山荘日記

その13ー2006年師走

 


師走1週・・・初冬の豊穣





12月2日(土)晴  於  2階アマルティアから

氷結の夜明け

微かな払暁の気配が
大気を透過し
肉体に忍び寄る。

冥界の闇から目覚め
肉体が生の律動を
開始する。

無数の細胞が点灯し
闇の中で煌き
激しい新陳代謝が
生の覚醒を宣言する。

代謝の結果放出された
2つの水素原子と
1つの酸素原子が
無数に氷結し
窓ガラスに
新たな宇宙を形成する。
芽生えた宇宙が
夜明けの太陽に輝く。

宇宙の神秘に
息を呑む。



12月2日(土)晴  於  北の森から

太陽光パネル

冥界の闇から目覚めた
肉体が
山稜を駆け抜け
森に戻ると
二等辺三角形が
木立の奥で煌く。

先ほど
しっかり結合した
酸素原子と水素原子の
宇宙を映し出していた
太陽光が
山荘発電パネルに反射し
森の闇を切り裂く。

パネルで光から
電気エネルギーに変換し
再び山荘の
原動力になるんだね。



12月2日(土)晴  於  北の森から

枯葉の絨毯

森も山も山荘も
総てが
枯葉の絨毯で覆われる。

日毎に絨毯は
厚みを増し
ふかふかになって
森や山や山荘を包む。

厚い絨毯に暖められて
様々な虫が眠り
植物は芽吹きの準備。

そうしてやっと
春がやって来るんだ。



12月3日(日)晴  於  ワインセラーにて

ヌーボ瓶詰

香りと滑り効果に
オリーブ油を塗った
コルクを打つ。

さて次は
いよいよ最終工程の
コルク栓のシールド。

昨年は金色のシール
今年は赤にしよう。
赤のシールを被せ
加熱してシールドする。

9月に仕込んだ葡萄が
3ヶ月を経て
やっと山荘葡萄酒
ゆぴてるヌーボになった。
今年もヒマラヤで
お世話になった方々に
贈ろう。



12月3日(日)晴  於  ワインセラーにて

セラー満員

先進諸国では
盛んに行われている
自ビール、自ワイン造り。

日本ではアルコール度数
1%以上の飲料の
私家醸造は不許可。

自醸連なるNPOを
立ち上げ法改正運動を
展開してるものの
進展無し。

政府お膝元
東京神田の学士会館
等で毎年自ビールを
持ち寄りパーティーが
催されている。
さて日本の食文化が
開かれるのは
いつの事か?



12月3日(日)晴  於  奥庭にて

冬のクレソン

これが実にいい香り
しゃきしゃきして
山荘サラダに欠かせない。

氷点下の厳しい条件下で
緻密な細胞を重ね
濃い緑の葉を構成し
山荘クレソンは
生き続ける。

西畑ではマイナス10度c
に耐え凍り付いた
ほうれん草が
冬を越す。

これらに春菊や青梗菜
冬菜が加わり
冬の山荘は
新鮮なサラダに
事欠かない。



12月3日(日)晴  於  奥庭にて

ぷち谷の庭

池に注ぐ疎水が
山荘クレソンの生活圏。

或る日突然
森を流れる谷で
クレソンを発見。
早速山荘に持ち帰り
池の疎水に移植したら
あっと言う間に
ぷち谷に満ちて
この通り。

きっと山荘が
気に入ったんだね。



12月4日(月)晴  於  西畑にて

大根豊穣

間引いた大根葉が
どんなに美味しいか
知ってるかい?

これは昔から
農家の特権だったんだ。
これが食べたくて
9月に
種を蒔いたんだけど
食べきれなくて
残った奴が
どんどん大きくなって
ほら、こんなに。

毎週、鰤と一緒に
煮込んだり。



12月4日(月)晴  於  西畑にて

超新星カリフ

どう見たって
こいつは超新星。

生命が爆発して
光速に近い
猛スピードで拡散し
その瞬間の時間を
山荘が止めたんだ。

クレソンやほうれん草
のようにサラダにして
生で食べたら
仄かに甘いんだ。
驚いたね。
甘い
カリフラワーなんて
信じられる?



12月4日(月)晴  於  西畑にて

人参の花

山荘人参は
とにかく強烈に
人参臭いのである。

「山荘の人参は
特別な種類なの?」
とよく問われる。

勿論普通の
人参なのである。
農薬を使わず
有機肥料で育てると
どうもこう成るらしい。

採り立てを
摩り下ろして強力粉に
混ぜ人参パンに
すると
もう市販のパンは
食べられない。



12月4日(月)晴  於  西畑にて

暗黒星雲ブロ

半年前の5月半ばに
NASA
(米航空宇宙局)は
宇宙の未来を
左右する重大な
発表をおこなった。

内容はX線天文衛星
「チャンドラ」での
観測結果。
観測した26の
総ての銀河団が
加速度的に
遠ざかっている
とのこと。

原因は暗黒物質の
ネルギー。

ブロッコリーが
そんなことを
連想させるなんて
君は何者だ?



12月4日(月)晴  於  西畑にて

薬師如来花梨

咳止め、二日酔い防止
利尿、毛根活性化に
絶大な効果。
其の上
ジャムにしてよし
花梨酒にしてよし
焼いて食しても良し。

「風の又三郎」で
初めてその名を知って
数十年。
山荘での再会は
忘れられない。

今年も知人に贈る
季節になった。

どっどど、どどーど
どどーどどど



12月4日(月)晴  於  北の森にて

寂しき森の
ハンモ


沖縄修学旅行で
ダイビングを終え
生徒と国際通りを
歩いていたら
ハンモックが目に入った。

「先生!これ
山荘の森に掛けたら?」
山岳部の生徒らしい
思いつきに乗った。

合宿に来た生徒に
問いかけた。
「この森のハンモで
一人で
泊まれる者?」
シーン!

それ以来今日まで
ハンモック宿泊者
は居ない。
麻製のハンモが
朽ちて森に還る日は
遠くない。





師走2週・・・曼荼羅宇宙





12月8日(金)曇  於  北の森

木星の子宮

木星の子宮に
包まれている安らかさ
と共に
ワインを呑み干す。

新たに注がれた
ヌーボワインが
ログ森の照明を受けて
深い朱を散らし
夜の森になった。

上下左右前後六方を
丸太に囲まれたログの
齎す安らぎは
いつも木星の子宮。

恒星と惑星の
重力臨界点にありながら
恒星を生み出さぬ
木星の子宮は
永遠の凍結睡眠?



12月8日(金)曇  於  北の森

太陽系の渚

ワイングラスを持って
ふらりと夜の森へ出る。

木星の子宮を離れて
太陽系の渚を彷徨う。

深遠な宇宙の
漆黒の闇が
北の森を満たす。
振り返ると
光に浮かぶ太陽系が
果てし無い闇に
圧倒的な存在感を描く。

50億年後に
赤色巨星となって
死を迎え太陽が
光を失うと
この渚も闇に呑まれて
消失してしまう。

そして未来永劫の静寂に
総てが還るのだろう。



12月8日(金)曇  於  北の森

蒼ざめた光

光が変わった。

赤色巨星となって
波長の伸びた
老いた光が
森を死で包む。

僅かに生命をとどめた
最後の枯葉は
彼岸花のように
毒々しいまでに赤く
葉を失った
木々は蒼ざめる。

漆黒の闇を
予感させる光は
熱を失ったまま
徐々に蒼を深める。

やがて宇宙は
漆黒の彼方へ!



12月10日(日)晴  於  北の森

枯葉専用卓

太郎を眠らせ
枯葉降り積む。
次郎を眠らせ
枯葉降り積む。

詩人は枯葉でなく
雪を詠ったけど
枯葉も中々いいな!

大皿に舞い降り
テーブルに立ち止まり
椅子に積もって
やがて大地が
枯葉の海になる。

海の底で
太郎も次郎も皆
こんこんと
眠るんだ。



12月10日(日)晴  於  玄関にて

吐蕃の龍

枯葉の海から
チベットの龍が
舞い上がり
突然吼えたてた。
《俺様は冬将軍だ!》

えっ!
君をラサからわざわざ
連れてきて
山荘の庭に置いたのは
番犬の代わりだぜ。
邪悪な霊から
山荘を守護するのが
君の任務なんだぞ。

《白銀の息吹を吐いて
生命を凍結睡眠
させるのが
俺様の本当の仕事だ》



12月11日(月)晴  ゲートにて  

アイベックス

例えば
こんな風にかい?

肉を失った骸骨の
右目が赤い閃光を発し
玄関の龍に応えた。

そうだ
このアイベクスも
チベットの
住人だったんだ。

白銀の息吹を浴びて
凍結睡眠させられ
未来永劫の旅に出て
その最初の寄港地が
山荘だった
と言うことなのか?



12月11日(月)晴  食卓にて  

曼荼羅宇宙

カクテルグラスに
載せたキウィの
スライスが
朝日を浴びて一瞬
燦然と輝く。

先々週収穫した
山荘産キウィを
ヨーグルトでくるんで
食べようと
食卓に載せたが
あまりの美しさに
ただ呆然!


菩薩や神々の
悟りの世界を描く。
Mandalaそのもの。



12月11日(月)晴  居間にて

妖艶キウィ

曼荼羅の世界を
縦に切ったら
どんな世界が
現れるのだろうか?

もう1つのキウィを
切ってグラスに
載せてみた。

2次元の悟りの
曼荼羅を
3次の異次元から
断ち切った世界は
遥かに想像を超えた
イマージュであった。

まるで濡れたヴァギナ
生殖そのもの。

イマージュの意図を
解かねばなるまい。



12月11日(月)晴  居間にて

M82の帽子

悟りの
異次元面に
隠された曼荼羅の
濡れたヴァギナ。

日本のX線衛星
《すざく》は
1万回も続いた
超新星の爆発を捉えた。

爆発の結果
M42銀河は
超高温となり
総ての元素は
イオンと電子に分離。
正に天地創造状態。

この両者の生殖が
新たなる銀河を
生み出し
華麗な曼荼羅を
天空に描く日は
いつになるのだろう。



12月11日(月)晴  居間にて

蔓梅擬き

森に到る小道に
蔓梅擬の朱が
目立つようになると
山荘の大掃除だよ
と風が囁く。

山荘は1,2階とも
総てフロアリング。
大変なワックス掛け
を覚悟せねば。

重いキーボード
テレビ、冷蔵庫等
を移動して
しっかり乾拭きし
ワックス塗り。
乾くまで待って
次の床に移動。
とても1日では
終わらない。



12月11日(月)晴  ログにて

鸚鵡貝と鮫歯

「忘れちゃ困るよ」
東の風がログのいちゃもんを
届ける。

ログの主は珊瑚の砂を固めて
造られたマクタン島の仮面像。
彼から掃除しないと機嫌を損ねる
恐れ有。

パプア・ニューギニアの珊瑚海で
出逢った鸚鵡貝を帽子にし
黒真珠に鮫の歯をつけたネックレス
を掛けたログの主。
まず彼を綺麗にして
部屋に掃除機をかける。

夜の森にはいつも
どきどきさせられるけど
昼の森は枯葉の絨毯で覆われ
とても静か。

さて居間のワックスは
乾いたかな?



12月11日(月)晴  居間にて

居間掃除終了

ガラステーブルの
シクラメンが
にっこり微笑んだ。

「とても綺麗に
なりましたね。
来週から南太平洋へ
ダイビングですって
それで
急いで大掃除?
どうせ
そんなことだろうと
思っていましたよ」

水をたっぷりあげて
温室に
入れておくから
死なないで
待ってておくれ!

「ふん!」






師走3週・・・冬至の祭





12月18日(月)晴れ  於  扇山稜線より

冬の夜明け

冷たく
ガラスのように
張りつめた大気に
吐く息が白く広がる。

扇山の東稜線を
走りながら
南の空に横たわる
小倉山稜線を見つめる。

未明の黒々とした
稜線が僅かに
朱を帯びる。
微かに胸がときめく。

漆黒のヴェールを
突き破って
燦爛たる光の誕生。



12月18日(月)晴れ  於  北森のテーブル

南回帰線の影

すっかり枯葉の
敷き詰められた森に
落ちるながーい
木立の影。

南緯23度27分
そんな遠い南太平洋の
彼方へ君は
行ってしまったんだね。

よし!
君を追って
南太平洋へ行こう。
明日のSB-801便の
予約は取ってあるんだ。

できたら
ブラックマンタ君にも
逢いたいな!



12月18日(月)晴れ  於  西畑にて

凍結甘藍

ノロウイルスの
顕微鏡写真?

そういえば
冬になった途端
あちこちでノロにやられ
大騒ぎしてるけど
違う違う。

これは畑のキャベツさ。
寒くなって
葉に氷が張り付いて
そこに朝日が反射して
とても綺麗!

この寒さに耐えて
益々、甘藍は
甘くなるんだ。



12月18日(月)晴れ  於  前庭にて

太陽光灯凍結

凍りついたのは
甘藍だけではない。

前庭に8本、ログに6本ある
太陽光灯が
ご覧のとおり。

冬の太陽を
一杯吸い込んで
夕暮れと共に輝きだす
山荘の常夜灯。

太陽光パネルの藍が
大洋で
その上に氷の大陸が
浮いている様に
見えるね。


12月17日(日)曇  於  西畑にて

氷点下の花弁

そんなに寒いのに
ブロッコリーが花開いた。

確かこれは普通の
ブロッコリーではなくて
サラダブロッコリーとか言う
品種だったけど
まさか
氷点下で花開くなんて
驚いたな!

早速クレソンと一緒にして
春菊、レタスに
甘海老の剥き身を加え
朝食のサラダにしよう。

氷の味がするかな?



12月17日(日)曇  於  前庭にて

雪タイヤ交換

畑の野菜も太陽光灯も
凍りついたのに
山荘専属の車は未だに
ノーマルタイヤ。

北斜面にある山荘への小道は
2箇所の急斜面が毎冬凍結。
雪に覆われたら
凍結は更に厚さを増し大変!

雪タイヤにチェーンを巻いても
前進不可能になること暫し。

そうなると車は下に置いて
徒歩で山荘まで登る。

いずれにしても先ず
雪タイヤに換えねば。



12月17日(日)曇  於  庭池にて

井戸ポンプに毛布

勿論、水道管も
カチンカチンに凍り付いて
破裂してしまう。

そこで山荘の水道管には
総て電熱線が
巻きつけてある。

でも水槽は
凍ってしまうので
毛布を二重に巻いて
その上に養生シートを掛けて
この通り冬装備。

ここまでしても
水道管の水を抜かないで
不在にすると
水道管は凍り付いて
破裂してしまうのだ。



12月17日(日)曇  於  西畑にて

キウィ収穫

キウィも凍り始めた。
凍ったキウィが融けて
柔らかくなると
真っ先にヒヨドリが
やって来て突っつく。

そうなっては遅い。
南太平洋へDVに行く前に
収穫せねば。

梯子を掛けてもぎ取る。
山荘の森にやって来た
ヒヨドリやジョウビタキが
騒ぎ立てる。

そう騒ぐなって。
ちゃんと残しといてやるから!



12月17日(日)曇  於  西畑にて

たくさん採れたぞ!

何しろ硬いのである。
でも我慢して
ガリリと噛んでみた。
酸っぱくて硬くて
少しも美味しくない。

こんなもん食えるか!
これが山荘で出逢った
キウィの最初の印象である。

無知とは実に
恐ろしいものである。
植物ホルモンの1つ
エチレンがキウィには
不可欠で
これ無くしては熟さない。

エチレンの豊富な
林檎やバナナと一緒に
ビニール袋に入れて
3週間も寝かせないと
キウィは
食べられないのだ。



12月17日(日)曇  於  テラスから

冬至の祭

12月22日頃に
太陽は南回帰線に達し
北半球から最も
遠ざかる。

それは太陽の新生。
夏至以降
唯ひたすら痩せ衰え
衰退し続けた太陽は
この瞬間から
新たな産声を上げ
北半球への帰途に着く。

この冬至の祭が
Xmasと名を変え
キリストの降誕祭になった。

降誕祭はともかく
太陽の新生とあっては
山荘主としては
祝わなくてはなるまい。

そこで毎年この時期には
夏椿の電飾に
灯を入れるのである。



12月17日(日)曇  於  ガニメデから

山荘オーロラ擬き

前庭のクリスマスツリーに
灯を燈したら
山荘眼下の銀河が
呼応して妖しく輝きだした。

M42銀河のように眼下の
元素はイオンと電子に分離し
プラズマとなり
オーロラの光を発する。

プチ天文台の屋根を開いて
三脚に固定した
カメラをオーロラに向ける。

新たなる星々の降誕が
冬至の祭に重なり
壮大なドラマが
山荘の天空を覆う。

6年前のアラスカの
オーロラより
心惹かれるね。





ちょっと南回帰線まで出張です。
      ブラックマンタと夏至の太陽に逢いにニューカレドニアへ行ってきます。








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