その59秋ー2010年神無月
10月1週・・・・存在そのものの深淵を覗く
1738m |
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沈思の森・T 御坂山域は懐に入り込めば、奥が深い。 |
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さて、困ったな! |
途無き昏い森 10月2日(土) 鶯宿入沢の森 朽ち果てる寸前の辛うじて 判読出来る道標が 藪の中にポツンと在るには在ったが・・・。 林道から敢えてその 藪に突っ込むには些か躊躇う。 ・ 幾つかの地図を調べたが 鶯宿(おおしゅく)から鍵掛峠へのルートは 何しろ皆無なのだ。 そこで笛吹市観光課に問うと 「在ることはありますよ」。 ・ 早速地図を送ってもらったが 確か登山道らしき 点線は記入されてはいるものの 地形は読めない。 ・ ま、行ってみっか! |
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のっけから途に迷った。 道標は登山道入り口に在っただけで 森に入るや否や緑の迷宮。 途らしき踏み跡はすっかり消えて 苔生し元の輪郭を失った岩や倒木が 行く手を阻み 昏い森がただ茫漠。 ・ 地図を確かめると鶯宿入沢の右岸に 登山道の点線が記されている。 そこで右岸に出て 途なき途を突き進む。 |
茸の話し合い |
落ちている指導標 |
どっちだい?茸に訊く 細々と在った獣道の気配すら消失。 全く途は無いと判断し 再び左岸に戻る。 ・ と、足元に何やら落ちている。 落葉に埋もれかかっている青い物体は どうやら鍵掛峠への道標。 矢印になってはいるがどっちを 向いているのか? ・ 仕方ないので悠絽の背に道標を乗せて 方角を占ってみるか? 「うーん、それよか森の住人に 聴いてみた方が確かなんじゃない?」 ・ 悠絽のアドバイスに従い 倒木に群がって、どってこどってこ 忙しそうにしている茸に ちょっと聴いてみる。 「鍵掛峠はどっちだがや?」 |
豊かな稜線・U
<鶯宿>という美しい名を持つこの渓流沿いは、下りでは明瞭に途が存在したが、 |
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藪の峠と岩場 10月2日(土) 鍵掛峠 やっと辿り着いた峠は 生い茂る藪に覆われて道標の役を 果しているとは云えない。 藪を掻き分けて、「さあ、写真を撮ろう」と 犬達に話しかけても もう、うんざりと云わんばかり。 ・ ほんじゃ、ま、 鬼ガ岳へ行ってみっか!と2度目の 諦観のセリフを吐いて 稜線を東へと辿る。 |
藪に隠れた鍵掛峠 |
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岩場が次々と立ちはだかる |
ところがどうだ! 藪の次は犬には通れぬ岩場。 短い垂直の壁はジャンプして何とか クリアーするが 高い岩壁は高巻きルートを探したり 果敢に岩に取り付いたり。 ・ 普通の犬ならとっくに諦めて 動かなくなるのに 悠絽と舞瑠は繰り返し前進を試みる。 ・ この高い岩場も数回のトライアルで ジャンプして 遂に飛び乗ったんだ。 実に大したもんだ! |
太陽を曳く犬 10月2日(土) 鬼ガ岳山頂 余りにも熾烈な光が肉塊を貫き 悠絽をトリスタン・ツァラの 詩集《反頭脳》のフレーズに変換する。 《電燈の骨を齧れ、 馬どもを恒星系にひっかけろ・・・》 ・ そう、あのダダイズムの創始者・ツァラ。 高村薫の最新作《太陽を曳く馬》で 語られる福澤秋道は 時にツァラの詩を口ずさみ絵を描く。 その絵を実父・福澤彰之は 獄中に在る秋道への書簡でこう記す。 ・ 君は先ず最初の線を引きます。 すると、たちまち線分の傾きを見る細胞や、 曲線を見る細胞や、色の波長や輝度を測る細胞、 そして動くものに反應する細胞たちの全部が 一斎に働きだし、飛び跳ね、血流を集めて、 ほら右だ、左だ、回転だ、さァ伸ばせ、進め、 そのまま進めと運動神経に命じ、 君は迷うことなく飛ぶように筆を走らせてゆくのです。 |
鬼ガ岳山顛に聳える西の角上で(1738m) |
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怖えー、落ちたら死ぬぜ! |
己が意志など想像力だのを繰り出すひまもなく、 まるで己が頭脳を直に覗き込むように。 ものを見る脳と描く脳と運動神経と、そして畫布と筆と暑だけの閧ナ 繰りひろげられる秘密の夜会のように、 君は描くのです。 ・ なぜ渦を巻いてゆくのか君にも分からないが、 現にさうして君の手で描き出されてゆく線があり、それに見入る 君の全存在があるーーー ここに、私は盾描くときの君の集中を感じます。 ・ 己が存在を覗き込む抗ひがたい引力と、 同じく抗ひがたい斥力の閧ナからうじて釣り合ってゐられる、 まるで最後の一瞬のような集中です。 君はいったいなんと 恐ろしいものを覗き込んでゐたのでせう! ・ 悠絽、君が覗き込んでいるのは実は 存在そのものの深淵なんだ。 「太陽を曳く馬」と名付けられた岩絵が 紀元前二千年ごろのスカンジナビアの アルタの岩画に描かれている。 |
募る不安・V
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山顛東の角 |
鬼ガ岳1738m 10月2日(土) 鬼ガ岳稜線 まさか山頂に鬼の角が在るなんて 思ってもみなかったので ちょっとした戸惑い。 東の角は尖っていてそれらしく見えるが 西の角は大きいだけでさっぱり 角らしく見えない。 |
鬼ガ岳山顛 |
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悠絽がその角の上に 乗った途端 天空の光が細やかな 粒子の彩となって 悠絽の全身に絡みつき 透過する。 ・ 存在そのものが 剥き出しにされ、 のたうつ悠絽が 天空のカンバスに 描き出すのは ツァラのフレーズ。 ・ 《電燈の骨を齧れ、 馬どもを 恒星系にひっかけろ・・・》 |
やっと姿を見せた富士 |
しかし角の上から 降り立った悠絽の顔の なんと穏やかな表情。 とても同じ犬とは思えぬ。 ・ 突如、角の上で 悠絽を存在の深淵に導き 「晴子情歌」、「新リヤ王」 「太陽を曳く馬」と続く 高村の昏く重い情念を 垣間見せたのは やはり鬼の仕業か? ・ 名の如く鬼ガ岳には 死者の霊魂である隠(おに)が 棲んでいるのか? |
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西湖への分岐 |
コースタイム
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へっぴり腰で登る |
王岳1623m 10月2日(土) 王岳山頂 |
竜胆 |
王岳の森 10月2日(土) 王岳稜線 西の空に碧く棚引くような山の波。 山荘のテラスからも畑からも とても良く見えるのに この17年間一度も訪れていなかった御坂山塊。 |
山鳥兜 |
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その山塊が これ程までに高貴で 華麗な碧紫に 満たされているとは つゆも知らず。 ・ 鬼ガ岳の山頂から 西果ての王ガ岳を目指し 幾つもの小さな頂を 駆け抜けると 一面に碧紫のお花畑。 |
山鳥兜のお花畑 |
詩心が在るとは とても思えない悠絽、舞瑠 さえ立ち止まり 高貴で華麗な碧紫に 感嘆! ・ 足元には秋の陽を浴びて 竜胆の紫が輝き 草原の上には山鳥兜が 幾つもの花弁を連ね 優しく揺れる。 |
山鳥兜 |
御坂山、黒岳、破風山、中藤山、不逢山、節刀ガ岳 鬼ガ岳、王ガ岳と8月29日から4回に分けて 登り続けた幻想の山旅が終わった。 ・ これで山荘周辺の目立つ山々の踏破がほぼ完成した。 山荘を建ててから17年もかかったことになる。 なにしろ山荘からの眺望は素晴らしく 視認出来る頂だけでも幾つあるか数えきれない程。 ・ 17年間のささやかな目標が達成されたにも関わらず 冷たい隙間風が心象風景を飄々と吹き抜ける。 風の冷たさに潜む熱情の喪失に胸が傷む。 ・ ひたすら求め続けたヒマラヤの峰々は 熱情の総てを昇華し尽くし 最早残滓すら見出すことを許さないのか? ・ 熱情と入れ替わってしまった存在の空洞の深さに 為す術もなくただ狼狽える。 燃え滾る熱情が 再び還ることは決してないのだ。 ・ |
竜胆 |
再び沈思の森・W 帰路の森の暗さを思い次第に気が急いてくる頃、いきなり舞瑠が現れ、隊長がガンガン飛ばして来る。 |
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食欲の悠絽 10月3日(日) 奥庭 |
再び笹熊に食われる |
山荘の実り 10月3日(日) 前庭 |
蜜の詰まった無花果 |
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二重に防猪網で囲っておいた 中畑の薩摩芋が 再び襲われ掘り返され喰われた。 だが猪の仕業ではない。 ・ 地元の農夫に聴いたら 「そりゃ笹熊だ。網の下から 穴掘って入るだで」 ・ 収穫は10月下旬なのだが 急遽、僅かに残っている 芋を掘り出した。 |
新鮮果物と新酒ワイン |
未だ充分に大きくなっておらず 残念だが 此処までして育てた薩摩芋を 総て笹熊に喰われるのを 黙って見過ごす訳にはいかん。 ・ 早速蒸かして朝食の テーブルに乗せ味わってみた。 うん、確か甘みはやや劣るが かえって仄かで上質な 甘みになっているのかな? |
甘い実・ガマズミ |
先週仕込んだばかりの新ワインを樽から 柄杓で汲み出しグラスに注ぐ。 ・ 今夏の葡萄は甘さは充分だが 猛暑の影響で不作。 ベリーAの色も深みが無い。 ・ バンロゼのようなピンクになったが 味は悪く無い。 1120だった糖度が1週間で1030まで下がり (1120−1030)÷7.36=12.2% 12%まで醸成した。 |
初収穫の味 |
悠、舞の臭いを嗅ぐ |
西畑で穴を掘るチビ |
犯人はこいつだ! 10月4日(月) 奥庭と西畑 レタスの種を蒔いたばかりの ふかふかの畑を 踏み荒らし、ねぐら用の穴を掘り 発芽出来ない状態にした 犯人は笹熊と信じて疑わず。 ・ しかし穴の掘り方がチビと 全くそっくり。 変だなと思ってはいたが 犯人は笹熊でなくチビだった。 これが現場写真。 |
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お尋ね者・チビ 被害はレタスのみならず 春菊、水菜の畑にも及び悲惨。 いずれも発芽したばかりの 新芽が根こそぎ倒され 最早回復は不能。 ・ あの野良犬、狼もどきの 《お尋ね者》が 再び山荘にやってきたのだ。 ・ 野生の闘いで左目を負傷し 精悍な面構えになったチビが オバマと組んで何をしでかすか? |
奥庭を流離う |
西畑に居直る |
bQ0
子供ゲリラ・ミンダナオ ミンダナオから帰国するや、ミンダナオから《和平は遠し》とのニュースが飛び込んできた。 と8月のBigニュースで述べたが、今度は反政府勢力に子供が加わりゲリラ闘争をしているとのニュース。 反政府闘争が盛り上がり子供まで加わるようになったのかと思いきや 「新人民軍」(NPA)に入れば《勉強が出来る、食べ物が得られる、・・・》との理由での参加らしい。 ・ 昨年確認されたNPAの子供ゲリラは23人で、1人戦死、14人投降、8人は捕虜になった。 NPAを脱走した少女ゲリラ・ドーラは 「世の中がおかしい。NPAの思想が間違っているとは思わない」と述べている。 ・ 数千から1万人のゲリラの内子供は数%から20%にも達し、社会復帰は難しいとか。 何とも悲惨の限りである。 この闘争を影で操る一握りの地主を変えない限り和平は訪れないのであろう。 投票箱押収・チベット予備選 インド北部のダラムサラにあるチベット亡命政府の次期首相選と議会選が来年3月に 実施されるが、その予備選挙が インド(ダラムサラ)、米国、ブータン、カトマンズなどで行われた。 隣国中国に配慮したネパール内務省はこの予備選の投票箱を押収し声明を出した。 「選挙はネパールの外交政策と法に反する」 ・ したたかな中国とチベット難民の生き延びるための闘いは困難を極める。 9月の尖閣諸島衝突事件で見られた中国政府の大国主義剥き出しの 威喝外交は膨大な軍事力を背景に果てしなく続く。 レアアースを取り上げられ、人質を4人も取られ、衝突されたにも拘らず 逆に賠償を請求され、おたおたしてる日本外交も唯哀れ。
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☆ 10月3日:ネパール・カトマンズで投票箱押収。チベット難民の選挙が中止になった。(朝日新5日朝刊より)
☆ 10月6日:フィリピンで約40年にわたり反政府武装闘争を続けている共さ産ゲリラ「新人民軍」(NPA)に
加わる子供達が後を絶たない。(朝日新6日朝刊より)
☆ 10月8日:ノーベル平和賞が中国の民主活動家、劉暁波(りゅうぎょうは)氏に決定。
栗風船茸 |
森で逢った茸採り(脚長茸) |
茸狩り 10月10日(日) 鉄塔山の森 先週の《お尋ね者・チビ》 の久々の再登場が 不吉な予感を残していったのは 確かであった。 |
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畑が又しても荒らされ 悠絽や舞瑠の餌作りに使う 肉缶詰の空き缶を入れた ゴミ袋が破られたり・・・ ・ だが、この森の茸狩までは それ以上の 不幸な事態に発展するとは 考えてもみなかったのだ。 |
これも美味そう! |
どっさり採れた山荘椎茸 |
舞瑠の左前足の肉球 |
運命のその朝 10月11日(月)早朝 奥庭 血だらけになって突然倒れた舞瑠。 一体何が起こったのか 考える間も無く体が先に反応した。 ・ 直ぐ抱きかかえバイクの篭に乗せ 山荘へ急行。 脚の血を洗い調べると 肉球の黒い皮が完全に剥けて 肉が露出している。 ・ 特に駆動する前足が酷く痛々しい。 此処まで酷くなる前に どうして気が付かなかったのか? ・ 余りにも未熟な自分に 激しい怒りが無性に込み上げる。 |
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何故全力疾走したか? 舞瑠をバイクに繋ぐと いつものようにリードをピーンと張り ぐいぐいバイクを引き 惚れ惚れするような美しいフォームで走る。 ・ 最初の交差点を通過すると 左からチビが飛び出し いきなり舞瑠の前を走りだす。 ・ チビをバイクに繋ぐと いつも時速25kmで飛ばす。 今までのどの犬よりも速い。 そのチビがリードも着けず現れ 全力疾走を始めたのだ。 ・ 舞瑠も負けじとチビを追う。 バイクのメーターは時速35km。 こりゃ、ヤバイ幾らなんでも速すぎる と思った直後に舞瑠が倒れた。 ・ 先頭を走ったチビはケロリとしている。 その後やや脚を引きずって いたが流石にチビは強い。 |
深い亀裂傷 |
燃え始めた牛奥雁ケ腹摺山 |
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狼平の小岩峰 |
岩峰に挑む 10月11日(月) 狼平稜線 で、今日の山歩きは 悠絽だけになってしまったのだが・・・ ・ そもそも何故チビが舞瑠の飼主の 家に居たのか? どうして舞瑠が必死になってチビを 追って無謀な走りをしたのか? ・ そこから話さねばなるまい。 ・ それにしても、やはり舞瑠が居ないと 寂しいね悠絽。 |
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遂に立ったぜ! 小さな岩峰に立ったものの 昨秋、この岩峰を登った元気な舞瑠が 思い出されてか 悠絽もしょんぼりしてます。 ・ そもそもの始まりは昨夜。 舞瑠が吼えるので さては猪が薩摩芋を狙って畑に 現れたか? と思っていたがやがてパタリと 鳴き声が途絶えてしまった。 ・ 朝7時には雁ガ腹摺山へ出発しようと 庭に出るが舞瑠の姿が無い。 「舞瑠!」 いつもならこの一声で尻尾を振って 全力で走って来るのだが 何度呼んでも姿を現さない。 舞瑠の代わりオバマが 庭をウロウロしている。 ・ いつもオバマと一緒のチビは居ない。 こりゃ変だ! |
眼下に大菩薩湖 |
石丸峠の熊笹稜線 | 熊笹の海を行く |
石丸道より見降ろす湖 |
燃え初むる森と稜線 10月11日(月) 小金沢山 さて、それからが大変! ・ 舞瑠は山荘に居る間は リードを着けずフリーである。 未だ嘗てそれで山荘の庭から出てしまう ようなことは無かった。 ・ 昨夜の舞瑠の鳴き声は チビの出現を歓迎し意気投合し これからチビと出かけるぞ との宣言だったのかも知れない。 ・ 舞瑠単独では決して山荘を出ないが チビと一緒となると 出かけた可能性は高い。 先ずバイクをチビの飼主の家に走らせる。 ・ |
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懐かしいゴールデン・リトリバーの チャラが出迎えてくれるが チビも舞瑠も影無し。 ・ 多分、チビが舞瑠を誘ったのだ。 「ねえ、この近くに僕の家が あるんだけど来てみない?」とか云って 連れていったに違いない。 ・ だがここに居ないとなると 何処へ行ったか見当がつかない。 仕方なく山荘に戻り 念の為、舞瑠の家に電話してみる。 ・ 「深夜の2時半ごろ舞瑠がチビとオバマを 連れて戻って来て 他の犬も吼え出して大騒ぎになったんです。 舞瑠はハウスに入れましたが チビだけは未だその辺をウロウロしてます」 と聴いて吃驚仰天! ・ 即、バイクを飛ばして 舞瑠を迎えに行く。 |
小金沢山・頂からの富士 |
コースタイム
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後方に小金沢連稜 | 舞瑠無しで頑張る悠絽 |
紅葉の小金沢山頂 |
燃え初むる森と稜線 10月11日(月) 小金沢山頂&雁ガ腹摺山頂 ここで冒頭に戻りチビの出現になるが 問題はオバマは山荘に帰って きたのに何故いつも一緒のチビが 舞瑠の元に留まったのか?だ。 ・ 考え得る解は唯1つ。 チビが舞瑠に発情し、 舞瑠は発情期ではないがチビに恋をし チビに誘われて チビの家に行ってから 「じゃ、今度は私の家に来ない?」 と逆にチビを誘い 深夜のデートと洒落たのであろう。 ・ 恋に邪魔なオバマはしょんぼり ひとり山荘に戻ったのだ。 |
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チビは常にフリーであっても 決して街に降りるようなことはしない。 昼の街が野犬にとって 如何に危険であるかを充分知っているのだ。 ・ そのチビが明るくなっても 舞瑠の傍を離れず 追い立てられてもオバマのように戻らず 街に留まっていたのは 舞瑠への発情以外に考えられない。 ・ その舞瑠が再び現れたのだから チビとしては 最高に格好良くて速いところを見せなくては! 舞瑠としては昨夜の恋に夢中で チビに追い着こうと全力疾走。 ・ だがその恋の代償は余りにも大きい。 歩けないどころか立ちあがることも 困難になり 塩山動物病院のお世話になる。 ・ 《チビさえ来なければ 燃える森を一緒に愉しめたのにね》と 悠絽が寂しく呟きました。 本当は悠絽も 命を賭けた恋をしたいのかな? |
広い雁ガ腹摺山頂 |
牛奥雁ガ腹摺山からのパノラマ |
bQ1
落盤から70日目の生還 8月5日落盤事故は起こった。 地下700mに33人の作業員が閉じ込められ、生存は絶望視。 17日後の8月22日事故現場を掘削していたドリルの先に着いていた手紙。 絶望視されていた33人は生きていた。 ・ それから世界中が注目する中での救出作戦が始まる。 当初、救出予定はクリスマスと云われていたが、それより2カ月以上も早い10月13日に 救出が始まった。その瞬間は正に「地中からの出産」。 テロによる数十人規模の死が日常化し報道の片隅に追いやられている一方で 33人の生還を世界が熱い視線で見守り、生還の瞬間を涙して祝う。 人類の知は生命の宿業から人類を救い出す日を迎えることが出来るのか! ・ 妻・劉霞氏軟禁状態 ノーベル平和賞受賞直後から劉霞氏の携帯電話は不通にされてしまったが 新たに購入した携帯で 「不法軟禁に強く抗議する」とツイッターで発信。 しかし1日も経たずに再び不通にされ、現在は弁護士との面会も認められていない。 ・ サイトの厳しい検閲を掻い潜って劉氏を支持する言論は続く。 曰く「中国のある受刑者が監獄で思想改造期間中に世界的な賞を受けたことは 社会主義法治国家の優越性を充分に体現した」 ・ 民主化は歴史の必然である。 一党独裁で人民の自由を圧殺すればするほどその爆発力は高まる。 その恐ろしさを充分熟知しているからこそ権力者は チャウシェスクのような処刑の恐怖に怯え 更に自由を弾圧すると云う悪循環に陥っている。 ・ だが、幾ら弾圧しようがその日は近い。 その日に初めて劉氏は太陽の光を全身に浴び「地中からの出産」を体現するのだ。 |
☆ 10月13日:南米チリ北部コピアポ近郊のサンホセ鉱山の落盤事故で閉じ込められていた33人の救出が始まる。
☆ 10月14日: 救出作業は13日午後10時(日本時間14日午前10時)前、最後に地下に残った1人の引き上げに成功、全員の救出作業を完了した。
☆ 10月13日:ノーベル平和賞の劉氏の妻・劉霞氏の北京での事実上の軟禁状態が続き、ツイッターで中国当局を非難。
「不法軟禁に強く抗議する」
10月3週・・・・2つ目の雁ガ腹摺山
笹子雁ケ腹摺山 1358m | |
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笹子峠登山口 |
米沢山 1357m(雁米稜線より) |
笹子雁ガ腹摺山 1358m(雁米稜線より) |
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bQ2
熊、秋の襲撃開始 10月17日現在
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僕、犬だめなんです! 10月16日(土) 雁ガ腹摺山稜 細い登山道から逸れて 森の木に寄り添っている老単独行者。 かなり深刻な声で 「あのー僕、犬だめなんです」 ・ どう見ても寄り添っていると云うより 必死になって 木に抱きついているような風情。 山では決して人に吼えたりは しないが 一応悠絽の首輪を押さえて通過。 ・ 誰も居ない森の中で 犬では無くて熊に出逢う場面を想像。 この老単独行者はきっと 熊に向かって 「あのー僕、熊だめなんです」と 云って 木に抱きつくのだろうか? ・ とても愉快になって悠絽とスキップ。 |
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ルビーの右耳 耳形天南星・ミミガタテンナンショウ 熊が落としたのだろうか? それとも先ほどの老単独行者が 犬の気配に慌てふためいて 森に入った途端に 気付かずに折ってしまったのか? ・ 捨ておくのはもったいないね。 折角だから右耳に着けてあげよう。 ミミガタと云うだけあって ぴったりだね悠絽! ・ えっ!左耳も欲しいって! |
コースタイム
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頂上だ! | 笹子雁ガ腹摺山頂 |
雁ガ腹摺山の頂 |
山荘テラス正面の山 真下を通る笹子トンネル そうだったのか! ・ 長い間、小金沢連稜の山並で 何となく小金沢山か 手前の源次郎岳かなんて思っていたが どうもあのピラミッドは 大谷ケ丸(1644m)らしいな。 ・ と雁ガ腹摺山に登って気が付いた。 この笹子雁ガ腹摺山は 山荘テラスから見てその右になる。 「どうだい山荘が見えるかい?」 ・ と悠絽に訊いたら 「人間は不便だね。 あの小倉山の南尾根の後ろに 在る山荘が見えないなんて」 と馬鹿にされてしまった。 犬は視力だけでなく第六感で見るのかな。 |
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紅葉は未だだな! 急坂クサリ場あり 「どうしようか、 米沢山まで往復すると2時間40分かかるし どうやら山頂直下は 「急坂クサリ場あり」なんて書いてあるし。 なんたって秋の陽は 釣瓶落としで直ぐ暗くなっちゃうし。 ・ ところが悠絽は すたすたと米沢山に向かって下って行く。 幾つかの小ピークを 越えると米沢山からの中年単独行者。 ・ 「鎖場は犬でも通れそうですか?」 と訊いたら 「まーちょっと無理でしょう。 30mくらいありますからね」との返事。 やっぱり無理かと思ったが 何しろ乾徳山の鎖場を制覇した悠絽。 トライもせず 逃げる訳にはいかんとか。 ・ 処がこの鎖場、何とも嗤いもの。 ちょっと急な斜面に 不要な鎖が付けられているだけ。 勿論、悠絽は迷うことなく 苦も無くスイスイ。 ・ 悠絽の登山キャリアを知らんな! |
米沢山の頂 |
笹子雁ガ腹摺山頂より |
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《太陽を曳く馬》上下(発行日:2009年7月25日)・・・高村薫(55歳)
《原稿零枚日記》(発行日:2010年8月10日)・・・ 小川洋子(48歳)
《甘苦上海》(発行日:2010年6月21日)・・・ 高樹のぶ子(64歳)
bP7 ・太陽を曳く馬(読売文学賞)
著者:高村薫 他の作品:「晴子情歌」、「新リア王」、「マークスの山」、「レディジョーカー」、「神の火」 受賞:親鸞賞、直木賞、山本周五郎賞、他 発行所:新潮社 |
発行日:2009年7月25日 定価:1800円+税 読書期間:9月22〜10月20日 評価:★★★★★ |
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感性の鋭い大好きな作家なのだが、「太陽を曳く馬」と同時進行で読むと 小川洋子の作品ですら 児戯の所作に思えてしまうのだから高村薫は凄い。高樹のぶ子なんぞはミーハー(今や死語か?)にさえ見える。 女3人による存在認識の落差に唖然とするばかりである。 ・ しかし「晴子情歌」、「新リア王」と渾身の力を込めて書き続けられてきた3部作の最終版、「太陽を曳く馬」の読者数は 「原稿零枚日記」、「甘苦上海」に較べると格段に少ない。 区立図書館の予約数を検索すると「原稿零枚日記」、「甘苦上海」は数十人に上るが「太陽を曳く馬」は常に予約無しである。 硬質な文体は暫し難解で読者に読みこなす為の努力を強いるので敬遠されてしまうのであろう。 ・ 「太陽を曳く馬」下巻ではオーム真理教と仏教教義の相違が3人の僧侶によって語られ検証される。 この場面だけでも同じオームを扱った村上春樹の「1Q84」より遙かに重く深く《オーム真理教事件》の核心に迫る。 「正法眼蔵」(12巻本と75巻本)や「バガヴァッド・ギーター」を読んで事件の核心に迫ろうとする刑事・合田雄一郎に サンガ最古参の僧侶の一人・岡崎はこう語る。 ・ 「バガヴァッド・ギーター」には、静寂への讃歌よりも、無常観と文明の終わりに対する支配階級のひそかな憧憬が、 ヨーガの衣を着せられて差し挟まれている、と私は思う。 それを近代ヨーロッパが再発見して熱狂したのも、現代のニューエイジやカルトが同じく熱狂するのも、 そこにひそむ終末の匂いのせいです。 その匂いは、近代では神を殺しただけだったが、いまでは青年たちが自ら宇宙や諸々の神と一体化する 全能感の下地にもなっている。 そこにヨーガの神秘的な変性意識体験と、人類救済という汎用の理想をつけ加えれば、そのままオームへの道です。 刑事さんはどう思われます。 ・ オームの信者であった末永青年の死を追う合田刑事はこう応える。 「そう言われますと、たしかにキリスト教の終末観や仏教の末法思想とは違う、もっと能産的な 無への願望がある、という印象ではありましたかね」 そう『レディ・ジョーカー』、『マークスの山』、『照柿』に登場した高村薫の分身でもあるあの合田刑事のセリフである。 この調子の考察と論証が384ページの下巻の可也を占めるのであるから、多くの読者はギブアップしてしまうのであろう。 ・ 「正法眼蔵」に記されている、余計な知見を捨ててひたすら座禅すれば誰でも得道すると説く一切皆成の道元Aと 仏祖正伝を聞法し学習するのが菩提への道だと説く兼学の道元Bの危機的混在に オームの信者であった末永青年の死を解く鍵の存在をついに嗅ぎつけた合田刑事。 しかし終盤で合田は事態の一切を放置し、元義兄の加納祐介に電話をかけ少し泣いたのだった。 その直前のモノローグともとれる合田の思念が、物書として自由な意思を追う高村薫を語るのだ。 ・ 「おまえのどの言葉も、向かってゆく他者を素通りする。 被疑者も検事も上司も部下も、元妻もその兄も、誰もがおまえが言葉を発するためだけに 空気にあいている穴だ。 そしてそんな言葉を繰り出し続けた先に何があるか、よくよく想像することもなく、そら、おまえは今日も 宵の半時間ほどを潰して、自由な意思などとその穴に向かって書き送った。 じ、ゆ、う、な、い、し。一字抜いたら じ、ゆ、う、な、死だ。 いったい、おまえはなぜ沈黙しない・・・・・・・?」
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bP8 ・原稿零枚日記
著者:小川洋子 他の作品:『妊娠カレンダー』、『薬指の標本』、『博士の愛した数式』、『ブラフマンの埋葬』 受賞:海燕新人文学賞、芥川龍之介賞、読売文学賞、泉鏡花文学賞、谷崎潤一郎賞 発行所:修英社 |
発行日:2010年8月10日 定価:1300円+税 読書期間:10月1〜10月20日 評価:★★★☆☆ |
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『薬指の標本』、『博士の愛した数式』の習作であって時系列上では逆なのではと感じるのは、私一人かな?
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bP9 ・甘苦上海完結版
著者:高樹のぶ子 他の作品:「光抱く友よ」、「水脈」、「透光の樹」、「HOKKAI」 受賞:芥川龍之介賞、谷崎潤一郎賞、川端康成文学賞、他 発行所:日本経済新聞出版社 |
発行日:2010年6月21日 定価:2200円+税 読書期間:10月14〜10月20日 評価:★★★☆☆ |
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『光抱く友よ』で芥川賞を『透光の樹』で谷崎潤一郎賞を受賞し小川洋子同様、現在は自ら芥川賞の選考委員を勤めている。 賞には余り興味が無いが芥川賞だけは何となく気になり、読むようにしていた。 が、高樹のぶ子の作品は読んでいない。 薄っぺらな恋愛小説作家であり読むに値しないと決めつけていたのだが 先日の朝日新聞の書評欄で好意的に取り上げられていた。 ・ 「作家の感性で現代アジアをつかみ取り、広く発信する」ことを狙いとしたプロジェクトSIA(Soaked in Asia)を立ち上げ 九州大学アジア総合政策センター特任教授としての活躍もあり 人間・高樹のぶ子には大いに興味ある。 ・ 偏見を払拭せねばと思い切って 「甘苦上海」を手にしたものの、読む時期が悪い。 「太陽を曳く馬」との同時進行で読むに耐える作品で無いことは明らかで、 私の偏見は相変わらず改善されない。 だがプロローグは悪くない。 ・ 「あなた、あれ知ってる? あの痛みと鳥肌立つ甘さを。 柱にピンで留められた蝶が、飛ぶことも死ぬことも出来ず、 けれど悶絶の中で見る光の明るさを知ってる? 混乱と陶酔の果てに、 嘘も死ぬまでつき通せば誠になるという、 この世のどんな宗教も教えてくれない真実を知ってる?」
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敢えて3女史の私生活をキャプションにしたが補足すると。 ・ 金光教教師の家に生まれ、家に在った本は家庭医学書のみでその医学書を愛読書として 育った小川洋子は、24歳でエンジニアの男性との結婚を機に退職し 主婦を務めつつ子をもうけ、 不可思議な扉を求めて小説を書いている。 日常光景の背後を分子から原子へと解析する彼女の鋭い電子顕微鏡の眼は 金光教と医学書の所産であったのかと勝手に納得し、やはり彼女は異邦人であったと・・・。 ・ 「すぐに恋人が出来て、週末はいつも一緒だった」。 1967年、「新大久保や千駄ヶ谷のラブホテルは一泊二千円。 日曜日、昼間にホテルを出て渋谷でお好み焼きを食べると、有り金はほぼ底をついた」。 (高樹のぶ子の「青春」p.88) 何とも微笑ましい青春時代を送った高樹がその後40年の懐胎で生み出した「甘苦上海」。 DNAの陰謀でもある性の営みに翻弄され溺れつつ 夫と子供を捨て求めた40年の修羅の彼方に、何が見えたのか? それがほんの少しでも「甘苦上海」に投影されたなら、作品は動き出すのだ。 ・ 2階建ての一戸建て住宅に、今は4匹のネコと暮らしている。両親は他界。独身。 2階の書斎。タバコをくゆらせ、少々のウイスキーをかたわらに、 ワープロに打ち込んでいく。午前0時ごろ、執筆をやめる。 ・ 高村の3部作「晴子情歌」、「新リア王」、「太陽を曳く馬」は ぬるま湯のような狎れあった肉体の繋がりから断絶された、孤独の真っ只中で生み出されたのだ。 小川や高樹のような私生活の中からは決して紡ぎ出されることの無い緻密な暗黒。 小説へのきっかけを高村はこう語る。 ・ 「30歳を過ぎるころ、だれでも、何となくこのままでいいのかなって考えるでしょ? 具体的に何をしたいという訳でもなく。結婚する相手もいない。 仕事を続けるしかないのか。そんなことをモヤモヤ考えていました」。 入社から9年目。夜の暇つぶしと、会社でやり残した仕事を自宅で済ませるため、 ボーナスで70万円のパソコンを買った。 そのパソコンで処女作「リヴィエラを撃て」が誕生し、第2回日本推理サスペンス大賞の最終候補作になった。 大賞は逃したが高い評価を得、今日に至るのである。 ・ 今宵も又、2階の書斎。タバコをくゆらせ、少々のウイスキーをかたわらに、 福澤彰之に変身して死刑囚の息子・秋道に語りかけた言葉を検証しているのだろうか? 「他者とはすなわち意味作用です。人間は他者に出会い、それを言ひ表す言葉を強いられ、 間断なく煩はされ、縛られ続ける存在です。・・・ 君の望んでゐたのがあらゆる意味作用からの自由だったとしたら、君が最後に描いていた あの円環たちは、存在の手触りなどではなかったのだろうか」 (インタビュー<日曜日のヒロイン>を元に) |
悪 人
bX 劇場:池袋シネマ・ロサ
鑑賞日:10月20日
評価:★★★☆☆
モントリオール最優秀女優賞に耀いた深津の演技がどんなものか、それじゃ観に行ってみるか。
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原作はもっと滑らかにストーリーが進行するのだろうが、ネットで出逢った真面目なだけの女が何故
殺人犯人との逃避行を決断し実行するのかの心理描写が描ききれていない。
ただ不自然さが目立ち、オイオイそりゃないぜ!
と何度か呟かざるをえなかった。
外国人にとってはストーリーの展開を超えて深津の演技のみが輝いて見え受賞となったのであろう。
妻夫木が原作に惚れ込んで実現した映画らしいが、それにしては妻夫木の演技には無理が感じられイマイチ。
ベテラン樹木、柄本の演技は完成した老木の重厚な年輪を観るようで流石だね。
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やや不満な面持ちで池袋シネマ・ロサを出ると愛車が2台とも消えている。
「駐輪違反5千円計1万円、最寄駅有楽町線千川駅」と電柱に張られたメセージ。なんじゃこりゃ!
仕方なく地下鉄に乗って愛車を迎えに行きましたとさ。めでたくなし、めでたくなしの誕生日でした。
映画名:悪人
受賞:34回モントリオール世界映画祭・最優秀女優賞(深津絵里)
84回キネマ旬報・日本映画ベストワン、他
制作:東宝映像制作部
公開日:2010年9月11日
制作:映画「悪人」制作委員会
監督:李相日、原作:吉田修一、音楽:久石譲
李相日の主な作品:、『フラガール』『69 sixty nine』
出演者:妻夫木聡、深津絵里、余貴美子、樹木希林、柄本明、他
上映時間:2時間19分
10月4週・・・・心象の森との邂逅
滝子は遙か彼方! 10月23日(土) 大蔵遂道 7℃まで冷え込んで 山荘はすっかり冬模様。 ・ 空が抜けて宇宙の藍が広がったので やっぱり山へ行くことにしよう。 何処にしよう? もう10年以上も御無沙汰してる 滝子はどうだろう。 ちょっと山荘からは遠いかな。 |
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でも大蔵林道から車で入れば 林道終点の登山口から 米背負峠まで40分。 峠から滝子まで大谷ケ丸を経て 1時間10分と近い。 ・ と思って悠絽を連れて 大蔵林道に入ると ガーン!ゲートが下りているでは。 この長い林道を歩くとなると 滝子は遙か遠くになり 果して明るい内に下山できるか? ・ 仕方無く歩き出すと あれっ!車が止まっている。 どうも工事用の車らしい。 「どうして閉めたの?」 「あーこの道路、崩壊が多くて 1年中閉めっぱなしさ」 |
どうする行くかい?(大蔵遂道) |
米背負峠稜線 |
米背負峠 |
雲海に漂う紅葉稜線 真っ暗なトンネルを抜けると。 再び目映い光に包まれる。 ・ 遙かなる稜線に目をやる。 雲海が山稜に襲いかかり 稜線だけが暗雲。 ぐんぐん飛ばして登山口に 出ると既に深い霧。 |
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米背負峠に俵を背負って登る 村人を思い浮かべ 心地よい汗を流しながら さて米一俵って何キロだっけ? (下山して調べたら60kg とても背負えないな。昔の人は凄い!) ・ 紅葉に染まり始めた霧の森。 しっとり濡れた 色付いた幽玄な森を 巨木が斜めに断ち切る。 いいねー! 何とも豪快な終焉。 |
大谷ケ丸山頂 |
大谷ケ丸稜線 |
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滝子山頂 |
氾濫の頂 10月23日(土) 滝子山頂 去来する霧の間隙に富士が 秀麗な姿を表す。 頂の群衆からのどよめきが響いてくる。 静かな森からやって来た 悠絽が突然の人の大群出現に 慌てふためく。 ・ 恐れていた滝子の頂は やはりもの凄い人の波であった。 上部が岩場で 上級者向きとされる寂ショウ尾根から 雪の季節に登った時も 山頂に出た途端にもの凄い人、人。 ・ 滝子の魅力は 笹子、初狩駅から近いだけではない。 中央線の車窓から見上げた あの4つ頭の圧倒的な重量感にあるのだ。 |
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大菩薩嶺(左)と小金沢山(右) 滝子山頂から この写真を撮るのが大変! 10数分間順番待ちして 人を掻き分け やっとこさ隙間を作ってもらってパチリ。 ・ 標高1800m辺りまで雲海が高度を落とし 先ほどまで逍遥していた 霧の紅葉稜線が 雲海からゆっくり姿を現す。 ・ 手前の紅葉樹に挟まれて 雲海の彼方から 2つの緩やかなピラミッドが蒼紫の影を 厳かに突きあげる。 ・ 左が通い続けた大菩薩嶺2057m 右が先日登った小金沢山2014m。 この山塊で2000mを超える 唯2つのピーク。 |
滝子山頂から |
大谷ケ丸・滝子山 1644m | |||||||||||||||||||||||||
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コースタイム
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霧の森紅葉 滝子山の北の森 確かに囁きが聴こえたのだ。 耳を傾けるとそれは呼び声でもあることに気付いた。 そうだったのか! 宇宙の藍が空に広がって私を山にいざなったのは この森の為せる業だったのか。 ・ その幽し声は私にしか聴こえない。 あーそれほどまでに私はこの森に逢いたかったのだ。 |
深い霧の森を逍遥する女一人 滝子山の北の森 登山道から逸れて思わずふらふらと 迷い込んだ深い霧の森。 ・ 緩やかに起伏する森を染める 紅葉の彩が しっとりと濡れて心象画を描く。 心象と外界の境界が滲み 肉体が森にゆるゆると昇華していく ・ 悠絽を苔生した巨樹に乗せ 森の囁きを聴いていると左から動物の気配。 逸早く気づき 敏感に振り向いた悠絽が何かを捉えた。 ・ さては熊かと一瞬身構えるが 現れたのはナップサックを背負った若い女。 あれれ、ここ登山道じゃないのに。 一人でゆっくりと森を逍遥しながら登山道から 益々離れて森の奥へ向かう。 |
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若しかすると森の神口となって 私を呼んだのはあの女? ・ 滝子の北面は森が深く 人の後に付いて百名山詣でをするような 未熟なハイカーの入域を許さない。 それに敢えて登山道から逸れて 森の奥に入るのもおかしい。 どう考えてもあの女はハイカーではない。 ・ 巨樹の上から観ていたら 女が突然振り向いた。 《どうしてその木を選んだの? 森にはたくさんの木があって・・・ それは私の木よ》 ・ そうだったのか! 私に奪われた木を取り戻そうと 女はうろうろと巨樹のぐるりを唯意味無く 彷徨っていたのか? |
森からの贈り物 カードが添えられていました。 風を道連れに どこまでも 歩いて行きましょう。 いつかきっと 光の中で 透明になれるかも 知れないところまで・・・・ |
山荘眼下が何やら騒がしいぞ。 それではちょっくら下って 《およっちょい祭り》とやらを 覗いてみっか! ・ 風林火山 10月24日(日) およっちょい祭り うおー!燃えてる。 凄まじい熱気。 きらきらした汗が飛び散り 命の輝きを放つ。 美女達(?)が一瞬にして 華麗に変身し叫び舞い踊る。 ・ その場に居るだけで プリミティブな律動の奔流に 呑み込まれる。 深い眠りに閉ざされていた 太古の情念が 突如鮮やかに甦る興奮。 ・ 山荘主の誕生日である 10月20日近くの日曜日に毎年 繰り返されてきた祀り。 なのに一度も観てなかったんだ。 ・ よしこれからはこの 律動の奔流を誕生日プレゼントと 勝手に決めて 一人悦に入ることにしようか。 |
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あとの祭り・猪&笹熊の仕業 10月23日(土)西畑、中畑 どうだい酷いね! 根に芋でも在るかと収穫前の白菜を掘り出し、 ブロッコリーやカリフラワーを根こそぎ倒してしまった。 ・ 春には林檎畑の大量の馬鈴薯を総て喰い尽され 先日は2重に防獣網を張って保護していた薩摩芋を根こそぎ掘られ もう獣に喰われる物は無いと判断し、役立たずの防獣網を 怒り狂って外してしまった。 ・ まさか獣の餌にならぬ白菜やブロッコリー、カリフラワーまでやられるとは。 あとの祭りだがやはり役立たずでも防獣網は外すべきでは無かった。 山荘始まって以来の被害に茫然自失。 ・ へこんだ、落ち込んだ! もう、野生獣との共存は出来ない。 17年間続いた山荘でのささやかな農業もやめざるをえないか。 ・ なんて深刻なふりして実は来週から又せっせと 畑仕事に汗を流すに決まっている懲りない権兵衛な山荘主。 《権兵衛が種蒔きゃカラスが掘じくる》 幼いころよく耳にしたフレーズの主語に成る日が来ようとはね。 (権兵衛:百姓、また、いなか者の蔑称・・・広辞苑より) |