山荘日記

その36秋ー2008年霜月

 


11月1週・・・秋の創作・芸術の秋





11月1日(土)晴 ゲート
秋の創作・箆鹿
Welcom to the Lodge
鹿の遠啼

世界最大の鹿・
箆鹿の角を
中生代白亜紀の
花崗岩に固定する。

8年前アラスカで
仕留められた箆(へら)鹿と
1億年前に
地中で固まったマグマが
奇跡的邂逅を遂げ
新たな生命を注がれ
こうして山荘ゲートに佇む。

晩秋の残照が
森の鹿の遠啼きを乗せて
花崗岩にエコーする。
1億年と8年と現瞬が
時空を超えて
アンサンブルする。

さあ!鹿の鳴声を追って
黄昏の森へ行こう。
現瞬:現在の一瞬




秋の創作・色
雌鹿墜落死

梵語Rupaは
物質と肉体を現す『色』と
漢訳されシキと
読まれる。

鹿の死に遭遇した瞬間
この色が
圧倒的な迫力で
森を飛び交い即が是が
やがて空が絡み合う。

漆黒の闇の中で
一瞬脚を
滑らせてしまったのか?

それとも熊に襲われ
崖まで追い詰められ
逃げ場を失い
墜落したのだろうか?

鹿Aが生まれると同時に
鹿Aの死A’が唯一
生み出される。

そう、宇宙誕生の瞬間に
粒子Aが生まれ
同時に反粒子A’が
生み出されたように。

刹那の生を経て
鹿Aと死A’は再び結びつき
無に還る。
仏教宇宙ではそれを
《色即是空》という。

無から生まれた
粒子Aと反粒子A’は
誕生刹那に再び結ばれ
光となって無に還る。

仏教宇宙の壮大な
哲学に唯々息を呑む。

11月1日(土)晴 高芝山(1518m)





11月1日(土)晴 高芝山山頂下
秋の創作・空
恐る恐る接近


唐の玄奘三蔵法師は
シルクロードを経て
チベットからインドに赴き
全600巻という
膨大な量の『大般若経』
を手にする。

膨大な経典から
幾つかの文章を選び出し
『大般若経』の
本質に迫った。

玄奘によって
260語の漢字に要約された
般若心経
『色即是空』の後を
『空即是色』とつなげる。

『空』とは梵語
Sunyaの漢訳で無を表す。
つまり無とは
物質と肉体・色(シキ)
そのものであると説く。

宇宙が無から
ビッグバーンで生まれたと
『空即是色』は
2500年もの大昔に
平然とうそぶいていたのだ。

2頭の犬が
死の臭いを恐れつつ
『無』になった鹿に
限りなく接近する。

これは空なのか
それとも色なのか?
嗅覚を最大に研ぎ澄まし
くんくんと
慎重に嗅ぎ回る。

悠絽、舞瑠、大丈夫だよ。
鹿Aは死A’と
めぐり合ってもう鹿で
なくなったんだ。
無になって再び宇宙を
生み出すんだよ。



秋の創作・落
釣る瓶落し


覚えているかい悠絽?
あのチョコンと尖った山が
悠絽と一緒に
登った鈴庫山だよ。

あれから80日も
経つんだね。
あの時既に太陽は
南回帰線への旅を開始し
今はもうもう南半球へ
行ってしまったんだ。

南の地平線近くまで
太陽は落ちてしまったので
直ぐに暗くなって
何も見えなくなってしまう。

急ごう!
漆黒の闇に囚われて
あの鹿のように
なる前に
山荘に戻らねば。

11月1日(土)晴 鈴庫山(1602m)遠望



11月1日(土)晴 高芝山林道

秋の創作・影
長ーい脚

最後の光が
語らう2頭の犬と
1人の人間の影を
永劫の彼方へといざなう。

『昼間は啼かない鹿が
どうして急に
山荘森で啼いたのかな?
その啼き声が
アラスカの鹿角に
ぶつかって何だか
共鳴してるようで・・・』

「うん、晩秋が近づくと
雄鹿は雌を求めて
昼でも啼くんだ。
確かに共鳴して
悲しそうに聴こえるね」

『鹿の子斑の
残っている鹿は誰に
どうして、お尻と目玉を
食われたんだろ?』

「カノコマダラはね
鹿の夏服なんだ。
もう直ぐ、鹿の恋が終る頃
白い班は消えて
無地褐色になるよ」

「お尻から内臓を
食べたのは多分狐だね。
目玉を食ったのは
肉食のオコジョかな?」

『でもどうして
食べ残したの?」

「本当は全部食べて
しまいたかったんだよ。
でも時間が無くて
先ず一番美味しい内臓と
目玉を食べたんだ」
未だ残ってるってのは
墜落したのが今日の明け方だったからさ。
夜行性の動物はもう直ぐやって来る闇をじっと待っているんだ」

『そうか、そうするとあの鹿は夜になると森の奥に運ばれて
今夜中に全部食べられてしまうんだね』

「そうだ、そうして多くの動物の体の一部になって
あるいは糞になり更に糞は木々になり
やがて又森に還るんだ」



11月2日(日)晴 居間・鍵盤上
秋の創作・骨
チベット珍獣


チベット語でチルー
呼ばれるチベットカモシカは
標高5千m以上の
チベット高原に棲息する
極めて珍しい動物である。

勿論ワシントン条約で
厳しい規制が敷かれ
一切の取引は
禁止されているのである。

知らないというのは
恐ろしい。
これがその珍獣チルー
とは露知らず
チベットから持ち帰って
しまったのだ。
高芝山の鹿の死を弔ってやろうと
片栗の森から真っ赤に熟した鬼灯を摘んできて
チルーの真っ白な晒頭(サレコウベ)に飾った。

冥界を思わせる黒、白、朱の異様な配色に
《般若心経》の読経が静かに流れる。

チベットを経て運ばれた般若心経の読経が
色即是空、空即是色に差し掛かると突然プツンと音をたてて
エンドレスに変わった。
読経は有限な260語を超えて永劫の彼方への
輪廻を開始したのだろう。



秋の創作・幻
陶芸皿に咲く花


テラスの横の山茶花を
追いかけるように
前庭と森の
生垣の山茶花が咲いた。

50cm程の赤と白の
苗を植えて15年。
今では数mに育ち森と
山荘の境界に君臨する。

高くなり過ぎて
手が届かないのだが
白を一輪手折り
陶芸作品の大皿に飾った。

深遠な宇宙を想わせる
コバルトブルーに
清楚な白が映える。
鹿の死の鎮魂に
相応しいね。
11月2日(日)晴 テラス



秋の創作・芋
巨大薩摩芋

猪や鹿が侵入して
畑の作物は
一夜にして全滅なんて
何度も経験してる。

そこで2m程の
侵入防止網を張り巡らせ
『まーそりゃ確かに
どっちかと言えば侵入者は
我々人間であって
君達のテリトリーを奪って
いるのは申し訳ないが・・・』
とかなんとか言い訳しつつ
がっちり畑をガード。

その防止網は
蔓性の雑草にとっては
絶好の繁殖住居。

普通は木々に絡みつき
木々を覆い
太陽を貪り尽くし時には
木そのものを枯らす程の
生命力を秘める蔓。

その蔓が葉の無い
太陽燦々の防止網を
見つけたら
放っておく筈が無い。
毎年網には無数の蔓が
絡みつき雑草天国。

そいつの撃退策として
今年初めて
蔓性の薩摩芋を使ってみた。
何しろ薩摩の蔓は
凄いのだ。

最近流行りの
ビル屋上の緑化冷房に
薩摩芋が使われる程の
凄い繁殖力。


11月2日(日)晴 西畑




秋の創作・菜
野菜豊穣

作戦はばっちり成功。
西畑の境界を
芋蔓が埋め尽くし
雑草の出る幕無し。

除草剤を使えば簡単に
解決する問題だが
そんな危険な薬物を
使って作物を栽培する
なんて言語同断。

芋を使えば雑草を
撃退するだけでなく
若しかすると
大きな芋の収穫だって
期待出来るかな。

で少し掘ってみたら
超巨大な芋がゴロゴロ。
嬉しいね!

創作の動機は
雑草防止。
カンバスは山荘大地。
絵の具は燦々たる太陽と
天空からの雨水。

さてそうすると
創作者は誰になるの?
若しかすると
この私、山荘主かな?

なんぞと悩んでいたら
2頭の犬が飛んできた。
『ほら高芝山が
よく見えるよ。
あの鹿どうなったか
見に行こうよ』

「そんなに嘗めて
せがんだって駄目さ。
悠絽の傷ついた右脚は
未だ治っていないんだよ」
11月2日(日)晴 西畑(上:高芝山を望む)



11月4日(火)晴 前庭
秋の創作・犬
悠絽変身


そうなんです。
実は悠絽、高芝山の帰り
大変だったんです。

冬の犬橇の練習を兼ね
2頭をバイクに繋いで
高芝山へ出発。

舞瑠がいつものように
軽快にトップを走り
2m後ろから悠絽が
やや重そうに
どてどてと追う。

高芝山で鹿の死に遭遇し
夕日と競って林道を走り
再びバイク走行。
その途中で悠絽が遅れだしたので
走行をやめて脚を調べたら右脚が出血。
どうやら尖った小石を踏んだらしく小さな穴が
肉球に開いてました。

山荘までは未だ遥か。
そこで仕方なく悠絽をバイクに乗せ
舞瑠だけ走らせ山荘まで戻ったのでした。

それにしても車大嫌いで車に乗せようとしても直ぐ窓から
飛び出して逃げてしまう悠絽がまさか
バイクに乗って得意そうにハンドルきるなんて信じられる?
最早嘗ての悠絽で無い事は確かである。
若しかすると悠絽も秋の創作作品?



11月6日(木)晴 ギャラリーゆめじ
秋の創作・風
竹久野生


目白自宅の直ぐ前に
『ギャラリーゆめじ』は在る。

竹久夢二の永遠の恋人
言われた《笠井彦乃》
義母の姉だったので
義母や妻の冨美代さんが
通うギャラリーでもある。

秋になるとここで
南米コロンビア在住の
竹久野生さんが個展を開く。
10月30日の読売に載った
記事のせいか
例年よりギャラリーが
賑やかである。
顔を出してみた。
《風》と題する作品の前で野生さんに話を聞いた。
大杉栄と共に虐殺された伊藤野枝の孫である野生さんは
数奇な運命の元で
竹久夢二の次男夫婦に育てられた。
遥かなる南米メスティーソの住む街で野生さんは
著書の帯に記されたように
『愛と夢と苦痛』を追い続けるのだろうか。
竹久野生:著書「アンデスの風と石が運んだ
       もの」三修社出版参照。



11月10日(月)晴 山荘夜景
秋の創作・夜
岩本久恵


『先生へ
  大変遅くなりました。
とても難しい絵でした』

昨年10月26日の
山荘夜景が岩本さんの
手によって
心象風景に濾過され
油絵に甦った。

あらゆる要素を含みながら
決して突出せず
静かに総てを語る彩」
瞬間的に浮かんだ言葉を
メールで感謝を込めて
岩本さんに送った。

あの画像がHPに載ってから
1年、岩本さんは
画像のイマージュを
追い続けたのだ。

そのHPのイマージュには
こう記されている。

生命の灯が絹衣に滲み、静寂に吸い取られ
天空に舞い無窮の深みに落ちて行く。
闇の底に屹立する富士が
無数に飛翔する生命の残像を寡黙に見つめる。
哀しいまでの美しさ。

山荘が時として垣間見せる自然と生命の壮大なスペクタクルは
壮麗なヒマラヤを超越し、命に満ちた珊瑚海を凌駕し
山荘こそが究極の到達点であると告げる。



11月3週・・・晩秋彷徨・悠久の邂逅




冬の駐車場

誕生日に贈られた
森の裾を
ほんの少し削って
冬の駐車場を
造ることにしました。

雪が降ると
せっせと雪掻きしても
車が登れない急勾配が
2箇所あります。

そこは森に覆われ
陽が当らないので一度
雪が降ると
何週間も凍りついたまま。

南からの農道と
山荘下の森を結びます。
きっと雪が降っても
太陽が道の雪を
融かしてくれるでしょう。
11月15日(土)朝晴 山荘葡萄園



森の遊歩道

朝トレーニングで使う
東の森への出口。
山荘石垣との段差があり
ブッシュや潅木が
生い茂り
出入りがひと苦労。

ここも潅木を切って
段差を埋めて
森に小道をつけました。

ここまでは業者に
土木工事を
お願いしましたが
この先の広い森の手入れは
これからです。

なにしろ広いので
どうして良いか見当も
つきませんが
数年かけてのんびりと・・・
11月15日(土)朝晴 ログ下



さて何処へ!

あんまり快晴の空が
眩しくて
鉄塔山の森を
駆け巡って朝食を
摂りながら
悠絽と舞瑠に聴いてみる。

「空と太陽が素敵だね。
もう1つ山に行こうか?
なんだか午後から
天気も崩れるらしいし」

あーその時の
悠絽と舞瑠の歓びようが
想像出来るかい?
舞瑠なんてぐるぐる
山荘主の周りを走り回り
無愛想な悠絽だって
頬寄せてとびきり上等の技で
ぺろぺろ山荘主の
顔を嘗めるんだ。
11月15日(土)曇 ぶな坂



お話し合い

2千メートルの山では
もう紅葉は終わっているし
若しかすると1500なら未だ
少し残っているかな!

それなら先ず柳沢峠まで
行ってみよう。
で、何処の山に行こうかと
ぶな坂の表示板を
見ながら森に入りました。

もうすっかり葉は落ちて
紅葉なんて何処にも
残っていません。
秋は終わってしまったんです。

「どうしようか?
ほら、もう落葉しかないよ」
雷が落ちて
裂けてしまった大きな幹の下で
2匹の犬と人間1人が
話し合いました。

「丸川峠を経て大菩薩に
行くか、黒川金鉱跡にするか
それとも
鶏冠山にしようか?」

走ってもいないのに
舌を出してゼイゼイハーハー
しながらメタボの悠絽が
三本木の方を
見つめるのです。

11月15日(土)曇 松尾根



あっちがいい!

で、先ず三本木まで
のんびりと
歩いて行きました。

空は予報通り
寒そうな雲が犇いて
一筋の光さえ
漏れてきません。

葉を落した森は
直ぐ目の前に迫った厳しい
冬の寒さに寡黙になり
その後に訪れる
待ち遠しい春を夢見ながら
密かに芽を
膨らませているのです。

真新しい道標がポツンと
建っていました。
さて舞瑠どっちにする。
11月15日(土)曇 三本木



あれっ!どっちかな

太い枯れた幹が
ぐんにゃり曲がり
とうせんぼの警告を
しているのでしょうか?

月の輪熊の大好きな
裏白樅(ウラジロモミ)の大木
のようです。
鋭い爪を立てて熊は
この木の皮を剥いで
食べてしまうのです。

それで切なくなって
裏白樅は
枯れてしまうのです。

その裏白樅が
とうせんぼ
してるのですから
若しかすると
熊でも出るのでしょうか?
11月15日(土)曇 横手峠




11月15日(土)曇 原生林
道がないぞ!

朝のトレーニングで
鉄塔山の稜線に出たら
お尻に白い毛を
着けた雄鹿がいきなり
飛び出しました。

舞瑠がリードを付けたまま
追いかけ南斜面に
鹿と共に消え去り暫く
出て来ません。

若しもリードが木に絡みつき
動けなくなったら大変!
声を限りに舞瑠に
呼びかけました。

何と反対側の北斜面から
出てきたのには
心底驚きました。
消えたのは確かに南斜面。
いつの間にか反対側に
廻っていたのです。

そんな後ですから
苔生した原生林では
慎重にリードを離さない様
進みます。



やばいぞ!

山頂直下はチャートから成る
岩場で運動神経の鈍い
悠絽にとっては
試練の場です。

舞瑠がひょいと気軽に
ジャンプアップ出来ても
悠絽はじーっと睨んだまま
動こうとしません。

引きずり上げようとしても
「こんなとこ
登れっこないよ」と澄まし顔。
仕方なく暫く赤いチャートを
見ながら悠絽とお話。

「チャートって凄いんだぜ。
放散虫と言う実に
不思議な芸術的原生動物で
出来ているんだ。
放散虫はね
糸状の仮の足を放射状に
出して動くんだ。
まるでホテルのシャンデリアさ。

この赤い岩の中に
今でも残されているんだ。
この芸術の粋を集めたような
シャンデリアは
海に棲んでいてね
その屍骸が深海に
溜まって固まって
この山を造ったんだぜ。
凄いだろ」

悠絽「・・・・・」

11月15日(土)曇 岩場


放散虫(wikipediaより)



11月15日(土)曇 鶏冠奥宮
突然満員
バス1台団体ツアー出現

小さな小さな山頂に出ると
突然数十人もの
人間が現れました。

それまで深い森には
殆ど人影が
無かっただけに驚きは
一入でした。

何しろ足の踏み場も
無いくらい人が溢れて
まるで都会の雑踏。
悠絽も舞瑠もびっくりして
怯えていました。

こんな小さな無名に近い
山にまで
『百名山詣』ブームは
押し寄せているんですね。

柳沢峠まで下山したら
団体バスに乗った
先ほどの人達が居ました。
気付いた悠絽と舞瑠が
睨みつけ低く
唸り声を発しました。




静寂の山頂 
11月15日(土)曇 鶏冠山頂・1716m

悠絽が霧に包まれたどっしりした山稜に見入っています。
そう、あれは夏に登った大菩薩だよ。
悠絽と舞瑠が始めてロッククライミングした山だ。
覚えているかい。大きいね!

今、悠絽はあの不思議な美しい原生動物達の造ったチャートに乗って
大地のてっぺんに居るんだ。
無数の放散虫の屍が雪のように静かに静かに深海に降り積もり層を成し
やがて海洋プレートとなって動き出し大陸プレートの下に潜り込むんだ。
その時、層になったチャートが大陸プレートに削られ付加帯として海上に現れ大地になる。
2億年の壮大なドラマを経て放散虫はチャートになり大地になったんだ。
その放散虫の大地のてっぺんに今、居るんだよ。

足元の岩を見つめて聞き耳を立ててごらん。
悠久の時を超えて放散虫のおしゃべりが聴こえるよ。
何て言ってるのか解ったら愉快だね。




11月4週・・・詩犬シャンソンを歌う




枯露柿・高芝山

秤に載せたら
1つ420グラムもある。
大きいね。

百匁(モンメ)もあるので
百目柿と言うけれど
確か百匁は375グラム。
つまり山荘の柿
それ以上大きい。
超目柿と命名しよう。

いい色だね!
この柿簾が山荘の窓に
架かると
秋の創作展は終章を
迎えるんだ。

電線弦を張った高芝山と
アンサンブルして
どんな曲を聴かせて
くれるのかな?
11月22日(土)晴 テラスから


小倉山・枯露柿

さて幾つ出来たか
数えてみよう。
3段で1段が22列と
おまけが1列だから
計 22×3+1=67列
で1列が5個だから
67×5=335個

それで1個が420グラム
なので
0.42×335=140.7kg
凄いな!この柿簾は
140kgもあるんだ。

小倉山の上空からの
光をいっぱい吸い込んで
代りに水分を
吐き出して小さくなって
もう直ぐ美味しい枯露柿に
なるんだね。
11月22日(土)晴 居間から


森の散髪

ログハウスの東側は
森が鬱蒼として
とても散歩出来る状態に
ありませんでした。

折角プレゼントされた
森ですからと
床屋さんに素敵な髪型を
お願いしました。

長髪からいきなり
スポーツ刈りになって
ログの背景が
すっきりしましたね。

森が透けて遠くの
葡萄畑の丘が
見えるようになって
光も風も嬉しそうに
スキップして・・・
11月22日(土)晴 ログ



ログテラス

ログテラスも東側は
森が圧し掛かって
とても重かったんですが
急に開けて
平沢の里までが
眼下に広がります。

森の大きな木には
熊ん蜂が
見事な芸術的ハウスを
造っていました。

危険なので取って
しまおうかと思ったら
来年は
もう営巣しないとか。

散髪記念にその巣は
残して置くことに
しました。
11月22日(土)晴 ログ




11月23日(日)晴 北の森
椎茸の引越し

森を散髪したら
ログ裏の椎茸原木には
太陽が燦々。
原木の大移動をしないと
椎茸が発芽しません。

さてこれは大変!
先ず移動先を何処に?
あまり山荘から離れると
椎茸発芽に
気付かず無駄にして
しまう可能性大。

では北の森への入り口
辺りでどうでしょうか?
『わんわん』
それは肯定なの
それとも否定なの?

どちらか解りませんが
とりあえず悠絽と舞瑠を
引き連れて
現場検証をしました。


11月23日(日)晴 北の森
うーん風通しはいいけど
森の入り口なので
陽が差し込みそうだな。
ま、その時は
再度移動すればいいか?

で大移動開始。
がっちりした支持柵を立て
重い原木を運び
こんなもんでどうでしょう?

森の散髪で沢山の
原木が採れたから来春の
椎茸菌仕込みに
使おう。

あれっ!何だか見慣れた青や白の
杭が使われているけど若しかするとそれ
ヒマラヤ登山で使っている
スノーバー?
そうだよ。スノーバーだけじゃなくて
ガラス陶房建設で使った廃材も利用してるし
田舎暮らしは
創意工夫が勝負なんだ。



11月24日(月)曇 葡萄畑
畑の野焼き

耕運機を入れて
葡萄畑を耕してみました。
ガーン!
とてもじゃないが
てんで歯が立ちません。

芒の根は深く強靭で
土はカチカチ。
あの頑丈で強力な耕運機が
初めてエンスト。
そのうえ芒がシャフトに絡み
こりゃ事は深刻。

業者に頼んだ
葡萄畑の掘削が中止。
葡萄棚が邪魔で
掘削機が使えないとの
連絡を受け
耕運機で試して
みたのですが・・・・
残っている芒の野焼、次に再度耕運機で開墾に挑戦。
もう直ぐ葡萄苗が送られて来る。
それまでに何とか耕作の目安を立てなければ。



高みから見学

あーあ!
陶芸の作品棚に
飛び乗って・・・
そりゃ葡萄畑が良く見えて
気分は抜群でしょうけど
一応そこは神聖・・・
でも無いね。

枯葉に覆われて最早
作品棚の風情は
とても無いね。
ま、いいか。

この棚の下が犬小舎に
なってるのだけど
リードを付けたまま屋根に
ジャンプするなんて
舞瑠は
やることが大胆だね。

そんなにも早く
山に行きたいんだね。
待ってておくれ。
もう直ぐ終わるよ。

11月24日(月)曇 作品棚


舞瑠の必殺技

森はすっかり
葉が落ちて大地は
枯葉の絨毯に覆われ
静かになりました。

明るくなった森と
枯葉の絨毯が嬉しくて
悠絽も舞瑠も
クンクン鼻を鳴らしながら
胸一杯枯葉の香りを
吸い込んで
飛び跳ねます。

森の奥に行くのが
待ち切れなくて
急な獣道を全力で
走り抜けます。
所々に着けるマーキング
の時間も惜しむように
いつもの得意の必殺技を
きっと繰り出すのです。
11月24日(月)曇 落葉の森


11月24日(月)曇 落葉の森
詩犬に変身

右脚を上げジャンプ
しながらオシッコをし
殆ど立ち止まらないのが
舞瑠の必殺技です。

ところが今朝は
一体どうしたのでしょう?
大きな朴の葉を見つけ
両脚を下ろして
辺りを見回しながら
静かに
ゆっくりオシッコしてるでは
ありませんか。

それも一滴も零さず
枯葉のお皿に黄金水は
綺麗に収まっています。
必殺技ならぬ名人業。
さり気無く立ち去る舞瑠が口ずさんでいるのは
何とイヴ・モンタンの歌うシャンソン
《枯葉》ではありませんか!
おー! じゅ ぶどれ たん く てゅ とぅ すぶぃえぬ・・・」

きっと枯葉の森が
舞瑠を詩人にしてしまったんでしょうね。
しかしその詩人の魂をオシッコで表現するなんて流石、舞瑠。


Les feuilles mortes 
(れふぅいゆ もるとぅ

Oh! je voudrais tant que tu te souviennes
おー! じゅ ぶどれ たん く てゅ とぅ すぶぃえぬ)
des jours heureuxou nous etions amis
で じゅーる ずる う ぬぜてぃおん ざみ)
・・・・・
覚えていてほしい。二人の幸せな日々を、私は忘れない。
・・・





11月24日(月)曇 北の森
最後の紅葉

voudraisはね
vouloir(望む)
直説法未来で主語が
1,2,3人称、単数で
使われる動詞。

je voudrais・・
「じゅ ぶどれ・・」で
「私は望む」だけど
『覚えていてほしい・・』と
和訳しているんだね。
でもその詩和訳は
『風の中のともしび
 消えていった幸せを』

となるんだから
詩和訳は
仏語を超えてるね!

シャンソンを口ずさむ
舞瑠の視線を追うと
その先には
最後に残った朱に染まる
一枝の楓。


森の総ての葉は
落ちてしまったのに
太陽と二人で過ごした
幸せな日々を
忘れられなくて朱の葉は
太陽に切々と
歌いかけるのでしょう。

『風に散る 落ち葉のごと
 冷たい土に
落ち果てた過ぎた日の
 色あせた恋の唄を
かすかに胸のうちに
 淋しくも聞くよ』


そんなの本当に舞瑠は
解っていて
口ずさんでいるの?

そんな訳無いのに何故
今朝に限って舞瑠は
詩人ならぬ詩犬になって
しまったのだろうか?
11月24日(月)曇 北の森


最後の朝顔
11月23日(日)晴
 
ワインセラー


山荘秋の創作展は初夏から咲き続けた朝顔が
晩秋マイナス3℃の山荘寒気の中で秀逸な心象作品を仕上げ
幕を閉じようとしています。

チベット・ラサの露天商人の犇く雑踏で出逢った獅子ドアノッカーと
山荘ワインセラーのドア下で花開いた朝顔との激しくも透明な恋。
数十万年を生き延びる青銅の獅子に恋した
数日しか生きられぬ蒼紫の花弁。

中央から激しく強烈な光を発し紫の星を散らしながら
永劫の獅子に迫る花弁。
深く心うたれました。




11月5週・・・彷徨・暮れゆく稜線




暮れゆく稜線
11月29日(土)晴 鉄塔稜線

重い荷を背負って旅人がやって来た。

『時』は本当に必要なものだけを洗い出してくれます。
正しいと信じた感情や時には思惟さえもが、峻厳な時の審判を受け塵のように捨て去られます。
揺らめく存在の本質が見えないときは、『時』の審判を待つのが懸命です。
時を経て尚、存在意義が自らの心象に迫り来るようであれば審判の結果は明らかです。
迷わず審判に従いその存在を追うべきです。

そうして登った稜線の落日は肉体を闇と化し
最後の黄葉を光で包みました。
 




11月29日(土)晴 北峠稜線
月に吼える

月じゃないけど
こんな風に森の彼方で
光が誘うと何だか
血が沸騰してきて
妖しくなってくるの!


舞瑠はとっても繊細で
人の細かい動きを
的確に読んで
豊かな感情で応えます。
まるで人間の様。

迫り来る闇は
生命をプリムティブな坩堝に
投げ入れ
そんな舞瑠にさえ
狼への回帰を
夢見させるのです。

さあ、舞瑠!優しい衣を
投げ捨て思う存分
狼におなり。



淡い落日を追って

どうだい!
鮮やかな彩を失ってはいるけど
代赭色の葉も
悪くはないだろう。

白い芒の穂を越えて
あの代赭色の森の入り口まで行って
それから左へ下ると
山荘に出るんだ。

つまり此処は山荘の裏庭なんだ。
いいだろー!
初めて山荘に来てから
沢山の森や山へ出かけたけど
何処もワクワクする程
面白いんだ。

未明の森もいいし
昼の山々も明るくて素敵だし
陽が落ちる稜線なんか
そりゃドラマチックで・・
勿論夜中の森の散歩なんかも
行くんだぜ。

つまりさ、山荘に居ると
朝も昼も夕方も夜中も森や山に
出かけられるんだ。
野生の血が騒ぐな。
11月29日(土)晴 P2稜線



凍てつく山々

もうすっかり雪と氷に
覆われて
富士山は冬の佇まい。

冷たい雪雲が
山荘眼下に棚引く。
昨日は周辺の山々も
雪が降り白い帯が
谷筋に光る。

森も山も寡黙になり
多くの生命は眠りにつき
哺乳類達の
存在を賭けての
苛酷な冬越えが始る。

野生の本能が試される
この時期には
舞瑠も悠絽も狼の血に
目覚めるのだ。
11月29日(土)晴 P1稜線



11月30日(日)晴 東の森
蒼穹の宝石

ネコ目イヌ科と
サル目ヒト科の違いは
あるが同じ哺乳類の
我々も苛酷な冬に
備えて本能を呼び覚まし
冬仕度をせねば。

先々週から始めた
干し柿造りも未だ未だ
柿がこんなに残っている。
2頭の犬と
あっちゃん、馬渕君を
伴って東の森へ。

残っている柿は
もう高い所ばかりで
採るのが一苦労。
下で捕球するあっちゃんも
枝に当たって
落下の予測出来ぬ
超変化球に悪戦苦闘。

馬渕君は何故か一人カメラを構えて
犬と共にのんびりと観戦。
エコちゃんはキッチンでコトコトと俎板を鳴らして晩餐の準備。




11月30日(日)晴 東の森
随分採れたね!

2週間前の干し柿が
芯まで柔らかくなって
とても美味しそう。

ドライワインの摘みには
畑で採れた薩摩芋の
スイートポテトと
この干し柿があれば
言うこと無し。

先ずあっちゃんを
《K2》と名付けた山荘特産の
スイートポテトで歓待。
晩餐にはこの干し柿と
ワインで最後のとどめ。
どうだ、参ったか?

あっちゃんが高い
柿の木の梢から落下する
変化球を9割率で
捕球出来たのはきっと
『参った』からに
相違ありません。
と、観戦してた悠絽が
申しておりました。



花梨の呟き

東の森をずんずん
進んで行くと
小倉山からの太陽を
浴びて
花梨が実ってます。

山荘の花梨は
畑の作物に影を落すので
短く切ってしまい
今年は黄金の果実を
着けませんでした。

でも東の森では
ご覧の通りキンキンに
輝いています。
でも誰も採りません。

もったいないから
花梨酒でも
造ってあげようかな。
11月30日(日)晴 東果樹園



11月30日(日)晴 東果樹園
歓声・柚子

燦々と光を浴びて
柚子が
歓声を上げてます。

前から山荘でも柚子を
作ろうと前庭に
苗木を植えたんです。
柚子専用の肥料を
与えてせっせと育てたのに
駄目でした。

1本は枯れてもう1本は
大きくなりません。
そう言えば
『桃栗3年柿8年柚子の
馬鹿野郎18年』とか。
とても18年なんか
待てませんよ。
山荘の冬料理に柚子は欠かせません。
そこで今度18年待たなくても収穫出来るように2.5mの
大きな柚子の木を山荘に植えることにしました。

新しく切り開いた森に植えます。
実ってくれると嬉しいな!


あっちゃん歓迎!

とても不思議なのだ。

犬から全く見えぬ
ゲートの先に人影の
気配がした途端
いつも吠え立てる
敏感な犬が
沈黙している。

それどころか
初見参のあっちゃんが
姿を見せても
「ワン」とも言わず
尻尾を振って大歓迎!

一体どうなってるの?
これじゃ
番犬にならないぞ。
舞瑠なんぞ匂いを
嗅ぎまくっている。

どうやらあっちゃんが
飼っている犬の匂いが
気に入っているらしい。

11月30日(日)晴 奥庭




11月29日(土)晴 P2稜線
仲良しエコちゃん

犬を飼っていれば
何でもいいと言う訳では
無いらしい。

エコちゃんも愛犬と
いつも一緒に走って
犬の匂いを着けている。
なのに悠絽は
初見参の
エコちゃんを咬んだのだ。

でも勿論今は
2頭ともエコちゃんが
大好きで直ぐ
甘えてご覧の通り。

白菜を卵と一緒に煮て
美味しい犬用の
スープを作ってくれる
エコちゃんは
犬達の優しいお母さん。



道無き道を

『冬将軍のやって来た
空はぴかぴかだし
大好きなエコちゃんと
あっちゃんも居るし
こうなったらもう
山に行くしかないよね』

と犬達が喋るもんだから
馴染の馬渕君が
「おいおい、俺を
忘れてはいないかい?
小倉山だって上条峠だって
鈴庫山だって
一緒に登った仲だろ」
といじける。

それじゃいつものように
誰も行かない
飛び切り静かな山に
行こうか?
11月30日(日)晴 源次郎稜線




11月30日(日)晴 砥山林道
凍ったままだ!

源次郎山から
砥山を経て上日川峠へ
走るルートは
熊笹に覆われ登山道も
在って無いような・・・
なかなかいいぜ!

問題はアクセスだ。
源次郎まで車を入れ
その後上日川峠に
回さないと縦走出来ない。
どうしよう?

馬渕君に頼んで
車を回してもらおう。
馬渕君は逆ルートで
源次郎に
向かってもらい途中で
我々と合流しよう。

熊笹の稜線を超えて
砥山林道に出ると
未だ太陽が出ているのに
道はカチンカチンに
凍りついたまま。
標高が高いから寒くて
昼でも氷が
溶けないんだね。



11月30日(日)晴 大菩薩湖北岸
夕日に染まる弦

来週は那覇での
フルマラソンをひかえた
強力あっちゃんと
ヒマラヤで
鍛えたエコちゃんと
一緒なので犬達は大喜び。

山稜を風のように走りぬけ
予定の半分の時間で
大菩薩湖に達しました。

トランシーバーで
馬渕君をコールしたのですが
通じません。
馬渕君は何処へ
行ったのでしょうか?

真っ赤な夕日が送電線を
染め始め夕闇が
目前に迫っています。

暗くなったらライトを持っていないので
動けません。
この寒さでは凍死してしまいます。

携帯も通じませんがどうにか馬渕君へメールが送れたので
上日川峠で待つことにしました。



11月29日(土)晴 小倉山山頂

待ってるわ!

止まって待っていると
寒気が針のように
全身に突き刺さり
寒くて堪りません。
ジャンプして体を暖めたり。

でも馬渕君の姿は
見えません。
仕方無く峠のトイレに避難し
風を避けてブルブル

犬は寒くても平気。
石のテーブルに乗って
未明の小倉山山頂でも
平然としています。

『犬こそ命』この犬を
放っておく手はありません。
早速抱きついて
犬の体温で温まりました。
そのかわり顔を
ぺろぺろ沢山嘗められて
参ったな!
うーん舞瑠も悠絽もあったかいね!
よし、それじゃ非常用のバターたっぷりのビスケットを
御礼にあげよう。



11月30日(日)晴 山荘居間
暖かーい晩餐

ついに馬渕君が
夕闇の中から現れました。

「いやーお待たせ!
ほら金星と木星が近づいて
綺麗だろ。
今夜2つの星は最も
近づくんだ。
三日月も鋭利なナイフに
なって星空を切り裂き
実に美しいね!

街の灯なんかまるで
ダイヤの煌きだね。
これを見せたくて日没まで
待っていたのさ。
この瞬間との邂逅は
きっといつまでも
忘れられないぜ」
そんな風に話しかける馬渕君の幻影はもうすっかり
《ポラーノ広場》のファゼーロになってます。
ついに馬渕君は広場への途を見つけ出したのでしょうか。


山荘に着いたら馬渕君自らキッチンに立って熱い手造り水餃子を
ご馳走してくれました。
細く切った白髪葱に乗った水餃子に熱い胡麻油の垂れをかけ
少し照れくさそうに「どうぞ!」と差し出しました。

でも峠で待っている間に凍えた肉体は
そう簡単には溶けません。
寒かったけど美しい星空を見せてくれて馬渕君
心から感謝してます。

本当は道無き道をたった1人で進み心細くて寒くて
泣きそうだったのかも知れません。
あまりにも寂しかったので、もう山には行かないのでしょうか?
せっかく《ポラーノ広場》を見つけたのに!
やっぱり夕刻の単独行は未だ荷が重すぎたのでしょうか?



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