その19夏ー2007年水無月
水無月1週・・・久々のワイン
痛みの睡蓮 山荘で目覚めると 朝日を浴びて睡蓮が おずおずと開き始めた。 ・ ヤップのマープ島で 連日マンタと共にDV三昧。 夕刻に浜と熱帯林をジョック。 ・ どうもこのジョックで 慢性化した アキレス腱鞘炎を 目覚めさせてしまったようだ。 右脚の痛みが取れず 朝トレをどうするか思案。 ・ 睡蓮を見ながら 思案してると 『水神池』の蛙の声がする。 「山トレやめて池においで」 ・ そうだ!そうしよう。 |
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6月3日(日)晴 山荘池にて |
蛍池、蛙池、蜻蛉池 山荘から水神池までの 下り坂を痛みと共に ゆっくりジョック。 ・ 田園に広がる緑が眩しい。 雉が鋭い声を放ち 静かな山里の空気を劈く。 ・ 先ず蛍池を覗いてみる。 蛍の舞には未だ早い。 あと2週間すると 源氏蛍が光を明滅させ 平家が後を追って舞い出す。 ・ 地元の玉宮小学校の生徒が この池を造り 稲作しながら蛍、蛙、蜻蛉の 観察をしている。 蛍の絵が剥げちゃったね! |
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6月3日(日)晴 水神蛍池にて |
誕生直後 蛙池は静まりかえっている。 おかしいな! 確か3週間前には 脚の生えたお玉杓子が沢山 泳いでいたのだが・・・ ・ 昨夜も宵闇と共に 蛙のコーラスが一斉に始まり 初夏の訪れを高らかに 謳っていたのに・・・。 ・ 池の畔の泥んこの中で 小さな影が僅かに動いた。 眼を凝らすと あっちでもこっちでも ぴょんぴょん。 ・ よく見ると確かに蛙。 大きさ5ミリ。 これじゃ小さすぎて ピントが合わない。 |
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6月3日(日)晴 水神蛙池にて |
塩屋蜻蛉・雄 熱帯の珊瑚海から戻ると 山荘はいつも新たな 魅力に満ち満ちている。 ・ 静かだった夜の山荘が 今回は初夏の コンサートホールに変身。 ・ 春蝉の声が途絶え 宵闇が迫ると夜鷹が甲虫を 追ってキチキチと歌い出し ハモる様に田の蛙が 合唱を始める。 ・ 蜻蛉池の塩屋蜻蛉が 眠たそうな眼を 擦りながら呟く。 「昨夜も煩くてね、この池も 大フィーバーで寝不足さ」 |
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6月3日(日)晴 水神蜻蛉池にて |
山荘ワイン再会 水神池の朝トレから戻り 久々の山荘ワイン! ・ 熱帯のマープ島では ギンガンと呼ばれている ライムのような柑橘類を 絞って焼酎に入れ 毎日愛飲していたが やっぱりワインが恋しい。 ・ 山荘ワインとの再会に 歓びを込めて コースターに紫陽花の葉 を置いてみる。 うん!なかなかいいね。 |
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そうそう この山荘とんもころしの味も 外国に出てしまうと 断たれてしまう。 ・ 収穫直後に茹でて 冷凍保存しておいた唐黍を 電子レンジで暖め ワインの摘みに添える。 自然の風味と甘みが ドライワインに好く合う ・ このスプーンのコースターは 緑の紅葉の葉にしよう。 さあ!これで 朝食準備完了。 |
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6月3日(日)晴 前庭石卓にて |
ブレンド まてまて焦るなよ。 久々の山荘ワインだから 最高の香りと味に仕立てよう。 ・ 2002年の白ワインを 僅かにグラスについで グラスの壁に這わせ ワインの涙を流す。 ・ 香りがグラスに広がり 白の甘さが匂う。 この香りの中に2005年の ドライを少し加え 最後に昨年の新鮮な赤を たっぷり注ぐ。 ・ これでベストワインが完成。 あれ! 2006年のワインに 森と空が映っているね。 |
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6月3日(日)晴 前庭石卓にて
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水無月2週・・・雨の日曜日
雨の日曜日 降り続く雨が 森にハープを架けた。 微かな風が弦に触れ 音色を紡ぎ出す。 ・ 何処かで 聴いたことがあるような。 ・・・白秋の『雨』だ。 ・ 《遊びにゆきたし 傘はなし 紅緒の木履も 緒が切れた》 ・ さては風の奴 山荘のドアに張ってある 冴木杏奈の ポスターを見たな! ・ えっ!知らないって。 聴いてご覧よ。 杏奈の『雨』、凄いよ。 |
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6月10日(日)雨 西の森にて |
筋太走蜘蛛 大切な透明網を ハープにされてしまった 蜘蛛は捕食を諦めて しょんぼり。 ・ 反対に雨降って益々 活動的なスジブトハシリクモ。 ・ こいつ蜘蛛のくせに 水の上を物凄い速さで 走るんだぜ。 ・ 求愛給餌が凄いんだ。 雄の贈る獲物の 大きさによって雌は 交接時間を決めるんだ。 ・ つまり獲物が大きければ 沢山セックス させてくれるんだって。 食=性とはね。 |
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6月10日(日)雨 水神池にて |
水無月の田植え 田植えをしたんだね! ・ 先週の日曜日には 無かったのにいつの間にか 苗が植えられて 小さな水神池は立派な田圃。 ・ 玉宮小学校の生徒が 総合の時間にやって来て 植えたんだね。 ・ 田に水を張る梅雨の 6月を何故 『水無月』と言うのか きっと先生に教わったんだ。 でも解ったようで 解んなくて困った顔が 目に浮かぶな。 「レンタイジョシだって? 変態女子の親戚かな?」 |
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6月10日(日)雨 水神池水田にて |
や ご あれっ! 『やご』の抜け殻だ。 ・ ということは この近くに 生まれたばかりの 蜻蛉が いるかも知れない? |
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塩屋蜻蛉・雌 ワーッ! 居た居た。 こんなに雨に濡れちゃって 羽が重そう。 これじゃ当分 飛べそうも無いな。 ・ 背中が金色だから これは塩屋蜻蛉の雌だな。 先週の銀色の雄と 金銀の対になっているんだ。 ・ 金と銀だなんて 凄い豪華な組み合わせ。 『月の砂漠』の 金と銀の鞍みたいだね。 |
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6月10日(日)雨 水神蜻蛉池にて |
未だ尻尾あるねん 未だ尻尾も着いてて 未熟だから 葉の緑に 変身出来ないんだ。 ・ ほんとはね 3つの色素細胞が出来て 葉に乗ると 黒のメラニン色素層の粒が 細胞の中央に集まって 光りを通し その光が黄色素層を抜けて 銀色のグアニン層で 反射されて 緑になるんだ。 ・ でもおいら 未だ未熟だから 駄目なんだ。 |
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6月10日(日)雨 水神蛙池にて |
小さな実に真珠 おやっ! 小さな葡萄の実に 実がなってる。 ・ 太陽に暖められ 遠い海で天空に昇り 風と共にながーい旅をして 山荘上空で 雨になって葡萄畑に 落ちてきたんだね。 ・ そうして大地に引かれて 葡萄の実に宿り 真珠になったんだ。 ・ 太陽と海と風と大地が 創造主なんだね。 |
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6月10日(日)雨 葡萄畑にて |
皐月に散る水晶 清冽な清清しさ。 ・ 冷たい雨が降り続いて 何処もかしこも 水玉模様。 |
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6月10日(日)雨 奥庭にて |
雨上がる 花弁(総苞)の水玉が落ちて 空が少し明るくなった。 ・ 山里の光を遮っていた 山法師が 清楚な光を投げかけ 樹陰に希望を描く。 ・ 《遊びにゆきたし 傘はなし 紅緒の木履も 緒が切れた》の少女は これでやっと 家の外に出られるのだ。 |
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6月10日(日)雨 前庭にて |
冬の贈り物 先々週から中畑の玉葱が 茎を倒し 『もう収穫しておくれ』と 催促してたのに・・・ これでやっと収穫出来る。 ・ マイナス10度にもなる 山荘の寒さに耐え その艱難を刺激にして 玉を結ぶなんて 苦労人的な植物だね。 ・ そういえば 『艱難汝を玉にす』 なんて諺があるけど きっと玉葱のことなんだ。 ・ それにしても熟すと 茎を倒して知らせるなんて どうして? |
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・ さて濡れた玉葱を 何処に干そうか? ・ 例年は玉だけにして 網篭に入れ 陶房の天井に吊るし 乾燥させている。 ・ でも野菜栽培の本によると 茎で束ねて 陰干しにすべしと 書いてある。 ・ よし、そうして ログハウスの軒下に 干してあげよう。 ・ なんだかお面の髑髏が 居心地悪そうで かわいそう! |
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6月10日(日)雨 ログハウスにて |
水無月3週・・・豊穣の初夏
芝刈り 刈ったばかりの芝生に くっきりと白樺の影。 うーん 気持ちいいな! ・ ほら 森の蝉も鳴き出したし もう、すっかり夏だね。 |
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刈りたての芝は 香草のような芳香を放ち 切断された分身への 挽歌を奏でる。 ・ 挽歌は芝に陰を落とす 沙羅樹の 白い花弁に漂い 時空に揺らめく。 ・ 切ないまでに 芳しい香りと音色は 山荘の庭に満ちて 琵琶法師の影を招く。 ・ 琵琶法師は 八百年の時を超えて 承久の叙事詩を 静かに謡い始める。 ・ 白樺は夏の栄華を語り 枇杷は盲僧を借りて 栄華の無常を 爪弾く。 |
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6月17日(日)晴 前庭にて |
Black Berry 枇杷や無花果が 影になったからといって そう暗くなることもないさ。 ・ 見てご覧よ。 溢れるばかりの 夏の光りを燦々と浴びて この通り。 ・ 美味しそうだろう! 西畑のワイン・セラー横で 毎年、初夏の豊穣を 告げるんだ。 |
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苦 苺 太陽をぎっしり 詰め込むのはおいらの 特技でもあるんだぜ。 ・ この世界、競争が激しくて おいらの仲間だけでも 草苺、紅葉苺、海老殻 苗代と5種類が 同時期に結実するんだ。 更に少し遅れて 薔薇苺も 美味しそうな実をつけるし。 ・ 名前は苦い苺と なってるけど苦いのは 種だけで野性味のある 甘さでは負けないぜ。 |
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6月17日(日)晴 西畑にて |
桑の実 未だ青いままの 枇杷や無花果がいじけて 琵琶法師を呼んだって! ・ 抹香臭い叙事詩は ひとまずお預けして 先ずは自己宣伝。 ・ 太陽から直接貰った 紫天然色素 アントシアニンが たっぷり含まれていて 鉄分なんかほうれん草の 20倍もあるんだ。 ・ 視力回復、毛細管の活性化 血圧降下、肝機能の予防 糖尿病予防と まるで薬そのものさ。 |
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吃驚ぐみ いろんな果実が お店に出回るように なったけど この桑の実やグミは お店に出ないんだ。 どうしてだと思う? ・ 繊細で傷み易い上に 野性的で 個性の強い甘味が 敬遠される要因かな。 ・ 山荘では朝の食卓を飾り 食べきれない分は ビアのフレーバーに 仕込んだり ジャムにしたり 大活躍さ。 |
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6月17日(日)晴 前庭にて |
胡 瓜 胡には中央アジアの 波乱万丈の夢が 鏤められている。 ・ 古くは紀元前3世紀の 匈奴、唐代には西域民族を 胡と呼んだ。 ・ その胡が遥々と シルクロードを経て ヒマラヤ山麓から運んだ 瓜が胡瓜なのだ。 ・ 胡瓜は更に日本海を渡り 奈良から京への遷都 と共に平安の巷に やって来た。 ・ そしてお前は |
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琵琶法師の 『諸行無常の響きあり』を 聴きながら 盲僧と共に日本各地を 経巡ったのだ。 ・ そうか枇杷の語る 承久の叙事詩に聴き 惚れるのは お前だったのか。 メークイン 確かに生まれたての 胡瓜が枇杷に聴き 惚れるのは 風情があっていいね。 ・ でも土の中で 静かに聴く「平家物語」も 悪くはないぜ。 |
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6月17日(日)晴 西畑にて |
トマト 太陽が青い実に 散乱して 白い太陽を孕んで 生き生きしてるね。 ・ もっともっと 光を吸い込んで 段々赤くなり やがて 全身が太陽になって もうすぐ山荘の食卓に 乗るんだね。 |
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ピーマン ねえ、ねえ ビタミンPがあるって 言ったら信じる? PimentのPかな。 ・ 実は在るんだな。 ビタミンには脂溶性と 水溶性があって この水溶性のB複合体として ビタミンC,L,Pが あるんだ。 ・ で,こいつピーマンに たっぷり 含まれているんだけど 本当か? と疑いたくなるよね。 ・ こいつも、もう直ぐ 食べられるかな。 |
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6月17日(日)晴 西畑にて |
弾ける紫 レバノンの南西部 地中海に面した ティルスは フェニキア人が紀元前 2500年に造った 最大の都市国家。 アレクサンダー大王に 抵抗し最後まで闘った ティルスは 紫の染料で後世まで 語り継がれる。 ・ ローマ帝国皇帝が 最高位の礼服に ティルス紫を用い 以後世界に 高貴の色として 広まったのである。 |
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何故広まったかは この色を見つめれば 自ずと理解出来る。 ・ いずれの民族も 時代を問わず 高貴の彩 と認めざるを得なかった 気高さと気品がある。 ・ 日本では胡瓜より古く 奈良時代に インドから伝わり 栄枯盛衰の盛の舞台を 飾ってきたのだ。 ・ この山荘茄子が 滅法美味く 秋まで山荘の食卓を 高雅の色彩で満たす。 |
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6月17日(日)晴 西畑にて |
花菖蒲 ほの暗い池の繁みに ひっそりと 慎ましやかに咲き出した。 ・ 皇帝の愛した 高雅な紫もこの風情には 一目おくだろう。 ・ 春の山荘に満ちる ジャーマン・アイリスと同じ 花菖蒲だが 何しろ種類が多い。 ・ 調べてみたら 黄菖蒲と花菖蒲の 種間交雑種で 固有名まである。 『愛知の輝』とのこと。 |
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山法師の秋波 池の風情と競うように 前庭の石卓で 山法師が秋波を送る。 ・ 心がときめき ぐいぐい惹き付けられ 理性が砕け散る あの瞬間が不意に やって来る。 ・ 何かが始まりそうな 不安と希望と絶望の 入り混じった甘酸っぱい 胃液が 琵琶法師の語りに 降りかかる。 ・ 沙羅双樹と山法師の 白い花弁が 花崗岩に影を落とす。 |
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6月17日(日)晴 池と石卓にて |
山荘特産麺麭 この風情が いずこから齎されるのか 解き明かすための 試行錯誤が始まる。 ・ 山荘で焼いたパンの 横に花弁を置いてみる。 パンと山法師との アンサンブルがこれ程 自然に調和するなんて 誰が 予想出来たろう。 ・ しかし 理性を砕くまでの 響きは伝わって来ない。 ・ 土を耕し種を蒔き 有機肥料を施し |
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水を撒き雑草を取り 丹精込めて育てた人参。 その人参で 焼いたパンであっても 花弁には そぐわないのか。 勝手馬鈴薯 果樹畑の豊かな土壌で 勝手に芽吹き 育った馬鈴薯は パンと異なり全くの 山荘自由人。 ・ この自由人との アンサンブルも 様になっている。 でも丹精込めたパン同様 心のときめきは 訪れない。 |
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6月17日(日)晴 前庭石卓にて |
最後のキウィ 厳しい冬の寒さに耐えて 半年以上も 山荘食卓を賑わしてきた 数百個のキウィ在庫が 最後の1つになった。 ・ グミや桑の実、ブラックベリー 苺、林檎等と一緒に 山法師を置いてみた。 豊穣の彩に満ち満ちて 生命が弾けているね。 ・ 若しかすると 山法師の秋波の相手は 最後のキウィかとも 思ったが僅かに ピントがずれている。 |
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山のレストラン ヨーグルトの純白と 山法師の白が 眩しいね。 ・ 北の森を抜けて 西の森を走り 辿り着いた 山のレストラン。 自然の恵みを揃えて レストランは準備万端。 ・ 山法師の歌に 琵琶法師の重低音が重なり 山のレストランは 『注文の多い料理店』の 様相を帯びてくる。 ・ 山荘主は 琵琶法師に 食われてしまうのだろうか。 |
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6月17日(日)晴 前庭石卓にて |
山法師の酔い 解っていたのだ。 ・ 心がときめき ぐいぐい惹き付けられ 理性が砕け散る あの瞬間が ワインのルージュにあると 山法師は知ってたのだ。 ・ 恋焦がれていたルージュを 熱い想いで見上げ 山法師は琵琶法師と 音色を複雑に絡み合わせ 不安と希望と絶望を あやなし 承久の叙事詩を 囁く。 |
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祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり。 沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらわす。 驕れる者久しからず ただ春の夜の夢の如し。 猛き人もついに滅びぬ ひとへに風の前の 塵に同じ。 |
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6月17日(日)晴 前庭石卓にて | |
沙羅樹の木漏れ日を浴びてワインのルージュが 白い花弁に真紅の影を落とす。 余りの美しさに激しく心を揺さぶられると同時に その美しさが今、この刹那にしか存在しないとの 強烈な無常観に襲われる。 ・ その瞬間、承久の叙事詩が真紅の影に流れる。 現世では決してとどめることが出来ない刹那の美しさには この叙事詩をもって応えるしかないのだ。 |
四十雀の産卵 梨の木の葉が 担子菌類の錆菌に 感染し 赤星病になってしまった。 ・ 農薬は使いたくないが 林檎にまで被害が 拡大しつつあるので やるしか無いか。 ・ そう思って木に梯子を掛け 登ってみたら 巣箱から急に四十雀が 飛び出した。 ・ 巣箱を開けてみたら 卵がごろごろ。 今春2度目の抱卵中 だったのだ! ・ |
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鳥が星を 産むなんて 考えても見なかった。 ・ でも確かにこれは 星以外の何者でもない。 ・ この星から 想像も出来ない複雑な 形状の生命が 生み出されるのだ。 ・ その生命は 天空に羽ばたき 森の小さな生命を啄ばみ 新たな生命を生み出す。 ・ 四十雀の卵を 見つめながら 地球を産み出した鳥に 想いを馳せる。 |
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6月17日(日)晴 奥庭にて |
星卵の断面 地球の卵を 時空の剣で 3つに断ち切り 内部に潜む知的生命の カオスを見たいとの 強烈な衝動。 ・ ビッグバーンと言う 銀河を産み 地球を産み出した鳥は 卵に如何なるプログラムを 仕込んだのか? ・ どろどろとしたゲル状の カオスは時空の剣で 裂かれた瞬間に 減数分裂を始め 知の全貌を予告するのだ。 例えばこんな風に パイプオルガンとなって! ・ いきなり足鍵盤のソロで ニ長調の音階が鳴り響き 度肝を抜かれる。 ・ オルガニスト・浅井美紀の バッハ「前奏曲とフーガ」 ニ長調BWV532解説の パンフ冒頭の文章に 偽りは無かった。 ・ 度肝を抜かれた 山荘主の脳裏には いきなり地球卵の 知の内部構造が炸裂した。 ・ 時空の剣で断ち切った ゲル状カオスが 激しく蠢き鳴り響き 複雑な形状の生命を 形成し始めたのだ。 |
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6月20日(水)晴 東京芸術劇場にて(モダンタイプオルガン) |
自宅の目白台から チャリンコで少し下ると 10分足らずで 東京芸術劇場に出る。 ・ この大ホールに 鎮座まします巨大な パイプオルガンに惚れて 山荘主は月に1度の 逢引を重ねる。 ・ このバロックタイプの パイプオルガンの裏には あの妖しいマスクの モダンタイプが 隠されていていつも 山荘主の心を乱す。 ・ 巣箱の闇に漂う 四十雀卵のイマージュに 占領されていた 山荘主の脳細胞は このマスク出現で 一気に時空を翔んだのだ。 |
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6月20日(水)晴 東京芸術劇場にて(バロックタイプオルガン) |
水無月4週・・思索の森
乾徳山 2031m うぉー! まるで北アルプスの 槍ヶ岳(3180m)。 ・ 数百回となく眺めてきた 乾徳山がこれ程までの 雄姿を晒したのは 初めてである。 ・ 牧丘の村を埋め尽くした 雲海が山容を 浮かび上がらせ 頂稜に掛かる雲の帯が 高さを強調する。 ・ 森や谷、岩稜の細部を 黒い影に溶かし 山容は存在そのものとなり 立ちはだかる。 |
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6月25日(月)晴 鉄塔山頂にて |
乾からの光 福生里から吹き上げる 南風が朝霧を 激しい流れに変える。 ・ 標高1190mの 鉄塔山に 遮られた朝霧の凝集が 山頂から滝のように 流れ落ちる。 ・ 朝霧の上に輝く太陽が 流れを捉える。 ・ 幽玄な山頂の森が 静から動へと 一瞬にして表情を変える。 ・ カチッと音を立てて 思考回路がスイッチオン。 |
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6月25日(月)晴 鉄塔山頂にて |
存在・Χ 鬱蒼とした 森は思索そのもの。 思索しつつ森を散策すると 脳の迷宮が森に 重なり肉体そのものが 思索と化す。 ・ 長い思索の結果 《存在》の本質を垣間見たと 感じた瞬間に 木の葉が光った。 ・ 繰り返し呟く。 『やっぱり、そうなんだ』 理性の彼方には 途轍もない結論が 待ち構えている。 |
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6月25日(月)晴 東森にて |
迷宮脱出 eiπ の彼方に -1が待っていたように オイラーが 示さなくても 冷厳な事実は 《存在》の本質を 告げているのだ。 ・ eは対数の底 πは円周率でいずれも 超越数である。 iは高校数学で お馴染みの虚数である。 ・ -1は例えば このような森の出口 なのである。 |
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6月25日(月)晴 東森の出口にて |
未知なる結実 迷宮を抜けて 小道に出ると現実が 待ち構えていた。 ・ 花のような萼のような 摩訶不思議な植物。 先々週に出逢い 葉や花を調べ 正体を突き止めようと 図鑑サーフィンしたが 未だに同定出来ず。 ・ 何処ででも 見かけられるような雑草。 にも拘らず不明。 解ったのは 離弁花で風露草に 近い種らしいこと、のみ。 ・ 森で思索したって あたしの名前も 解んないじゃ 大したお頭じゃないわね。 |
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6月23日(土)晴 東森への小道にて | その後、帰化植物の 『アメリカ風露草』と判明 |
超越数 前庭から下の西畑への 入り口で東菊が 咲き乱れる。 ・ 毎年、雑草の攻撃にも 屈せず咲き続けるのに 当山荘日記には 一度もアップされていない。 ・ 2階の書斎で 図鑑と首っ引きになり 摩訶不思議な植物を 調べていたら 何やら「ぶつぶつ」と 聞こえるのだ。 ・ どうやら不満分子の主は この東菊らしい。 耳を傾けると何やら 『ちょうえつすう・・・』と 聴こえる。 |
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6月25日(月)晴 西畑にて |
孔雀蝶の夏告 『フィボナッチ数列が 向日葵の螺旋状の種数を 示したり 葉序、蜜蜂家系 兎の増え方と一致したり そりゃ、数学と自然界が 深く結びついている事は 解るけど超越数って 一体何なのよ』 ・ 山荘の夏を告げる 孔雀蝶までもが東菊と 一緒になってブーイング。 ・ そうか、そう言えば 若しかすると孔雀蝶の この繊細な文様にも 超越数が隠されている かも知れないね。 グラデーションそのものが 超越数とも言えるし。 |
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6月23日(土)晴 西畑にて |
塩屋蜻蛉・雌Ⅱ じっーと 聞き耳を立てているのは ありゃ、先日 水神池でお目にかかった 塩屋さんの雌。 ・ お三方からの質問か! それじゃ、ちょっとだけ。 ・ 簡単に言うと n次方程式の 解にならない無理数を 超越数と言うんだ。 ・ 例えばn=1の場合 aX+b=0 の解はX=-b/a aもbも有理数だから b/aは有理数で 総ての1次方程式の解は 無理数にならない。 つまり超越数には 決してならないのである。 |
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6月23日(土)晴 竹森川にて |
減数分裂終焉 n=2の場合は 中学3年で学んだから 覚えているかな.。 ・ ax2 + bx + c = 0 の解は これは一般的には 無理数であるが 2次方程式の 解になっているので 超越数でない。 |
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6月25日(月)晴 奥庭にて | |
おかしいぞ! ここまで話せばお喋りな四十雀が 巣箱に出入りしながら 『それがどうしたのよ、さっぱり解んない』とか 言ってきそうなのに影も形も見えない。 ・ そっと覗いて見ると沢山あった卵が 2つしか無い。 『しまった!卵が襲われた』 親鳥は危険と判断し抱卵を放棄してしまったのだ。 残された2つの卵は減数分裂を停止してしまった。 |
蛍画像断念! 『じれったいわね! それじゃ超越数って 何なのよ』四十雀の代わり 蛍袋が喚き出す。 ・ そうだ、昨夜 竹森川で蛍の写真を 沢山撮ったんだけど 露光がうまくいかなかった。 今夜撮り直しの予定だけど 雨じゃ蛍は飛ばない。 今年の蛍画像は諦めて n=2の続きを 蛍袋にでも話してあげよう。 ・ n=3になると 虚数が登場して益々 面白くなってね。 でも解は |
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超越数にはならない。 |
6月24日(日)雨 奥庭下にて
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・ n=4以上になると解は 定まらないことが証明され ただ未知なる世界が 茫漠と展開するんだよ。 ・ πやeは 如何なるn次方程式の 解にもならない 不思議な無理数なんだ。 で超越数と呼ばれて いるわけさ。 |
つまり有理数だけで充分満ち足りていた知の原始世界に 2次方程式が現れて 人類は吃驚仰天! 解に行き詰り無理数を発見した知的生命は 更にn次方程式を超越した数にぶち当たってしまったのさ。 そいつに勝手に超越数と名前を付けただけで 未だよく解っていないんだ。 お、し、ま、い。 ・ そうそうeiπ=-1の美しさに気がついたら 小川洋子の『博士の愛した数式』を読んでみるといいよ。 |
週末からマジュロ島まで、ちょっと出張です。
太平洋のど真ん中にあって珊瑚礁のこよなく美しい島だとか。