その65春ー2011年卯月 | |
4月1週・・・・びっくら!凄え本と映画だぜ |
山荘ゲートでの歓迎 |
2月上旬の早咲き
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黄水仙は奥庭の新顔
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水仙の園・山荘 この華やかな 色彩の一瞬の刻印に潜む 《意味の喪失》。 ただ打ちのめされ 為す術も無く恐怖すら覚える。 |
クレソンと蛙の卵 春の陽射しを浴びて 透明な寒天宇宙に息づく 漆黒の星。 春爛漫の背景にシューベルトの 絶望と哀しみが流れる。 |
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どの部屋も春爛漫 |
初めて観る京水菜の花 |
咲き乱れるクレビア |
どうしてシューベルトの《冬の旅》が聴こえるのだろう? 《決して得られないもの、もう失われてしまったものへの憧れ》が描かれていると 評される歌曲《冬の旅》がなぜ春爛漫の背景に流れるのか? ・ 今月来日する英国のピアニスト、ポール・ルイス(39)はシューベルトをこう語る。 《人間という存在そのものを音に映す、プリズムのような存在》 2年かけてのシューベルトの連続演奏会を日本でスタートさせるポールは述べる。 《全曲を弾くということは、その作曲家の人生すべてを受け止めるということ》 ・ 漆黒の星の背景に流れるシューベルトとポール・ルイスのシューベルトは 果して何処かで交差するのだろうか? 《どう華やかに響くかなんてまったく考えていない。 ただひたすら自分の心に向きあい一瞬一瞬を刻印している。 美しいものへの恐怖を持っていた人。 その繊細さ、誠実さに、自分がどこまで向きあうことができるか》 (青字:4月4日朝日新聞夕刊より引用) |
芽花の美味しい小松菜 |
うめー! おかしいな? 確か山 でもどこからどう観ても 味わっても山独活そのもの。 ・ それが畑の白菜の芯だなんて 制作者自身が信じられないのです。 寒くて、それでも生き延びる為 外側の葉を犠牲にして その葉に包まって熱源の糖分を しっかり蓄えるのです。 |
冬超えのレタス |
だから芯までが こんなにも美味しくなるのです。 ・ せめてしてやれることは 新聞紙でくるんでやることだけ。 ほら畑の奥に白く見える奴 あれが新聞紙でくるんだ白菜。 ・ でももう暖かくなってきたので 新聞紙の間から新葉が 顔を出し蕾すら着け始めて。 もうすっかり春ですね。 |
畑に耕運機をかける |
でね、新聞紙を開いてやると 見るも無残な姿。 凍傷で腐ってしまった外側の葉が べとべと張り付いていて 一目でとても食べられる状態でない。 ・ 冬越し野菜を作り始めた頃は あーあ、又腐らせてしまったなと 棄ててしまっていたんだ。 ・ 数年前に、でも内側は新葉が 出てるんだから もしや食べられるのでは? |
雪に耐えたほうれん草 |
青梗菜や小松菜の芽花の 美味しさは云うまでもありません。 雪の冷たさと重みに耐えた ほうれん草やレタスは やや硬く厚く武装してますが こいつが中々いけるのです。 ・ ここ数年失敗続きだった玉葱は マルチシートで保湿され すくすくと育ちつつあるので 6月の収穫が愉しみ。 玉葱は葉がとても美味しいって 知ってるかい? |
玉葱も今年はどっさり |
風呂場も新入社員 ポトス、スパティーフィラムは引退 浴室は南に面しているので とても暖かいのです。 だからポトスもスパティーフィラムも なんとか冬超え出来ないかと 実験してみたけど やっとこさ耐え抜いたのは1鉢。 ・ 昼は暖かくても 夜はマイナスになるから 南国の観葉植物は 畑の野菜のようにはいかないね。 そこで奥庭の蔦を 2011年の社員として採用。 ・ こいつならマイナス10℃くらいは へいちゃら。 4月1日の辞令交付には なんて書こうかな 《冬の旅》に耐えた功績により 蔦を浴室係に任命する。 今後研鑽を積んで シューベルトを極めるべし。 |
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何じゃこりゃ? わかんねーだろうな! もしかして《冬の旅》に出てくる 流離う若者の靴かい? まー何らかの オブジェらしき雰囲気はあるね。 ・ 実はこのテラス下の芝生を掘り 快適な寝床を作って 夜な夜なやって来る狼藉者が 居るんだ。 そう嘗て山荘に居たチビだ。 ・ これ夜しか姿を見せない チビへの伝言なんだ。 果してこのメッセージが伝わるかな? |
失恋、貧困に梅毒が加わり最後は腸チフスによって31歳の短い生涯を閉じたフランツ・ペーター・シューベルト。 宮沢賢治より6歳も早い夭逝であった。 恰も失恋、貧困、病魔が《冬の旅》の絶望と哀しみを生み出しているかのように思われているが 果してそうだろうか? ・ 恋が成就し楽譜が売れ名声を博し、無病であったなら我々が知るシューベルトの作品は存在しなかったのか? 恋の成就後の倦怠、名声と富による堕落、際限も無く老いを引きずる無病、それらが齎す救いの無い絶望に シューベルトが気付かぬ筈はない。 失恋、貧困、病魔が負の触媒として《冬の旅》を生み出したなら、負の触媒はメスを反転させ正の触媒として更に深く 決して救いの無い《意味の喪失》を抉り出すことが出来るのだ。 そこまでシューベルトを読み込むならポール・ルイスのピアノは美への恐怖を描けるかも知れない。 ・ あーだから、正の触媒・春爛漫の背景に《冬の旅》が聴こえたんですね。 |
bQ5 ・
ミレニアム1部(ドラゴン・タトーの女)上下巻.2部(火と戯れる女)上下巻.3部(眠れる女と狂卓の騎士)上下巻
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発行日:2009年4月15日 定価:1700円(アマゾン価格) (各部の上下巻6冊)計10200円 読書期間:1月〜4月 評価:★★★★★ |
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劇場:BD(山荘初放映) 鑑賞日:3月〜4月 評価:★★★★★ |
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どうだこれが42インチだ! REGZA42Z1 デジタル・ハイビジョン・液晶TV 《ミレニアム》を録画したブルーレイ・ディスクを 東芝SD−BD2に入れてスイッチオン! 42インチの大型画面REGZA42Z1にハイビジョン映像が いきなり飛び出す瞬間を期待。 が、あれれ・・・音が僅かに乱れるでは、こりゃ不良品だ。 ・ そこで不良なのはBDなのか、プレイヤーなのかTVなのか 東芝修理センター職員を呼んで捜索開始。 1人目の職員の結論:「BDに異常はなし、おそらく プレイヤーのブルーレイの読み取りセンサーが原因でしょう」 2人目:プレイヤーを交換したが音乱れは改善されず 結論を変える。「TVが不良なので基板を替えましょう」 ・ 3人目が来たがTVに異常無し。 結論:「プレイヤーの代金を返金するので許して欲しい」 つまりギブアップしたのだ。 そこでヤマダ電気の販売責任者と大喧嘩。 ・ すったもんだしてBDを地元のK’S電気に持って行き 他社のプレイヤーに入れてみたらバッチリ。 なーんだ、東芝の製品そのものが不良品だったのだ。 こりゃリコールだな。 東芝を捨てパイオニアのBDP330を購入し やっと一件落着。 ・ と、まあ山荘での《ミレニアム》初上映は 大変だったのです。 |
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リスベット・サランデル 圧倒される無名女優ノオミ・ラパス 山荘初上映までに紆余曲折があっただけに リスベットとの大型画面での再会には感動したね。 この画像はTV画像をそのままカメラで 撮っただけなのだが、どうだいこの鮮明さ。 ・ では、どれ程想像を逞しくしても描けないヒロイン、 リスベットについてちょこっと。 背中一面に竜の、首には雀蜂の、 腕や足には帯状の刺青を施し、耳や鼻、陰唇にまで 夥しい数のピアスを着け黒の革ジャンを羽織り バイクで突っ走る。 ・ 1部では伏せられているが 母親を虐待する父親にガソリンをかけ火をつけ 12歳で児童精神科病院に送られる。 病院で13歳を迎えた自らに贈った誕生日の プレゼントは精神科医、心理学者とは 金輪際いっさい口をきかぬ決意。 ・ ジュネーブ条約で非人道的行為とされる無刺激室に 入れられベッドに縛りつけられ381日を耐える。 更にリスベットは口を無理やり開かされ 向精神薬を飲まされる。 何故そこまでしてリスベットを社会から 封印しようとするのか? 実在したオーロフ・パルメ首相暗殺事件 まで絡むリスベットの背景とは? ・ 地方裁判所により無能力者の宣告を受け 後見人の管理下に置かれやっと社会に出たリスベット。 こうなると最早廃人からの脱出は 不可能に近いと思われるが、 リスベットは比類なき孤独を抱えて 闘いの一歩を踏み出す。 |
手を焼くぜ!チビの悪行 4月9日曇り後晴 山荘池 電気が点かない。 大地震による計画停電の始まる前だから当然停電ではない。 ブレーカーが落ちていることに気付き ブレーカーを入れるが 直ぐ切れてしまう。こりゃ大変! ・ つまり何処かで漏電しているのだ。 極めて危険な上、電気の無駄使いが続いているわけ。 冷蔵庫、電子レンジ、ホッカー、トイレ、生ゴミ乾燥機、TV・・・ ありとあらゆる電源をチェックするが不明。 ・ 数時間の悪戦苦闘の探査に疲れふと池に目をやると 池灯が倒れ水面下に没しているでは。 あいつだ!モーターと照明部分が水中で漏電したんだ。 犯人は・・・チビだ。あの野郎、許せん。 |
水浴が大好きな上、 半野生化しているチビが 池の鯉を狙って池に飛び込み 鯉を追っている内に 池灯に何度もぶつかり ついに倒してしまったのだ。 畑荒らしだけでなく 池荒らしまでするとはもう堪忍袋の 緒が切れたぞ。 |
水没し壊れてしまった池灯は 点かないし 勿論モーターも動かない。 ショートしてしまったので もう直りはしないと断念。 新品に買い替えるしかないな。 が、チビに又やられるかもと 忙しさに感けて池から取り出し そのまま放置して数カ月。 |
春のせせらぎ復活 4月9日曇り後晴 山荘池 さてどうしよう。捨てれば粗大ゴミになるだけ。 1か月経ても尚、 復興の進まぬ大震災の瓦礫の街が浮かぶ。 よーし何とかこいつを甦らせよう。 分解し1つ1つ部品をチェックし油を差しスイッチオン。 ・ ピクリとも動かない。くそー! 短気を起すなよ。原因さえ突き止めればきっと動く。 と信じ又又2時間悪戦苦闘。奇跡が起こった。 突然うぃーんと動きだしたのだ。 そんな莫迦な! てな訳で極めて非科学的ではありますが 山荘にも《春のせせらぎ》が復活したのです。 めでたし、めだたし! |
超美人になったね(山荘ゲートの片栗) |
燦爛・春の光(前庭の辛夷) |
燦爛たる氾濫 4月10日(日)晴 未だ早いかなと思いつつ 水仙に隠れていた片栗に目をやって 吃驚! ほんとうに美しいね! ・ 凄ーい美人になったね! 扇山の頂稜から連れてきた時は あの美麗な片栗とは とても思えぬ不細工な容姿だったのに。 |
咲いてしまった柳(山荘前) |
森の仄暗い闇を背景に 命を光に映して ほら、芳しく匂いたっているよ。 ・ 森を覗けば辺り一面に春蘭が 手招きしているし 桃色の花弁を恥じらうように 開きはじめた杏子も 秋波を送ってくるし 春は実に艶めかしいね。 |
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綻び始めた杏子(西畑&奥庭) |
あちこちに春蘭(山荘の森) |
木五倍子(きぶし)(座禅草公園手前) |
遅過ぎた土筆(疏水脇) |
M9.0の超巨大地震、 地震による火災、 更に20bを超える大津波 その後の最も深刻なレベル7の 原発事故と悲劇が続き 春の到来を暫し忘れていた。 ・ 気がついたら最も美しい時を過ぎ 柳は花開き 土筆は育ち過ぎて胞子が飛散。 プロローグを失ってしまった 喪失の春・2011年3月。 |
真っ先に山荘の 春を告げるいつもの すっかり盛りを過ぎ 干乾びてあとは散るらんとばかり。 ・ 果樹畑の手入れをする者も無く 放置された李は 春をを忘れずに綻びはしたものの 咲いていいやら思案顔。 蕾を固く閉じたまま。 エピローグの手掛かりさえ無い 凍結の春・2011年4月 |
薹がたった山茱萸(さんしゅゆ)(前庭) |
棄てられた李(座禅草公園手前) |
テラス&書斎(2階) |
カリスト(2階) |
イオ南窓(2階) |
4月10日晴 1994年3月の山荘開きと共に クリビヤはやって来た。 多彩な花々や 観葉植物が各部屋で艶を競い 生命を謳歌。 ・ やがて適者生存の嵐に襲われ 山荘の情熱に破れ 自然淘汰され、次々と消えていった 多くの仲間達。 それでもお前だけは咲き続けるんだね。 |
南瓜の種鉢(2階カリスト仮温室) |
昨年のベスト ここ数年來南瓜の味覚にぞっこん。 日本の南瓜が終わると 南米各地の南瓜を愉しみ 現在はニュージ−ランド産を食卓に。 ・ 勿論当たり外れがあり ほくほくの栗のような極上南瓜には 中々巡り会えない。 そこで極上南瓜の種を保存しておき 今夏は山荘での栽培をと 60個の小鉢に種蒔きし仮温室へ。 |
浴室(1階) |
踊り場(1、2階) |
イオ西窓(2階) |
山雀キョトン(1階テラス) |
啄む四十雀(中庭) |
野鳥も大忙し 4月10日晴 ごりごりがりがりと コーヒー豆を挽いていると 直ぐ目の前の中庭に現れた四十雀 枯草の下に潜む虫を 無心に啄み、ふと思い出したように こちらを振り向く。 ・ 目が合った。 黒いネクタイを正面に向けて 《やーやーもうすぐ 番い、産卵、子育てとなるので 大忙しさ》 |
あれ!良い香り 4月10日晴 挽いた豆をサイフォンに入れて アルコールランプに 火を着けると沸騰した湯が昇る。 茶褐色のガラス球の底が 湯を含んで黒ずみ香りが広がる。 ・ あれ、ガラス窓を隔てているので 香りは届かない筈なのに 山雀がやって来たよ。 そうかあいつが茶褐色なのは コーヒー党の証だったのか! |
黒いネクタイの四十雀(中庭) |
コーヒーに惹かれる山雀?(1階テラス) |
霜降り椿(奥庭) |
ここにも水仙(中庭) |
4月3週・・・・地雷と戦車のお出ましじゃい! |
滅びつつある山荘芝桜(ワインセラーの上) |
最初の 4月16日(土)晴 葡萄畑 春と云ったって 山荘の朝は未だ霜が降りて 大地が白くなって寒くてぶるぶる。 ・ それなのに待ちきれない黄揚翅蝶が 羽化して、ほら出てきたよ。 「やあ、君達には未だちょっと 早すぎはしないかい?」 《でも今日は山荘の畑に誰か やって来そうだから お迎えしようと寒いけど羽化したの》 ・ それでは蝶と一緒に山荘ワインで 歓待してあげようか。 |
次々咲く見知らぬ水仙(ワインセラーの上) |
猪に負けないぞ! |
鶏糞は臭いし重いぜ |
雑草に負けないぞ |
高芝山を背景に |
さあ、有機栽培土作りだ! 4月16日(土)晴 葡萄畑 雪のようなヨーグルトの上に 橙マンゴをトッピングしたシャンパン・グラスと 山荘産紅ワイン《ゆぴてる》が置かれ テラスは長閑な春の光に満たされていました。 林檎のパイと苺のパイを摘まみ 畑で採れたてのほうれん草や人参のサラダを食べ ワインを呑むと力が満ちてきます。 ・ 「さあ、ワインを呑んだら戦闘開始だ!」 鬼のように優しい隊長の声が春の光の中に 凛として響きわたりました。 「本日の活動は先ず対猪、鹿作戦。 敵侵入防止柵を張り巡らせた 葡萄畑の南境界線に布陣し、徹底的に・・・」 その後、言葉が詰まったような。 ・ 徹底的にどうするのでしょうか? どうも隊長は「レイテ戦記」の読み過ぎでレイテ島辺りの バーチャル・リアリティーの世界に突入してるらしく この分でいくと今夜のログでの2次会では 先日のレイテ島での甚平鮫追跡の 話しを聴かされそうです。 |
眼下は桃の花の海 4月16日(土)晴 葡萄畑 あれ、話しが詰まったと思ったら未だ続きそう。 「その後は地雷を敷設し戦車を出動させ 大地のローラー作戦を展開し、敵の殲滅を図る」 ・ 何のことはない 段ボールを直角に折ってフェンスの下に 敷き詰めてその上に土を 被せフェンスの下からの猪、鹿の侵入を 防ごうと云うだけのこと。 ・ 戦車なんて云うからドキッとしたけど 小さな可愛らしい耕運機が出てきたので 思わず笑ってしまいました。 だが地雷とは物騒な代物、場合によっては拒否せねばと 作戦に臨んだのですが 出てきたのは鶏糞では在りませんか! これを畑に撒いて有機肥料にするだけの話し。 ほら、生まれたばかりの黄揚翅蝶だって 嗤っているよ。 |
土を掘ると懐かしい大地の匂い |
似合うぜ!青い手ぬぐい |
もう慣れたぜ耕運機 |
150kgの鶏糞散布 |
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畑仕事の後はピクニック(上条峠) |
連続すってんころりん |
山荘の最高峰・高芝山(1540m)へ 4月16日(土)晴 南西尾根 対猪、鹿作戦と地雷敷設の有機肥料撒布 戦車による耕運を終え たっぷり汗を流した後でバージョンCへ。 ・ 「今までは猪と鹿を敵とする作戦であったが 山に入ると新たに熊作戦が必須。 対熊作戦には何が必要か 馬淵参謀述べてみよ」 ・ 「ハイ、熊の気配を逸早く察し 熊と闘えるのは犬であります」 |
遠藤山・俺の頂上だぞ! そこで馬淵参謀は 早速偵察犬・悠絽を調達に 馬に一鞭。 ・ やって来た偵察犬・悠絽は 嬉しい筈の 山に来たのに沈んでいます。 最近優秀な友・舞瑠を 失って元気が出ないのです。 ・ 犬と共に登り始めるや否や 遠藤2等兵が連続すってんころりん。 「馬淵参謀に騙された。 高尾山に毛の生えたハイキング とは真っ赤な嘘。 よくも騙くらかしてこんな道なき 山に連れ込んだな」 |
そう叫びつつ遠藤2等兵は やおら拾った枝を振り回し 馬淵参謀に恨みの一瞥をジロリ。 それから徐に立ちあがり 元気の無い悠絽と高芝山の頂を とぼとぼ目指すのでした。 ・ やがて目の前に小高い丘が現れると 疲労困憊し、とろんとした 遠藤2等兵の瞳が 俄かに耀き始めたのです。 ・ 頂に立つや何とその先に もっと高いピークが 峨峨と聳えているでは・・・。 しかし横目でジロリとピークを 見つめたまま遠藤2等兵は 突如喚き出したのです。 ・ 「やったーここは俺の山・ 遠藤山の頂上だ!」 |
遠藤山を超えると 南西に延びる尾根は益々広くなり 切り倒された沢山の大木が 両脇の森に捨てられているでは。 ・ 「さて、これは明らかに 何らかの作戦が展開されたことを 示しているが意図は何だ?」 暫くは誰も答えません。 ・ 高くなるにつれて兵士の歩みに 差が出てきて遠藤2等兵は 大きな声で答えました。 「それは山火事を防ぐ為であります」 |
あれ、未だ山が続いているぞ! |
だんだん離れていくな |
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北の頂上(1540m)・見晴らし悪し |
ここが高芝山の頂だ 4月16日(土)晴 中々鋭い答えに感心して隊長は学徒兵・遠藤2等兵の 出身校を訪ねました。 「はい、自分は東京理科大で応用数学を学んでいます」 「おーそうか!それなら350年前の関孝和が 即解したあの問題をちょっくら観てもらおうか? ・ 果して解答が正しいのか、別解答にどんなのが在るか 熊作戦が完了したら直ぐ取り掛かってくれ。 実は恥ずかしいながら 最近 老・低化しつつあり山荘活動は深刻な危機に曝されている。 このままでいくと山荘は呆け老人の集う姥捨て山になっちまう。 ・ そこで一計を案じ山荘HPにあの数学問題を載せて 知的触発を試みたが誰もが観て見ぬふりか解らんとの反応。 最早知的レベルの低下は一目瞭然。 この天地明察作戦の突破口を貴様に開いて欲しい」 ・ 隊長は登高を続けながら学徒兵の返事を待っていましたが、 幾ら待っても何も聞こえません。 振り返ると遠藤2等兵は最早遙か下の稜線に小さな点となって 今まさに消え去るばかりです。 ・ どうも森の切り株に腰を降ろし 既に思考を開始しているようなのです。 350年前の関孝和が解いたあの問題と云っただけで即 天地明察作戦の問題が解ってしまうとは 遠藤2等兵、唯の学徒兵では在りません。 |
そっぽを向く悠絽と馬淵君(北峰頂上) |
舞瑠が居なくて寂しい村上さん |
南峰ケルンと悠絽(南峰頂上) |
熊作戦が悠絽のお陰で功を奏し 熊にも遭遇せずに 3名が無事に高芝山の頂に立ちました。 新たな任務・天地明察作戦に取り掛かった学徒兵・遠藤は 森の中で森と化し、無我の境地に入ったか 姿は勿論、気配すら在りません。 ・ 悠絽にそっぽを向かれた馬淵参謀は元気そうに右手を 上げてポーズをとっていますが実は このとき既に体力も気力も限界を超えて倒れる寸前だったとか。 ・ シェフ村上の到着を待たずバタッと山頂に伏したまま 暫く動かなくなってしまったのです。 まーのんびりと昼寝ならぬ夕寝を愉しんでいるのかと 「さあ、下るぞ!」と一声掛けて下山開始。 ところが幾ら待てども姿が見えない。 ・ 「自分は合気道やフットサルで常に精神と肉体を 鍛練していますのでその辺の軟な人間とちょっと違います。 如何なる苛酷な作戦にも耐えられます」 それが口癖の馬渕参謀のこと、隊長は全く心配せず。 ・ 森に夕陽が沈み満月前夜の月が煌々と輝き出した頃 やっと姿を見せた馬渕参謀の一言。 「いやー大ピンチでした。腹減ってコカコーラがちらちらして もう動けませんでした」 ・ 「うーん鍛練が足りん、 次回からは呑まず食わずのサバイバル作戦も実施せねば」 あーこんなこと隊長が考えているなんて知ったら もう山荘への志願兵なんて絶えてしまうに決まってますよね。 どうも隊長は客観情勢の分析力に著しく劣り 最早使いもんにならん。 |
ケルンの在る南の頂上 |
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パキケトゥス想像図 肉食性哺乳類・・・鯨の祖先か? |
ヒマラヤ大山脈の生み出される6500万年前・新生代の始新世初期 せめぎ合う2つの大陸(インド亜大陸とアジア大陸)は浅い海を成した。 果敢にもパキケトゥスはその浅い海を恐れず、いや海への遠い記憶に魅せられてか 肺を抱いたまま潜水具も着けず、あらゆる困難を甘受し海への回帰を決意した。 ・ せめぎ合う2つの大陸は浅い海を徐々に天空に持ち上げ、やがて海はヒマラヤの大山脈となった。 海が天空に昇るに連れ、前肢を胸鰭に変化させ後肢を退化させパキケトゥスは鯨になった。 鯨はヒマラヤから海へ回帰した時空の旅人。 (参照:wikipedia) |
流した汗に乾杯! 4月16日(土)晴 テラス テラスで乾杯を重ね 2次会は愛媛の隊員が送ってきた デコポンや林檎、ワインを持って ログハウスへ。 ・ 予期した通り会話は レイテ島での甚平鮫追跡に なるかと思ってましたが 話は参謀の愛読する 東野圭吾の作品の扱き下し だったりで甚平は さっぱり出てきません。 ・ 「それじゃ甚平鮫の追跡は どうだい?」 と突如会話は村上に振られ慌てた 村上はしどろもどろ。 焦って甚平を語り始めるが どうも話しが咬み合わない。 ・ 咬み合わない筈である。 参謀も学徒兵も 甚平鮫と撞木鮫を混同していて 「あーあの横に頭と目が 飛び出した鮫ですよね」 なんて頓珍漢なこと云ってるのだ。 |
畑と山と森で流した汗に乾杯! |
最大で18mにも及ぶ甚平鮫は 鯨と同じプランクトンを食べ 同じ体形をしているのに何故 哺乳類ではなく魚のままなのか? ・ 海から陸へと新たな宇宙を求め 進出した生命体は 途轍もない苦難と長い時間をかけ 鰓を捨てて肺を手に入れた。 が鯨は何故再び海に戻ったのか? ・ 甚平も鯨のように進化すべく 卵生を捨て卵胎生を選び 体内受精をする為の 性交パートナーを求めた。 でも甚平はそれ以上の進化を 望みはしなかった。 ・ 従って今でも甚平は 産んだ卵を体内で孵化させてから 体外に胎児を出すのみ。 鯨のように困難を排して海中で 母乳を与え母子の絆を 育んだりはしない。 ・ どうも隊長は2次会で 《苦難と進化》をテーマにそんな事を 話したかったらしいと 村上は気付いたようなのですが・・・ |
切り株のアート |
森に咲く壇香梅 4月17日(日)晴 上条の森 |
あれ、ここにも在るぞ! |
甚平鮫の話しが頓挫し 3次会は42インチの大型TVを 囲んでチベット遠征登山の 記録映画鑑賞へと。 ・ 「いやー隊長の撮ったビデオ 中々いいんですよね」 とか云ったかと思うと 参謀はしっかり白河夜船。 ・ 未踏峰Mt キラの初登頂記録で すっかり忘れていたチベットが 大型画面に初登場。 広大なチベット高原をヤクと共に キャラバンする村上が 大写しで笑い掛けてくる。 ・ 未踏峰の北壁に アイスバイルを打ちこみながら ザイルを手繰り頂に迫る隊長。 荒い息遣いが氷壁に流れ やがて高所ポーター・ピンゾーが 頂に立ち叫ぶ。 ・ 「Congratulation!We are the summit. Sakahara san」 |
でっけえー |
就寝は夜中の1時。 起床は5時なので睡眠時間は 4時間、眠いが 朝トレーニングで上条峠へ。 ・ 森のあちこちで小さな黄花を 綻ばせた壇香梅が満開。 森の静けさと 壇香梅の清楚な佇まいが調和し ・ 刹那の調べが心象を深く抉る。 「でもどんなに美しい里でも 此処には住めないね」 静謐を湛えた瞳が微かに肯く。 シューベルトの美への 畏れが一瞬脳裏を走る。 ・ 森を出ると あれ!何だろう? 切り株のトーテム・ポールだ。 向こうにも在るぞ。 「どれ悠絽乗ってごらんよ。 誰だろうな? こんな洒落たことする人が 居るなんて嬉しいね。 山荘でも作ってみるか?」 |
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朝日に映える満開 |
水仙に囲まれたゲート |
舞瑠におくる葬送の調べ 4月17日(日)晴 ゲート 花に包まれてのタイア交換 無数の花々に囲まれ車のトランクを開けてジャッキーを取り出す。 倉庫の棚からノーマル・タイアを降ろし奥庭を転がし前庭を通り車まで運ぶ。 雪の八ヶ岳に行こうと思ってスタッドレスのままにしておいたが、舞瑠が死んでしまっては雪山に行く意味はもうない。 ・ 意を決して雪山を諦めやっとタイア交換を始めたが、花々に囲まれているととても哀しい。 スタッドレスを1本外す毎に舞瑠との距離が広がり、やがて手の届かぬ絶望的な彼方に舞瑠が遠ざかっていく。 舞瑠は水仙の咲き乱れるこの場所が大好きでよく寝そべっていたな。 そうだ、この花々を総て舞瑠への葬送曲として捧げよう。 ・ たくさんの山々へ舞瑠を連れて行ってくれた銀の車が水仙に囲まれてひっそりしているね。 ドアを開くと、目をきらきらさせた舞瑠が飛び出してきそうだな。 今度はこの銀の棺に乗って山々を超えて、たった1人で遙かな銀河鉄道への旅に出るんだね。 |
先週、山荘の桃は未だ咲いていなかった。やっぱり山荘は寒いんだな!
来週が愉しみと思って来てみたら今週は既に散りかけているでは!花の命の短さよ。
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先週、下界で満開だった里桃はすっかり散り果てて彩無し。
従って山荘から眼下に連なるピンクの絨毯は残念だが今年は観られない。
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仕方なく2年前の里桃画像を拝借し今春画像に組み入れ、数年に一度だけ訪れる山荘シャングリラを再現。
シャングリラ 失われた地平線 4月24日(日)晴 山荘の森 |
ソルダムの白花に若葉の萌黄が融け込む。 生まれたばかりの萌黄の彩を天空に広げ、 入り組む黒い幹がアーチを造る。 アーチの深奥に桃源が蜃気楼のように浮かび上がる。 ・ このアーチを潜ると チベットの山々の奥地に在ると云う理想郷。 この山荘を登山基地として繰り返し訪れたチベット奥地の未踏峰が ・ 黒い幹のアーチが時空の回廊となり未踏峰と山荘をクライン管で繋ぐ。 時と空間は境界を失い限りなく自由になって、私はクライン管を翔ぶ。 |
熱情の総てを注ぎ追い求め登り続けたヒマラヤの峰々、 そして幾他のチベットの未踏峰。 雪と氷に閉ざされた未踏の山顛で確かに豊饒な生の歓喜に包まれ、 時には神々との邂逅を垣間見たこともあった。 ・ だが生命の影すら無い凍てついた未踏の山顛が如何に豊饒の時を刻もうと 人は其処に住み続けることは出来ない。 同様に人は香格里拉に住み続けることは出来ないのだ。 ・ その自明の理をソルダムの黒い幹は時空の回廊として描き 未踏の山顛と香格里拉をクライン管で繋いだ。 生命を拒絶した凍てついた世界と総てが満たされた理想郷は 対極に在りながら何故結ばれるのか? |
森の囁き・壇香梅 |
永劫の回帰 4月24日(日)晴 上条の森 いいねー! この上条の森に来ると 決して触れることの出来ぬ自らの 心象風景に忍び込んだよう。 ・ 心象風景の森を見つめる自分が居て その森を彷徨い歩く自分が観える。 《おやまあ、こんな処に 私の心象風景は転がって居たんですね。 さて自らの心象風景の 旅人となって私は何処へ行きましょう》 |
露を宿す壇香梅 |
森の死に重なる生命 |
枯葉の海に漂う白樺 |
森のクライン管 |
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稜線の花園三つ葉躑躅 4月24日(日)晴 上条山稜線 J・ヒルトンが認識していたか 文中からは解らぬが 失われた地平線・Lost Holizonとは 闘いや苦痛、死の恐怖すら無い 総てが満たされた理想郷そのものである。 ・ もはやその理想郷では次なる世界を 必要としないのであるから 地平線は何処にも存在しないのだ。 ・ 幸や歓びは苦痛や哀しみの 対極として初めて感覚可能なのに その一方を否定する世界は実存しない。 敢えて歓びを永劫に持続させるとしたら 死によって 瞬間冷凍させるしかない。 そしてそれは正しく実存の否定。 |
理想郷それ自体 矛盾の産物であるとしても毎春、 決して忘れずに山荘を訪れる 花の饗宴には思わず 香格里拉を夢見てしまう。 ・ 先週2度も上条峠を訪れながら 踏み込めなかった 稜線の花園を散策し森の宝石を堪能。 ・ 小倉山から上条峠へと 連なる稜線の両側のそこかしこに 咲き誇る無数の紫の花弁。 夜明けの太陽を孕み 仄暗い森を背景にして春の歓喜を謳う。 ・ 哀しくなるほど美しいけれど もう散り始めている。 きっと来週は何処にも紫の光をとどめず 幻のように消えてしまうんだね。 |
実存・・・絶えざる自己超克を強いられている脱自的存在 |
最初の芽吹き・春の畑 4月24日(日)晴 山荘林檎畑の馬鈴薯 |
どうだい、この芽吹き! こんな風に忘れずにつんつんと芽を出してくれると、嬉しくて嬉しくて鼻歌気分でスキップしたくなるね。 小さな芋と云う自己を超克し、芋の原型から遙かに脱した緑の葉を繁らせ 君達も地平線の彼方へと実存の旅を続けているんだね。 |
bQ4 4月25日(月): 悠絽2頭の仔を生み母親となる。2月27日にオバマが犬小屋の2重塀を突破して悠絽と交わり悠絽妊娠。58日目の出産。
舞瑠と入れ替わるようにして生まれた2頭。華麗に山稜を舞う舞瑠のように育っておくれ。
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