その28春ー2008年弥生
弥生1週・・・早春の夜明け
パロマー天文台のサミュエル・オースチン望遠鏡 による2003 UB313の画像(NASA提供) |
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海の追憶 忍び寄る微かな 重力の気配に肉体の海は 最早騒がない。 ・ ヘモグロビンの鉄は 嘗て太陽から 生み出されたことすら忘却し 重力の気配によって 新鮮な海を復活させる術を 失ってしまった。 ・ 払暁の肉体に 氾濫していた新鮮な海の 追憶が潮騒のように 山稜の彼方から 忍びやかに響いてくる。 ・ 太陽に逢うために 凍てついた山稜の闇を 切り裂いて 西側の尾根に駆け上がる。 ・ 山稜から太陽が昇る。 力を凝縮した海の追憶が光に 満たされる。 |
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3月1日(土)晴 山稜の夜明け・T | ||
水晶の樹木 漆黒の山稜を 何の危惧も無く背後から 刺し貫く。 ・ 認識すら拒否した 圧倒的な絶望がその片鱗をも とどめず燦然たる 輝きに呑み込まれる。 ・ その瞬間 絶望は単独では存在 しないことに気づく。 絶望は光があって初めて 生み出される影 でしかないのだ。 ・ 呑み込まれた絶望が 須臾にして 水晶の樹木に変換される。 絶望の美しさに 息を呑む。 |
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3月1日(土)晴 山稜の夜明け・U | |
永劫の輪廻 しかし絶望を 呑み続ける光は 或る日崩壊をきたす。 ・ ビッグバーン以前の 光すら存在しない絶望に 再び還り光は 絶望の影に呑み込まれる。 ・ ちっぽけな銀河系の更に 小さな太陽系の 辺境・地球に棲息する 知的存在が 光と闇の永劫の輪廻を 知覚することは至難。 ・ だが西の尾根に 駆け上り東稜線の太陽を 追い続ければ 光と闇は永劫の輪廻を 垣間見せてくれる。 |
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3月1日(土)晴 山稜の夜明け・V | |
十番目の惑星? 原始人のように 自らの足で太陽を追い 山稜を駆け抜け 風になって森を流れ 光を求め続ける山荘主の 元へNASAから 先週素敵な贈物が届いた。 ・ 地球と太陽の距離を 1天文単位(10億5千万km)と 言うんだけど その97倍つまり 97天文単位の遥か彼方で 10番目になるかも 知れない地球の兄弟が 見つかったとか・・ ・ その画像が届いてね 早速山荘主は 画像を紐解いて食い入る ようにして見つめたね。 |
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3月1日(土)晴 森の夜明け・T | |
画像解析 東山稜を離れた太陽は 西尾根の森の 絶望を何の危惧も無く 易々と切り裂き 呑み込みつつ呟く。 ・ 《やっと見つけてくれたの! 私の愛しい 10番目の子供を。 えっ!画像の見方を 説明して欲しいって!》 ・ 《先ず@、B、Dが同じ星で A、C、Eも同じだって わかる? この画像は90分毎に 撮影した3枚を横に 並べたものなんだよ》 |
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3月1日(土)晴 森の夜明け・U |
嘉十の怒り 林道に長ーい影が 幾筋も尾を引く。 闇に閉ざされていた 無粋な金網が 左の山腹に現れる。 ・ あーこれね立ち入り禁止 ではないんだよ。 このフェンスは延々と 続いていてこの長大な尾根 全体を囲んでいるんだ。 ・ つまり立ち入り禁止でなくて 反対に出てくるのを 禁止してるんだよ。 ・ 熊、猪、鹿、狸なんぞが 森から出てくるのを 防ぐんだとか。 そう言えば嘉十が 金網に怒っていたな。 |
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3月1日(土)晴 林道の夜明け・T | |
嘉十の影 実は嘉十は NASAから 画像が届いた途端に 嬉しくて 舞い上がってしまい こんな風にシグナルを 大地に描いたりして 森の皆に知らせたくて うずうずしてたんだって! ・ では嘉十さん 太陽の続きを話して。 ・ 『これ2003て記号だろ つまり発見されたのは 5年も前なんだ。 ・ カリフォルニア工科大学の ブラウン博士が見つけて 観察を続けていたら そのウェブサイトがハッカーに 見つかってしまい ハッカーに脅されたんだ』 |
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3月1日(土)晴 林道の夜明け・U
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セナ・UB313 嘉十が語り始めると あちこちから森の住人達が 金網を越えて 三々五々やって来ました。 ・ 嘉十は森の皆に 聴こえるよう森を抜け 峠に登り太陽と一緒になって 惑星・UB313の話を 続けました。 ・ 『ハッカーに脅迫され 発見から2年後の2005年 7月29日に電話での 急遽発表と異例の公開に なったんだ。 ・ その2ヵ月後9月10日 ブラウン博士達は セナ(Xena) と呼んでいた UB313に衛星を 見つけたんだよ』 |
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3月1日(土)晴 峠の夜明け | |
※Xenaは正式にはエリス(Eris)と命名 |
座禅草も語る 峠の下の雪原で 雪を溶かして座禅草が ひょっこり。 ・ 『知ってるよ、その話。 雪の降った翌日 うーんと寒くなって 空がガラスのように 凍りついた夜 カシオペアが 教えてくれたんだ。 ・ その衛星は1,2週間で セナを公転し ガブリエルと 呼ばれているんだって』 ・ そんな寒い夜に雪を 発熱遺伝子で溶かし 顔出してカシオペアの話を 聴くなんて 座禅草もよっぽど星が 好きなんだね。 |
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3月1日(土)晴 雪原の目覚め・T | |
※衛星は正式にはディスノミア (Dysnomia)と命名 |
蕾の問い 『でね! カシオペアが言うには 衛星ガブリエルの セナからの距離と公転速度 をブラウン博士達は 今調べているんだって。 ・ それがとても重要らしい。 なんでもそれが 判るとセナの大きさ・質量が 計算できるらしいよ』 ・ 傍で聴いていた未だ蕾の 座禅草がおずおずと 訪ねました。 『あの3枚の画像見せて もらいましたけど番号の 意味が解りません』 ・ 嘉十が嬉しそうに 割り込んで応えました。 |
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3月1日(土)晴 雪原の目覚め・U |
鋭敏な水仙 『あれ、ずいぶん下手だべ おれが書いたんだ』 ・ 座禅草の蕾に替わって 山荘の水仙が 清まして応えました。 ・ 『いいえ そんなことありません。 でも本当は番号の替わりに @とAの星を直線で 結びたかったのではと ふと思いました』 ・ 慌てて嘉十はゴホンと 咳をしてまるで 定規を持っていなくて 正確な直線が 引けなかったのを 恥じるかのように 下を向いたのでした。 |
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3月2日(日)晴 山荘庭の目覚め・U |
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慈しみのクレソン 『あの画像を見たら 誰だって@とA、BとC DとEを正確な直線で 結んでみたくなりますよね』 ・ 池に注ぐ小さな谷の クレソンが凛とした早春の 香りを漂わせ 嘉十に優しい眼差しを 投げかけながら 話を続けました。 ・ 『直線で結んでしまっては 最初からセナの 動きが一目瞭然で 誰もが興醒めしてしまうと 嘉十さんは考えたのでしょ』 ・ 森の皆は慌てて 嘉十に貰った夫々の 画像の星に 真っ直ぐな薄の茎を 定規代わりに 当ててみました。 ・ 線分@Aはセナ上を 走っていますが 線分BCはセナの左端を 線分DEは最早セナを離れて いるではありませんか。 ・ 確かにセナは→の方へ 動いていたのです。 |
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3月2日(日)晴 山荘池の目覚め・T | |
その瞬間森の住人達が歓声を上げたので 嘉十はもう大喜び。 そうなんです。 画像の星々は皆恒星なので動かないんです。 それなのに唯1つだけ動いていると言うことは その星は太陽の回りを巡っていることを示しているんです。 つまり惑星であるということなんです。 ・ 目覚めの山荘主を襲った絶望は もうすっかり影を潜め 山稜も森も光に満ち溢れていました。 |
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枇杷の毛皮 ・ |
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3月2日(日)晴 山荘庭の目覚め・V |
美しき蕗へ なんと瑞々しくふくよかな 幼きものの手触りか。 赤子の頬の柔らかさ のみが持つ 得も言われぬ感触。 ・ いのちの始まりは どうしてこんなに 美しいんだろう。 ・ さっと茹で 細かく刻み 麦味噌と一緒に 擂り鉢で合えたら 春の香りの蕗味噌誕生。 ・ 「こんなにも美しいものを 食べてしまうなんて 罰当たりの愚か者め」 コロボックルの婆さまの 咎める声が聞こえる。 |
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3月2日(日)晴 山荘庭の目覚め・T |
二枚の言の葉 厚い氷に閉ざされ その上を雪が覆い暫く 隠されていた池が 早春の光に姿を現した。 ・ 再び優雅に 天空の森を鯉たちが 舞い始めた。 ・ 水面に描かれた 架空の森に 2枚の言の葉が 実在する落ち葉となって 降り注ぐ。 ・ 《生命という名の動的な 平衡はそれ自体 いずれの瞬間でも 危ういまでのバランスを とりつつ同時に 時間軸の上を一方的に 辿りながら 折りたたまれている》 |
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3月2日(日)晴 山荘池の目覚め・U |
三枚目の言の葉 2枚の落ち葉に 引き寄せられ言の葉を 鯉が目で追う。 ・ 私は《動的な平衡》。 そしてあらゆる瞬間に 危ういバランスで 漆黒に対峙しながら 時間軸の上を唯 一方的に流れ去る存在。 ・ 金色の鯉の呟きを 耳にして 白銀と濃紺文様の鯉が スイと泳ぎ寄り いきなり言の葉を 呑み込む。 ・ その瞬間 白銀の鯉が福岡伸一に 突然変態し3枚目の 言の葉を吐き出す。 |
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3月2日(日)晴 山荘池の目覚め・V | |
・ 《私たちは自然の流れの前に跪く以外に そして生命のありようを ただ記述すること以外に なすすべはないのである。 それは実のところあの少年の日々から すでにずっと 自明のことだったのだ。》 |
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妖しき水晶 小さくて透明な 水晶・木星が 無窮の虚空を切り裂いて やって来た光を孕み 閃光を放った。 ・ 山荘の住人であっても この刹那との邂逅は 稀有である。 ・ 天候、太陽高度、水晶位置 時刻、観測者の目線が 一致して初めて 水晶の 刹那の閃光に逢える。 ・ 山稜で光と闇の 永劫の輪廻を演出した 太陽は 劇場を山荘に移し 水晶・木星を主役にし 新たなアバンギャルドを 企んでいるのか? |
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3月2日(日)晴 木星の目覚め・T | |
3月2日(日)晴 木星の目覚め・U
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光の叙事詩 幻想なのだろうか? 目を凝らして もう一度水晶から放たれる 蒼い光の行方を追う。 ・ 見慣れたいつもの 木彫りヴィーナスの他に 確かに中空に浮く もう一人のヴィーナスが 豊かな乳房を 刹那の閃光に晒している。 ・ 次の瞬間乳房は 増殖を始めキーボードに 発散し光の像を朧に結んだ。 やがて乳首は鍵盤上を 緩やかに流れる。 ・ 紡ぎ出された音色は 光と闇の 永劫輪廻の叙事詩を 静かに語り始める。 ・ 2500億気圧 1500万度の太陽核で 熱核融合反応は 水素をヘリウムに変換し ガンマー線を放出する。 ・ ガンマー線は X線よりも遥かに 透過性の強い放射線。 総ての生命を 刺し貫く死の放射線。 死の放射線はプラズマと 相互作用し穏やかな 電磁波に変わり 数十万年の時を経て 太陽表面に現れ 光となって漆黒への旅を 開始する。 |
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3月2日(日)晴 木星の目覚め・V | |
無窮の漆黒を経て光は大地に降りそそぎ やがて水とアンサンブルし 生命を生み出す。 ・ 増殖したヴィーナスの豊かな乳房は今 光叙事詩のプロローグを 奏でているんだね。 |
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弥生2週・・・残雪と生命萌芽
南アルプス黎明 3月9日(日)晴 北峠にて 原子核の中に陽子を1つ入れると最初の原子・水素が誕生する。 ・ 最初の原子に満たされた太陽は 陽子4個を持った2番目の原子・ヘリウムを 水素から変換する事で光を生み出してる。 ・ つまり光は新たな原子を生み出す副産物で・・・等と考えながら 急斜面を北峠に向かって下り始めると 突如眼前に銀嶺が展開。 ・ 右の間ノ岳のコルからぐーんと伸び上がる農鳥岳3051mが 僅かに朝焼けをとどめ春霞に浮かぶ。 ・ 北岳バットレスを登攀し間ノ岳から農鳥岳へと雪の山稜を駆け抜けたのは 12年前の1996年の冬山合宿。 ガッシャ・ブルムU峰(8035m)登山を7ヵ月後に控えた強化合宿であり 遠征隊員には米国在住の栗田陽介も加わっていた。 ・ 遠征後陽介は宇宙飛行士を志し、864人の志願者から選ばれた54名に残り 筑波の宇宙センターで1週間に及ぶ最終テストに臨んだ。 テスト面接官であった宇宙飛行士の毛利さんに 『ヒマラヤ登山と有人宇宙開発の共通点は?』と問われたとか。 そういえば陽介のその時の応えを未だ聞いていない。 今度山荘に来たら何と応えたか陽介に是非語ってもらわねば! |
森の残雪 眼下の北峠は 鹿の足跡を凍結させて 半雪原となり 早春の光で冬と春を描く。 ・ 光は降り注いだ大地で 新たな生命の可能性を 模索し 太陽は陽子を更に 原子核に閉じ込めより重い 原子を創り出し 生命の構成物質を 準備するんだ。 ・ やがて様々な原子は 新星爆発で 遍く宇宙へ放出され 生命体の構成物質として 再び光と回り逢い 奇跡的なプロセスを経て 命をうみだすんだね。 ・ 鉄の原子番号は26。 26番目の 太陽のあかちゃん。 ・ ヘモグロビンに混じって 太陽の夜明けに いつも騒ぎ生命体を 力の海で 満たすのは 母なる太陽への深い鉄の 思慕なんだろうか? ・ 『そりゃ単に鉄が 酸素と結びついて 体内を酸素で満たすと 言うだけのことさ』と 森の中で 嗤うのは誰だ? |
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3月9日(日)晴 北峠にて | |
雪原の猟犬 切なさと愛しさに 胸が きゅーっと痛む。 ・ 犬と心が通い合った 瞬間に感ずる あの懐かしい甘酸っぱい 感傷に満たされる。 ・ 8年前のアラスカで 犬橇を走らせた時 抱きしめた犬達に感じた あの感傷が再び甦る。 ・ 雪原を疾駆する 名も知らぬその犬とは 嘗て一度も逢った事すら 無いのに存在の 境界線を超えて既に 心が通い合っているのだ。 |
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3月9日(日)晴 北森雪原にて |
雪浴する猟犬 前脚を折り曲げ 背中を雪面に擦りつけ 嬉しそうに体を回転させる。 ・ 幼少の頃飼っていた シェパード・ジョンの 仕草にそっくり。 ・ ジョンの背に乗って 幼稚園まで通った 半世紀以上も前の記憶が 彷彿とする。 ・ 首輪も着けていず 森を自由に疾駆する 初対面の犬が何故 これ程までに警戒心も抱かず 心に飛び込んでくるのか? ・ 山荘近くに飼われている 甲斐犬はいずれも 警戒心が強く吠えまくり 余所者を 威喝することが多い。 |
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3月9日(日)晴 北森雪原にて | |
ぺろりとキッス 森から出た途端 ゴールデンレトリバーが 駆け寄り前脚を 私の肩まで持ち上げ 体重をかけて 親愛の情を表す。 ・ いきなり顔を近づけ ぺろぺろ顔を嘗め始める。 「うわーそんなに 嘗めるなよ!」 ・ どうみてもこの犬は 山荘主を飼い主と 間違えているのでは? ・ 森には樵が1人で 木を切っていたが 犬も樵も互いに知らん顔。 他には誰も居ない。 本物の飼い主は? |
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3月9日(日)晴 北森出口にて |
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レトリバー Retrieverとは Retrieve(回収する)から 付けられた猟犬種名。 ・ つまり猟師が撃った 獲物を追って回収し主人に 届けるのだ。 ・ それだけじゃない。 盲導、介助、麻薬探査犬 としても有能で何より 人間が 大好きなのである。 だから初めて逢ったのに こんなにも人懐こいんだ。 ・ 金色の美しい毛並みと 柔和な目は 知性と温和な性格を表わし 敏活さと自信を 兼ね備えた個性を持つ。 とWikipediaも絶賛。 |
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3月9日(日)晴 北森出口にて | |
あーこんな犬が山荘にも欲しいな。 でも山荘主は週末しか山荘を訪れないし すぐ外国へ気軽に出かけちゃって不在が長いし 犬が餓死しちゃうから駄目だね。 |
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一輪開花 先週末 無数に在る茶色の蕾が たった1つだけ白い 花弁で星を作った。 薄暗い北森を背景にして 小さな太陽の輝き。 ・ そして1週間後の今朝 白い球体は爆発した。 雄性の配偶体である 無数の細胞を 光のように宇宙に放出し やや下に折れ曲がった 雌蕊を 1本中央に立てて。 ・ こんな風にして 水素からヘリウムを 生み出す太陽のように この小さな星も 新たな生命を生み出す 準備をしてるんだね。 |
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3月9日(日)晴 奥庭の白梅 | |
もうすぐ! 未知なる惑星上を 闊歩する 超脚長の生命体発見! ・ と思いきや いつもの山茱萸の蕾か! それにしても遅いね。 昨年は2月24日 つまり2週間も前に 既に花開き 早春を高らかに謳い 上げていたのに今年は 未だ蕾のまま。 ・ そうだよね北の森も 未だ残雪に覆われてるし 山荘への道も 凍結しててスタッドレス でも上がれないし。 仕方なく車は下の里に 止めてテクテク山荘まで 歩いて登って・・・・ でも、もう春! |
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3月9日(日)晴 前庭のさんしゅゆ | |
雑草天下 『でも、もう春』どころの 話ではない。 ・ 西畑にほうれん草と 小松菜を採りに行ったら な、な、な何と畑は いつの間にか『仏の座』 『大犬のふぐり』が 大地を覆い満開の花で お花畑を開園。 ・ 秋に芽を出した人参も マイナス10度の寒気に 耐えた青梗菜、小松菜 ほうれん草も すっかり『仏の座』に 侵略されこのままでは 春の成長は望めない。 ・ 近くで観ると《踊り子草》 属だけあって中々 美麗なのだがお花畑は 閉鎖させねば。 |
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3月9日(日)晴 西畑の仏の座 | |
白銀の仏の座 ・ と・・・閉鎖作業を開始 したが、美麗が 気になってちょっと PCを開いたら この白い画像に遭遇。 ・ うおー!と 思わず感嘆の声を 漏らしてしまった。 《こんなのアリ?》 ほんとに白銀の『仏の座』 なんて存在するの? ・ 暫し白銀の踊り子達に 心を奪われ 繊細な繊毛を食い入る ように見つめる。 |
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3月9日(日)晴 PC仏の座 |
草取り開始 先ず玉葱苗の周りに びっしり生えている 奴から取るのだが こいつ雑草取用の 鍬は使えない。 ・ 鍬を使うと肝心要の 玉葱苗を切ってしまう恐れ があるのだ。 面倒だが指で雑草を 摘まんで除去する ・ 畑が広いので 屈んで この手作業を続けると 腰が痛くなって 腰が曲がってしまいそう。 ・ 農家の年寄りの腰が 曲がる理由を納得。 こんな可憐な花を 咲かせているのに 爺ちゃん、婆ちゃんの 腰を曲げてしまうんだ。 |
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3月9日(日)晴 西畑の犬ふぐり | |
早すぎるぜ! 足元にふと目をやると 鮮やかな黄色。 変だな今頃咲く花で 黄色といえば 山茱萸(さんしゅゆ)しか ないはずだが・・・ ・ 連翹、山吹、菜の花も 未だ早すぎるし まさか蒲公英(タンポポ)? と思って跪き よく観るとロゼット(根生葉) から直接蒲公英が 開花している。 ・ 4月上旬になると 山荘の庭はあちこちに 鮮やかな蒲公英の黄色が 目立つようになる。 でも未だ3月上旬。 ・ 春の葉も未だ 出ていないのに花だけが 先に咲くなんて・・。 そんなにも春を 待ち望んでいたんだね。 |
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3月9日(日)晴 西畑のタンポポ | |
大地変換 睦月から如月にかけての 長い不在で カリスト温室の石油が 切れてしまい 観葉植物は殆ど死んだ。 ・ 温室を必要としない 寒さに強い君子蘭は 例年より遅れたが 着々と開花の準備。 早春の光をいっぱい詰め 蕾をこんなにも 膨らませて! ・ 鉢の土をここ数年換えて いないので今年こそ 花が咲き終わったら 換えてあげよう。 ・ 新たな大地を与えないと 息苦しくなって 精神も病んでしまい 死んでしまうんだ。 山荘主と同じだね。 |
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3月9日(日)晴 イオの君子蘭 | |
不動産屋開業 たった一輪だけど 梅が花開き 山茱萸が黄色い花弁を 覗かせ君子蘭が うっすらとピンクの蕾を 膨らませ畑が 雑草のお花畑になっては 最早、山荘の鳥達も 黙ってはいない。 ・ 営巣常連の四十雀 なんぞは庭のあちこちの 巣箱を巡って うるさく囀り回り住宅の 欠陥を 山荘主に訴える。 ・ 『だめね、梨の木の 巣箱は新しいのに換える とか言って未だでしょ』 「はいはい、それじゃ 至急取り付けますので。 こんなもんで どうでしょうか?」 |
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3月9日(日)晴 奥庭の梨木 | |
売れ筋巣箱 『ほらほら これみてごらんよ。 天井と壁の間に隙間が 開いてこれじゃ 寒くて赤ちゃんが可哀想。 それに巣穴手前の 止まり木だって グラグラしてるし』 ・ 「うーん、これももう 寿命だな。新築にしよう」 ・ 沙羅の巣箱は山荘 一番の売れ筋で いつも真っ先に営巣が 始まり多い時は春から 初夏にかけて3回も 雛が孵る。 ・ テラスと風呂場から よく見える位置なので 食事中にも入浴中にも 気軽に観察出来るんだ。 ・ 「さあ、新築は 早いもん勝ちだよ」 |
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3月9日(日)晴 前庭の沙羅 | |
巣箱設置完了 太陽の子供・原子達は 凝縮して大地を 形成し 原子番号8と1は結合して 水を生み出し 大地に注ぐ。 ・ 光は大地に降り注ぎ 水とのアンサンブルで 生命を生み出し 生命は遍く地球に満ちた。 ・ 地中に海中に大地に そして大空に生命は テリトリーを広げ 自在に航跡を描く。 ・ で、さあその後なんだけど 次のテリトリーは 宇宙であるとDNAには プログラムされて いるんだよ。 ・ つまり生命の 母なる宇宙への回帰が DNAに 記されているんだって。 ・ 恐竜から進化した鳥達は 翼だけで天空に挑み ちょっとフライングしたけど 今では哺乳類が 高度400km上空に 巣箱を作ってね そこから更に月や火星まで 飛んでいく計画も在るんだ。 |
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3月9日(日)晴 前庭 | |
3月11日にその巣箱・ISS(国際宇宙ステーション)に 土井隆雄さんが エンデバーで旅立ってね、そこで日本の 有人宇宙施設《きぼう》を組み立てるんだ。 Endeavourはキャプテン・クックの南太平洋航海時の 帆船名からとったとか。 だからEndeavor(米)ではなくてEndeavour(英) なんだって。 いよいよ海から宇宙へ生命最後のテリトリーへの 挑戦が始ったのさ。 ・ ほら、観てご覧!まるで旅立ちを促すように 漆黒の巣箱に太陽光が飛び込んで。 |
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三層の帯 巣箱に 飛び込んだ太陽光が 前庭に氾濫する 生命銀河を突き抜けて 池を3つの 光の帯で彩どる。 ・ 右上に大地 その下に水面下の世界 そして最後に 実在しない天空の森。 ・ 生命最後のテリトリー 天空の森が 位相空間に揺れる。 ・ 森が揺れるたびに 生命誕生の予感に 満たされ水面は 妖しく身悶えする。 もう直ぐ生まれるんだ! |
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3月9日(日)晴 山荘池 | |
弥生4週・・・生命の旅立ち
宇宙での巣箱造り・ISS NASAのプレゼント(2月15日撮影)Courtesy of JAXA NASAからの早春プレゼントの中にこの画像を見出した瞬間 激しいメニエール症候群に襲われ 肉体も精神も宇宙空間に放り出され幸せな酩酊は数日間続いた。 診断した医師は首を傾げ「メニエールの誘発原因が見つかりませんね」と私に告げ さしあたり呑んで下さいと薬を渡した。 眩暈を改善する《セファドール錠》、血液の流れを促進する《アデホスコーワ顆粒》 緊張を解く《セルシン錠》 ・ メニエールの誘発原因がこの画像に在ると述べたら医師は信じるだろうか? esa・コロンバス(欧州実験棟)で船外活動をしている宇宙飛行士は レックス・ウォルハイムではなくて私自身なのだ。 |
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光と生命の邂逅 頭部の左側が 強烈に重力を意識し 身体全体が左へと流れる。 ・ 『おっととっと』と 体勢を立て直そうとしても 山荘東口から出た身体は 左側の池に吸い込まれる。 ・ 前方に行こうとの 意思を超えて左側に 行かせんとするメニエールは 池の観察をさせる意図 を持っているのか! ・ 寒天質の円筒バリアーに 守られた白い星々が 池の深みで太陽光を 反射する。 ・ 呼んでいたのは 君達だったのかい? |
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3月23日(日)晴 山荘池 | |
円筒バリアー 池には鷹、雉、百舌、懸巣 等沢山の野鳥が 水飲みにやって来る。 こんな美味しそうな卵を 目にしたら黙ってはいない。 ・ そこで蛙は野鳥には 手出しの出来ない池の深み に卵塊を産み付ける。 ・ 池に注ぐ疎水落ち口近くに 庭園灯が設置してある。 その庭園灯の水中アームに 円筒バリアーを幾重にも 巻きつけ卵を固定する。 ・ 更に池の最深部へと 卵塊を産み付け蛙は 万全の策を施しているのだ。 |
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3月23日(日)晴 山荘池 |
メービュウスの帯 鰓呼吸から肺呼吸へと 肉体を変態させる術は 表と裏が連結した メービュウスの帯そのもの。 ・ 円筒バリアー内で 表を黒、裏を白にして 危険なバリアー外への 旅立ちの日まで 小さな生命は微睡む。 ・ 捕食される危険に満ちた バリアー外に出て 鰓呼吸を始めたお玉杓子は 尾を棄て肺呼吸への 変態を開始する。 ・ しかし貪欲な山荘魚達は 彼等を放っては置かない。 肺呼吸を獲得する前に 一匹残らず彼等は 食べられてしまう。 ・ そこで今年は池の端を 石バリアーで築き 魚の侵入を阻止。 果たして肺呼吸は実現 するだろうか? |
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3月23日(日)晴 山荘池 | |
疣蛙光臨 確かに居るのだ。 先ず「ゲコゲコ」と鳴き声が 疎水の流れや 池の浮島辺りで頻りに響く。 ・ 次に池端のキッチンのドアを 開けると「ボチャン」と 池面が波立つのだ。 これは浮島でのんびり していた蛙が驚いて 『蛙飛び込む水の音』を 演じたのに違いない。 ・ だがだ、幾ら探せど 姿は見えぬ。 俊敏な野生動物を恐れて 僅かな気配に即応し 身を隠してしまう。 ・ 足音を消して身を低くし そっと池端に近づく。 居たっ! |
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3月23日(日)晴 山荘池 | |
産卵後の痩身 浮島の水面下の洞穴から ゆるりと姿を現した。 いつもの疣蛙の筈だが 何だかトローンと した目で在らぬ彼方を 見つめている。 ・ お腹なんぞは まるでペッタンコで 息絶え絶え。 とてもいつもの山荘池の主 には見えない。 ・ きっと産卵の為に 全エネルギーを使い果たし 辛うじて生きているんだ。 これが最後の産卵で もう来年は逢えない のかも知れないね。 ・ 君達の末裔は きっと肺呼吸を獲得して バリアーから抜け出し 更に虚空へとテリトリーを 広げていくだろう。 安心して大地にお還り! |
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3月23日(日)晴 山荘池 | |
春本番 1ヶ月以上も 道路凍結が続き 車で山荘まで 上がることが出来ず ゲートは閉まったまま。 ・ 従って前庭を通らず 奥庭裏の椎茸森 から歩いて山荘通い。 ・ 久しぶりにゲート前まで 車で入ると水仙が いつの間にか咲き出し 「お久しぶりですね!」 と話しかける。 ・ 嬉しいね! 君達が咲きそろうと 山荘もいよいよ春本番。 |
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3月22日(土)晴 前庭 |
藤原道真 東風吹かば 匂ひ起こせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ。 ・ その梅が紅梅だなんて 全然知らなかったな。 道真の屋敷の紅梅が 大変美しく その梅との別れの際に 詠んだ歌らしい。 ・ 藤原時平の讒言により 大宰府に流された道真の 元に飛んでいって 再び咲いたとか。 ・ 未だ小さくて よく探さないと見つからない 山荘の紅梅だけど 道真の紅梅に負けないぜ! |
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3月22日(土)晴 奥庭 |
夜来香 あわれ春風に 嘆くウグイスよ 月に切なくも 匂う夜来香 この香りよ ・ イエライシャン 「夜来香」というのは 暗闇にほのかに 香り来る梅の香りです。 ・ であって初めて李香蘭の 「夜来香」の歌詞が 理解出来るのだが どうもこれが違うらしい。 ・ 「夜来香」という植物が 存在して夜になると 強い匂いを発するらしい。 ・ それが山荘でお馴染みの あの《ガガイモ》だとは 実に驚いた! よし夏に咲いたら ガガ芋の香りを追ってみよう。 |
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3月22日(土)晴 奥庭 | |
早春の黄金 暗い森を背景にして 白銀の花弁に 僅かなピンクを散らし 次々と梅が咲き始めたら 春黄金が競うように 金色の光を放つ。 2週間・336時間が ぎっしり詰まった金の光。 ・ 2週間前には小さな 蕾に閉じ込められていた 生命が336時間を 呑み込んで 生殖の詩を 歌いだしたんだ。 ・ DNAと時間の アンサンブルの美に 酔い痴れてしまうね。 |
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3月22日(土)晴 前庭 |
更紗木蓮 Magnolia soulangiana 東森の林道を 歩いていたらピンクの蕾が はにかみながら 光を投げかける。 ・ 山荘の木蓮は紫と白。 未だ硬い蕾に 閉じ込められて彩の片鱗 すら見えない。 ・ 山荘より高い東森で 最早彩を発しているとは! それにこれは 紫でも白でもないピンク。 ・ 紫と白を交配した 更紗木蓮だ。 暖かそうなボアから 飛び出してようこそ 2008年の春へ! |
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3月22日(土)晴 東森麓 |
迎春花・黄梅 福生里の里まで降りて 『隣のトトロ』に 出てくる猫バスの走る 道路をジョック。 ・ いつものダックスフントぽい 茶色いワン公が けたたましく吠える。 先々週雪原で逢った レトリバーを不意に想い出す。 あー、もう一度あの犬に 逢いたいな! ・ そう思って吠えるワン公の 庭先に目をやると 垣根に枝垂れる迎春花。 木犀科ジャスミナム属で 特有の佳香がある。 ・ 和名は迎春花、英名は ウォータージャスミン。 そこかしこで生命が 歓びの声をあげてるね。 |
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3月22日(土)晴 東森麓 | |
辺境の末裔 メニエール症候群の急襲が かなり激しかったので 山頂を目指す朝トレは控えた。 ・ 森と里の軽いジョックで 1時間程汗を流し 山荘へ戻ろうと林道に 入ると土筆がニョキニョキ。 ・ 水田用の疎水の コンクリートと林道の アスファルトのほんの僅かな 隙間に一列に並び ご覧の通り。 ・ コンクリートもアスファルトも 生命を拒絶する 死のバリアー。 にも拘らず君達は 死に至る辺境を突き破って 新たなる宇宙を 手にしたんだね。 おめでとう! |
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3月22日(土)晴 東森麓 | |
落葉樹の森伐採 鶯が山荘にやって来て 『谷渡り』を披露し 四十雀や山雀が忙しく 飛び回り 巣箱に入ったり出たり。 ・ 谷間には翼に白い紋のある キビタキが東南アジア からの長い旅を終え 日本の早春を美声で 歌い上げる。 ・ 森の麓では雉が よく通る高い声で日がな一日 生殖の唄を響かせる。 ・ 森では椎茸の原木・杣を 切り出す樵の チェーンソーが鳴り響く。 3月は椎茸栽培の季節 でもあるんだ。 ・ さてそれでは山荘でも 椎茸作りの作業を 始めるか? |
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3月22日(土)晴 東森 | |
榾木への生命移植 最高気温23度Cまで上がり 綻び始めたばかりの 梅が狂ったように 次々と花開き 奥庭は春を飛び越えて 一気に初夏の気配。 ・ 作業台を奥庭に出して 森から切り出した 榾木(ほだぎ)を台に乗せる。 楢(なら)にしようか 椚(くぬぎ)にしようか迷ったが 今年は収穫の多い 楢を榾木に選んだ。 ・ さて先ずはドリルで 椎茸菌を植える孔を開ける。 8cm間隔で4列。 1本の木に32個程の 孔を33本の木に開ける。 つまり計1056個の 孔開け開始! |
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3月22日(土)晴 奥庭 | |
椎茸菌駒の挿入 椎茸菌は低温保存して 雑菌の混入を 防がないと発芽しない。 ・ 手袋も消毒した新品を用い 素手で駒に触れない ように心がける。 ・ 低温密封してある瓶から 千個の菌駒を取り出し 右上のボールに移す。 ・ 孔開けの終わった丸太に 椎茸菌のたっぷり 滲み込んだ菌駒を 願いを込めて1つ1つ 押し込む。 ・ 《今年も美味しい椎茸に 育ちますように!》 |
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3月22日(土)晴 奥庭 |
パーカッションの響き 菌駒打ち 菌駒を填め込んだら 木槌で孔の奥まで叩き込む。 これがとても楽しい。 ・ 作業代に乗せた丸太が 木琴になって 敲くと優しく懐かしい 森の音色を奏でるのだ。 ・ ゆっくり敲いてもいいし 沢山菌駒を並べて 一気にスピードアップするのも 面白い。 ・ 調子に乗って敲いていたら クルド人が剣を持って 踊りだした。 うん!このリズム知ってるぞ。 『ガイーヌ』の最終幕で 嵐のように敲かれる パーカッションだ。 えーと、えーと、そうだ ハチャトゥリアンの曲だっけ? |
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3月22日(土)晴 奥庭 | |
凍てついた 大地の目覚め 宇宙飛行士 レックス・ウォルハイムの 宇宙酔いだけ 体験して 幸せなメニエール症候群に 陥った山荘主は 早速STS−122のミッションに 取り掛かった。 ・ 欧州実験棟のコロンバスは 生命科学に取り組み 多くの生命の宇宙曝露を 行うらしい。 ・ 宇宙の虚空の畑を耕し そこに各種の生命を曝露し どうなるか観察するんだ。 ・ さしあたり山荘主は 凍てついた畑をしっかり 耕すべし。 と勝手に決めて倉庫から 耕運機を取り出したのである。 |
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3月23日(日)晴 西畑 | |
眠っていた 兜虫幼虫、大根、人参、里芋 あれ! 宇宙は虚空で 生命の影なんて全く無いと 思っていたのに 出てくる出てくる。 ・ 凍てついた大地から 兜虫の幼虫ごろごろ。 秋に収穫した残りの 大根、人参、里芋ついでに 蚯蚓もわっさわっさ。 ・ 考えてみると 45億年前の地球は 隕石の衝突を繰り返し 灼熱の火の玉となって 生命の影すら 無かったのだ。 ・ となると虚空の宇宙から DNAは やって来たんだろう? ・ コロンバスは若しかすると 途轍もない真実に 遭遇するかも知れないな。 |
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3月23日(日)晴 西畑 | |
山荘に負けそう! あれっ! やっぱりグルグル空間が 廻るぞ。 ・ 壮大な生命の実験場である 蒼い地球が 廻っているだけなのか? それとも三半規管が狂って いるだけなのか? ・ 広大な宇宙空間で コロンバスにへばり付いて 作業してると 生命の余りにも壮絶な 孤独との闘いが ひしひしと伝わってきて 押しつぶされてしまいそう。 ・ メニエールはこの壮絶な 孤独への旅立ちを 本能的に恐れる生命の 拒絶反応? |
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3月23日(日)晴 西畑 |
壮麗な墓標・A・C・クラークに捧げる 3月22日(土)晴 P2稜線から 後年を宇宙で過ごそうとスリランカに移住し 宇宙服の代わりダイビングスーツを着て海に還ったA・C・クラーク。 山荘日記には貴方の作品が通奏低音として静かに流れています。 山荘の雪富士を壮麗な墓標に代え感謝を込めて貴方に捧げます。 (A・C・クラーク 2008年3月19日スリランカにて逝去) |
3月21日(金)曇 朝日新聞朝刊より |
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弥生5週・・・蠢く森の妖精
これが冬子だ! 四角形、五角形、六角形 を描く椎茸が 居るなんて驚き! ・ ミクロの世界・結晶格子の 造形をそのまま 投影したような姿に ラジャ・アンパッドでのDVで 目にした海牛が 浮かんだ。 ・ 今冬は寒い日が続き 芽吹いた椎茸は 成長出来ず小さなまま 長い時間を 寒気に耐えた。 ・ 遅々たる成長速度が 生み出した造形? 正に冬の子・ドンコ。 |
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3月30日(日)晴 椎茸森 |
《剣の舞》2年後 先週作業台の上で ハチャトゥリアンの《剣の舞》を 奏したパーカッションが 2年経つと こんな風に結実するんだ。 ・ 音符が踊りだして 730日の時を流離うと 冬子になって 還ってくるんだね。 ・ ようこそお帰り! さて良く身の引き締まった 冬子さんを どうやって食べよう。 ・ 先ずそのままオーブンで 軽く焼いて 檸檬と紫を掛けて。 それから・・・ |
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3月30日(日)晴 椎茸森 |
森の妖精・春蘭 嬉しそうに 森のそよ風が窓から 駆け込んできて 弾んだ息使いのまま囁く。 ・ 《春蘭が開きました》 ・ 森は未だ厚い枯葉に覆われ 春蘭の小さな細い葉は 枯葉に隠れて ともすれば見えない。 ・ 朝トレで森を走り抜ける度 《未だかな春蘭は?》 との山荘主の呟きを 森は聴いていたんだ。 ・ 早速カメラを持って 森に入ると あっちでもこっちでも つんつんと。 |
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3月30日(日)晴 北の森 |
森のクリオネ 大きく手を広げ まるで羽ばたくように 3枚の外弁が 生まれたての緑の光を 森に投げかける。 ・ 上方の2枚の副弁が 激しい太陽の日射から 唇弁を守る帽子 のように覆いかぶさる。 ・ 白に紫の斑を散らした 唇弁は前に面を向け 後ろに巻き込み 花弁とは思えぬ複雑な アートを描く。 ・ 氷山の下に蠢く 海の妖精・クリオネみたい。 |
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3月30日(日)晴 北の森 |
こりゃ!なんじゃ 車を洗浄する大型ブラシ? ・ 柳の種類は多いが このような花心の長い奴に お目にかかったことは無い。 ・ 高山でお馴染みの深山柳 川辺に生える猫柳 街路樹や怪談に登場する 枝垂れ柳。 ・ その他山柳、狐柳、蓮華岩柳 と数多いが 何れの花心もこれ程までに 長いものは無い。 ・ 山荘の森に生えているので 精々山柳が山猫柳かと 調べてみたが 該当無し。 |
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3月31日(月)雨後晴 西の森入口 |
絢爛豪華な毛皮? でも何処かで 見かけたような気がするぞ。 ・ そうだ! 一郎が此処を通りかかった時 「やまねこは、さっき 馬車で西の方へ 飛んで行きましたよ。」 と答えただろう? ・ あの時の『笛吹きの滝』 がお前の正体だな? 一郎が山猫から届いた 葉書を持って裁判の開かれる 森へ出かけた時 その長い毛で滝に化けて 一郎をたぶらかしたな。 ・ 若しかするとこの姿も 偽物か? |
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3月31日(月)雨後晴 西の森入口 |
壇香梅開く 葉を失った黒い幹が 落す影の中で 燦然と輝く黄金。 ・ 山茱萸(さんしゅゆ)も いいけどこのマンサクの黄も 中々いいね。 と独りよがりのご満悦。 ・ 近づいて見ると どうもマンサクとは異なる。 マンサクの花心は もっとひょろひょろと長い。 「アレッ!変だな」 ・ いつも森を走りながら 遠目で見つめ 勝手にマンサクと 決め込んでいたけど 調べてみたら「壇香梅」 ・ 十数年も森を駆け巡って いるのに 知らんことばかり。 森は実に多様で深遠だね。 |
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3月30日(日)晴 座禅草の森 | |
森のかんざし 木五倍子・キブシ 白樺の森で黄色い簪が 風に揺れる。 ・ 葉を失った暗い森に 一抹の侘しさを漂わせつつ 生命の再来を告げる簪。 ・ 黄色い藤・キフジが キブシになったとの説と 鉄漿(おはぐろ)に使う 五倍子(ふし)の代わりに 用いたので 木の五倍子(ふし)・キブシ との説がある。 ・ この時期は森に 入れば何処かで目にするが やっぱ この座禅草の森の キブシが風情あるかな。 |
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3月30日(日)晴 座禅草の森 |
発熱遺伝子だぞ! 1ヶ月ぶりに訪れた 座禅草は青葉が生えて 大きな赤紫の仏焔苞が 萎びれ発熱体が剥きだしで 花季の終わりを 告げていた。 ・ 黄色い棘トゲが 雄蕊の葯でここに花粉が いっぱい詰まっている。 良く観ると雌蕊1、雄蕊4が 識別出来る。 ・ この棘トゲ下の4枚の チョコ色土台が花弁である。 発熱シーズンは終わり 受粉も済ませた。 ・ 後は葉を繁らせ根に 沢山の澱粉質を蓄え再び 早春を待つのみ。 |
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3月30日(日)晴 座禅草の森 |
早春の訣別 発熱遺伝子は 雌雄異熱現象の生じる 雌期に働く。 ・ より優れた子孫を残すには 自家受粉を避け 他の花粉で受粉する術が 要求される。 ・ それには雌蕊の濡れる雌期と 雄蕊の花粉飛散時期を ずらせばいい。 ・ 座禅草はずれた雌期に 発熱するので 雌雄異熱現象を起こすと 言われるのだ。 ・ 発熱は僅か1週間程で その後雄期になり 発熱は止まる。 |
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3月30日(日)晴 座禅草の森 |
光の懐胎 どうだろう。 この清楚な恥じらいを含んだ 美しさは! 薔薇科の華麗さをも秘めた 小さな一輪に 心は騒ぎときめく。 ・ 巷の人々は梅だ、桜だと 騒ぐけれど 梅の後、桜の前に咲く この杏子の妖精の 魅力にとりつかれたら 最早逃れる術は無い。 ・ 山荘には奥庭と西畑の 2ヶ所にあるが 離れているために 他家受粉が出来ず例年 実が成らない。 残念! |
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3月30日(日)晴 西畑 |
光の連鎖 枯葉をしこたま詰め込んだ 有機肥料プールの横に 杏子を移植して早10年。 ・ 山荘眼下の村里へ 向けて下ろした枝に小さな 蕾が連綿と連なる。 ・ 手前の蕾が七分咲き。 後に続く蕾も徐々に目覚め 淡いピンクを散らして 咲き始めた。 ・ 卵巣に蓄えられた 無数の卵子が時間序列で 並んでいるように 僅かな時間差を待つ。 ・ 10年もたった一人で 静かに結実なき生の儀式を 繰り返してきたんだね。 |
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3月30日(日)晴 西畑 |
作品棚リフォーム 昨秋の台風で傾いだ 果樹畑の作品棚を 直さねばと思いつつ 7ヶ月が経過。 ・ 重い腰をあげて 鉄パイプを打つ直し 棚板を張り替えた。 ・ すっきりしたな。 棚板と棚板の間に 甲府盆地が三角形に広がり 見晴らし抜群! ・ 作品も冬の凍結破裂の 恐れから開放されて 久々に立てられた。 ・ そう立てておくと 器の中の雨水が凍り 膨張して器を 割ってしまうのだ。 |
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3月31日(月)雨後晴 果樹畑 |
バリアー脱出 うあー! 胎児の形になっている。 卵塊発見から1週間しか 経っていないのに! ・ バリアーから抜け出し お腹を突き出し 頭だってはっきり判る。 ・ あの獰猛な山荘の 野生魚達の侵入を阻止する 作戦はどうやら成功か? ・ 魚から隔離された この安住の池でこれから どのように生命が 変態していくのか愉しみ。 |
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3月31日(月)雨後晴 山荘池 |
発芽馬鈴薯 キッチンのワゴンの下に 置いてあるバスケットから 何やら生命の動き。 ・ 覗いてみたら じゃが芋が知らぬ間に にょきにょき発芽。 ・ ありゃ、こりゃ遺憾! 慌てて棄ててはみたものの 考えてみれば このまま畑に植えれば 美味しい馬鈴薯になるかも。 ・ 先日買っておいた メークインの種芋と一緒に 西畑に運び祈りを込めて 大地に還した。 6月に美味しい馬鈴薯に なって還っておいで。 |
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3月31日(月)雨後晴 西畑 |
越冬した野菜達 一番手前が青梗菜。 雪の日に沢山の鳥が やって来て食べられて しまったが見事復活。 ・ その次の列は冬菜。 小松菜に似ているが 小松菜より 葉は硬く寒さに強い。 これは鳥害に遭わず元気。 ・ 3段目の空いている畝に メークインの種芋を植えた。 更にその下は春菊。 この冬越し春菊の 新芽はクレソンと並んで 香ばしくてサラダに最高。 ・ 更に下の畝に復活した 秋の残りの蕪、ブロッコリー 新聞紙で防寒した 白菜が続く。 手前の畑では玉葱が すくすく。 |
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一条の燭光 朝トレーニングを終えて 居間に入るや否や 大型油絵『時空の渚』に 目を奪われる。 ・ 照明の無い壁面に 闇を切り裂いて 一条の光が斜めに走る。 ・ 唯それだけのことなのだが 思わず壁面に対峙し 見つめてしまう。 ・ 早春の光と 光を反射する鍵盤。 ラサ、カトマンズ、バンコック を経て山荘の壁面へと 旅を続けた絵画。 ・ 遥かなるチベットからの 絵画が指を接近させ 光を捉えんとする。 ・ 無数の偶然が 重なり合って1つの必然を 形成し問いかける。 |
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3月30日(日)晴 居間 | |
プロミネンス 3月9日にアップした 君子蘭がイオと アマルティアの部屋で 次々と開花した。 浴室の君子蘭も 開花寸前で山荘は 小さな炎に包まれたよう。 ・ 数十の紅蓮のような 花弁が放つ光は 妖しい熱気を伴って チベット絵画『時空の渚』 に迫る。 ・ 3月10日から始った チベットの独立を 起因とする騒乱は燎原の火 となってラサから四川省 ローマ、ロンドン、パリ へと世界に拡大。 |
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3月31日(月)雨後晴 イオ |
最初のチューリップ 沢山の水仙に混じって 内側の筒状の 副花冠の無い花が1輪。 ・ 花弁を覗き込んでみると 6つの雄蕊が 無数の花粉を散乱させ 果てしない闇の底へ 吸い込まれていく。 今春最初に山荘で 咲いたチューリップだ。 ・ 中央のY字形の雌蕊の ぐるりは深閑とし 生命の断絶を予感させる。 ・ 4ヵ月後に迫った オリンピックの聖火リレーは 最終地北京に向けて 各国でスタート。 ・ 中国の抑圧からの 開放を求めてチベットは 聖火リレー阻止に チベットの未来を賭けた。 ・ ラサ、四川省では人民解放軍 武装警察が出動し 多数のデモ隊の死者を出した。 世界各地で呼応し 人権擁護のデモ頻発。 |
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3月31日(月)雨後晴 前庭 | |
水仙残照 黄色い副花冠が 白い花弁を通して漏れる 残照を受け 淡い黄色の陰影を落す。 ・ 結実を果たすには 雌蕊への接近、突入は 欠かせないのだ。 ・ にも拘らず雌蕊周辺の 異様なまでの 深閑とした静けさは 何を物語るのであろう。 ・ もう直ぐ消えてしまう 今日最後の光が 時間が残されていない事を 告げているのに 認識者に為す術は無い。 ラサ登山学校長の ニマは無事だろうか? |
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3月31日(月)雨後晴 前庭 |
後退する芝桜 ゲート北側の石垣上に 14年前の芝桜は ひっそりと根を下ろした。 ・ 1年毎に僅かづつ 石垣上でテリトリーを広げ 山荘の春を歌い続けた。 ・ 数年後前庭の南側の 石垣上にも芝桜を移植し 前庭の両側が 芝桜のピンクに彩られた。 ・ 石垣の間に植えておいた 躑躅が生長し 北側の芝桜に当たる光を遮り 北の花々は 開花を忘れてしまった。 ・ 僅かに芽吹き残っている根を 認識者は移植すべき なのだろうか? |
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3月31日(月)雨後晴 前庭南石垣上
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ビッグバーン 3月22日更紗木蓮の 画像から10日。 山荘の辛夷(こぶし)もやっと 一輪光を孕みました。 ・ あんな小さな点のような 花芽が ほんの数日という 短時間で限りなく膨張し 白く輝き こんなにも大きな宇宙を 形成するんだね。 ・ あのふっくらとした 蕾の中には新たな生命が 更なる時空への旅を プログラムされて 出発の瞬間を 待っているんだね。 |
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3月31日(月)雨後晴 前庭 |
辛夷 (こぶし)旅立ち 誰があの閉じた花弁を 開いたのだろう。 ・ 朝の内は雲が多く 午後になってやっと光が 満ち溢れてきたので 待ちきれなくなった誰かが 宇宙開闢のスイッチを 押したのだろうか? ・ 朝、前庭の辛夷の下で 蕾に逢い 午後の光の中で 開き始めた花弁を目にする。 ・ 宇宙開闢の150億年の ドラマが たった数時間に凝縮されて 流れるこの瞬間に 胸が痛むのは何故だろう? |
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3月31日(月)雨後晴 前庭 |