その48秋ー2009年霜月
11月1週・・・・新雪の燕山(2004m)から古礼山(2112m)へ
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宜しく!・チビです 武蔵の弟 「かわいいー!」 思わず叫んでしまいたく なるような愛らしさ。 ・ 「死んでしまった 武蔵の代わりに 新顔チビとオバマを 連れて行きます」と森人 からの連絡があった。 確かチビは 極度に触られるのを嫌い 警戒心が強かった筈。 ・ 山荘で待っていたチビに 「チビ宜しく!」と 声を掛けても知らん顔。 近づくと逃げ回り 決して触らせない。 ・ 武蔵の弟であるチビは 警戒心の強い兄より 遙かに繊細で人に懐かず 飼うのが難しそう。 |
未だ1歳です 僕は人に懐きません 懐かないだけではない。 武蔵と同じく 紐が大嫌いなのである。 ・ でも武蔵のように 紐付きの首輪ごと首から 抜いてしまうのでなく もっと過激に紐から脱出 するのだ。 ・ この愛らしい顔からは 想像も出来ないが 野生の本能・自由への 欲求は 兄・武蔵より遙かに強い。 ・ 首から下の紐を よく観てごらん。 緑のぐるぐる巻きの環が 見えるだろう。 あれは針金なんだ。 ・ 何のためかって? 食い千切られない為さ。 そう、チビの紐からの 脱出法は紐を食い千切る ことなんだ。 |
食い千切られた1本目は黒革の紐で2個所が 鋭利な刃物で切断したようにスパッと・・・。 2本目の強靭なザイルの紐も一晩で食い千切られる寸前。 そこで緑の針金で補強したのさ。 |
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枯葉の森を疾駆 チビのデビュー 驚いたことに 紐から自由になっても チビは飼い主の 元に帰らないで山荘の 犬小屋に居るのである。 ・ 兄の武蔵は 首輪を抜いてさっさと 帰ってしまったが チビは帰らない。 つまりチビは山荘が新たな 自分の棲家であると 認識したのだ。 ・ 仕方無く最初の扇山の 散歩は紐無し。 初めてなのに適当な距離を 保って新しい飼い主に 付いてくるチビ。 ・ 2番目の小倉山では オバマと一緒に 紐を着けて早くも快走。 いいぞ、その調子だチビ! |
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山荘の森に道 椎茸原木の大移動で腰痛 藪だらけの北の森に 遊歩道をつけ 乱立する木々をすっきり させて森を 甦らせようとの試みが いよいよ始まった。 ・ 遊歩道を造るには 森の中に在る椎茸栽培の 原木を移動せねば。 これが予想外に大変。 ・ 1本十数キロもある 丸太が百数十本もあり それらを森の上まで 運ぶのだが可也の重労働。 ・ 2日がかりで集中して 運搬したら腰に痛みが・・。 朝起きたら見事なる ギックリ腰。 ・ あーこれで当分いや 若しかすると永久に 登山とはおさらばか? と深刻に悩む。 |
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木登り・柿の収穫 腰痛との闘い そろり、そろりと 痛みを刺激せぬように ストレッチと筋トレ。 ・ いつもの腹筋100回は なんとかクリアー。 朝トレの小倉山も登れた。 気をよくして干柿作りの 柿の収穫に挑戦。 ・ 恐る恐る柿の木に 登ってみる。 高鋏で梢の柿枝を ちょん切る。 ・ そうだ、先週も酷い腰痛に 襲われ1週間かけて やっと治したばかりなんだ。 習慣性ギックリ腰か? 無理をしてはいかん。 ・ とか何とか云いつつ 結局5本の木に登り 柿の収穫を無事完了。 よしよしこれなら 山登りも出来るかな? |
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雪富士と干柿 新雪来る せっせと柿の皮をむいて 2階ベランダの下に 干したその夜に 今年初めての寒波襲来。 山荘も3℃まで冷え込む。 ・ 西高東低の快晴の空に 雪化粧した富士が 冬将軍の到来を告げる。 干柿作りの絶好タイミング。 ・ 干柿は暖かかったり 雨が降ったりすると 黴が生えて 腐ってしまうのだ。 ・ 何だか画像がボケてるって? そりゃ仕方ないよ。 この画像は二重になった ペアガラスに映って いるのを撮ったんだから どうしたってピンボケなのさ。 |
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夜明けの太陽を燦々と浴び居間の大型油絵・木星の 中央に橙の星々が無数に輝く。 ・ そうかあの梢の柿達は虚空に煌く 星になったんだ。 |
木星と干柿 防鳥網を張る なにしろ最近の 記憶力の減退には 腰痛に劣らぬ 感嘆すべき進歩がある。 進歩の彼方に在る 壮大な虚空が 妙に親しいのは何故だ? ・ 昨日も売場に並ぶ 玉葱の苗を見て初めて 「お、いけねー この時期の玉葱苗移植を 逃すと来年の玉葱収穫は ゼロになってしまう」 と気付く始末。 ・ 即200本の苗を買い 葡萄畑に植えた。 しっかり脳に刻み込まれて いた筈の10月下旬の 玉葱苗植えが 完全に消えていたのに 改めて唖然! ・ 同じく干柿に防鳥網を 掛けるのもすっかり失念。 辛うじて記憶の底から 這い出してきた 懸念を掬いあげ直ぐさま 網を掛ける。 ・ 防鳥網に守られて橙の球が 光をたっぷり吸いこむ。 光はやがて極上の甘味になる。 これで鳥に食われず 収穫出来たら嬉しいね。。 |
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広瀬湖から雁峠へ 山荘で3℃の冷え込み さてさて習慣性 ギックリ腰への対応策の 第一弾として 木登りでの柿収穫を実施 してみたが 先ず先ずの成果と判定。 ・ そこで無謀にも 標高差千mを1日で登り 下ってしまう登山を 第二弾の策として採用。 ・ デビューしたばかりの チビとひ弱なオバマの2頭が 果して標高差千mの 登下降に耐えられるのかも 心配だが試す価値は 充分にあり。 ・ そこで広瀬湖の畔(1100m) から奥秩父の 主脈・古礼山(2112m)へと 腰痛爆弾を抱えて歩み 始めたのである。 |
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沈黙をしてる腰痛爆弾に感謝状でも贈ってやろうか? そのまま沈黙してたら感謝状だけでなく ケーキだってプレゼントしてあげるからね。 |
初雪の森 紅葉から新雪へ 林道の入り口は しっかり閉じられ人は おろか犬さえも 潜り込めぬ厳重な封鎖。 ・ どうも他に登山口は 在りそうだが見当たらない のでゲートに登る。 犬共々強行突破に成功。 昨日の木登り体験が 功を奏したね。 ・ 全くの静寂に支配された 紅葉の森が 延々と続きやがて雪が 行く手を覆う。 ・ 鮮やかな彩の森が 冷たい雪の世界に変貌。 季節を垂直へと旅出来る 贅沢さに唯感謝。 ・ |
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雁峠から古礼山へ 標高差1000mを登る 昨日の冬将軍の息吹に そっと触れたら 雪の下から《雁峠》が 顔を現した。 ・ 《雁峠》と呟くだけで 胸がキューンと高鳴る。 17歳の高校生が キスリングと呼ばれる大きな ザックにテントを詰めて 雲取から金峰山まで 縦走した記憶が甦るのだ。 ・ 半世紀前の雁峠で 乾パンを食べる見知らぬ 登山者の横顔が 彷彿として浮かび上がる。 ・ 装備が重すぎて 持参食糧を削ったので この日は昼飯をカットしたか 極僅かで腹ペコだった。 ・ |
見知らぬ登山者が食べる乾パンが実に美味そう だったのでつい見とれてしまったのだろう。 胸痛む腹ペコの私の青春が雁峠にはあるのだ。 |
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冷たい雪にはしゃぐ 僕ちめたい! やはり犬は 雪が大好きなのだ。 うっすらと積もった新雪に 小さな可愛らしい足跡を くっきり着けて 森を走り回る。 ・ 森に放し飼いで 棲んでいるとは云え 未だ1歳で登山経験の無い チビとオバマが果して 標高差千mを一気に 登れるのか案じていたが 全くの杞憂であった。 ・ 紐を解き放ってやりたいが 鹿や熊の気配を 感じる度に森の奥に 突っ込むので 紐を離す訳にはいかない。 ・ 獲物を追って深追いし 帰って来れなくなる可能性 が大きいのだ。 |
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雪の徒渉に挑戦 小さな谷の悪戯 さあ、緊張の一瞬。 渡された丸太には雪が 積もっているし 谷の中の岩は凍りついて つるつるだし。 ・ ヒマラヤ氷河から流れる 冷たい谷の徒渉を 何度も体験している ベテランの村上さんがどう クリアーするか 久々の観戦にワクワク。 ・ 一気に跳び超えるか はたまた飛び石をうまく捉え スリップせず バランスを保ち渡るか? ・ このワクワクする観戦が 何度か繰り返されるのだから 観客としては徒渉の多い この広川谷に感謝せねば。 ・ |
徒渉観戦後はあの懐かしい村上さんの 靴下を絞る光景まで何度か観賞出来たのである。 |
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笠取山頂見ゆ 雁峠の直下 谷が終わり急な 枯れた草原を登ると ピラミッドがひょこんと 稜線上に顔を出した。 ・ いつも一之瀬高原から 登る笠取山(1953m)だ。 9時半登山開始。 のんびり写真を撮り 雪と戯れながら登って 雁峠に12時着。 所要時間は2時間半。 ・ コースタイムでは 3時間となっているので 先ず先ずのタイム。 どうやら腰痛爆弾は 沈黙を保ってくれている。 ・ 無事帰れたら約束通り 腰痛爆弾に 美味しいケーキを 作ってプレゼントせねば。 |
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凄い見晴らし 奥秩父主脈の中央 人影の絶えた 静寂の山で半世紀前の 胸痛む腹ペコ私の 青春に出逢ってしまった。 ・ 幻かと目を擦ってみたが やはり私と同じ 黄色いヤッケを 纏った青年が居る。 ・ 「雲取からテントを担いで 縦走してきたんですが 食糧が無くなって きたので下山しようか 縦走を続けるか 迷っているんです。 甲武信の小屋は営業して いますかね?」と 問いかけてくる。 ・ 予備のアップルパイ ビスケットが2箱あるので テント漂泊する青年に 上げようかとふと思う。 ・ この先,下山で腰痛爆弾が 爆発したら ビバークを余儀なくされ 予備食が必要になる。 ・ ビバークを考慮して 提供を思いとどまったが せめて1箱でも 上げるべきだったかな。 と後悔の念がよぎる。 |
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20分で雁峠まで下り両犬に水を飲ませて 14時奥秩父主脈から一気に広川谷へ下る。 予定通り16時新地平着。 広瀬湖を散策し残照の湖面に映る紅葉の山脈を愉しむ。 腰痛爆弾はどうにか沈黙を保ってくれたようだ。 |
更に古礼山(2112m)へ 水晶山(2158m)鞍部まで 最初のピーク へダッシュで向かう。 秋の陽は釣瓶落し。 16時までに下山しないと 闇に襲われる。 ・ 現在12時半。 雁峠から水晶山を往復すると コースタイムで4時間。 最早不可能だが進める限り 前進を試みる。 ・ 20分で燕山に達し更に 頂への道の無い古礼山の 東面を巻いて水晶山の鞍部へ。 時刻は13時05分。 あと15分、ジョックで登れば 水晶山頂に達する。 ・ だが進めば確実に 下山は闇に捉えられる。 水晶山の頂は次回の愉しみに とっておこう。 ・ 後続する村上に合流し 下山開始。 |
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炎の落葉松 11月3日(火)晴 広川沿い林道 幾たび感嘆の声を漏らしたことだろう。 言葉にならない圧倒的な炎の森に深く心を抉られる。 ・ 夜明けの光に燃える森を登り 残照を浴び哀しみを湛えながら静かに燃える森に包まれ山を下る。 どう想い巡らせてもこれ以上の《豊饒の刹那》を私は知らない。 ・ |
紅葉の山 村上映子11月最初の登山は、初めて会うチビ(武蔵に似てる!)と少し慣れたオバマと共に、 登山道の入り口に恐ろしく頑丈な扉が設けられ、立ち入り禁止の看板。探しても他に入り口が無い。 歩き始めると広瀬湖が一望できる。朝日を浴びた湖は深いブルーを湛え、盛りの紅葉が一際映える。紺碧の空は澄み渡り、 渓流の清冽な水が爽やかなリズムを奏で、豊かな林道に一層の趣を添える。 明と暗がくっきりと描かれ、光と影の入れ替わる道を、犬達も楽しげに小躍りするような足取り。 初雪の山になろうとは予想していなかっただけに歓びも大きい。
1780mの雁峠へ2時間半で到着。あんなにのんびり歩いたのに、コースタイムより30分も速いとのこと。 ここからは熊笹の斜面を縫うようにしての急登。途中から雪富士が見え始め、その姿がぐんぐん大きくなる。
途轍もなく大きな自然の営みと対峙するとき、いつも身の内に云い難い興奮が湧き上がる。 錦繍の華麗な彩りを、限りなく透明な空気と青空と初雪が、
夕陽の茜が落葉松林を赤褐色の火焔の色に染め上げ、山がまるごと燃えているかのようだ。
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11月2週・・・・舞瑠の美しき疾走
《原図:青山白雲》
舞瑠は美しい谷の上流が気になるらしく呼んでも カメラの方を向いてくれません。 さっきから啼いている鹿が上流で水を呑んでいるのかな? |
破風山(2318m)へ 登山口判らずうろつく あんまり広川谷から 雁峠への森が 素晴らしかったので4日後の 11月7日に再び 広瀬湖の畔までドライブ。 ・ さてそれでは今日は 標高差1200mの破風山へ 行こうか? 東沢山荘入り口を超え 間違え雁坂トンネル道に入る。 ・ 無理なUターンして 東沢山荘に戻るが今度は 登山口が判らない。 あちこちうろうろして 探したら結局トンネル道の 料金所が入り口と判明。 ・ 車で戻るのも癪に障るので トンネル道を歩き 久渡沢林道を詰めるが 広川谷のような風情は無い。 だが左右に入り組む 谷は実に美しい。 |
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眼下の眺望 高芝山、倉掛山も眼下に 林道終点の沓切沢橋から 急な巻道となり ナメラ沢取り付を超えると 山毛欅(ぶな)、水楢の森になる。 が既に葉は落ちて 美しい黄葉は見られず。 ・ 滑らかなクッキリ沢を超えて 峠沢へ下ると 雁坂峠への茅戸の 急登が始まる。 暫くするとひょっこり 眺望抜群の峠へ出る。 ・ 山荘に連なる高芝山に 2本の鉄塔が見える。 鉄塔を追って山荘を探すが 扇山山稜に遮られ 見えない。 ・ 雪富士から手前に 視線をずらすとチャラとの 最後の山行となった 倉掛山が眼下に横たわる。 |
それが倉掛山と気付くには暫く時間が掛った。 この位置からの山座の同定は久々なのだ。 眼下の眺望をじっと見つめていた舞瑠と悠絽は 広大な光景の一点に山荘の匂いをどうやら嗅ぎつけたらしく 興奮して吼えだしそう。 |
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《うん、僕達もあとの2つの峠にも行ってみたいな》 と舞瑠と悠絽の顔は 語っているようでした。 |
日本三大峠 遥かなる途 日本最古の峠道で 日本武尊(やまとたける)が蝦夷 征伐に利用した道だと 日本書記景行記に 書かれているらしい。 ・ それでは残りの2峠は 何処かと云うと 北アルプスの針の木峠と 南アルプスの三伏峠。 ・ あれ!それでは村上さんは これで日本三大峠を 制覇したことになるね。 ・ K2遠征の取材で 新聞に使われた写真が 確か村上さんが参加した 雪の針の木岳 山頂のものだったね。 ・ 晩秋の塩見岳へ 三伏峠から登った時も 村上さんは参加してたよね。 |
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標高2千mの疾走 舞瑠と風になる 登山口を9:10に出て 雁坂峠に11:35分着。 15分後の50分に峠から 破風山に向かう。 ・ 遅れ気味の村上と悠絽を 置いてハイペースで 2千mの稜線を飛ばす。 12時50分雁坂嶺(2289m)で 大きな鹿2頭に遭遇。 ・ 東破風山頂で女性の 単独行者に逢い 写真を撮ってもらう。 舞瑠はちゃっかり女性の 昼食サンドイッチまで貰って 嬉しそう。 ・ 今夜は甲武信小屋に 泊まり明日下山とか。 後続の村上への伝言 「ここで待て」を女性に託し 更に西破風へ舞瑠と疾駆。 |
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花崗岩の続く2300mの稜線でふと舞瑠の気配が消えた。 《舞瑠!》と天空に向かって叫ぶ。 登山道から逸れた遙かな岩の高みに忽然と姿を現し 狼の眼差しで重畳と連なる山脈の彼方を見つめる舞瑠。 その美しさに思わず息を呑む。 |
惚れたぜ舞瑠 花崗岩の稜線を疾駆 ちょっと走っただけで 肉球が擦り減って出血し びっこを引いた舞瑠。 その1年前のひ弱な面影は 最早どこにも無い。 ・ 紐から解き放たれた舞瑠は 優美なフォームで 森を山稜を自由の天使の如く 駆け抜けるのだ。 ・ 決してとどまることなく 走り続け 深い森に突進し急な崖を 駆け登りジャンプし 野生狼を思わせる俊敏な 動きで私を魅了する。 ・ 人間に付いてトロトロ登る なんてことは 一瞬たりとも在り得ない。 ・ 姿の消えた舞瑠に 一声掛けると何処ともなく 風になって目の前に 突如現れる。 |
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月の輪熊の爪跡 怖いね大きな熊だよ 14時22分雁坂峠から 下降開始。 茅戸の急斜面を下り 森に入ると唐檜か白檜曾 と思われる 巨木に迎えられる。 ・ 見るも無残な熊の 爪痕が無数に付けられ 樹皮は剥がされ 実に痛々しい。 ・ 残照を浴びて生々しい 傷が浮かび上がる。 笠取山で見た裏白樅の 爪痕よりも鋭い。 ・ 「怖いね悠絽! 若し熊が襲って来たら 君達闘ってくれるかい?」 ・ 《勿論、死力を尽くして 闘うにきまってるさ。 1年前の僕らだったらそりゃ 真っ先に逃げ出して しまうけど今は熊如きに 恐れはしないよ》 ・ と逞しい返事を期待したの ですが・・・ 因みに下山は1時間50分後 の16時12分でした。 |
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ついでに風呂場の体重計に乗ったら53.4kg。 Body Mass Index(BMI)計算すると身長が170cmなので BMIは18.5、肥満度はー16.01。 標準体重は63.5kgとなるのでー10kg。 ・ 3本の爪の死と肥満度ー16が舞瑠との登山後の肉体変化である。 この状態になると肉体は羽のように軽く 1杯の水が甘く感じられ何を食べても極上の料理になってしまう。 正に理想の肉体であるがビアで食事をすると 直ぐ通常の56kgに戻ってしまう。 トレーニングをサボれば65kgにもなるんだから怠惰は恐ろしい。 |
山荘の森も華やか 彩の散歩 翌朝もすっきり晴れて 山荘周辺の森も色付き 嬉しくてわくわく。 ・ 先ず小倉山へ向かうが 何だか山頂に行くだけでは もの足りないので 片栗の森を経て上条の森 まで足を伸ばす。 ・ 山麓で真黄っきの銀杏に 出逢い鮮やかな葉と しばし語らう。 ・ 散歩後ゆっくり入浴。 爪先に痛みがあるので よく見たら右足の親指と 薬指が黒ずんでいる。 あれ左の薬指も黒いぞ。 久しぶりに3本の爪を 登山で殺してしまったな。 ・ 未だ未だ未熟者。 これじゃ1年前の舞瑠の 擦り減った肉球を 笑えないな。 ・ 風呂場から前庭を覗いたら 赤く紅葉した欅に混じって 山荘の銀杏も中々の美しさ。 灯台元暗しだ。 |
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遂に新ルート発見! 華麗なる幻の山! その翌朝も 晴れているではないか! 帰京の日だがこれでは 山に出かけぬ訳にはいかない。 ・ 《どうだい、思い切って 高芝山の未知ルートに 行ってみないかい? 先週偵察して新ルートの目安を 付けておいたんだ。 柳沢峠からの道は本にも 紹介されてるが 山荘側からのルートは無いんだ》 勿論犬は大喜び。 ・ バイクで山荘から上条峠まで 犬と共に走り 南西尾根に取りつく。 暫く登ると一面に紅葉した 防火帯に出逢う。 何だか森全体が炎に 包まれているような鮮やかさ。 |
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11月9日(月)晴 高芝山南西尾根 |
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どうだい君達のペンダントにしてあげようか? 悠絽、中々似合うぜ! 今日から君達は高芝山だぞ。 |
僕達山頂です 偽ピークに悩む ・ だがその後が大変! 直ぐ目の前にピークが見えるが 辿りつくと更にその先に 新たなピーク次々出現。 ・ その上踏み跡は途絶え 急な岩場が出てきて ルートフィンデイングに迷う。 4つ目のピークに出ると 見覚えのあるケルンがひっそり。 ・ 確か前回登った時は ここに頂上標識が在ったが 消えている。 その先にも木々に覆われた 小さなピークが在る。 ・ 行ってみると 頂上標識が下がっている。 小さいが立派な標識。 早速悠絽に付けてみる。 |
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遙かなり山荘 山荘より標高差840m 竹森林道は頂上直下まで 延びているが常に 閉鎖され辛うじてバイクが 通れる程度の状態。 つまり高芝山は 近くて遠い山なのだ。 ・ 以前はこの林道から凄い 藪漕ぎをして 強引に登頂していたが これで一応登山道らしき ルートを南西尾根に 発見したことになる。 ・ ついでに林道上部から この南西尾根に通じる道が ないか偵察。 鉄塔工事に使う横道が 在るのではと 見当をつけ探してみる。 ・ 全山紅葉した稜線を 辿ると扇山山腹の山荘が 微かに見える ・ さて林道は山稜の西側 なので横道も西に 在るはずだが・・・ ・ やはり在った。 白いロープの張られた 急斜面の下が 林道に通じているのを確認。 これでいつでも短時間で 高芝山に登れるぞ。 |
扇山の彼方に蜃気楼のように浮かぶ南アルプス。 ヒマラヤのゲレンデとして通い続けた北岳バットレスが 紅葉に見え隠れし、中央に赤石岳がどっしり横たわる。 ・ 冬の赤石岳を一緒に駆け巡った中島修の はにかんだような笑顔が南アルプスに重なる。 ナンガ(8125m)山頂直下で永劫の彼方へ還った修は 19年を経て尚、私の胸の中で含羞の微笑みを浮かべている。 ・ 修は何に対してはにかんでいたのだろうか? 長い間の疑問であったが、ふとずっと以前からその解答が 私の意識下に潜んでいたことに気付いた。 修は《生》そのものに対して含羞の微笑みを浮かべていたのだ。 同時にその含羞がヒマラヤ登山の原動力でもあったのではと 蜃気楼に浮かぶ赤石岳が囁く。 |
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今朝の主賓 標高差1200mを疾駆した舞瑠 ・ どんな犬でも狂喜する ドッグフードがあるんだ。 野菜入り角切りビーフの缶詰。 これは人間でも 食べたくなるような代物。 その名も《愛犬貴族》 ・ これを森人がチビとオバマ用に 沢山持ってきてくれた。 特別これに舞瑠の好きな 卵焼きを加えて 今朝は大活躍した舞瑠と 悠絽のパーティーだ。 ・ 悠絽は山荘でお留守番 なので犬小屋で 食べてもらって 舞瑠は森のテーブルに 招待してあげよう。 ・ どうだい主賓の気分は? |
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舞瑠と乾杯! 11月8日(日)晴 山荘森 僕も呑みたい! 2000mの稜線を共に駆け巡り 《生命の共感》が他種生命との間に成立するのを始めて舞瑠に教えてもらったよ! よく考えてみれば君と私の過去は同じ哺乳類で、つい7千万年前の新生代では 未だ枝別れしてなかったんだから仲間としての《生命の共感》が在っても不思議ではないよね。 ・ 65年前、私の肉体も子宮の中で生命誕生から人間までの40億年の旅を10カ月で体験した。 この生命史から計算すると1日が約1300万年になるので 7千万年前の哺乳類になったのは出産の僅か5日前と云うことになる。 勿論実際には変化速度は均一ではないので5日前の生命はもう立派な人間の赤ちゃんになってるけど 40億年の生命史を10カ月に単純換算するとそうなるんだ。 ・ つまり65年と5日生命史を遡れば計算上は君と同じ生命になるんだから 《生命の共感》があっても少しも不思議ではないのかもしれない。 幼児が犬と会話してる微笑ましい光景を目にすることがあるけれど自然で何の違和感も無いよね。 それは幼児と犬の生命史の時間差が大人より小さいからなんだ。 ・ ちょっと感覚を研ぎ澄ましてみれば木々のざわめきや鳥の囀りに共感出来るのも 同じ地球生命として木々や鳥とも人類が繋がっているからだろう。 さあ、乾杯!これからも心を通わせて一緒に登れたらいいね! |
11月3週・・・・アルビノーニのアダージョ
フランツ・カフカの実存主義から不条理への連なりが今 渺茫たる雲海そのものにメタモルフォーゼされ山荘に迫り上がり その総てを呑み込まんとする。 たった一人の観客である私は為す術もなく唯うろたえる。 処刑が足音を立ててやってくる。 |
氾濫の慄き 迫り来る小倉山 冷たい雨が粛々と降る。 一昨日聴いた福井健太の サックスがパイプオルガンに 乗って山荘に漂い 不条理劇の開幕を告げる。 ・ 山荘眼下に 雲海が新山恵理の奏でる 《アルビノーニのアダージョ》 になって小倉山を 広大な劇場空間に変え 逮捕から処刑へと ドラマをいざなう。 ・ ドレスデンの 第二次世界大戦廃墟から 見出され 復元されたアルビノーニの トリオ・ソナタが 銀行の支配人ヨーゼフ・Kの 不条理な処刑背景に 使われたのは1962年。 ・ ヨーゼフ・Kとは オーソン・ウェルズ監督の 映画『審判』(カフカ原作) の主人公である。 |
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雲海と黄葉 霧のヴェール 《東京芸術劇場
パイプオルガンコンサート》 広大な劇場空間を 吹き抜けるパイプオルガンと 小さなサックスが 共鳴するとは考えても みなかったので驚きでした。 ・
3曲目に流れ始めた静かな 哀しみを湛えた曲は ナンガ・パルバットの 映画編集で使用した 《アルビノーニの
アダージョ》でした。 ・
激しい雪崩の後の静寂に 流れるアルビノーニが 切々と胸を打ちます。 奇しくもHP11月2週に
「遙かなり山荘」と題して ナンガの中島修を 書いた後だったので 一層胸に浸み込みました。
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広大な空間を満たす雲海から密やかに姿を現した森が 彩をパイプの響きに滲ませます。 サックスの音色を奏でているのは畑の中央に立つ あの木に相違ありません。 |
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紅葉する山荘 やっと晴れたぞ! 実存主義と 第二次大戦の衝撃と荒廃が 齎したカオスは すっかり姿を消して 再び山荘は光に満ち 葉が燃え山が白く輝く。 ・ 前庭のいつも朝食をとる 石卓の紅葉が 黒ずんだ深い紅を帯び 朝の太陽で鮮やかに 雪富士を対照する。 ・ あまりの濃厚な美しさに 戸惑い言葉を 失ってしまう。 ・ 昨日の氾濫の慄きを 醸し出す雲海より不吉な 死そのものであるのに かくも紅葉は麗しい。 ・ どんなメロディーが聴こえて くるのか じっと耳を澄まして 暫く森に同化してみよう。 |
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満天星の透き通る紅の炎の向こうに、 一つ前の季節には、全山が滴る緑に覆われていたというのに、 |
紫陽花の化身 いつ生まれたの? 「リーマンのζ(ゼータ)関数の 自明でない零点は 複素平面のz=1/2の 線上のみに存在する」 ・ 確かその夜(15日)21時から 放映されたNHKの 《魔性の難問 〜リーマン予想・ 天才たちの闘い〜》では 「ゼータ関数の 非自明の零点は 一直線上のみに存在する」と 柔らかな表現になっていた。 ・ しかしそれが伝達手段の 言語なのか?と 疑問を投げかけたくなる点では 些かも変わりは無い。 最早日常伝達手段としての 言語ではないのだ。 ・ 紫陽花の緑と眼を惹く 蒼紫の花弁に 心奪われ 気づきもしなかった楓が 紫陽花の植え込みの中で 不意に彩を発し 目を射る。 |
・ 自然の神が授けた炎の輝くばかりの妖しさと美しさ。 |
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満天星の炎葉 前庭を染める リーマンが秘かに仕込んだ ゼータ関数が 今、鮮やかな楓となって 更には満天星(ドウダンツツジ) となって 山荘にアイデンティティーを 求めているような メロディーを奏でるのは 空耳であろうか? ・ 8月の当HPでダイソンを 登場させたのを リーマンはご存じなのだ。 ほらよく観てごらん。 1枚1枚の炎葉が 素数となり ゼータ関数の級数になって 素数が見事円周率πと 結びつく。 ・ NHKの番組では この逆数π2/6が表示され p2/(p2ー1)が左辺に なっていたが 同じオイラー積なんだ。 |
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紅葉露天風呂気分 山荘風呂の紅葉 つまり炎葉の1枚1枚を 素数とすると その葉を2乗して それより1小さい数で割って その総てを掛け合わせ 1本の樹木にすると 約1.64(π2/6)に なることを3百年前の天才 オイラーが証明したんだ。 ・ なんだか浴室の外に 広がる紅葉全体が π2/6に見えてくるから 不思議。 ・ この2乗の場合は 「バーゼル問題」と呼ばれ 「z=2のゼータ関数は どの値に収斂するか」と 長い間数学者の 課題でもあったなんて 人類の知能も満更捨てた もんじゃないね。 |
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枯葉の絨毯 枯葉舞う山荘 先ずここで自然界と 何の結びつきも 見出せなかった素数が 円周率と深く関連してる事が 見出されたと番組を進め やがてダイソン登場。 ・ 或る日数学者のモンゴメリと 物理学者のダイソンが 出逢った。 素数分布の数式(ゼータ関数の 自明でない 零点を解明する数式) 1−(sinπu/πu)^2 を話題の中でモンゴメリが 示したところ ダイソンは吃驚仰天! ・ その数式は 量子のエネルギー順位の 数式と同じであった。 つまり素数分布と 量子の世界は繋がって いたのである。 ・ 果してこれは単なる 偶然なのだろうか? 前庭を覆い尽くす 無数の枯葉の分布が 数式で表せるとは思えない。 ・ しかし素数分布は それより遙かに難解な分布。 その分布が 今、太陽の光を燦々と浴びて 自然界に踊り出たのだ。 |
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枯葉の食卓 降り注ぐ枯葉 これまで15章をかけて リーマン予想の話を してきたが、じつは お知らせしなければならない 悪いニュースがある。 ・ リーマン予想について 知るべきことを、 あなたはほとんど何も 知らないのだ。 明らかにそれは、 あなたが知らないことを あなたに伝えるのは 不可能だからだし、 なぜあなたが 知らないかといえば、 それは伝えることが 不可能だからだ。」 ・ 数学界の超難問として 有名な「リーマン予想」について おそらくこれほどやさしく 解説した本は無いであろう。 と云われた 「リーマン博士の大予想」の 著者カール・サバーは そう述べている。 ・ 伝えることが不可能な 数学言語を 心象風景に変換し 枯葉と共に石卓の上に 分布させると 例えばこんな光景に なるのだろうか。 ・ 見つめていると仄かな香りと 共にアルビノーニに似た 妙なる音色さえ 聴こえてくるではないか。 |
伝達不可能な真実が存在することの 哀しさに孤独な素数が級数で旋律を奏でる。 多分それはζ(ゼータ)関数の音色がするのだろう。 ・ 数式と云う数学言語と会話言語との絶望的なまでの乖離は そのまま知的存在の未来進化をイマージュさせる。 あやふやで地域限定の会話言語に較べ数式は 万国共通どころか 地球外知的生命体とも共有出来る。 数学言語と会話言語のバイリンガルが未来進化を決定し 数億年の彼方で妙なる音色を奏でる。 一方会話言語のみを選んだ種は進化を停め いつまでも森に棲み続けるのだ。 それもまた捨てがたい魅力ある未来である。 ・ さて食卓の用意も出来たし紅葉する山荘とリーマン予想の 幻想的アダージョで味付けした料理を頂きましょうか。 |
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ため息をついてこの光景に浸れるのもほんの束の間。 まもなく木々は渾身の力で葉を振り落とし、 また一本の裸の幹に還るのだ。 (記:村上) |
源次郎岳(1477m)へ 山荘正面の山 戸高雅史は自らを MASAと呼んでいる。 先週の高芝山頂で 目にした頂上標識に 「MASA」と刻まれていたが 気に懸けていた。 ・ MASAは中島修と共に ナンガ(8125m)の頂に 迫り修と明暗を分けた隊員。 MASAは登頂し 修は永劫の旅に出た。 ・ 《山中湖をベースに 北海道や九州など全国を 講演や野外学校の指導などで 飛び歩いています》との 便りがMASAから届いた。 (BBC参照) ・ どうやら高芝山頂の 標識に刻まれた MASAは戸高の所業では 無いらしい。 ・ 修のレクイエムとなった 《アルビノーニのアダージョ》 をMASAも リンク先から聴いて くれただろうか? ・ 紅葉の彼方に影を落とす 源次郎岳を観ながら ふと思った。 |
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さあ今朝は源治郎 牛奥トンネルから 昨年はこの分岐点から 右に折れ大菩薩へと 走り源次郎山頂をカット。 ・ 山荘の真正面に位置する ので高芝山や小倉山 のように見慣れた山だが ここ2年程頂には ご無沙汰している。 ・ 今年こそ紅葉の 落ちぬ内にと思っていたが 気がついたら もはや晩秋ではないか。 ・ 「どうする裸木ばかりだけど 行くかいチビ、オバマ?」 山の気配を感じたらしく 2頭とも興奮して 飛び跳ね互いにじゃれて 噛みあう。 「よしそれじゃ行こう」 |
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あまりにも素敵な秋晴れ、見本帳にしたいほどに澄み渡った空、 途中のドライブコースもいつ来ても捨てがたい味わいなので、 |
短い登山コースだが、落葉樹の森は、 大きな古木もあちこちで複雑な表情を見せ、 森のアート展を廻っているかのよう。 葉を落とした大樹はそれぞれの木肌の違いがよくわかる。 森の中に入り込むと、木々の種類だけでも驚くほど多種多様、 生命の不思議さにいつも驚いたり、感心したり。 (記:村上) |
森の歓迎 落葉森の饒舌 大地の隆起が2重になって 西へ流れ勝沼盆地に 落ち込む。 隆起中央に源次郎岳が ささやかなピラミッド を見せる。 ・ その源次郎山稜に隧道を 掘り出してから完成するまで 山荘から眺めていたが いつかその隧道を 抜けてみたいと 思っていたのに未だ実現せず。 ・ きっとその隧道を 抜ければ源次郎岳への アプローチがぐっと 縮まるだろうと 勇んで出かけた。 ・ 抜けた牛奥トンネルの先で 深沢林道に入ったが が〜ん! 山奥の細い道は ゲートで閉鎖されている ・ バックで何とか下り 嵯峨塩林道に回り込み 登山口に着いたが 山荘出てから1時間半経過。 予定の3倍近い所要時間。 ・ しかし登り始めるや否や 思わず歓声! 「うーん森が生きている。 1本1本の樹木の 表情がとても豊かで 言葉が聴こえてきそう」 ・ 元々地図に無いルート なので微かな踏み跡しか無い。 そこに枯葉が 降り積もり まるで枯葉のラッセル。 いい森だな! |
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影の森に佇む 星霜を詠う 枯葉のキャンバスに 朝の光が 絵を描いた。 ・ 源次郎岳の山頂が 森の木立の影と アンサンブルして 大きな縞馬になったぞ。 ・ さてはペガソスになって チビとオバマを乗せ 蒼穹を何処までも駆け登り 雪を沢山降らせ 冷たい風を逆巻く冬将軍を 連れて来る気だな。 ・ どれ下の絵は どうなんだ。 なんだかアンモナイトの ような輪に囲まれて その中心に チビとオバマが居て オバマがじーっと 蒼穹を見つめているけど。 さては古生代 デボン紀への旅を 企てているな。 ・ 3億年も前のデボン紀まで タイムマシンに乗って行って どうするんだい? ・ アンモナイトが生まれる 前のシルル紀に 陸に上がった生命に インタビューするんだって! なにを? ・ 「勿論、安全で安穏な 海での生活を捨ててまで なぜ死の充満する 陸を目指したのか?ですよ」 ・ なんぞと犬が応えて くれたら どんなにか愉しいだろうか。 |
人間だってこれらの生物と基本は同じ、 朝の斜めの光が、縞模様の影を生み、 影踏みしながら犬と一緒にぐんぐん歩くのも楽しい。 こんなときは、いつも自分までが森の動物になったような気分で、 軽々と歩が進む。 (記:村上) |
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山頂の大岩 山荘が見えるぞ! 舞瑠なら軽々と ジャンプし岩の上で一緒に 記念撮影が出来たのに 未だ1歳のチビ助共では 無理だな。 ・ 「でも僕達だって必死になって 岩に登ろうと 頑張ったんだよ。 でもちょっと高すぎて どうしても届かないんだ」 ・ ちょっと木立が多すぎて 見難いけど山荘が みえるだろう? 毎日見ている山荘正面の 山のてっぺんに今 居るんだぞ。 ・ 「そこまで登らないと やっぱり見えないのかな? 悔しいな。早く大きくなりたい」 |
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朝の山頂 ほほえみを交わす犬! 可笑しいね! ほら犬が笑っているよ。 ・ 舞瑠は山荘に来ると 山荘主に付きまとって離れず 顔をじっと見て 視線が合うと嬉しくて 鼻の周りに 皺を寄せてよく笑うんだ。 ・ でもこの2頭まで 笑うなんて初めて。 犬言語で何が可笑しいのか 訊いてみたいな。 ・ 「それじゃ特別に翻訳して 訊いてあげようか?」 と山頂の標識が助っ人になって 話しかけてくる。 |
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森の動物から観れば、人間が一番不恰好でのろまで、 |
朝トレも中々いいね 枯葉がいっぱいで嬉しい! 「犬ってさ、いつも繋がれていて 散歩だって同じ道を とぼとぼと歩いて まるで生きている気が しないんだ。 ・ おいらの森人は紐に 繋がないで 自由にしてくれるけど最近は 苦情が出て そうもいかず囚人ならぬ 囚犬生活が続いてね。 ・ ところがどうだい。 山荘に来ると朝早くから こんな素敵な森を 走れるんだぜ。 つい嬉しくて 笑ってしまうのさ」 |
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11月4週・・・・豪華・4頭立ての疾駆
大変だ4頭だぞ! 待っていたチビ、オバマ 嬉しくて嬉しくて
飛び跳ねながら 悠絽と舞瑠が前庭から 奥庭に出ると突然の けたたましい吠え声。 ・ 吃驚したのは 悠絽や舞瑠よりも山荘主。 居る筈の無いチビ、オバマが 犬小屋に居るのだ。 ・ 「一週間交代なので 再来週に又チビとオバマを 連れて来て下さい」 と念を押して 先週森人と別れたのだ。 ・ だが今週も又チビとオバマが 居るではないか! 心優しい森人が 約束を忘れ 気を利かせたつもりで 私が山荘に 着く前に犬を連れて 来てくれたのであろう。 |
どちらも山荘は自分の家と思って譲らない。 暫く吼えたて威喝しあっていたがやがて相手に興味を示し 何やら、お話を始めた様子。 |
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4頭立てバイク さあ走れるか! 早速森人に電話するが 留守らしく通じない。 折角の好意を 無にする訳にはいかない。 こうなったら4頭 まとめて面倒見るしかない。 ・ 幸い4頭会談の結果 どうも和平協定が 結ばれたようで穏やか。 で、さっそく夕散歩に 4頭一緒に連れだしたが もの凄い力の牽引。 ・ 即、4頭一緒の散歩を断念し 舞瑠のリードを離す。 全力疾走して森に消えた 舞瑠が追いたてて来た獲物は 大きな雄鹿。 ・ こいつが血迷って 犬集団の前に出て来たので 残り3頭が興奮し 吼えたて飛び出し大混乱。 最早1人での制御は不可能。 ・ そこで作戦を変え 翌朝は4頭をバイクに繋ぎ 4馬力ならぬ4犬力で 小倉山を目指すことに決定。 ・ 問題はロープワーク。 アラスカの犬橇用の犬でさえ ロープを絡ませ しょっちゅうトラブルを起こし 前進不能に陥ったのだ。 ・ 初めて出逢った4頭の犬が 初めて1本のロープに 結ばれて巧くいく筈がない。 さて如何なる混乱が 生じるかお愉しみ! |
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座禅峠の夜明け リーダーは悠絽 おもしれー! こりゃ本物の犬橇より 遙かに遙かに エキサイテョングでスリル満点。 山荘ゲートから 福生里の集落を抜けて 一気に小倉山麓へ。 ・ 更に座禅峠へと走る。 峠手前で太陽が燦然と煌き 4頭の犬を照らし出す。 その瞬間の犬達の 表情が実に素晴らしいのだ。 ・ 人間どもに飼いならされた ひ弱なペットの面影は 消え失せ全力で 駆け抜けた誇りを高らかに 謳うが如く喘ぐのである。 ・ と、どうしたことか やおら夜明けの太陽に向かって 4頭があたかも祈りを 捧げるような姿勢をとった。 ・ 森に入ると落ち着かない あの犬達が暫く 動かずじーっと太陽を 見つめているではないか! ・ 何代にも亘って眠らされ 捨て去られ続けた野生本能が チームを組んでの狩りを 思わせる激しい走りに 甦ったのだろうか? ・ 折しも昇る太陽に 目を射られその光の中に 彼等は確かに 何かを見出したのだ。 |
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「もうその辺に転がっているペット犬と 一緒にしてはいけませんよ。 夜明けの光を浴びて我々は先祖還りの洗礼を 受けてしまったんですからね。 これからも命の続く限り大いに山々を 駆け巡ろうじゃありませんか!」 ・ おやおや!歓びのあまりついに舞瑠は 山荘のPRを始めましたね。 |
素晴しい快走 チームワーク抜群 快走の秘訣はここ1年間 バイクと共に 走り続けてきた悠絽と舞瑠の リーダーシップにある。 ・ 持続力は無いが 常にトップで走りたがる 悠絽をリーダーにし 2番手を最強の舞瑠で 固めたのが想定外の結果を 生み出したのだ。 ・ 3番手に敏捷なチビを入れ しんがりに鈍いが しっかり走るオバマを配し 1本のロープに力を結集。 ・ 慣れている悠絽と舞瑠は 快調に走り続けるが 面喰い驚き慌てふためく チビとオバマは 逃げ出そうとする。 が悠絽にぐんぐん引っ張られ 進まざるをえない。 ・ 舞瑠も負けじとトップに 躍り出て 4頭はバイクを我武者羅に 引っ張る。 ・ 舞瑠が突然立ち止まり 振り返り マッシャーに話しかける。 ・ 「走るって素晴らしいね。 全力疾走すると 細胞の1つ1つから歓びが とめども無く湧きだして 生きていること、そのものが 歓喜に満たされるんだ。 ・ 生は活動そのものに在り。 山荘に来れば 山荘主と一緒に居れば いつだって全力疾走出来ると 知ってから僕の生き方は すっかり変わってしまった」 |
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豊穣の絵画 大根、里芋、キウイ、蕪、人参 ・ 畑は秋野菜が旬。 大根、蕪が大きく育ち 負けじと人参、牛蒡が しっかり根を張り ほうれん草、春菊、青梗菜も 青々と葉を広げる。 ・ レタスも寒さで更に色艶を 増し白菜、キャベツは 幾重にも葉を巻き ブロッコリー、カリフラワーも そろそろ食べ頃。 ・ それら野菜で太陽を描いて みたものの大きすぎて 写真が撮れなくなった。 2階の窓からも見下ろして みたが糸杉(ジプレッセン)に 遮られて見えない。 ・ 仕方なく石卓に梯子を 乗せて 危なっかしい姿勢で 撮影開始。 |
そこに舞瑠登場。 「あれ、何だか野菜が愉しそうに踊っているぞ。 ふーん、どうもこれは朝の座禅峠の太陽と関係ありそうだな。 どれ、どんな匂いがするか確かめてみよう」 |
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さあ、祈りを捧げよう! そうだ、BGMは《北の国から》の《遙かなる大地より》にしよう。 |
大地、太陽への礼賛 さあ、今夜は感謝祭! なに大根が貧弱だって! とうしろうだな。 これは敢えて大きくない 大根を間引いたのさ。 ・ この若い大根は葉が とても美味しいんだ。 塩もみして浅漬してから 柚子を絞って かけたらもう美味くて 幾らでも食べられる。 ・ 黒っぽくて枯葉に紛れて よく見えないけど 里芋とキウイも収穫し 3か所に配してみた。 太陽の黒点みたいだね。 ・ 里芋は夏の雨が少なくて 芋が大きくならず不作。 キウイの収穫量も昨年の 3分の1程で残念。 その代わり実は大きくて 美味しそう。 |
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棚横手山へ 4頭合同ピクニック 4頭立て馬車ならぬバイクで 小倉山を快走し すっかり気分を良くした山荘主は 続けて標高1306mの 棚横手山へのツアーを企画。 ・ 早速、助手を募集。 連絡すると特急で村上さんが 跳んで来た。 10時に塩山駅でピックアップし 4頭の犬と一緒に 登山口の大滝不動へ向かう。 ・ ここも又誰も居ない 静まり返った美しい森が続く。 「えっ!1日で2回も 山に登れるの?」と 押さえきれぬ嬉しさを 全身で表しながら 自由に森を疾駆する舞瑠。 ・ 静止し集合写真を 撮っていても 舞瑠の心は此処に在らず。 |
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山火事の稜線 生々しい焼け跡 すっかり忘れていた。 稜線まで登ってみて吃驚仰天! ここは2年前の4月29日に 山火事になった大滝山 ではないか。 ・ あの日心配で大菩薩山稜迄 登って山火事の様子を 観に行ったのを思い出した。 ・ 棚横手山は知名度が 低いので登山口の大滝不動の 大滝をとって大滝山と 云われていたが実は棚横手山 だったんだね。 ・ それにしても凄いね。 炭になった森が未だ そのまま残っているなんて! |
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凄い燃え方だね 根っこまで燃えてるよ 舞瑠来てごらん! こんな大きな木が 燃え尽きて倒れているよ。 ・ シベリアのタイガでは ドライ・ライティングと云って 雨無しの雷があって それが山火事を起こすんだ。 ・ 余りにも乾燥していて 雨が地上に届く前に蒸発し 雷だけが落ちるから タイガでは山火事が常態化 しているんだって。 ・ それだけじゃなくて タイガの落葉は寒くて 分解されず 地中に堆積するので それに火が着くと 地中が火災になるんだ。 ・ そいつが地中から火を吹いて 森を燃やしたり タイガの火災は大変だと TVで放映してたよ。 |
山荘近くの森が燃えたことがあって山荘まで 燃えてしまうかとオロオロしたこともあったし山火事は怖いね。 日本では山火事の原因はタバコの投げ捨てが一番とか。 山でこそ禁煙が叫ばれるべきなのだが耳にしたことないな。 今度勝手に《山では禁煙》と書いて登山道に設置しようか? |
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あれ!舞瑠は何処だ?舞瑠おいで! |
舞瑠が居ないぞ 標高差700mを2時間 大滝山キャンプ場下に 車を置いて11時40分出発。 標高600mなので ここから棚横手山まで 標高差700mあり充分に 山歩きが愉しめそう。 ・ 晩秋の森はしーんと 音がするくらい静まりかえり 全く人の気配無し。 もうそれだけで嬉しいのに 大地は枯葉の絨毯に 敷き詰められ柔らかくて 実にいい香り。 ・ ゆっくり晩秋の風情を堪能し あちこち寄り道しながら 山頂に着いたのは 2時間後の13時40分。 ・ 日本山岳会会員の3人の 老紳士に出逢い 暫く雑談。 |
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焼失した森跡 一面カヤトの山腹 「いや、嘗て私も会員だった ので市ヶ谷のルームに よく通ったんです」 ・ 「そうですか会員番号は いくつですか」 「忘れましたが確か エベレストの8848の番号を 貰うのは誰かなんてのが 話題になってる頃でした」 「それじゃ古参ですね」 ・ そんな会話を交わした後 棚横手山から更に 甲州高尾山に向かう。 ・ 稜線の焼けた南東斜面の 樹木は皆無で 一面の茅戸(カヤト)。 午後の陽射しを浴びて 穂波が光る。 森が復活するまでには 何十年かかるのだろうか? |
《補足》 そう云えば何番だったか気になるな。 帰宅後、日本山岳会の私の個人バッジを裏返して調べたら8243番でした。 その後の605人目の会員がエベレスト番号を手に入れたのでしょう。 |
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夕日が眩しいぜ! 今日は1日山三昧 夜明けの太陽を 小倉山座禅峠で迎え 夕日を遙か離れた 高尾山頂で浴びる贅沢。 ・ 9月雨の大菩薩に始まり 10月は倉掛山、小金沢山、丸川峠 雁峠からの古礼山を 皮切りに11月は破風山 高芝山、源次郎岳、棚横手山と 今秋は9回も遠征山歩きに 出かけ秋を満喫した。 ・ だがマシンが老朽化し いつエンスト起こし再起不能に なっても不思議ではない。 こんな贅沢な秋は もう2度と訪れないとしみじみ 実感しつつ登った。 ・ 来週も晴れて 習慣性ぎっくり腰が静かに していれば 大菩薩の東に位置する 玉蝶山から榧(カヤ)ノ尾山もいいな。 |
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ペディキュア 破風山の死んだ爪 下山し風呂に入ると 覚えの無いペディキュア。 11月7日の破風山で 痛めた3本の死んだ爪が 黒く熟したのだ。 黒は死んだ血の色。 ・ 新たに爪が生えるには 如何ほどの月日を 要するのだろう? 舞瑠の肉球は2週間で 復活したけど・・・ ・ 体重測定のついでに 朝トレで使い古し よれよれになったナンガ(8125m) のTシャツに足を乗せてみた。 生徒が描いてくれた プリントも剥げ落ち1995年も 消えかかっている。 ・ トレーニングで何百gもの 汗を吸い込み色褪せ 綻び穴の開いたTシャツと ヒマラヤやアンデスの 高峰を登り続け 傷んだ足との安らかな邂逅。 ・ 嘗て狂おしい程までに 岩と氷の絶頂を求め駆動していた 足は森に還った。 森こそ宇宙であるとの認識に やっと辿り着いたのだ。 風呂場から書斎へ 戻ったらこんなメールが 届いていた。 |
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先生 すみません。行けなくなってしまいました。
腰から足の付け根、膝にかけて痛みがあり、長く同じ姿勢を
しておられません。椅子に腰かけたり、同じ姿勢で立っているということは
何もかも嫌になってしまいます。
また、所属している山の会にも、いろいろとやらなければならない
仕事がいっぱいあるのですが、はかどらないこといらいらするばかりです。
もう少し身体の調子が良くなったら、村上さんに連絡をとって、山荘へ
力をもらいに伺います。
・こうして幾星霜の果てにヒマラヤを共にした仲間が次々と山を去り 山荘縁の末裔が世代交代し新たな夢を追って 天空の窮みに旅立って行くのであろう。 ・ 個から種へ、種から天体へ更に天体から宇宙へと DNAの陰謀は連綿と時空に連なる。 |
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最後の紅葉 階段踊り場の名画 11月27日(金)晴 北の森 どうだい、この階段踊り場に在る名画は! どんな名画であっても《時の死》しか描くことは出来ないが こいつは生きているんだぜ。 ・ 早春には小さな蒼い芽で満たし、夏は無数の葉が大海原を成し 秋にはご覧の通り 炎で森を透き通った情熱に変えてしまうんだ。 ・ |
DNAの銀河 芒の種子 無数の星星の集まりを The Milky Way と 云うけれど本当にミルクが 流れているような。 ・ 近づいてみたら 羽毛のような翼を着けた 芒の種子ではないか! 畑下の小径を覆い尽くし 太陽の昇る東を 目指して音も無く流れていく。 ・ 冬の西風と農夫の 晩秋の仕事が生み出した 田園の銀河。 ・ 「枯れた芒を桃畑や葡萄畑に 敷き詰めると 雑草が防げるだけでなく 果実に甘みが増すずら」 |
そう言ってせっせと農夫が芒を刈っていたのは先週。 その芒が運ばれ車に乗せられる過程で種子が零れ落ち 冬将軍の西風が吹き上げ舞いあげ 小径をキャンバスにして描いた作品。 《DNAの銀河》とタイトルを付けてあげよう。 |
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収穫の終わり さようなら情熱の夏 大介や広介が種蒔きした とんもころしの収穫後の葉が 渦高く積まれ 幹のように頑丈な オクラの枝葉が収穫を終え たくさん積まれた。 ・ 茄子や胡瓜、トマトも とっくに生殖活動を止め 一部はドライベジタブルとなり パイルに捨てられた。 秋を飾ったコスモスも 畑のあちこちから集められ 更にパイルは標高を増し もうこれ以上 高くなれず崩れる寸前。 ・ ガスバーナーで火を点ける。 夏の情熱の残滓が 最後の炎となって天空に 白煙を上げる。 さらば情熱の夏よ! |
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静寂の森 静かなスタート かやの木山の 葉を見ただけでは 樅の木と榧の木の判別は 中々難しい。 ・ どちらも針葉樹であるが 樅は短期間に真っ直ぐ成長し 榧の木は太く横に伸び 全く異なる樹形。 ・ この榧の木は 材質が緻密で耐久性が高く 淡黄色で美しいので 縄文時代から 人類にあまた貢献してきた。 ・ 風呂桶や建築・器具・造船材 とくに碁盤や将棋盤の最高級品 として珍重され 縄文時代には丸木舟に使用。 ・ 種子は搾って灯油や食油にし 炒って食べ 葉や木屑は燃やして 「蚊遣り」に。 ・ 更には貴重な種子籾を ネズミの被害から守るための 「種子籾囲い」の脚柱に 枝を巻きつける用途もあったとか。 |
そんな貴重な、人類の生活に欠かせない樹木の名を 山名にする山に胸躍らせ出かけてみた。 それが途轍もなく奇妙な山。 |
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渡れるかな? ぼく届かない! 橋が無い。 どうするかなと 観ていたら村上さんやおら 岩に手をつき 四つん這いになって そろりそろりと最初の ギャップを通過。 ・ 短足で水嫌いのオバマは いやいや流れに入り 次の岩に上がったものの 再びギャップに遭遇。 ・ 次のギャップを すいすい渡る村上さんの 後でうろうろし 今にも泣き出しそう。 「ぼく足が届かない!」 ・ チビはどうしたかって? そりゃ大したもんだよ。 少しの躊躇もなく 流れに飛び込み岩なんか 目もくれなかったよ。 |
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下って到る奇妙な頂 その名も牛の寝通り 山は登るものと 決めていたがこの山 石丸峠から唯ひたすら降り 降っても降っても 中々到達出来ない。 ・ 石丸峠より500mも 低い山頂なので きっと頂手前には峠が 在ると読んでいたが そんなものは何処にも無い。 ・ 降り道がやや緩くなり 平らになったかなと 思ったらそこが頂上であった。 「そんな馬鹿な!」 ・ 「なんだか騙されたような 変な気がするね」と チビ、オバマもきっと 思ったのではないかと・・・ |
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今しがた降って到達した山頂は濃密な霧に閉ざされ 深いカオスの底に沈んでしまった。 存在そのものを否定するような無彩色のカオスを背景にして 紅のコスモスが浮かぶ。 ・ ChaosとKosmosを繋ぐ時が紅の彩を限りなく透明にし 激しい情熱をカオスに還元する日は そう遠くはあるまい。 |
早くも雨雲来る 霧に呑まれる榧ノ尾山 ・ 予測のつかない頂を 求めて降れば降るほど 復路の登りは長くなる。 気圧の谷が近づき 雲が紺青の空を浸食する。 ・ 急がねば雨に敲かれる 恐れもある。 晩秋の雨は酷く冷たく 低体温症を呼ぶ。 太陽が雲に奪われる直前 榧ノ尾山頂着。 ・ 12時05分山頂を出て 雲の流れと競いつつ 今降った標高差500mを 登り返す。 13:05石丸峠着。 ・ 峠には往きに遭遇した 単独登山者が休んでいた。 彼を追い抜き1時間で 500mを登りどうにか 濃密な霧に捕らわれず 稜線に出られた。 ・ もう1人の登山者が 左脚をさすりながら 呻いている。 脚が攣って動けないらしい。 救助を申し出るが もう少し様子を観るとか・・ |
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天空と大地の狭間で 11月28日(土)晴曇 雷岩 ひたひたと天空から打ち寄せる暗雲。 大地に象嵌され液状化したカオスの鏡面が暗雲を光に変換し白銀に耀く。 ・ 輪廻するカオスとコスモスの狭間で小さな生命が静かな歓喜を迎える。 限りなく透き通る情熱に身を委ね肉体に波紋する歓びの彼方に想いを馳せる。 カオスにもコスモスにも存在しない生命だけに与えられた歓びに・・・ ・ |