 蒼く沈んだ光を放つのみ。 |
|
---|---|
梅雨の淡い光 |
7月2日(日)雨夕刻晴 於 テラスにて
陶房で 雨音を聴きながら 土を練った。 大地を丸めて 菊練を続けると 大地は アンモナイトのように 渦を巻いて命を復活する。 ・ 人の創った音楽は やがて聞き飽きて しまうけど 雨音は際限も無く 心地良い。 土のアンモナイトにさえ 沁み込んで雨音は 大地を幸せにする。 ・ 黒い大地が微笑んだ。 微笑みは空に流れ 今夏初めての 大きな積雲になった。 |
|
---|---|
積雲・夏の使者 |
7月2日(日)雨夕刻晴 於 前庭石卓
ユーモラスな この顔は一度目にしたら 決して忘れられない。 どこか恍けていて 本人はとても真剣で。 ・ 声をかけると ゆらっと左右に体を振って 遠くの山にでも 語りかけるように ゆっくり動く。 ・ 本人はすっかり 植物のつもりでいて それでも時々忘れて こんな石卓に 乗ってしまったり。 それじゃ折角の擬態が 台無しだね。 |
|
---|---|
竹節虫・ナナフシ |
7月2日(日)雨夕刻晴 於 奥庭にて
未だ早春の余韻を残す 山荘の皐月初旬。 先ず北の森で 春蝉が一斉に鳴き出す。 その瞬間に早春との 決別がやってくる。 ・ 何とか春蝉の姿を捉えようと 森を何度も散策。 いつも赤松の遥か上方に コーラス隊は陣取り 姿を見せない。 ・ 2ヶ月も経って やっと蝉の影発見! 秋桜に止まった蝉に接近。 『あれっ!春蝉じゃない』 いつの間にか夏蝉に。 |
|
---|---|
にいにい蝉 |
7月2日(日)雨夕刻晴 於 西畑にて
僕、いがぐり君です。 あの日、最後のキューイ をワインで堪能した後 僕達を見に来たでしょう。 雄木の雄花から 旅してきた花粉と 目出度くドッキングして こんなに大きくなりました。 ・ そうか、あと収穫までの 半年間で大きな 星になるんだね。 星の内部に エメラルドをたっぷり詰めて 黒い星々を鏤め 精緻華麗な宇宙を 創造するんだね。 |
|
---|---|
受精後22日目 |
7月3日(月)曇時々晴れ 於 東の森農道(朝トレーニング)
N(北)ルートから 東の森へ抜けると 孔雀蝶が待っていた。 そう、あの学名 Inachis Io geisya Stichel 木星の恋人。 ・ ところで種名はIoだけど 亜種名のgeisyaに 気づいた人いるかな? あんまり鮮やかなので 和名の芸者が使われて いるんだ。 ・ いつもは警戒心が強くて 近づけないのに 今朝はどうして 待っていてくれたの? |
|
---|---|
Io Geisya |
7月1日(土)曇 於 西畑にて
源氏蛍と遊んでから バイクで山荘に向かったら 突然、目の前に 現行犯出現! ・ 驚いたね。 犯人は猪ではなく 狸とほぼ断定し 狸の身長に合わせ 柵を作って 馬鈴薯を保護したのに 実は鹿だったんだ。 鹿だったら楽々と柵を越え 馬鈴薯食べ放題。 ・ 畑に行ってみたら この有様。 これで今年の馬鈴薯は 全滅だ。 |
|
---|---|
現行犯目撃 |
7月3日(月)曇時々晴れ 於 前庭にて
何だろう? 寄生虫だろうか? 先週は見かけなかった。 ・ よく見ると 茶色い歯ブラシは あちこち 沢山発生している。 有害な虫ならやっつけねば。 欲しくて数年来探し続け やっと今春手に入れた 貴重な凌霄花 (ノウゼンカズラ)だもの。 ・ 梯子をかけて 近くで観察。 《根っ子だ!付着根だ》 そうか こいつで足場を作り 木を駆け巡り 他の樹木を乗っ取って 無数の橙色の灯を 灯すんだ。 |
|
---|---|
特殊兵器 |