その34秋ー2008年長月
9月1日・・・異抄本・風の又三郎
光の葡萄豊穣 9月1日(月)晴 東の森 どっどど どどうど どどうど どどう
さわやかな九月一日の朝でした。青ぞらで風がどうと鳴り、日光は山荘の森いっぱいでした。青いくるみも吹きとばせ すっぱいかりんも吹きとばせ どっどど どどうど どどうど どどう 葡萄の葉に宿った朝露がキラリと光りました。 |
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光のタピストリー 嘉助は 仰向けになって 空を見ました。 空がまっ白に光って 森に突き刺さり ぐるぐる回り たくさんの光の矢が 次々に 生み出されるのです。 ・ そのこちらを 薄いねずみ色の雲が 速く速く走っています。 ・ そして カンカン鳴っています。 嘉助はやっと起き上がって せかせか息しながら 小倉山のほうに 歩き出しました。 山頂で高田三郎が 待っているのでしょう。 |
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毎日毎日冷たい雨が降り続いて 森は暗く押し黙って、まるで夏ではないようでした。 夏の最後の日8月31日の夜も雨は止まず 2学期の始る9月1日の朝を迎えました。 ・ どうでしょう朝になった途端、森には太陽が満ち溢れていました。 山荘の森はこの日が《風の又三郎》のやって来る日だと 知っていたんです。 |
桎梏の亀裂 森の中には今 犬と三郎が通った跡らしく かすかな道のような ものがありました。 嘉助は笑いました。 ・ そして (ふん、なあに犬どこかで こわくなって のっこり立ってるさ、) と思いました。 そこで嘉助は 一生懸命それを つけて行きました。 ・ 犬は森が大好きなのに あんまり暗いので 怖くなって迷ってしまい 三郎も見失って 途方にくれているの? ・ その時一すじの光が闇を さいて森のさけめに さすらい人を 映し出しました。 |
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朝の光を一杯に浴びながら、さて今朝はどの森に行こうかと 嬉しくてスキップしながら奥庭に出てみました。 ところが変なのです。 いつも尾を振って歓びを全身で表しながら飛びついてくる 2匹の犬、悠絽と舞瑠が居ないのです。 さては、朝の太陽が嬉しくて我慢できなくて嘉助を置いて 三郎と一緒にもう森へ行ってしまったのかも知れません。 ・ 急いで森に出てみると一すじの光の風が『どぅー』と吹いてきて 森の闇に囚われたさすらい人が見えるのです。 |
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光の葡萄 森の光の中から かすかな声が 呼びかけています。 ・ 現れたのは見知らぬ 村里の農婦でした。 収穫した大きな葡萄・ 巨峰を手にして 「おおむぞやな。な。 なんぼが泣いだがな。 さあ、食べなはれ。 全体どこまで 行ってだった」 ・ 大きな葡萄は早速 朝の食卓を飾り 森の囚われ人の 生還を祝ってくれました。 ・ 今年初めての甘い葡萄に 舌鼓を打ちながら ワインを口にした時 いつもの食卓を 共にする犬が 居ないのに気付きました。 |
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冷たい雨に濡れそぼり森の闇に視力を奪われ さすらい人はすっかり精気を失って、唯黙って佇んでいました。 光の風に映し出されたさすらい人は先に行った三郎と2匹の犬だ と思いましたが そのうち何だか嘉助自身のような気がして心がしんと痛みました。 森が冷たく濡れて体温を奪ったり闇で覆い視力を奪ったり そんなのはよく知っているのに 嘉助はやはり森に囚われてしまったのでしょうか? ・ そのときです。あの詩が聴こえてきたのです。 どっどど どどうど どどうど どどう |
世代交代 今朝の森の散歩には 犬を連れてなかった ことに気付き 散歩そのものが 光の幻想だったのかとも 嘉助は 思い始めたのです。 ・ 来週は悠絽も舞瑠も 山荘に連れてきて もう一度犬達と 森の闇を追ってみよう。 ・ それでも迷路に陥るなら もう森に入るのは 止めなければなるまい。 と思いつつ池を覗くと 真鯉は総て死に絶え 山荘池の主が いつの間にか 緋鯉に入れ替わってます。 何のために だれの仕業でしょうか? ・ 「そうだないな。 やっぱりあいづだな。 風の又三郎だったな。」 嘉助が 高く叫びました。 ・ 叫んだとたんに 嘉助も一郎も2匹の 緋鯉になっているのに 気が付きました。 |
二人はしばらくだまったまま 相手が本当にどう思っているか探るように顔を 寄せたままじっと佇んでいました。 ・ 風はまだやまず 窓ガラスは雨つぶのために曇りながら またがたがた鳴りました。 |
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最初の秋 「みなさん 長い夏のお休みは おもしろかったですね。 ・ みなさんは 朝から水泳ぎもできたし 林の中で 負けないくらい高く叫んだり またにいさんの草刈りに ついて 行ったりしたでしょう。 ・ けれどももう きのうで 休みは終わりました」 |
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9月1日(月)晴 ゲート(紅葉したキウイ) |
長月1週・・・犬橇合宿に学ぶ
褄黒豹紋の雌 姫赤立翅なのか それとも褄黒豹紋なのか 同定の決め手が 解らず迷い続けて早3年。 ついに決着が着いた。 ・ 端の黒い(ツマグロ) 豹の文様(ヒョウモン)をした 美しい蝶が同定 出来なかったのは雄の 容姿に在る。 ・ 動物は普通雌より雄 の方が美しい。 雌にアピールし生殖機会を 得る為の装飾である。 ・ 当然、褄黒豹紋も雌は 目立たないと 先入観を持っていたのだ。 ところが褄黒は逆で これは雌。 ・ 雄は実に地味な目立たぬ 色彩でとても雌の 関心を惹くとは思えない。 雌の画像を調べて 初めて気付いたのだ。 |
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鹿の子蛾の交尾 動物にとって交尾が 危険に満ちた瞬間である ことに間違いはない。 動きが制約され 捕食される危機が増す。 ・ その危険な瞬間から 逃れるために交尾しつつ カノコガは飛翔する。 ・ 交尾して無くても よろよろと飛ぶ鹿の子蛾 が交尾しながら 飛ぶなんてどんなにか 無様であろうかと 心配してたが普段と 変わりない飛翔に驚いた。 ・ 調理虫としての 鹿の子蛾は以下参照。 (6月のHPの鹿の子蛾) |
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9月6日(土)晴 東の森 |
豪快な疾駆 2頭立の犬と共に 豪快な疾駆を するにはどうしたらいいか? ・ 2本のリードを握って 背の高い薄の藪を 抜けた途端に2頭が 揃って先に段差をジャンプ。 ・ 慌てて一緒にジャンプしたら 着地前に2頭が走り出し リードを取られ転倒。 冴えないスタート。 ・ これじゃ豪快な 疾駆どころかジョックさえ 覚束ない。 さてどうしたら旨くいくのか? ・ 4頭の犬を繋いで 悪戦苦闘しつつ 氷原を走らせた7年前3月の アラスカ犬橇合宿。 雪と氷に覆われた大地を 走った記憶が 昨日の如く鮮やかに甦る。 ・ アラスカ犬橇合宿 3月のチベット訓練合宿が 北アルプスから アラスカへ変更され 3名でフェアバンクスに 飛んだのは 3月28日であった。 ・ 11年周期の太陽黒点活動 極大期にあたる2001年 オーロラの煌く国で 犬橇と共にアラスカの 氷の森を走った。 |
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初日に14頭立のアラスカン・ハスキー率いる 犬橇で犬橇初体験を行い翌日 犬橇スクールに入校し犬橇の基礎を学ぶ。 各自4頭の犬を与えられ アラスカの氷の森を 終日走った。 |
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俄かマッシャー 夕日が氷原の彼方を染め 森の木々が 長い影を引く。 オーロラの森に疾走する ハスキー犬の 激しい喘ぎが音も無く 森に吸い込まれていく。 ・ 広大な森の静寂は 総てを呑みこみ ハスキー犬の激しい 喘ぎさえも太古の静寂に 還元してしまう。 ・ 予想を超えた素晴らしい 体験に3人共我を忘れ 1人前のマッシャーに なった気分で帰国。 ・ 想いは早くも来年の 長距離犬橇ツアー計画に 及び、夢は膨らむ。 ・ マッシャーの仕留めた 巨大な箆鹿(Moose) の角を寄贈され 山荘ゲートに飾った。 ・ 角を眺めては 来期犬橇合宿へと 想いは走る。 今後3月は当分犬橇合宿に なりそうな予感。 ・ アイディタロッド 犬橇といえば 犬語を話すと言われる 当会会員のTomo氏を 抜きにして語る 訳にはいかない。 |
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マッシャーとして 数年のトレーニングを重ね 彼は現在バンフの 冒険学校で インストラクターとして活躍。 ・ 又今回、犬橇で走った森 の近くにアイディタロッド 出場の船津圭三氏が 住んでいるので 犬橇合宿の相談に 乗ってもらえそう。 ・ 今後の犬橇計画に 両人の技術を吸収して アラスカに夢を 広げよう。 ・ 北洋のアンカレッジから アラスカ大陸を 横断し1840km彼方の 北極海ノームを目指す アイディタロッドの ミニコースを想定し 練習に励むのも悪くない。 ・ 極寒の世界を走る 嬉々とした犬達の表情 抱きしめた時の 犬の柔らかな温もり。 ・ 唯それだけのことが 豊かな歓びをもたらす。 この歓びは 生命そのものへの讃歌。 ・ 3人の想いは 早くも来期3月の犬達との 再会に広がり胸を 熱くしているのである。 |
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犬こそ命 アンカレッジと フェアバンクスは米国で あってアラスカでは ないという。 ・ この2つの点を離れると 電気も水道も無い 剥き出しの凍てついた アラスカの大地が 茫漠と拡がる。 ・ 森の木でログハウスを建て 小川の水を引き 自家発電をし苛酷な自然 との闘いを 余儀なくされる。 ・ 犬橇で走った森に住む アラスカンは 「隣の家まで10マイル(16km) もあり子供達は 遊びに行くのも学校に 行くのも犬橇を使う」と言う。 ・ なぜ便利なスノーモービル を使わないのかと尋ねたら 《死なないため》との 答えであった。 ・ 走っている途中で スノーモービルが故障したら アラスカの極寒は 生命の存在を許さない。 ・ 人間はムースや犬の のように自力で アラスカの極寒に立ち向かう 術を持っていない。 ・ 犬はエンストを起こさない。 それだけでなく 主人が吹雪で道を失っても 犬はきちんと家まで 連れ帰ってくれる。 |
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犬を抱きしめることにより 緊急時の暖をとることも出来る。 更にリーダー犬は ヒドンクレバス(見えない氷亀裂)を察知出来ると言う。 ・ 6月にやっと春が訪れ7月に夏そして8月に秋となり 残りの9ヶ月が冬という極寒に住む アラスカンにとって 犬は命の伴侶なのだ。 |
犬語・4つ アラスカの犬語は 4つである。 前進は『ハイク』 止まれは『ウォー』 右折は『ジー』そして 左折は『ホー』。 ・ 但しイントネーションに 注意しないと 犬は当然無視する。 ハイクは高く大きく明るく。 ウォーは低いバスで。 右左折は鋭い声掛と同時に 橇上で体重移動をする。 ・ 4つの犬語を教わり 犬にハーネスを締める。 元気なクリックは ハーネスを締めるまで 待てないで激しく 飛び跳ねる。 ・ もう嬉しくて嬉しくて 森の彼方を見つめ 飛び出したいと咆えるので ハーネスが締められない。 ・ トラックを数周走り 4頭のチームワークを整える。 先を行くエコちゃん橇は 遅い上に直ぐ止まって しまうので我橇の リブは右側から追い越そう と拍車がかかる。 ・ エコちゃんが『ハイク』と 必死に叫んでも 春風駘蕩、何処吹く風で のたりのたり。 ・ 調整が終わり いよいよ3隊の犬橇が 森へ出発。 さてどうなるか? (会報bQ014より) |
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素晴らしい疾駆 早速アラスカ方式で 悠絽と舞瑠を 短く繋いでみた。 ・ リードが2本になると 夫々別方向に 動いてしまうので短く 繋いで長いリード1本で 動きを統一する。 ・ さて先頭を早い舞瑠に するか遅い悠絽にするか 試走してみる。 ・ 早い舞瑠を後ろにすると 追い立てられる悠路が スピードアップするかと 期待したが駄目。 勝手に舞瑠が トップに出てしまう。 ・ 舞瑠をトップにして 走るとぴたり悠絽が後に付き 抜群のチームワーク。 なんと登り坂でさえ バイクをぐんぐん引っ張る。 |
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訓練の結果、実家への帰宅は2頭一緒のバイク走行が 実現したのである。 山荘の雪の季節には悠絽と舞瑠2頭での 犬橇の夢が実現するかもね。 |
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秋桜山荘 忘れずに今年も秋桜が 山荘を彩ってくれたのに 何やら雑音が畑から 聴こえてきます。 ・ 『通奏低音として 山荘には コスモスが流れ続けて いるのだから 山荘が総て秋桜に 覆われたって当然よね!』 ・ 「いやいや違うね。 チェロやコントラバスだけで バロックが出来てる訳 ではないのだよ。 多様な秩序の上に コスモスは成立するんだ」 ・ それでせっせと畑の 秋桜を抜いて 多様な種子を沢山蒔いて 枝豆なんか 殆ど収穫出来なくて・・・。 ・ その上秋桜だって こんなに萎縮してしまって 2年前の秋桜を見てご覧。 見事でしょう! |
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曼殊沙華の池 あっ! 思わず叫んでしまう。 その瞬間に秋が 一気に押し寄せて来る。 ・ 曼殊沙華は それを知っていて 或る日突然真紅の華を 咲かせるのだ。 ・ 葉も出さず するすると茎だけを 忍びやかに伸ばし 或る日一瞬にして花開く。 ・ ワイングラスを傾けて ぐいと視線を 逸らしたら石卓の奥に 真紅が散ったのだ。 ・ 前庭の曼殊沙華が 咲いたのなら 池のもきっと咲いてる。 ・・・ ほーら、やっぱりね。 |
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Okraの秋 やっと逢えました。 ・ 胸がキューッと 締め付けられる清楚な 美しさでひっそりと 咲いている山荘のオクラ。 でも花は注目されず 実だけがいつも期待されて 忘れ去られる花。 ・ 5月12日のオクラ 覚えてますか? 寒さに弱いのでミニ温室を 作って大切に育てた あのオクラが次々に開花し 待っていたんです。 ・ でもタイミングが悪くて カメラを持って 畑に出るともう実だけに なっていたり・・・ ・ 清楚でしょう! |
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厳!バイクで登場 消息を絶っていた ゴンが 数年ぶりに姿を現した。 ・ アラスカに消えた Tomoと同じように或る日 突然ぷっつりと 音信を絶ってしまったゴン。 ・ 誰もが風の便りに 微かな存在を知るのみ であったのに 何の予告も無しに 突然ゴンがやって来たのだ。 ・ 山荘ワインの仕込みが 9月中旬の土曜日 だったと覚えていて やって来たのだろうか? |
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大きな唐傘茸 葡萄が入荷せず ワインの仕込みは延期。 予定して仕込んでいた スペアリブを持って やって来た村上さんと 鉢合わせ。 ・ それじゃ久々に 森を走って村上さんの 料理をご馳走になろうか? ・ あれ!おかしいぞ? あれほど余所者に敏感で 直ぐ咆える犬達が ワンとも言わず ゴンと会話している。 ・ まるで昔からゴンを 知っているかのように 無防備に頭を 撫でさせているし 森にも付いて行くではないか。 |
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東の森 9月13日(土)晴 |
厳!颯爽と森を走る 「ワインの仕込みが 来週に延期になったけど 来ないか? 久々に美味しいスパイシー 手羽先を作ってくれよ」 ・ 「ハイ!泊れませんけど 来ます。 手羽先作ります」 ・ 「デザインの仕事は どうなってるの?」 ・ 「会社でのデザインと 個人受注と両方 やってます」 ・ そんな会話を交わしながら 汗びっしょりになって 森と山稜を走る。 ゴン!相変わらず 寡黙ないい顔してるね。 |
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P2山頂 9月13日(土)晴 |
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すっかり治りました すごい復活力! 消えてしまった黒い顆粒・ ボツボツが 再生してきたぞ! ・ 弾力に富んだ黒い 顆粒状角質層部分が まるで木々が芽吹くように つんつん。 ・ でも心配だな! もっともっとグングン延びて 元のように長くなるのか それとも短くなって 強い顆粒になるのか? ・ 舞瑠は森に入る度に 野生の本能を甦らせて 逞しくなっている。 きっと狼のような強い顆粒 を生やすんだな。 ・ あーこれだけじゃ 何のことかさっぱり解らんね。 8月の肉球画像を 見てご覧よ。 |
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山荘にも栗が 茶色くなった毬(いが)が 枝から落ちて転がる。 爆ぜて飛び出した 栗の実が山道に散る。 ・ 山の栗鼠が 見逃すはずは無い。 幾つかは食べられ既に 穴が空けられている。 ・ こいつを茹でて裏漉しし クリームをホイップし 一緒にカクテルグラスに 乗せると 山荘産モンブランになる。 ・ さて山荘の栗もそろそろ 爆ぜる頃かな? |
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西の森 9月14日(日)曇 |
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闘う日本蜜蜂 西洋蜜蜂を4箱まで 増やして どっさり蜂蜜を採って 採れたての蜂蜜を 山荘パンに塗って食べたり ビアのフレーバーに したり・・・ ・ でも肉食の熊ん蜂に 毎年襲われて 女王蜂も食べられてしまい ついに全滅。 ・ その後 まるで山荘主の願いに 応えるかのように 日本蜜蜂がワインセラーの 横の石垣に巣くった。 ・ 軟(やわ)な西洋蜜蜂と 異なり日本蜜蜂は 団結して熊ん蜂を撃退 するのだ。 ・ 取り囲んで熊ん蜂の体温を 上げて殺してしまう。 今正にその反撃態勢に 入った瞬間である。 ・ 残念なのは石垣の奥 なので蜂蜜を 採ることが出来ない事。 |
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大きくなったね! 覚えていますか? 早春の山荘池に 産み付けられた銀河の ような蛙の卵。 ・ 孵化して蛙に 成るまでの画像をHPに 載せましたが その後小さな蛙達は 全く姿を消してしまい何処へ 消えてしまったやら! ・ ところがな、な、な何と 突然2階の寝室に 現れたのです。 総てのドア、窓ガラスは 網戸で覆われ蛙の 飛び込む隙間は これっぽっちも無いのです。 ・ 2階まで階段を昇って 遥々逢いに 来てくれたんだね。 逢えてとても嬉しいよ。 ・ 早速池に返してやりました。 |
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演奏家・露虫(つゆむし) 少々寒くても 寝室の窓は全開にして 寝るんですよ。 ・ 勿論いつも静かに流す オーボエのCDも 消して山荘の演奏家達の 演奏に 耳を傾けるのです。 ・ 1つ1つの透明な音色が 重なり離れ それはそれは絶妙な 波動を生み出し まるで銀河宇宙そのものが 奏でているような・・・ ・ 考えてみれば 秋の虫達は 宇宙が生み出した 小さな小さな 子供達だったんですね。 |
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前庭 9月14日(日)曇 |
究極の彩・玉虫 はらりと光が舞った。 無花果の大きな枯葉に 舞い降りて呟いた。 ・ 『今年も生きて 逢うことは 出来ませんでしたね』 ・ そうでした。 昨年もテラスに その虹のような彩だけを 残してひっそりと 光っていましたね玉虫さん。 ・ 山荘庭には貴方達の好む 欅や楡の木も 在るのでここで生まれ 育ち光を放っているのは 知っているのです。 ・ 夏が訪れる度に 生きている貴方に逢いたいと 想いつつ15年が 経ってしまいました。 永劫に逢うことは 叶わないのでしょうか? |
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長月3週・・・最後の山荘ワイン仕込み
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チベットへの夢 「凍りついた岩壁なんか よう登ったなと 驚き感心しますわ。 厳冬期八ヶ岳の 小同心クラック登った時も 北岳バットレス4尾根も 忘れられません」 ・ 「凍りついたザイル アイゼンの刺さらない 硬い氷壁との 極度に緊張した対峙 バットレスでは 最後にスニーカーでラッセル しましたね」 ・ 「センセ、濡れたので 靴下貸してくれと言うので 貸したら女物だ とか文句言って 覚えてますか?」 ・ 「えっ!そんなこと あったの?」 |
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再々再変更 「醸造用ベリーAなんぞ作る人は年々減少し もうおらんよ。 ・ 種無しの巨峰、ピオーネ、デラウエアとか ナイヤガラなんぞ儲かる葡萄しか作らんし 大体葡萄畑の跡継ぎがおらんけ無理や」 ・ 何度電話してもワイン用葡萄ベリーAは入荷せず仕込み日は 1週間遅れ20日に変更。 ・ だが20日直前になっても葡萄は入荷せず 再度1週間延期と決まった。 これでは山荘のワイン造りも今年が最後になるのだろう。 |
そんな会話をしながら 葡萄を蔓からもいで 樽に詰める。 ・ 「もうセンセはチベット 行きはらんの? ベースキャンプまで行って 絵を描きたいわ」 ・ 「大田、村上や木村、栗田に 声かけてみようか? 問題は会社の中堅として 活躍している 栗田、木村の休暇が 取れるか否かだな。 難しいだろうが 実現したら最後の チベット遠征になるかな!」 ・ 静かで豊かな時間が ゆったりと流れる。 |
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倉庫 9月20日(土)曇 第二工程仕込み が、19日の朝、市場から今朝入荷との報。 再々再度変更し20日に仕込み実施決定。 ・ 即メールを流すがそう度々変更されたら 山荘会員も時間の調整は難しい。 ・ それでも大阪、東京、川崎から3名が駆けつけ 計4名での仕込み開始。 ・ 幸い恐れていた台風13号の直撃は免れ 晴れ間さえ覗く前庭で120kgの葡萄を のんびりともぎとりながら会話が弾む。 |
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モンブランならぬ K2 薩摩芋を茹でて裏漉しし 茹栗を 潰して混ぜる。 ・ 更にバターと バニラ棒入りのラム酒を たぷり加え攪拌。 ・ 3時間かけて完成した スイートマロンに 生クリームをホイップし 乗せて試食。 ・ うーん、甘すぎて パンチがない。 よしクリームの代わり ヨーグルトにしてみよう。 |
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で、出来たのがモンブランならぬK2。 これワインの摘みに最高、と自画自賛の山荘主。 ・ 厳君はお得意な定番スパイシー手羽先 岩本さんはコロッケ、シシャモ唐揚、キンピラと 夫々の料理が並ぶ。 ・ 悠絽も舞瑠も加わってさあ、乾杯! |
深夜の森彷徨 光る姫蛍幼虫 砥ぎすまされた 刃の美しい その切っ先によく似た そなたの横顔 ・ 夜が深まるに連れて 舞瑠の瞳が 在らぬ彼方へ妖しく流れ 横顔が研ぎすまされた 刃の様な美しさに 満たされ サンの表情を帯びる。 ・ 人間共がテラスでワインに 酔い痴れているうちに 闇に紛れて 森の精、もののけ達が 舞瑠に乗り移り 深夜の森へといざなう。 ・ 舞瑠、悠絽の後を追って 深夜の森に入る。 そこかしこに蒼白い仄かな 光が星のように揺らめく。 |
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・ 舞瑠の足が止まる。光は生きていた。 姫蛍の幼虫の尾部が光を放っているのだ。 ・ 森の精のいざないの目的はこれだったのか! 初めて目にする 幻想的光景に言葉無し。 ・ 森の漆黒と姫蛍の蒼白い光が 互いを呑み込もうと絡み合い離合集散し やがてカウンターテナーに昇華し 静かに悲しみと怒りの詩を詠う。 はりつめた弓の ふるえる弦(ツル)よ 月の光りにざわめく おまえの心 砥(ト)ぎすまされた 刃(ヤイバ)の美しい その切っ先によく似た そなたの横顔 悲しみと怒りに ひそむまことの心を知るは 森の精 もののけ達だけ もののけ達だけ |
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早朝の畑仕事 「さてそれでは 朝の散歩の前に中畑の 唐黍の収穫と 畑の整地をしようか?」 ・ 深夜の散歩で疲れたか 起床時間の6時に なっても起きて来ない 厳君と伊藤君に 声を掛ける。 ・ 収穫した大量の唐黍は キッチンで岩本さんが 2つの大なべで即茹でる。 1年分の山荘保存食 造りの開始である。 ・ 伊藤君の感想。 「これマジできついですよ。 過重労働で 労働基準局に訴えますよ」 ・ 甘いね! これから本当の試練が 待っているのにね。 |
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岩登り開始 本当の試練は 標高2千メートルの岩場で 手薬煉ひいて2人と 2頭の犬を待っていたのだ。 ・ 鎖場の鎖は切れ 岩場は鋭く切り立ち ルートは極めて不明瞭で 常に登山者の影は無い 大菩薩富士見新道。 ・ 山荘主のお気に入りの ルートで 大好きな人が来ると 最大の供応のつもりで 必ずここに連れて来るとか・・ ・ あーあ! これだから折角新会員が 山荘に来ても 2度と姿を見せなく なっちゃうんだよな。 ・ でもこれって若しかすると 山荘のバプテスマ? |
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垂直の岩壁だ! 「あれ! 鎖がズルズル落ちる」 ・ 「あーこれ掴んじゃ 駄目だよ。腐ってるから 体重掛けたら 墜落するぞ」 ・ 「どうすりゃいいんですか?」 「鎖を無視して自分の 手と足で登るんだよ」 ・ 「犬、どうするんですか?」 ・ 「昨夜、森の精と もののけ達が乗り移った から大丈夫だよ」 ・ 「僕には何も 乗り移って ないんですけど・・・」 |
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神成岩下部 9月21日(日)曇 |
悠絽の挑戦 表情が実に面白い。 ・ 悠絽は一目 岩壁を目にするなり 目を逸らし決して見ては いけないものを見てしまった ような顔をして 在らぬ方を見つめるのだ。 ・ 「悠絽ファイト!」 と声掛けしても我関せず。 ザイルを引くと 《もののけ達》のスイッチが ONになったか 両足を開き垂直の岩壁を 敢然とアタック。 ・ 「そう、そうやって 両手を突っ張ってチムニー を登るんだ」 |
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神成岩下部 9月21日(日)曇 |
舞瑠 壁をジャンプ 舞瑠はてんで凄いのだ。 垂直の岩壁に 自慢の足爪や肉球が 役に立たないと知るや否や 大胆にジャンプし 一気に狭いテラスに上がる。 ・ 狭いテラスに体が留まるか どうかの判断は一瞬。 不可能と知った時は じーっと人の顔を伺い 『Go!』のサインを待つ。 ・ ザイルを引いてGoサインを 出すと決して臆せず 垂直を駆け上がる。 ・ やはり舞瑠は 昨夜から 《サン》になったのだ。 |
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神成岩下部 9月21日(日)曇 |
犬の初登攀 深い霧が立ち込め 岩や木々は しっとりと濡れそぼり 登攀終了点2千メートルの 山稜には人影無し。 ・ 初めての冒険に 興奮した舞瑠の表情。 激しく喘ぎながらも 凛々しい 表情を見せる悠絽。 ・ 厳君と伊藤君の 笑顔が実に眩しいな! あー、だがしかし この笑顔の裏に隠された 両君の心象風景が 如何なるものか たれぞ知る。 |
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登攀終了点 9月21日(日)曇 |
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七竈の紅葉 岩場から稜線に出ると 途端にハイキング。 なだらかな2千メートルの 頂稜が雲海を従えて 遥かに続く。 ・ 早くも色付いた七竈が 白い霧の中に 鮮やかな朱を散らす。 ・ ナナカマドは 北アルプスに通い始めた頃 真っ先に知った花。 残雪の残る穂高の圏谷を 赤く染める絨毯。 ・ 七回くべても 火がつかない程湿って いるのでナナカマド。 火をつけなくても 山々を 真っ先に赤く染める七竈。 初秋の使者。 |
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葡萄水 宮沢賢治のワイン 《葡萄水》をそっと 覗いてみる。 どうなってるかな? ・ 葡萄の赤い皮が ぶくぶく浮いてきて アルコールと炭酸ガスに 変身した葡萄が 泡と成り 新たな星を形成する。 ・ 中央下の黄緑を留めた 楕円球体は未だ アルコールに分解されない 葡萄の実。 ・ これが総て消えると 一次醗酵が終わる。 その後、種と皮を濾過し プレス機で 葡萄の皮を絞る。 ・ この生まれたてのワインが どれ程美味しいか! それを知るは 杜氏にだけ許された贅沢。 |
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長月4週・・・秋と修羅
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ちょっくらご免! praying mantis 《さびい! もう冬か?早すぎるぜ 随分陽が短くなって ほらこんなに影が くっきりと長くなってしまって》 ・ 外は寒いのか 螳螂(カマキリ)が網戸と ガラス窓を超えて のっそり居間に入って来た。 ・ 銀色の目玉をぎょろりと 上に向けて モノローグは続く。 ・ 《ところで俺らの英名が 祈る預言者だって 知ってるかい?》 ・ 知ってるよ。 それで一体何を予言しに 来たんだい? |
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楠蚕(くすさん)の雄 寒くて震えているのは 《祈る預言者》 だけでは在りません。 ・ 大きな目玉を描いた 翅を開いたまま 楠蚕も動きません。 この秋2度目の使者が 北からやってきたのです。 ・ つめたーい空気が 森を包み 夏に活躍した生命が 眠りと死の 準備を始めたのです。 ・ この様にして 生命は《有機交流電燈》 のように せわしくせわしく 明滅しながら・・・ |
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東の森 9月25日(土)晴 |
心象のはいいろはがねからあけびのつるは くもにからまり のばらのやぶや腐植の濕地 いちめんのいちめんの |
あけび再会 わたくしといふ 現象は仮定された 有機交流電燈の ひとつの青い照明です。 ・ (あらゆる透明な 幽霊の複合体) ・ 風景やみんなと いつしよに せはしくせはしく 明滅しながら いかにもたしかに ともりつづける 因果交流電燈の ひとつの青い照明です。 『春と修羅・序』より ・ 《あけび》が 暗い森の青い照明 となって四季の一巡を語る。 初めてここで お逢いしてからもう 一年になるんですね。 |
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日向ぼっこ ZYPRESSENを背景に 未だ9月だと言うのに 寒いのである。 ・ 森の散歩を終えて 石卓の木陰で朝食。 いつもなら 食べてる最中に 陽が高くなり木陰が 日向になり暑くて日陰の 椅子に逃げる。 ・ ところがいつになっても 陽は高くならず 石卓は日陰のまま。 寒いのでグラスを持ったまま 日向に移動。 ・ もうすっかり 太陽は南回帰線への 旅を開始したんだね。 こんな風にして 太陽は因果交流電燈を せわしく明滅させて 生命を司っているんだ。 |
碎ける雲の ZYPRESSEN春のいちれつ |
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以下人物画像:村上映子 |
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葡萄搾り開始 さてそれでは 先週仕込んだ葡萄を 絞ろうか! ・ 倉庫のワイン樽を 運ぼうと奥庭に出ると 悠絽と舞瑠が 飛び掛って来る。 ・ 振れる限り尻尾を振り 瞳をキラキラさせて 両脚を高く上げ 山荘主に抱きつく。 ・ 一瞬の隙をついて 顔をペロリと嘗められる。 こうなったらもう 葡萄搾りを一緒に やるしかない。 ・ 解ったよ。 それじゃ前庭に行って 一緒に葡萄を搾ろう。 |
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ギャラリー2頭 閑だなー! 黄緑宝石のような 皮を剥かれた葡萄が 黒い皮だけを 浮かばせ総て融けた。 ・ ワインをたっぷり含んだ この皮をプレス機に 入れて搾る。 プレス機の篭から 真紅のワインが 紅蓮の炎となって噴出す。 ・ 甘い香りに惹かれて 蜂がやって来る。 森の中ではきっと熊も この香りに気付いて ワインを狙っているのだ。 ・ それにしては暢気な 悠絽と舞瑠。 せめて熊接近警報係 として使えるかと 思ったが丸くなって 寝ているばかり。 ・ 森の散歩と信じて 付いて来たら つまーんないワイン搾り。 きっとむくれているんだ。 |
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未知なる天体 EXTREME ULTRAVIOLET IMAGING TELESCOPE MOST RECENT CHROMOSPHERE IMAGE ワインプレス機を 覗き込んだ途端に目を 射たのは 《未知なる天体》であった。 ・ 《春と修羅》が飛び交い 《晶邂逅》が踊り 祈る預言者が 時空を貫き紅蓮の炎を 噴き上げ 死の胎動を詠う。 ・ ・・・ 海の生命はマリンスノー となって光の絶えた 深海底に音も無く降り続け 降り続け 数億年のときを経て堆積し 第3惑星の熱い アンブラッセによって 変成し晶を結ぶ。 ・ 数億年前の生命の骨格は 炭酸カルシュームの 無数の晶となり 第3惑星の胎動により 褶曲し漆黒の宇宙へ 突き立てられる。 ・ 晶の無数の集合体は その白く抜けるような肌を 払暁の光に晒し 地平に沈む恒星の スペクトルを反射し 血を滲ませる。 ・ 大理石は朱を滴らせ 深海の追想の漆黒から 新たな漆黒 胎動の彼方へ ・・・・・ 『チベット未踏無名峰へ』 の《晶邂逅》より抜粋 ・ 修羅の10億年を経て 生命の意図全貌は 明らかになったのだ。 |
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秋と修羅 春の太陽を吸い込んで青い芽を吹き 夏の強い日差しを浴びて無数の球体を結実し 更に南回帰線に向かう日輪から貪るように最後の光を球体に吸収し 葡萄は唯ひたすら太陽を蓄え続けた。 ・ その葡萄を搾ったら再び太陽の光となって紅蓮の炎を上げ ワインが迸り 未知なる天体として巨大な球体が誕生するのは 自明の理であった。 ・ 太陽は葡萄の肉体を媒体にして光をワインに変え巨大天体を生み 永劫の輪廻転生を繰り返す。 秋の訪れと共にやって来るこの光の輪廻転生を 《秋と修羅》として心象風景に描き初めて早十数年。 修羅の終焉は迫る。 |
雲海に沈む山荘 初秋のたなびき あの雲海の中に 方舟としての 山荘が確かに存在し 未知なる天体が 爆発を続け 祈る預言者がこの瞬間も 死の胎動を 激しく詠っている。 ・ その驚くべき 淡々たる事実を 見つめるために おれは ひとりの修羅に なって山に登るのだ。 |
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小倉山山頂 9月29日(月)曇 |
週末からメキシコ・コルテス海のラパスまで、ちょっと出張です。
ラパスで《フィエスタ号》に乗船しクルージング開始。
この時期可愛らしいアシカの子供がじゃれついて
ダイバーを歓迎してくれるとか。