その63冬ー2011年如月
2月1週・・・・天地明察
bQ4bQ4 ・天地明察
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発行日:2009年11月30日 定価:1800円+税 読書期間:1月27日〜2月2日 評価:★★★★★ |
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幾ら内容が優れていても数学をテーマの1つとして小説に繰り込むと、途端に読者は構え 身を引いてしまうことが多い。 が、小川洋子の「博士の愛した数式」は最も美しいと云われている数式の1つオイラーの数式 eiπ=-1を扱い読者を数学の幻想世界へ有無を言わせず引きずり込み、多くの読者を魅了した。 この数式のレベルは高すぎて高校数学程度の知識で導くことは叶わない。 唯単に美しい知の造形としてのみ眺め、数式の内容には一歩も触れなかったことが多くの読者を捉えたのであろう。 ・ 「天地明察」は数学的内容に少し踏み込みながらも読者を惹きつけ、読み始めたら止まらないと云う点では「博士の愛した数式」に追随する。 同時進行で桜庭一樹の「伏」、グレッグ・アイルズの「戦慄の眠り」、 宮部みゆきの「ぼんくら」、スティーグ・ラーソンの「ミレニアム1」を読んでいたが どうしても「天地明察」に惹かれ、ついに他の本を放り出して短期間で読み切ってしまった。 ・ 《江戸時代前期の囲碁棋士で天文暦学者の渋川春海の生涯》を描いた時代小説で どっからどう観ても興味を紡ぎ出すことは出来そうもない題材であり、さぞ退屈で直ぐにぶん投げてしまうであろうと確信していたのだ。 ところが滅法面白い。 面白く読みやすい理由の1つは会話にある。ハイテンポな現代会話調なのでついつい引き込まれる。 更に主人公の春海が今巷で話題の草食系男子で、やがて妻に成る《えん》が肉食系女子。 ・ 春海のその草食系男子の描きっぷりが余りにも堂に入ってるので、もしやと調べてみたら「ダ・ヴィンチ」のインタビュー発見。 冲方丁の結婚相手は《えん》を遙かに超える正真正銘の偽りなき肉食系女子であると判明したのだ。 妻の以下の愛の告白?が何よりも雄弁に肉食系を語る。 「あんたと結婚したんじゃ なく、あんたの将来性と結婚したんだ」 ・ 一体どんな草食系が書いているんかとネットサーフィンしてみると冲方丁なる男、只者ではない。 ライトノベル作家、SF作家、コンピュータゲーム制作者、漫画原作者、アニメ制作者。つまり現在のこの瞬間を体現し マルチメディアを疾駆する現代の寵児であったのだ。
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☆ ☆ ☆ なんぞと語っているが、どうしてどうしてこのマスク、福山雅治だって蒼ざめるほどのイケメン。 福山雅治よりも自らが春海を演じても面白いのでは。 近いうちにマルチメディアのクリエイターの他に、更に役者としての肩書が加わる日が来るのも そう遠くはないかも知れない。 ・ さてここではストーリーの紹介は割愛して本書冒頭に出て来る、多くの読者が素通りし振り向きもしない 数学の問題を敢えて取り上げ、解答の1つを記述してみよう。 春海のキャラからすれば下手な書評より解答記述の書評擬きの方が相応しいのでは。 第1章 一瞥即解で春海は渋谷・宮益坂の金王八幡神社へ向かう。 ・ 「当時、算術は、技芸や商売のすべである一方、純粋な趣味や娯楽でもあった」 で、この神社には数学の問題を絵馬に書いて奉納する算額絵馬が集まり、 これを目当てに22歳の若き春海がやって来たと云う訳だ。 ・ その絵馬に書かれていた問題に熱中し10寸との誤答を得るが正答は出ない。 登城の時間に追われ待たせている駕籠に戻るが大切な刀を置き忘れ急いで神社に戻る。 再び先程の絵馬を見るとな、な、なんと先程の難問が解かれているではないか! 『答、7分の30寸 関』 ・ 一瞬にしてこの難問を解き風のように消えてしまった関とは何者ぞ? いったいどうしたらこの難問を解くことが出来るのか? |
1661年10月に奉納された絵馬の問題 |
《1》 問題の現代語への翻訳と洞察 先ずこの350年前の問題を 解り易く説明し、洞察してみよう。 |
[A] 翻訳問題 直角を挟む2辺が12と9の直角三角形に 図のように三角形の内部で接する 直径の等しい2つの円がある。 円の直径を求めよ。 |
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(図1) |
[B] 解法への準備運動 直感としてか又は既知の事実として 以下の3点が見えれば準備運動完了。
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[C] 解法手順の1つ 上記の3点より左のような図が浮かべば この問題は感覚的には解けたと云えますね。 主要な武器が《勾股弦の法》と云われる ピタゴラスの定理(三平方定理) x2+y2=z2 にあるとは直ぐ解りますが 問題は2番目の武器。 攻撃に不可欠なこの2番目の武器を選定し 以下の手順で攻めてみましょう。 ・
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《2》 2番目の武器作り
2等分線の直線の式を求めて円の中心座標O,Rを求めるか、点と直線の距離から座標O.Rを求めるか?
だがどちらの武器もピタゴラス定理のように直ぐに頭に浮かぶ程には知られて無い。
ここでは点と直線の距離を求める武器作りから始めるとしようか。
武器作りの目的 点Sから直線 y=mX+nへの距離dが解れば 上図(図1)の円の中心O,Rから直線ABへの距離として 半径rを表すことが出来るんだ。 |
2番目の武器 (図2) | ||
距離dを求める。 △SCD∽△ACBより SC:d=AC:AB・・・(1) △ACBで直線の傾きがmなのでBC=m ピタゴラスを使うと AC2=12+m2 これより 一方SC=SE−CE=k−(mt+n) これらを(1)に代入すると k−(mt+n):d=:1 よって
あー変なのが出てきたけど恐れること無し この||は絶対値と云ってk−(mt+n)は線分なので マイナスにはならんよとの おまじないみたいなもんじゃ。 この(2)のdこそが2番目の武器。 異なる形で公式になっているので 知ってる者は いきなり使って一気に明察に近づくも良し。 |
《3》 2番目の武器をそのまま絵馬の図形(図1)に応用
点S(t. k) → 点O(r. a)
直線 y=mX+n → 直線AB
d=r
直線ABはy切片(0,9)で傾きー3/4なので | ||
従ってm=ー3/4 n=9 これらを(2)に機械的に投げ込むと | ||
分母は1+9/16=25/16=(5/4) 2 となるので根号から出て5/4となる。問題は分子である。 a+3r/4 が9より小さいと納得できるだろうか? aの値は円の中心までのy軸の距離、rは円の半径。その両方を加えても 決して9を超えることは出来ない。(図1参照) ましておやrより小さな3r/4を加えても9より大きくなることはない。 ・ つまりa+3r/4−9は負の値になってしまうのだ。 ここでおまじないの絶対値||が生きてきて、こりゃ大変! とばかりこいつにー1(マイナス1)を掛けて -a-3r/4+9にしてしまうんだ。 |
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で、計算を続けると 右のようになってa=−2r+9となり 先ず円oの座標が明らかになった。 O(r, a) → O(r、−2r+9) 円Rで全く同じ計算をするとb=ー3r+12となる。 R(b, r) → R(-3r+12, r) |
r=4/5(-a-3r/4+9) 5r=−4a-3r+36 4a=−8r+36 a=−2r+9 |
《4》 |
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ここで武器2作りで使った真打ピタゴちゃん、 《勾股弦の法》が再び登場。 その前に図3から、OHとRHの長さを求めておこう。 |
OH=−2r+9−r=−3r+9=−3(r−3) RH=−3r+12−r=−4r+12=ー4(r−3) |
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さあ、いよいよ 最後の攻撃だ。 OR=2rは 準備運動の (ウ)で解ってるよね。 するとだ、 最後の扉を 開く鍵はこうなる。 |
(2r)2={−3(r−3)}2+{−4(r−3)}2 =9(r−3)2+16(r−3)2 =25(r−3)2={5(r−3)}2 よって2r=±5(r−3) |
(図3) | |||
《5》 方程式の解の吟味・・・春海の誤謬 さあ、ここで春海の冒した間違いが明らかになる。 +をとると2r=5r−15 r=5となり直径は2倍の10となってしまう。 1辺が9の三角形の内部に在る三角形の直径が10になったら三角形の外に円は飛び出してしまう。 これが春海の冒した誤謬だったのだ。文中で春海はこう描かれる。 ・ 答えはちょうど十寸になった。 思わず脳裏に『誤謬』の二字がひらひら蝶のように舞い、やたらと恥ずかしくなった。 ・・・・・(中略) 気を取り直して、何度か術を工夫してそろばんを弾いてみた。 上手くいかない。しかし、もう少しで解けそうな気がする。 ううむ、と唸った。・・・やがて、ううん、と唸り首を傾げ、そろばんをしまった。 ・ ・・・数日を経て解に達し絵馬に記された村瀬義益を訪ね解法をこう述べる。 「術、曰く。まず さらに勾股弦の総和にて除(割る)。これに弦を乗(掛ける)し、また勾股の和にて除なり」 {9×12×2÷(9+12+15)×15÷(9+12)=90/21} ・ これだけでは未だとても解法の目途もつかないが、ついに解け村瀬に説明する場面をこう描写しているのである。 |
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2つの解からーをとらねばならないと云う 肝心の部分は描写されていないがここでは 円は三角形の内部に在るとの題意から+を捨てーをとろう。 すると 2r=−5r+15 7r=15
『答、7分の30寸 坂』 やったね! |
と、まあ、とんでもなく長ったらしくなって、一瞬にして解いたと云う350年前の関孝和に笑われてしまいそう。
その頃ピタゴラスの定理は既に《
独自の定理らしき武器を作って解いていたと云う。
現代の数学好き中高生なら、鼻歌気分で解いてしまう350年前の難問が当時の人々に与えたインパクトを想う。
同時に数年前に解かれた現代の難問「ポアンカレ予想」の350年後にも想いを馳せる。
eiπ=-1や《単連結な3次元閉多様体は3次元球面S3に同相である》を鼻歌気分で証明する350年後の中高生が彷彿とする。
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どれ程優秀な頭脳が挑んでも解けない問題が神に奉納され祀られるのは
それでも確かに解が存在すると云う畏れからであろう。
人間に僅かな知らしきものを与えておきながら、永劫に解けない森羅万象の無数の問題を投げかけ
その知の貧困を嗤う生命の創造者に、畏れを抱きつつも人は究極の知を見るのだ。
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☆ 2月07日: | 1月24日のモスクワ空港テロの犯行声明か。36人が犠牲となったドモジェドボ空港での自爆テロのビデオ声明が4日夜にアップされた。 |
☆ 2月07日: | 河村革命:名古屋市長選、愛知県知事選、名古屋市議会解散の是非を問う住民投票が6日行われ圧倒的多数で河村革命成る。 党の結束を優先し官僚主義に走る岡田などの党運営に反発し民主党を飛びだし今回2度目の市長選。前回の51万票を更に上回る過去最大の66万票、 投票数の70%を集め当選。敵対する民主の77%、自民の62%が河村に投票した。 市民税減税(200億円)、議員報酬半減(6億円)を訴えるがその差額194億円を、市民サービスを低下させず行政改革で生み出せた時、初めて革命成就と云える。 選挙で初めて国民が選んだ政権・民主党が国民の期待を裏切り迷走を続け、野党・自民党がなりふり構わず醜い政権奪取に血迷う昨今にあって、 久々に灯った小さな希望。この灯が名古屋から日本全土に広がる夢をみたいが、初回の市長選から金権政治の小沢が河村を推薦し暗い影が付き纏う。 |
☆ 2月07日: | 2月6日、八百長問題で揺れる日本相撲協会は本場所中止と決定。65年ぶりの本場所開催中止。公益財団法人の認定も取り消されるか?長年すったもんだしてきた八百長問題で 常に《八百長は無い》と強気で否定したきた相撲界。奈良時代から続く歴史ある国技がまさか《携帯メール》が動かぬ証拠となって、ついに御用となるとは! |
☆ 2月07日: | 1月27日に189年ぶりに噴火した霧島連山の新燃岳は、6日午後6時5分の噴火で、噴煙が火口から上空2,千メートルまで確認され、 7日になっても引き続き活発 な噴火 活動を続けている。 |
☆ 2月05日: | 4日(休日)はエジプト反政権デモが100万人を超える。カイロ中心部タハリール広場で3日未明ムバラク大統領支持者のデモ隊が襲撃、発砲し4人が死亡。 デモ隊と警官隊の衝突が再発し1月28日以降の衝突による死者は全土で百人を超えた。 ムバラク派議員がギザを訪れ「観光客が来ないのはデモのせい」とデモ襲撃への参加を促し各人に百エジプトポンド(1300円)の報酬を払ったと朝日新聞記者に証言。 実際デモ襲撃には雇われた警察官やラクダに乗って武器を使う者が目立ち、政府側の関与がちらつく。 |
☆ 2月03日: | 第2の地球に成り得るハビタブルゾーン内に在る惑星5つを、太陽系外惑星探し専用衛星ケプラーが発見したと2日NASAが発表。 |
グリーゼ581惑星系の想像図。 (提供:Lynette Cook) |
ちょっと出張!来週からレイテ島へ《骨折ダイビング》 ・ 骨折後10日が経過。相変わらずベッドから起きる時、椅子から立ち上がる時の痛みはなかなか大したもんだ。 最近5回の肋骨骨折は総て登山中だったので、下界に降りるまでは痛みを抱えての登山となった。 特にヒマラヤでは帰国するまでに骨折後3週間以上かかることもあった。 ただその長期間、痛みに耐えるしか術は無い。 ・ で、どうしようか悩んだが予定していた来週からのダイビングを《骨折ダイビング》と称して 積極的に実施してみることにした。 骨折登山は経験済みだが《骨折ダイビング》は勿論、初めてである。 問題は予定してるパナオン、リマサワ両島での体長18mにも及ぶジンベイ鮫を追うダイビングである。 潜水具を着けずカメラを持ってシュノーケルだけで追跡。体力との闘いに折れた肋骨が何処まで耐えられるか? 朝トレーニングは始めているが、未だ骨が固まっていないので腹筋だけはどうしても出来ない。 ・ 延期すると云う手もあるが、このDVサイトは先日2月1日にオープンしたばかりで未知の海域。 その上ジンベイの出没シーズンが限られているときては、骨折した肋骨には泣いてもらうしかないだろう。 さて、それでは陸トレだけじゃなくて、プールでジンベイ鮫を追う特訓を追加し、 新たな試み《骨折ダイビング》に備えよう。 |
水中トレーニング 2月10日(木)晴 目白・雑司ヶ谷体育館 平日昼さがりの室内プールに冬の長ーい光が奥まで差し込み、ひっそりと静けさに溶け込む。 冬の弱い斜光と静けさの醸し出す淡い彩が水面に揺れる。 淡い彩を乱さぬよう、泳ぐ人も無きコースにそっと足を入れ、ゆったり泳ぎ始める。 ・ 先ずクロールで秒速1メートルを保ち25mを流す。折れた肋骨は全く痛まない。 35秒休みブレスト・ストロークで折り返す。陸トレーニングと較べものにならぬ快適さに驚く。 無理をせずこのペースを繰り返す。 25m泳いで35秒のインターバルを入れ4分間で100m、1時間で1500mを黙々と泳ぐ。 ・ 出来るだけ深くと、プールの底まで潜り泳いだが2メートル程の深さでは肋骨への圧力は僅か。 ダイビングでは40メートルに達し肋骨は陸の5倍の水圧を受ける。 さて、我が折れた肋骨はどこまで耐えられるか! |
2月2週・・・・雪富士と唐冠と甚平鮫の幻想
吹雪のログハウス |
雪、雪、雪 2月12日雪 ログハウス 冬だから偶には雪でも降らせてあげよう! なんて調子でまるっきり おちゃらけていた関東冬将軍がなんだか 急にマジになって 進軍ラッパを けたたましく吹き鳴らし始めたのです。 ・ パラパラと気紛れだった雪が ラッパの一吹き毎にぶわーっと増えて 風なんか加わって 渦巻いて、まるで雪国の吹雪のよう。 ・ さあ、大変だ! 山荘に行けなくなっちゃうぞ! |
勿論、いつもの山荘への道は 急坂なのでとても この雪では車は登れないと諦め 山荘下の冬期駐車場を目指したのだが・・ ・ それでも 果して山荘下まで行き着くことが出来るのか? 上竹森上手のバス停を 左に曲がるとやや傾斜が増してはきたものの 山荘下の坂に較べたら問題無し。 ・ それにスタッドレスだし と、すっかり油断していたのだ。 すると突如 ありゃ!タイヤが空転し始めたぞ。 タイヤの空転なんて ほんの序章に過ぎなかっただなんて この時は思ってもみませんでした。 |
雪森に眠る山荘 |
テラスから山里を望む |
迫りくる雲海 |
何処も彼処も雪帽子 2月11日雪 前庭 里道から左に曲がり 農道に入る所が最も急な上り坂。 未だ凍りついてはいないが たっぷり雪が積もっているではないか。 ・ 無理を承知で加速をつけ いっき、いっきとアクセルを踏み続ける。 ぐいーん、ぐいーんと空転しながら 駆動前輪が右に左に 勝手に動き出しハンドル操作が出来ない。 ・ 2度、3度前進後退を繰り返し コンクリートの柵止に激突寸前で 何とか急坂を登り切り ほっとしたのも束の間、スリップの連続。 |
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時間の延びた長い神経戦の果て 山荘下の冬期駐車場にどうにか辿り着き 雪の下から車止めの岩を 探し出して車を固定。 さあ、ここからラッセルしながら 山荘まで登らねば。 ・ 迎えてくれたのは1羽の 奥庭の無花果の枝に止って 一声高く「ひょー、ひょー!」 「ようこそ!」と鳥語を翻訳したいのだが 実はこれ警戒の鳴き声。 |
お腹の空いた白頭鳥 |
書斎からの雪景色 |
ぴっかぴっかの太陽が小倉山から |
わっ、太陽がでたぞ! 2月13日晴 石卓上のモンブラン 辺りは何処も彼処も すっかり雪に覆われ餌なんか見つかりません。 そこで未熟なままドライフルーツになって 山荘庭に残っていた無花果を 思い出し ・ そこに突如人間が登場したので 餌を奪われては大変と 「駄目よ、これ私の無花果なんだから」 ☆ ☆ 2日も降り続いた銀世界の彼方から 燦爛たる光の出現。 嬉しくなって物差しを持ってあちこちの 積雪を測ってみたり。 何処で測ったって同じなのにね。 |
あれれ! 石のテーブルの上を見てご覧! 右端に小さな富士山が出来てるよ。 近づいてみると うーん中々立派な雪山だけど 一体どうして出来たの? ・ マッターホルンのように尖った 黒御影石をテーブルに置いておいたけど こんなたおやかな峰にはならないし。 ・ そうか、思い出したぞ これ南の海のドマゲッティから やって来た大きな貝・ つまり雪山には珊瑚海がたっぷり 詰まっているんだ。 |
山荘に生まれた富士山 |
遙かなり大窓の富士 |
さて、お客さんは来るかな? |
雪森のレストラン 2月13日晴 山荘の森 海の隆起がヒマラヤを創ったように 海の デザインしたんだね。 ・ その唐冠が棲んでいたネグロス島の珊瑚海から ボホール島を超えて北東へ300km レイテ島の南端・パーゴスへ 明後日に旅立ちます。 ・ 地球で最大の魚、体長18mにも及ぶ甚平鮫が どうも出現するらしいのです。 でも繊細で滅多に姿を見せない甚平との 邂逅はとても難しいだろうな。 そうだ、この唐冠にお願いして甚平に 逢わせてもらおう。 |
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とても静かなのです。 山荘の森に到る小さな道は山荘のゲート前で プツンと切れて、もうその先には 進めません。 だから、時たまやって来るのは郵便屋さんだけ。 とても静かなのです。 ・ その小さな道までが雪で 閉ざされたとなると 山荘はもう完全に陸の孤島になって 郵便屋さんもやって来ません。 ・ 静寂だけが 森のレストランのお客さんです。 |
ふむ、未だ誰も来とらんな! |
ほら、前庭から見上げてごらん! |
やっぱ、富士の方が高い? |
どっちが高いかな? 2月13日晴 富士山と背較べ こんなに雪が降ったら ヒマラヤで使っているダブルの登山靴を履いて スパッツを着けて 扇山や小倉山、高芝山を駆け巡るのに 山荘主は唯、山荘の森をウロウロ。 ・ ビビっているのです。 骨折後、陸上トレーニングを始め 水中トレまで試してみたのですが、どうも 腹筋が出来ないのです。 ・ 腹筋運動が出来ないと云うことは 重いDV器材を背負ってボートから海へ飛び込む瞬間 骨折した肋骨に総ての力が加わるのでは? 痛みに耐えかねて海中で 失神してしまったら・・・。 |
先ず痛みを堪えて試しに3回腹筋。 何とか出来たものの癒着しつつある骨が 再び離れるような痛みに悲鳴。 ・ そこで明後日からの《骨折ダイビング》に備え おとなしく森の散歩だけにして 山荘主は森をウロウロしているのです。 ・ こうして森から富士を見つめていると 雪の中に隠された珊瑚海の巨大な唐冠が 見え隠れして 複雑に屈曲した貝の次元回廊から 甚平鮫が飛び出してきそう。 ・ 哺乳類に成れなかった哀しみを詠いながら 鯨鮫・甚平は悠然と天空を舞う。 見えるかい? |
だが、ログはもっと高いぞ! |
雪のテラスで日光浴 |
2月13日晴 奥庭 雪富士と唐冠と甚平鮫の幻想に 浸っていると なにやら「ひょー、ひょー!」と煩い。 どうやら奥庭の無花果を食べ尽くしてしまったのか 白頭鳥が餌を催促。 |
秋に収穫し 床下にたっぷり蓄えてある 山荘キウイを1つ枝に刺してやると 早速飛んで来て どうです、この喰いっぷり。 ・ 目を白黒させながら キウイを突ついては呑み込み あれあれ、あんまり乱暴に突つくから キウイが落ちて 雪に埋もれてしまったでは。 ・ たくさんあるから ゆっくり落ち着いてお食べ。 それでは哀しみを詠う甚平さんに ちょっくら逢ってくるからね。 |
キウイに大喜び! |
2月4週・・・・春と聞かねば 知らでありしを
ずんずん雪が降り積もって すっかり 雪に埋もれてしまった山荘。 ・ その2日後に 南の珊瑚海に出かけて 帰ってきたら 殆ど雪は消えてしまい ご覧のとおり至る所に早春賦。 ・ 大地が厳かに低音で 天空が風を弦にして澄んだ ビオロンの音色で 森や草花は熱情を込めて ヴォーカルで 早春を謳い始めたね。 |
雪の座禅草(だるまそう) 2月27日晴 座禅公園 |
それでも山の森には 未だ雪が残っていました。 雪を首飾りにして ちょっと気取った座禅草。 ・ 奥庭の枯葉の下からは 蕗の薹が 「やあー眩しいね!」 ・ 蝋梅なんぞ 光をそのまんま着込んで おめかし、まあー、まあー 何とお洒落なこと。 ・ それじゃ観葉植物しかない お風呂場にも 昇り藤を飾って春の到来を 森と共に祝おう。 |
蕗の薹(ふきのとう) 2月27日晴 奥庭 |
昇り藤(ルピナス) 2月27日晴 浴室 |
光の蝋梅(ろうばい) 2月27日晴 山荘下 |
枯れ果ててしまったクレソンの 二代目の苗を山荘池に 植えて倉庫を覗くと さあ、大変! ・ 倉庫で眠っていた馬鈴薯が 声高らかに 春の到来を謳っているでは! この命の声を 一刻も早く大地に解き放たねば。 |
二代目クレソン 2月26日晴 山荘池 |
この馬鈴薯の 繊細な生命から紡ぎ出される 薄紫のヴォーカルを 心から待ち望んでいるのは誰だ? ・ そうだメールを送ってみよう。 《山荘活動しませんか?》 これだけで充分。 ・ 薄紫のヴォーカルが聴こえる人なら きっと、どんな用事も捨てて 山荘にやって来るに違いない。 |
馬鈴薯の芽吹き 2月26日晴 倉庫 |
もう待ちきれないぜ! |
早春の土の香り 2月26日晴 林檎畑 匂うぜ、匂うぜ! ふん、ふん胸キュンの素敵な 匂いだぜ。 堪らんなこの光と土の匂い。 ・ ほらほら勝手に どんどん手や脚が生えてきて 踊りだしてるぜ。 |
そんなにもこの瞬間を 待っていたんだね。 それなら、そら、光をたくさん吸い込んだ 大地に解き放してあげよう。 ・ 暗くて寒くて ただ震えて耐えるしかなかった日々は もう終ったんだ。 大地に優しくいだかれ 胸いっぱい光を満たしてぐんぐん 大きく育っておくれ。 |
さあ、大きく育っておくれ! |
腐らぬよう灰を塗す《きたのあかり》 |
種芋植え付けの穴掘り |
眠りから覚める畑 2月26日晴 林檎畑 ・ たった一行のメールに 早春のヴォーカルを嗅ぎ付けて 直ぐ飛んで来たのは 《きたのあかり》とえこちゃん。 ・ 男爵とメークインのヴォーカルに 魅かれて新たに ヴォーカル《きたのあかり》が加わり そのうえ譜面書きの えこちゃんまでやって来たのです。 |
さあ、そうなると ひっそりと静まりかえっていた 畑は俄然興奮。 《早く譜面にしておくれよ!》 ・ 早速、畑に繰りだして せっせと大地を均してぽこぽこ 幾つも幾つも穴を開けて 横に五線を引いて ほらそこに芽吹いた馬鈴薯を 入れると 早春賦がいっぱい! |
早春の光を浴びて |
種芋植え付け完了 |
「ほーけー 下の別荘の人かえ。 あの別荘の滝はおらが 造ったんだよ」 「そうでしたか お世話になりました」 ・ と云うことは勿論 この座禅草公園入り口の 《花の茶屋》も 自分で建てたに違いない。 ・ 座禅草の開花に 合わせて開く 玩具のような茶屋。 そして毎年早春賦を届ける為 メルヘン茶屋を営む おじさんとおばさん。 |
早春の開店 2月27日晴 花の茶屋 |
発情期に入った 悠絽と舞瑠の犬小屋の 二重フェンスを破って オバマが侵入。 ・ 御用となって 噛み千切られないよう 鎖に繋がれ幸子さんの家から 森人の家に戻された。 ・ 散歩も連れて行ってもらえず 可哀そうなので 北峠や小倉山にオバを同行。 ・ チビはリードを嫌い 人に近づかないので森の フェンス内に閉じ込め 散歩に出かけると、ありゃら! フェンスを潜り抜け いつの間にか ちゃっかり付いてくるでは。 |
骨折からの復活 2月27日晴 小倉山 |
突如チビ参上 2月26日晴 北峠 |
最初は気がつきませんでした。 《ぱたぱた、ぱたぱた》 ・ 老いて耳も遠くなり視力もすっかり落ちて「チャラ、ちゃら」と呼びかけても 犬小屋に寝そべったまま目も開けず動きません。 でも何処かで音がするのです。《ぱたぱた、ぱたぱた》 嬉しいな覚えていてくれたんだ! 2月27日晴 チャラの家 ・ あっ!チャラが歓んでいるんだ。 嬉しくて寝たまま精一杯尻尾を振って、見えない犬小屋の奥の板壁を叩いているんだ。 いとおしさに胸が迫り顔をさすると微かに目を開き ゆっくり立ち上がり 在らぬ彼方に視線を彷徨わせます。 ・ 初めての出逢いは3年前の早春の雪原。 あの日からチャラを求めての長ーい旅が始まったんだったね。 そして夏の森での全くの偶然の邂逅! ・ チャラ! これから一緒に「むかしのほんたうのポラーノ広場」を創ろう。 |
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