その52春ー2010年弥生
3月1日・・・・最初の春の日
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山葵の芽吹き 枯れてしまったのでは? あんまり音信が途絶えてしまったので心配になって、そっと覗いて見た。 葉を小さくして寒さに備えたクレソンと落葉が唯ひっそり。 慎ましやかなせせらぎの何処にも、確かに植えた筈の山葵の姿は無い。 絶えぬ清冽な流れ無くしては生きていけない山葵。 このささやかなせせらぎが如何に清冽であるか、山葵は気付かなかったのだろうか? ・ 《去る者は日日に疎し》 活動を共にして生み出される共感が存在を確かなものにする。 姿の消えた山葵をすっかり忘れてしまって数か月。 僅かな木漏れ日を浴びて、山葵が小さな葉を広げているでは。 嬉しくて思わず話しかけてしまいました。 「若しかすると、もうすぐ白い4つの花弁を開いて山荘の生命活動に参加してくれるのかい?」 |
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早春の歓び 奥庭に流れる蕗の薹、クレソンの春 手作りの辛い味噌を森人から以前もらった。 こいつに少しお酒を入れて畑で採れた小さな人参を漬けてみた。 大きな人参はそのままスライスしてサラダにしたり、下ろして人参パンに仕込んだり煮物にしたり。 だが小さな人参はどうして食べたらいいか惑っていたのだ。 ・ 漬けてから1週間経って、どうかな?と齧ってみたらこいつ頗るうまい。 蕗の薹を観た途端、この美味しい味噌が浮かんだ。 来週は蕗の薹とクレソンを味噌に和えて、早春の香りを食卓に載せてみよう。 |
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冬保存野菜も春 大根は煮物、蕪はサラダ 採れすぎて余った沢山の大根、蕪を地中に埋めダンボールを掛け更にその上を土で覆い 冬の間も新鮮な野菜が食べられるよう保存してある。 ・ 山荘に着くと先ず畑の保存大根を掘り出して、ぶつ切りにして昆布を敷いた鍋にぶち込んで ぐつぐつ煮込む。冷えてから再び火を点け、それを2,3度繰り返す。 こうしておくと1回毎に味が深く浸み込み極上のふろふき大根が出来あがる。 先週は鰤を入れたが甘みがやや強く失敗したので今回は干し昆布、粉末昆布、粉末鰹、炒子のみで味付け。 ・ 蕪は凍結し易く一度凍結すると後はスポンジ状になるので捨てていた。 もしやとスライスして少量の塩に塗し柚子をかけて食べたら、充分食べられるではないか。 食べられないと決め込んでいた先入観の恐ろしさよ。 |
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一皮剥けばほら、ご覧! くたくた煮物、フレッシュ塩揉み昆布 何ともみすぼらしく惨め、哀れを誘う白菜。 一番外側の葉が鋭い寒気を真正面から受けて凍死し、その屍で内側の葉を護るんだね。 護られた葉は自らが凍るのを防ぐために自己防衛反応を起こし糖類やビタミン類等の濃度を高める。 その結果、野菜は本来の甘さを増し美味しくなるんだ。 ・ こんなみすぼらしく惨めな白菜は決して市場には出ない。 ビニールハウスに護られた見てくれの良い野菜だけが美しく店頭を飾る。 寒さと闘った野菜の甘さを知っているのは自家用の野菜栽培者のみ。 ・ 大根と一緒に煮てもいいし、軽く塩揉みして昆布を混ぜてもいいし、何しろ食べだしたら止まらない。 生と死を賭けて寒気と闘う野菜の意志が、ずんずん味覚に乗ってやって来て 体中が野菜の逞しい意志で満たされる。 ・ 人間もきっと困難と闘った人の方が中身が濃くて美味しいのだろうね。 |
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採っても採っても 小松菜もブロッコリーも 《さてはお主、暦が読めるな!》 と云いたくなるのも無理はありません。 今日は3月1日、暦の上では春の初日ではありませんか。 ・ 恰もこの日を待っていたかのように小松菜が、黄色い花弁をいっぱいに開いて! その隣では収穫後のブロッコリーの周りに新たなブロッコリーが幾つも芽生えています。 昨年から収穫を続け山荘で食べ、目白に運んだりして採り続けているのに 小松菜、ほうれん草、青梗菜、ブロッコリーも 寒さと闘いながら新たな生命を次々と生み出しているのです。 ・ でも、もう少し暖かくなって花開いてしまうともう終わりなのです。 生殖は生命の頂点にありながら同時に生命の終焉を孕んでいる。と知っているからこそ その遙かなる無限連鎖の彼方が重いのでしょうか? |
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早春の乳房 刻まれる女 最初の春の日に、 仄かな哀しみを深奥に認識しつつ胸をときめかせた、いにしえの幻想の乳房が彷彿として甦る。 ・ マサイ族の若い女が唐突に左の乳房を掴みヒョイと肩に乗せた。 隣の席に座っていた私の目の高さに、艶やかな光を帯びた茶褐色の乳房が迫る。 意表を突かれ目のやり場に戸惑う。とても大きい乳房だとは思っていたがまさか肩に乗せるとは! バスを降りたマサイの女はゆらりと歩み去った。 その日のメモには《7/31マサイの槍 100sh ジョナサンに預ける》とある。 その女と黒檀で作られた槍の関係は記憶にないが、多分100シュリングで槍とマサイの仮面を買ったのだ。 長く見事なマサイの槍と仮面は今でも山荘壁面からこの木彫女の乳房を見つめている。 ・ その乳房ではなかった筈だと28年前のアフリカ・キリマンジャロ登山の手帳を捲っていたら すっかり忘れていたもう1つの乳房があった。 早朝のダルエスサラームのプライベート・ビーチにトップレスで佇んでいたフランス人の若い母親。 夜明けの太陽が海と空の群青を背景に乳房を 若い母親とあるのだから近くに小さな子供が居たのだろうが 子供もその女の顔も跡かたも無く消え、ただ光に満ちた 仄かな哀しみと共に心象風景に甦った。 |
bU
原題:Animosity 著者:デイヴィッド・リンジー (David Lindsey) 訳者:山本光伸 発行所:新潮社 発行日:2004年3月1日 |
定価:781円+税(文庫) 読書期間:2月25〜3月3日 評価:★★★★☆ |
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bWハイチ1月の大地震で23万人もの死者を出したばかり。 |
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☆ 2月27日:南米チリ中部の沿岸部でM8.8の巨大地震発生。気象庁は28日朝、
最大で3mの津波が日本に到達する恐れありとし太平洋沿岸部に大津波警報発令。
☆ 2月28日:バンクーバー五輪終わる。日本は銀3、銅2で参加国、地域82の中で20位。
授与メダル総数は258個で米国が37個、独国30個、カナダ27個を獲得。
3月1週・・・・夏のち冬
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うあー夏だ! 山荘テラスの温度計は25℃だぜ ぐんぐん上がってギンギラギンの太陽は真夏の日差しで山荘を焼き焦がさんばかり。 書斎の机上にセットしてあるデジタル外気温度計はな、な、なんと25℃。 3月に入ったと云っても山荘は未だ真冬の筈なのだ。 ・ 冬の花・深紅の山茶花も暑さに驚いて花弁を散らし池へどぶん。 焦っているのは山茶花だけではありません。 生み出されたばかりの蛙の卵だって 「ありゃら!もう夏かい?出遅れちまったぜ、これじゃ蛙に成る前に秋になっちまうぜ」 |
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遙かなる無限連鎖 うん、確かこの卵、1日(月)には無かったぞ そうです。確か先週帰京する時、池には断じて卵なんて在りませんでした。 もうそろそろ産卵の時期だなと思ってしっかり池を観察したのです。 池に沈んでいる大量の枯葉を掻き出して産卵し易い環境を整えて昨年の記録を調べて・・・ えーと昨年は3月26日に産卵確認だから未だ未だだな。 と思っていたのです。 ・ それでも母蛙は敏感に温暖化をキャッチし昨年より21日も早く産卵したのに 想定外の夏日が突如やって来て そうか蛙には臍(へそ)なんて無いのか! |
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雪もすっかり消えて いよいよ爆発する生命の季節ですなー なんせストーブを備えているんですから先週の画像のように雪の中でも花開くのですよ。 そのストーブなんだけど、この暑さじゃ堪ったもんじゃないね。 それともセンサーがあって気温上昇と共にストーブのスイッチを切るのかな? |
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迎春花(黄梅)のシャワー あれ!花びらがチビの目に・・・ 見てください。チビの横腹に上下の段差が付いているでしょう? 下側の毛は全部抜け変わって、もうすっかり夏毛。 2頭とも激しい脱毛で山荘の芝生はあちこち抜け毛だらけで、汚らしいことこの上なし。 《夏近し》と感じているのは山茶花や蛙、座禅草だけでなく犬達も感じて 逸早く夏服に着替えていたんだ。 ・ 黄梅もこれじゃ迎春花ではなくて迎夏花になってしまうね。 |
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再び冬将軍の白へ 重くて暗い空から再びやって来た使者 ところが夏は一瞬にして去ってしまったのです。 森をずんずん登って行くと雨が白くなってきて稜線に出る頃にはすっかり雪。 これじゃ明朝は雪の森になってしまうなと思ってましたが 朝起きてみると森だけでなく山荘もうっすらと雪に包まれていました。 ・ 半分冬服、半分夏服でありながら犬達は寒さなんてどこ吹く風で大喜び。 バイクの先頭に出てがんがん飛ばすのでどこまで走れるか速度を上げたらなんと時速35`。 悠絽、舞瑠のいない間に随分逞しくなったね。 |
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雪花の森・夏から冬へ 25℃の夏から-3℃の冬へ逆戻り 横腹に夏毛と冬毛を引っ提げて「未だ夏毛には早かったかなー?」とばかり 雪空を見上げているのはチビ。 オバマはすっかり夏毛に生え換わり「さびいさびい」と云いながらも どこか嬉しそうに雪化粧した森を見つめています。 ・ 雪の小倉山頂から山荘に戻りリードを解いて 飼主の元に戻るよう餌も少しだけにしたのですが、半日経っても一向に帰る気がありません。 仕方なく犬小屋の扉を閉め山荘のシャッターも降ろしました。 ・ こうすれば山荘主はもう居ないと判断して飼主の元に帰るはずなのです。 ところが電動シャッターが閉まり始めると、よっぽどのことが無い限り吼えないチビが シャッターに向かって一声だけ長ーく吼えたのです。 |
bR 於シネマ・ロサ
鑑賞日:3月10日
評価:★★★★☆
自爆テロが報道されても「又か!」で見向きもされぬ程、テロは日常化されているが如何に恐ろしい現実であるか
平和ボケしている我々には実感出来ない。
米兵の視点からしかその恐ろしさを捉えていないが、それでも充分にテロの悲惨な現実をこの映画は描きだす。
神学校にあるテロリストのアジトで見出した爆弾が自分達の使っている米国製であることを
描写してもイデオロギーを絡ませず戦場の壮絶な日常をただリアルに追う。
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爆弾処理班のリーダーであるジェームズ2等軍曹は遠隔操作ロボットも使わず
班員の阻止を無視し防護服を着て爆弾に近づき勝手に処理してしまう。
勇敢とも狂気ともつかぬジェームスの行動は班員の反発を買ったりしながらも次第に受け入れられていく。
その勇敢とも狂気ともつかぬ行動原理を示すかのように映画冒頭にエピグラフとして《戦争は麻薬である》と挿入されている。
乳飲み子と妻の元に帰ったジェームズは「俺に残されたものは1つしかない」と乳飲み子に語りかけ
戦争中毒に侵された患者の如く、再びイラクの戦場に戻るのである。
・
退役後は米国での平和な生活を選ぶことも可能であるにも関わらず敢えて戦争を選ぶジェームズ。
「俺の爆弾処理技術を皆が必要としているんだ」とも叫ばず、戦争は人を狂気に駆り立てるとの臭いセリフも交えず
ジェームズはイラク戦場に帰った。
1960年代のベトナム戦争を描いた「ディア・ハンター」の暗くシリアスな映像を思い起こしながら観た。
ベトコンの残虐性だけを強調するようなミスは犯さなかったものの戦争が米国視点でしか
描かれていないと云う点では「ハート・ロッカー」もまた同じである。
・
自爆テロが如何に恐ろしい現実であるかを真に知っているのは米兵ではない。
常に被害者である一般のイラク国民なのである。
地球の半周の彼方からやって来て、近代兵器に護られている米兵の恐怖とイラク国民の絶望は較ぶべきもない。
時限爆弾のベストを括り付けられ爆死するイラクの男が描かれるが、イラク国民の絶望描写とは程遠い。
米兵の視点にイラク国民の日常的絶望を僅かに加えるだけでいい。
それだけで「ハート・ロッカー」は未来に語り継ぐべき作品になったかも知れない。
・
ビグロー監督とアバターのキャメロン監督が元夫婦で、片や戦争の現実を、片や仮想のアバターを描きアカデミー賞を競うとは!
その結果仮想ではなく現実のイラク戦争が選ばれた。
映画としての面白さ・可能性はアバターに遙かに及ばぬと充分認識しつつ、敢えて現実を描いた
「ハート・ロッカー」をアカデミー会員は選んだのだろう。
とすれば、アカデミー賞も満更捨てたもんじゃないなと、ちょっと嬉しい驚き。
映画名:ハート・ロッカー(原題:The Hurt Locker)
制作国:アメリカ(配給サミット・エンターテインメント)
制作費:1100万$(約99億円)
興行収入(約8ヵ月後):1470万$(約130億円)
収益率:1.3倍
公開日:2010年3月6日(日本)
監督・製作:キャスリン・ビグロー
ビグローの主な作品:「ニア・ダーク/月夜の出来事」、「ブルースチール」、「ハートブルー」等
出演者:ジェレミー・レナー、アンソニー・マッキー
上映時間:2時間11分
受賞:第82回アカデミー賞6部門受賞(作品、監督、脚本、編集、音響編集、録音)他多数
bX戒厳令下のイラク総選挙でテロ続発38人死亡 |
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☆ 3月07日:アルカイダ系武装勢力の投票妨害予告の中でイラク国民議会選挙の投票実施。
戒厳令下でテロ続発38人死亡。
☆ 3月07日:第82回米アカデミー賞授与式。キャスリン・ビグロー監督の《ハート・ロッカー》が6部門で受賞し
話題の《アバター》は3部門受賞にとどまる。
☆ 3月09日:岡田外相が日米の密約に関する外務省調査結果と有識者委員会の検証報告書を公表。
核密約はあり歴代首相や外相は虚偽の政府答弁を繰り返していた。
☆ 3月10日:世界で初めてiPS細胞を使って奈良県立医科大学のチームが、マウスの人工臓器の作製に成功。
作製された臓器は腸管で立体的臓器は世界初。再生医療に期待。
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1か月ぶりの山荘活動だね! 犬専用座席シート、後部座席にフックを付けて、これでOK 「折角迎えに来てくれたのに、置き去りにされてしまった日 舞瑠は遠い山荘に向かって遠吼えしたんです。 きっと声が届くと思ったのでしょうね」 ・ そうだった。迎えに行ったけど発情期に入ったので2頭とも山荘に連れて来なかったんだ。 で、結局1か月も山荘の森を走れなかった。 どうだい久しぶりの山荘は?今度君達専用の座席シート付けたけど座り心地は? 随分逢えなかったから何かプレゼントしようと考えて、これにしたんだよ。 気に行ってくれると嬉しいね! |
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山頂からの日の出! 山荘夜明け6:53(東京5:53) 最も心ときめく瞬間の1つが暁光との出逢いにある。 寝室のカーテンを開くや否や小倉山の頂から赫奕たる太陽が昇る。 唯単に地球の自転の結果巡り巡って 45億年も繰り返している日の出がやってきただけなのに心が騒ぐのだ。 ・ 不意に《意味の喪失》に怯える。 若しかすると心のときめきは《意味の喪失》の反転なのかも知れない。 |
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光と花弁の燃ゆるアンブラッセ 君子蘭と白梅 冬至には水晶峠に在った日の出の太陽が まるで小倉山を登るように、ずんずんと東に移動してついに頂まで達した。 寝室の君子蘭に突き刺さって、まるで妖艶な生の饗宴。 奥庭の白梅も光を浴びて高貴な香りを発し、山荘をいとおしむように包みこむ。 ・ この幻想的な夜明けが実は心象風景の中ですら意味を持たないのではとの懐疑。 懐疑を消し去るには、《意味の喪失》に立ち向かうには 心を騒がせねばなるまい。 |
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甘く柔らかな菜花&馬鈴薯 山茱萸(さんしゅゆ)も花開き小松菜も春を謳歌 さて、コロッケとポテト・サラダを作ろうかと発芽してしまった馬鈴薯の芽を 丁寧に欠いて大鍋いっぱいに芋を茹でた。 マッシュする前にちょっと味見をした。 「甘い!えー確かこんなに甘かった筈はないぞ」 もう一度口に入れてみる。「美味い!」 ・ そこで予定は急遽変更。 コロッケもサラダも止めて塩胡椒だけで、そのままの甘さをビアと共に愉しむことに。 ついでに小松菜の蕾を摘んで来て軽く熱湯処理。 予想たがわず甘くこの上なく柔らかい。 ・ 山荘の早春の贈り物に大地讃頌をハミングしながら 忍び寄る《意味の喪失》を敢えて嘲笑う。 |
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ひねもすのたり・・・かな なんだか身体から芽が出てきそう 詩人になってしまった。 右耳を大地に当てて生命の動き出す音を聴いているのは舞瑠とオバマ。 鼻を地に密着させて生命の早春の鼓動を聴いているのはチビ。 ライオンのように前脚を投げ出し両耳をピーンと立てて森羅万象の命の気配を感じているのは悠絽。 ・ よーく観てごらん! この2枚の画像は同じ時間に撮ったのではないぜ。 でも殆ど手前3頭には違いが無いだろう。もう既に1時間もこのまんまなんだ。 舞瑠の顔の位置を較べると僅かに顎を下げてるので同じ画像で無いことは判るけど大地と一体化してるね。 ・ 題して《ひねもす意味の放棄》 こんな風に気楽に意味なんて放棄してしまえばいいのさ。 |
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でも未だ山は雪がどっさり 夢にまで見ていた森でおおはしゃぎ 山荘の庭はすっかり春だけど山は雪がどっさり。 やっと長ーい不在の時が終わって雪の森を飛びまわる悠絽と舞瑠を観ていると 心から歓びが湧きあがってくる。 ・ 遠く離れた山荘に向かって舞瑠が遠吼えしたと聴いたときは 胸がきゅーんと痛んだね。 遠吼えは普通の吼え方と違ってアルペンホルンのような低音を出して遠くの仲間に 話しかける吼え方なんだ。 |
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太陽光発電モニター設置 現在発電量1.2Kwh、消費電力0.5Kwh,積算電力34083Kwh モニターが付いた。 時々刻々太陽光の発電量が示され、同時に消費電力も掲示される。 100ワットの電灯を点けると即0.1kw上昇し TVでは0.4kw、電子レンジは1.5kwとか加算され興味津々。 ・ グラフも表示されPCとの接続も可能でデーター保存も出来る。 これで長年の疑問であった発電量の低下率原因の解明も出来るかも知れない。 昨年完成したばかりの新製品だが特別に無料でレンタルしてくれるとか。 ・ で、早速モニターで《ゆぴてる発電所》の現在までの発電量をチェック。 総発電量34083kwhを石油に換算すると7753g ソーラーカーで走ると44万4054km、CO2削減量は10.7トンと出た。 地球を11周も走ったとは驚きである。 |
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最終工事・椎茸原木もどっさり 森の散歩道がもう直ぐ完成かな 舞瑠が背延して匂いを嗅いでいるのは伐り出したばかりの楢の原木。 3月は椎茸の菌を楢原木に打ち込む季節。 来週は注文しておいた椎茸菌も入荷するのでこの原木を使うことにしよう。 ・ いよいよ山荘の森も最終工事に入ったね。 それにしても道を造るって大変なことなんだね。 あの恐ろしい威力のあるチェーン・ソウで木々を伐り倒しパワー・シャベルの付いた ショベル・ローダーで根を掘り起こし道を造り出す。 ・ 太陽光のモニターと同じくこの大変な工事も無料奉仕で森人がやってくれているんだ。 山荘の定期無料点検に来るダイワの社員も山荘の景観が気に行って 家族を連れて平日に訪れたこともあるとか・・・ 山荘を訪れ山荘が好きになって再びやって来る人によって山荘活動は支えられているんだね。 |
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新しき道程 混沌とした原野に一条の光 踏み込むことすら出来ない生命の氾濫。 僅かな光を求めて常緑樹の隙間に芽吹き、跳梁跋扈する木々が空間を奪い 森の生命は自らの手によって窒息させられる寸前。 「これじゃ共倒れで死んじまうよ」と一目観るなり呟いた森人。 ・ 山荘の森の手入れが始まったのは確か昨年の10月。 あれからもう半年も経ったんですね。 混沌とした原野に拓かれたこの1本の道が新たなる道程となって、山荘が もう1つの世界に踏み出せるか問われているのでしょう。 |
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題名:赤目四十八滝心中未遂 受賞:119回直木賞 著者:車谷長吉 他の作品:『鹽壺の匙』(第6回三島由紀夫賞、、『漂流物』(第25回平林たい子文学賞 『武蔵丸』(第27回川端康成文学賞) |
発行所:文芸春秋 発行日:1998年1月10日 定価:1619円+税 読書期間:3月10〜3月17日 評価:★★★☆☆ |
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《結婚に性交渉は必須ですか》
如何にも読者の注目を浴びそうなタイトルである。
この3月6日付朝日新聞人生相談・悩みのるつぼの回答者が車谷長吉ときているのだから、つい目を通さずにはいられない。
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「結婚生活において大事なのは健康です。私は今のところ健康ですが、心の中では、1日も早く死にたいと願っています」
これが彼の回答の一部である。
会社勤めにも落第、作家としても落第、身の置き所がなくなった車谷長吉は、その後9年間、社会の底辺をさまよい歩き
ゴミ収集人、旅館の下足番、料理場の下働きなどをした後、1998年「赤目四十八滝心中未遂」で直木賞受賞。
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「私は露出していた。流失とは自分にとって大事なもの・必要なものが流れ落ちて行くと同時に、いらないものが
流れ落ちて行き、己れが己れの本性だけに痩せ細って行くことである」
本文中に書いているようにその本性だけになって書かれた自叙伝作品が「赤目四十八滝心中未遂」なのだろう。
慶應義塾独文科での卒論はフランツ・カフカ論。
日本では安部公房、倉橋由美子、村上春樹等がカフカの影響を受け私も彼等の作品を貪り読んだ。
だが長吉の作品にカフカの影は殆ど見当たらない。
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《死への願望》を垣間見せる芥川龍之介、太宰治、坂口安吾の系譜とも異なる長吉が、死を願望しつつ人間をどう描くのか
ページを捲ってみた。プロローグはカフカ風なのである。
地下鉄神楽坂駅と阪神電車西元町駅の伝言板に書かれた「私には関係のない」伝言。
舞台は尼ケ崎、朝から夜まで病死した豚の臓物を1本3円の手間賃で串刺しにして生きる生島(長吉)が主人公。
その臓物を売る焼鳥屋・伊賀屋の女主人・セイ子ねえさんは50代後半の元進駐軍相手のパンパン。
生島の棲む安アパートの階下には「見るのが恐ろしいような美人で目の輝きが猛禽のような」朝鮮人のアヤちゃんが居る。
隣の部屋では、薄くなりかけた髪のそそけ立った老売春婦達が年老いたみすぼらしい宿なしを連れ込み
「おつたいがなァ、うろたんりりもォ、おにくたぎなやァ、こつなちぐひィ・・・」と呻きながら性交するのである。
「骨を噛むような苦痛の声が漏れる」前の部屋はアヤちゃんの男・彫眉の仕事場。
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実体験に大幅に手を加え生み出したであろう登場人物は夫々個性的で面白い。
読ませようとの意図がふんだんに盛り込まれ、明らかに文壇への復帰を意識しての作品となっている。
本年64歳の長吉はデイヴィッド・リンジーと同世代。
「1日も早く死にたいと願っています」なんぞと云って読者を悦ばせる(?)のではなく、
知の悲哀を超えてリンジーのように知を愉しみつつ、人間の本性を切り裂き
「贋世捨人車谷長吉」を売物に哀しくてユーモラスな作品をどしどし書いて読者を悦ばせて欲しい。
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生きるなんて《死》に値する程のことは無いさと居直れば死への願望は反転し、自らの流失さえカリカチュール。
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早春のマリンバ・千個の音符! 共鳴管は森全体だぜ! 山荘に着くと光を遮る黒いシートが掛けられ、丸太が山のように前庭に積まれていました。 きっと森人が伐りたての楢原木を届けてくれたのです。 原木に陽が当たると椎茸が発芽しないので、光を遮り雨を通す黒いシートまで添えてくれたました。 ・ さて前庭から椎茸栽培の森までこの重い原木をどうやって運ぶか? 最初はバイクに数本ずつ乗せて北の森を登ろうとしましたが、重くてバイク後輪がスリップ。 いた仕方なく一輪車に積んで奥庭に運び更に石段上に引き上げ準備完了。 さていよいよ《春のマリンバ定期演奏会》の開始です。 今春は椎茸菌千個の音符がどんな調べを奏でるのでしょうか? |
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参加することに意義あり? くんくん、うーん匂うな春が・・・ 一番先にやって来た観客は何にでも直ぐ興味を示す利発な舞瑠です。 音楽よりも森の動物ハンティングが大好きな悠絽も尻尾をピーンと立ててやって来ました。 優柔不断なオバマが真似してシッポを立て悠絽の後に続きます。 やや離れた位置に自分の席を決めて、何が始まるか用心深く静かに待っているのは野生のチビ。 ・ 「マリンバはね、昔アフリカで土に穴を掘ってその上に渡した板を叩いたのが始まりなんだ。 板の音が穴に共鳴して柔らかな大きな音。それでもって工夫し 穴の代わり瓢箪を板の下に付けて共鳴させ、それが中南米に渡り瓢箪が共鳴パイプになって 更にアメリカで金属管になって今のマリンバになったんだよ」 ・ 利発な舞瑠がマリンバの解説をしたり中々良かったのに、椎茸菌千個の3時間にも及ぶ演奏会は アンコールもありません。それどころかどうも早く終わるのを待っていたような。 そうか、早く終わればそれだけ夕散歩の時間が沢山取れると知っているんだ。 つまり本当は《春のマリンバ定期演奏会》なんてどうでもよかったんだな! |
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春畑へのいざない 冬保存野菜掘り出し耕運機掛け・・・畑の準備 庭のあちこちで水仙が小首を傾げマリンバの音色を愉しんでいます。 先週蕾だった山茱萸も花開き前庭の空を黄色に染め、奥庭の白梅、紅梅が馥郁たる香りを漂わせ 石楠花も咲き出しました。 ・ こうなると黙っていないのが畑の雑草達。 先ず西畑の冬の保存用野菜を総て掘り出し霜除けの段ボールを撤去し、雑草を抜いて石灰、鶏糞の撒布。 それから汗びっしょりになって耕運機で土を掘り起こし、今春初めての苗植え。 霜に強い白菜、ブロッコリー、パセリの苗を植えてみました。 |
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チビ挑戦、オバの嘆き 狭い金網を潜り抜けるチビ 隔週置きだよと幾ら言い聞かせても、週末になると飼主の元を脱走して山荘にやって来る。 それでいてチビはリードに繋がれるのを嫌い人間に近寄らないのでリードで結べない。 でも散歩の時間になると一緒についてくるので、 リード無しのチビが里道を走ることになり里人の苦情の種になるのだ。 ・ そこで森に入る防獣鉄柵の前でいつも言い聞かす。「リードを着けない犬はお帰り!」 扉を閉めて舞瑠と悠絽だけを森に入れ散歩に同行させないのである。 するとオバマは嘆き悲しみ吼え続けるがチビは少しも嘆かず、即小さな金網を潜り抜け舞瑠、悠絽を追う。 金網の穴が狭すぎれば地面に穴を掘ってでも脱出してしまう。 チビは脱出の天才なのだ。 |
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新彊ウイグルからの客人 初めてのモジュールの汚れ落とし 今まで9年間の総発電量は34083kwhで現在の買取価格(48円/kwh)で計算すると163万5984円となる。 石油に換算すると7753g、ソーラーカーで走ると44万4054km地球11周と 太陽光モニターが示したので嬉しくて発電に協力することにした。 京セラの技術者がモジュールを開いて点検した後、ついでに汚れを洗い流すことを決意。 ・ 汚れは気になっていたがモジュールに乗っても壊れないか心配で、今まで手をだせなかったのだ。 技術者に聴いたらモジュール表面を傷つけるようなことさえしなければ乗ってもOKとのこと。 新彊ウイグル自治区タクラマカン砂漠の遙か彼方から昨日やってきた黄砂がモジュールを覆い 発電量が低下していたので掃除には絶好のチャンス。 |
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命綱はヤクの毛で編んだザイル つるつるの氷壁みたいなモジュール 新彊ウイグルのタクラマカン砂漠の彼方と云えば、29年前の1981年8月7日 我々が初登頂に成功したムスターグアタ峰(7427m)やポベーダ峰(7439m)の在る懐かしき地。 1万kmの彼方からやって来た黄砂を指にとって舐めてみた。 つーんと乾いた中央アジアが切なく胸に迫り、現地のポーターから貰った命綱のヤク毛ザイルが 29年の時空を一瞬にして短絡する。 ・ 果てしも無く広がる死・・・・タッキリマカン。 ウイグル人はタクラマカン砂漠をそう呼んだ。 北極海からもアラビア海からも遙かに離れた内陸の地タリム盆地は、天を突く大山脈によって囲まれ わずかな水分が海から旅してくることさえ拒否する。 あるは、ただ流沙、そして死。 (報告書:《シルクロードの白き神へ》より) |
bP0だが23日の英デーリー・メール紙(電子版)は |
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☆ 3月18日:米国のクレイ数学研究所(CMI)のジェームス・カールソン所長はポアンカレ予想問題解決の
ペレルマン氏に100万ドル(9千万円)の賞金を贈ると発表。
☆ 3月20日:春の嵐来襲。20日御殿場市の自衛隊東富士演習場の野焼きで3人死亡。21日の黄砂と強風で鉄道、航空便が
運休、欠航し神奈川、千葉で計30人が強風に煽られ負傷。
☆ 3月22日:米インターネット検索最大手のグーグルが中国本土でのネット検索サービスを22日から停止したと発表。
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原題:Eyes of a child 著者:リチャード・ノース。パタースン (Richard North Patterson) 他の作品:ラスコの死角、ダークレディ、最後の審判、野望への階段 訳者:東江一紀 発行所:新潮社 |
発行日:2000年9月30日 定価:3200円+税 読書期間:3月24〜3月25日 評価:★★★★★ |
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参った!凄い、圧倒された。
ここ10年程の米国ノベルなんて精々スティーヴン・キングかジョン・グリシャムでも読んでいれば、後は推して知るべし。
と無知を曝け出し傲慢にも高を括っていたのだ。
ところがどっこい、こんな凄い作家が居るとは、正に我が無知と傲慢を真正面から衝き付けられ赤面の歓び。
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従って当然評価は最高の星5つ。近年にない掘り出し物に遭遇し嬉しさのあまり日夜(?)読み続ける。
読み応えのある濃厚な文体の上下2段600ページ長編を2日で読み切った。
だが、この作家の作品はベストセラーのリストには入るが、いずれもベストにはなっていない。
理由は明瞭である。デヴィット・リンジーを上回る心理描写が余りにも精緻、濃厚で体力が無いと読み通せないのだ。
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冒頭3ページの殺人描写を除くと、夫婦の亀裂がテーマの純文学作品かと思われる展開が延々と続く。
やがて幼児の性的虐待、夫婦間の性的虐待、父娘間の性的虐待が明らかにされ、鋭敏な頭脳を持った女弁護人・キャロライン・マスターズが
《惚れ惚れするような弁論の大立ち回りを披露し》本書をリーガル・サスペンスとしての山場へといざなう。
主人公の弁護士・クリストファ・パジェットは殺人罪の被告人でありながら無罪であるとの自らの証言を何故拒むのか?
想像を逞しくし乏しい自らの知らしきものをフル回転させて憶測しつつ読み進めたが敵わず予想外の結末。
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ほっそりした体つきに、茶色の髪、オリーブ色の肌と彫りの深い顔立ち。くっきり通った鼻筋、高く突き出た頬骨、なよやかな顎の線。
きまじめな表情は、すばしこい笑みひとつで一変して和らぐけれど、緑の斑点を散らした茶色の瞳から
習い性となった警戒の色が完全に消えることはない。・・・これがクリストファの愛人テリーザ。
最初にさり気無く書かれたこの《警戒の色》に本書の総てが込められているとは、再読して初めて気づいたのである。
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夫から性的虐待を受けつつ娘テリーザの為に耐え続けたローザをパタースンはこう描写する。
ローザは美しさと歳月の均衡状態に達していた。ある種の女性だけがたどり着けるこの均衡状態は、人生の中のわずかな期間
早成することも保存することもできない趣を現出させる。
ローザの孫娘でありテリーザの娘でもある6歳のエリナが実父リカードから性的虐待を受けたと知ったその夜ローザは
虐待を続けた嘗ての夫を殺害したように、何の躊躇いもなくリカードを殺す。
ローザにとって、リカードの死という観念は、蝿を打つほどの畏怖も神秘性ももたないのだ。とクリストファは知る。
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子供に対して持てる愛情の総てを注ぎ込み、男の虐待から子供を守るためなら殺人をも厭わない美しいローザ。
《警戒の色》を湛えつつ、図らずも母ローザと同じような夫を持ってしまった29歳の娘テリーザ。
そこに登場する白馬の騎士・47歳のクリストファをテリーゼはこう語る。
引き締まった筋肉質の体は、きびしい自己鍛錬のたまものだろう。まっすぐ通った鼻筋のやや角張った感じが、顔立ちに精悍さを添えている。
けれど今、テリの心を打ったのは、瞳のはっとするほどの青さと、その瞳にうかんだやさしい気づかいだった。
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参ったのは、凄いのは、圧倒されたのは、これら魅力に富んだ登場人物の豊かな描写にある。
3月4週・・・・不意な光の氾濫
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落日のシルエット どうしてだろう? 観るからに行ってみたいと心をそそられる緑の丘なのに 毎朝トレーニングで16年間も丘の周りを走っているのに一度も足を踏み入れたことがない。 落日を追うようにして丘に登った。 生命が闇に塗りこめられその輪郭だけが光りを放つ。 |
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淡雪の朝、花見の落日 「あれっ!変だな? このベンチは確かに白ペンキなんか塗られてなかったんだけど」 白い木のベンチに乗ってきょろきょろしている舞瑠。 ほら枯草だって白いだろ?名残り雪の仕業さ。 ・ 午後になるとすっかり淡雪は融けて東森の梅の丘から高雅な香り。 動物以外の匂いに興味を示さぬ悠絽が珍しく花の香に鼻をくんくんさせています。 淡雪の曙光に始まり満開の梅に囲まれ、残照を浴びて終わる一日。 |
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髑髏菜花&雪雲の柳 マイナス6度だぜ、あと3日で四月だって云うのに! 光なんてすっかり春を忘れ何処までも冷たく透明になって、室内の菜花が震えたもんだから 髑髏が命在るものをかたかた笑うんだ。 ・ 雲だってまるで暖かくなくって、咲いてしまった柳がべそかいて・・・ でも咲いてしまったらもう戻れないんだよね。 |
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馬鈴薯の種芋を林檎畑へ 有機肥料と石灰を施し何度か耕運機をかけてほくほくになった土で畝を作る。 うっすらとかいた汗に寒風が小気味良い。 何処にでも付いてきたがる犬達が畑に寝そべり、枝にかけたラジオから懐かしい《ひるのいこい》が流れる。 ・ 鍬を立てて身を委ね緩やかに起伏する森を見つめながら、古関裕而のテーマ曲に耳を傾ける。 あれ、音楽なんて知らんぷりの舞瑠がむっくり起きて種芋を見つめ何か訴えているような。 若しかするとこの曲は犬までも農作業に駆り立てる摩訶不思議な力を持っているのかな? よーしそれじゃみんなで一緒に種芋を植えよう! ・ 生命を孕んだ幾つもの畝が山脈となって早春の白い光に耀いています。 |
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土筆と葉の出た座禅草 「座禅草は未だ咲いているのかしら?」 とえこちゃんが云うのでのんびりと出かけました。 あちこちの畦道には土筆が顔を出し菫が群がって花開き、マイナス6度なんてどこ吹く風。 どんなに風が冷たくても生命は春が来たことを知っているんだ。 ・ やっぱり座禅草も萌黄の葉を誇らしげに輝かせて、紫黒色の仏焔苞は萎びてしょんぼり。 |
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作品棚の引越し 森を切り拓いて折角作ったログの庭が寂しがっていたので、先ずテーブルを作ってあげました。 なにしろ森には伐採された木がごろごろしてるのでそいつを拾ってきて チェーンソウで切断してテーブルの脚を作りました。 その上に合板を乗せてテーブルの出来あがり。さて何に使おうか? そうだ、晴れた日にはここで土を練って陶芸作品の制作なんて悪くないな。 ・ 忘れ去られた陶房の上にあった作品棚を移動させて、これで屋外アトリエの完成。 昔々の未熟作品が久しぶりに光を浴びて眩しそう。 |
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老松紳士と老鹿の死 老紳士と呼んでいた大きな赤松がついに倒れた。 パイプを燻らせた老紳士の風格を漂わせ、上条山の稜線に君臨していた巨木。 随分たくさんの枯枝が張り出しているけれど、その1本1本に色々な想い出がぎっしり詰まっているんだろうね。 ・ 枯枝を咥えて悠絽、さては老紳士の想い出を聴きだそうとしているんだな。 と思ったが良く観ると、どうやら鹿の骨。 その鹿も老いていて巨木の倒れる日にこの山にやって来て、老紳士の最後の話を聴いたのだろうか。 そしてめりめりと呻吟しながら倒壊する巨木と共に老いた鹿も息絶えたのだろうか? |
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各部屋に咲き乱れる蘭・クリビア カリストのドアを開けた途端、艶やかな光が炸裂した。 艶やかと相反するような炸裂以外に、捉えようの無い不意な光の氾濫。 その光の彼方に広がる大地がカンバスとなって光の氾濫を形而下に成形する。 ・ こんな風に1億5千万Kmの旅人を捉えクリビアは花開くんだね。 2階の書斎もイオの部屋も浴室もクリビアの太陽に満たされ、ドアを開く瞬間が堪らない。 この胸のときめきは太陽との秘かな逢い引き。 ・ 光の氾濫を形而下に成形する大地との、触れ合いを重ねて16年。 それは太陽を求める旅でもあったのだろう。 |
bP1モスクワの地下鉄1号線はスポーツホテルから |
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☆ 3月29日:モスクワ地下鉄の2つの駅で女性の自爆テロ。38人死亡。
☆ 3月31日:ロシア南部・北カフカス連邦管区のダゲスタン共和国キズリャルで2度の連続爆弾テロ。警察官12人が死亡。
題名:海市 著者:成田紫野 発行所:文学の森 |
女性俳人精華50 | 発行日:2010年4月6日 定価:2600円 読書期間:3月31〜4月1日 |
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海市とは | ||
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逝きし子を追う | ||
夢の距離 |
甲斐駒岳に | ||
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逝きし子に降る | ||
涅槃雪 |
紫野さんへ
煩悩の彼方に絶対的な静寂を求めた釈尊入滅の涅槃会、陰暦2月15日、その4日前の2月11日だったんですね。
泰樹君が夭逝した14年前のその日、山荘にも隊員が集い氷壁登攀で汗を流し
次のヒマラヤ計画に向けて語らっていました。
隊員達を塩山駅まで送り山荘に戻り、初めて留守電に記録された《泰樹遭難!》の第一報を知り、
帰京した隊員を急遽呼び戻し甲斐駒の遭難現場に駆けつけたのが12日早朝。
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《涅槃雪》の3文字に深く心を抉られました。
若しかすると嘗て誰かが使用した言葉かも知れないとも思いましたが、何度か読み返すうちに
これは紫野さんの生み出した措辞に違いないと確信しました。
そう思うと《涅槃雪》に辿りつくまでの紫野さんの慟哭が、激しく胸に迫り涙せずに居られませんでした。
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決して縮めることのできない海市との距離も切なく心を打ちます。
彼岸の彼方に去った海市の泰樹君が深くご両親を想っていたのを知っていただけに、
その絶望的なまでの距離がとめどない哀しみの波紋を広げます。
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先ず第2章の涅槃雪から読み出し、3章惜春で
朧かな森のトトロの目を覚ます
に出逢い1章初桜に戻り、紫野さんが泰樹君を身ごもっている時の句
胎児はやショパン好きらし水中花
に到り思わず微笑んでしまいました。
4章花浄土、5章鵙高音、6章恋の歌留多、7章遠蜩,8章海外詠から成る句集のいずれにも泰樹君の影が投影され
紫野さんの想いが滲みます。
お礼が遅れましたが贈呈していただきありがとうございました。他の隊員にも読んでもらおうと思ってます。
ご自愛のほどを。
《ゆぴてる》がそうなのです。
心魅かれる木星が山荘のタイトルになることは山荘構想の未必の故意でした。
だが勿論、木星やJupiterでは構想している山荘とは明らかな乖離があり、その奥に密やかに息づく
心象風景に迫る1枚の言の葉が欲しかったのです。
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ふとその時Jupiterをローマ字読みしてみたのです。《ゆぴてる》・・・
未だ嘗て聴いたことの無い優しい響き。
紛れもなくその1枚の言の葉は私自身が生み出し、これから山荘で創り出すであろう世界を意味するものでした。
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同時に既に《ゆぴてる》と云う言葉が世界のどこかに存在しているだろうとの予感はありました。
考えてみればJupiterは本来ラテン語であってラテン語の読みでは《ゆぴてる》であると
容易に気付くべきでしたが、無知の為せる業で創造の歓びに暫し浸りました。
知らなかったが故に確かに初めて《ゆぴてる》と読んだ瞬間の言の葉との出逢いは鮮烈でした。
本人にとってそれは正に新たなる言の葉の創造であったのです。
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<涅槃雪>も紫野さんにとって
泰樹君と甲斐駒に降る雪を結びつける言の葉の創造だったのだと確信したかったのでしょう。
従っていつもなら文章を載せる前に必ず調べる作業を敢えて省いたのです。
そのままにそっとしておきたい気持ちが何処かで紫野さんに通ずるような気さえしたのです。
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しかしやはり《ゆぴてる》と同じように調べてみれば<涅槃雪>も広く知られた言葉であり俳句の季語だったのですね。
それにしても煩悩の彼方に追い求めた絶対的な静寂と雪を結び着けるなんて・・・
初めてその言葉を使った人の鋭い感性に心うたれます。
で、紫野さんも長年俳人として活躍しているので当然季語としての<涅槃雪>を知らぬ筈はありません。
紫野さんからこんな返信が届きました。
早速のお便り嬉しく拝見いたしました。
坂原さんの相変わらずの達文に感心しながら読ませていただきました。
ただ涅槃雪は私の造語ではなく季語「涅槃会」の派生の季語の1つとして季語集に載っております。
他に涅槃像、涅槃会、寝釈迦、涅槃寺、涅槃粥、涅槃光などもそうです。
俳句は今も続けていてよかったと思っております。
泰樹も喜んでくれていると思います。