山荘日記

その50冬ー2010年睦月

 

1月1週・・・・変革可能な視点で





1月1日(金)晴 山荘ゲート
謹賀新年
花梨の手作り松飾り

裏の竹林から竹を伐り出して
松は山荘の森に
幾らでも生えているから
枝ぶりの良いのを選んでと・・

蜜柑の代わりに
その辺にごろごろ転がっている
花梨を使って
しめ縄は芒の枯れ茎で
編んでもいいけど
時間がかかりそうだから・・
そうだこれだけ百円ショップで
買ってきてと
組み立ててみたら
ほら!ご覧の通り。

即完成した正月の松飾り
我ながら感心!
どうして今まで松飾り
買ってきて胡麻化していたの?
と云ってみたくなるほど。

初めからこんなもん
自分には出来る訳ないとの
先入観が最大の敵で
あると知っているのに又々
その先入観に陥っていたんだ。

よしこれから学んで
年頭にあたっての所感は
《先入観を捨て
変革可能な視点で
自らを厳しく検証せよ》
にでもするか?



本年の初山歩き
いざ、南アルプス前衛峰へ


カーナビが壊れているので
急いでPCから
櫛形山までの道路地図を
取り出して
ゲートに向かうと
登山の気配を察して2頭は
憂いに沈んだ目で
彼方を見つめています。

いつもなら大喜びで
興奮してはしゃぎ廻って
いるのにどうやら
今日の登山が大変だと
察しているようです。

さすが勘がいいな。
今日は本格的冬山なんだ。
でも12月に計画した
八ヶ岳のテント合宿はやめて
易しい日帰りの
南アルプス前衛峰に
変更したから
どうってことないさ。

ほら小倉山頂から
よく見えるあの櫛形山さ。

1月1日(金)晴 山荘ゲート
 



ブリザードの櫛形山2052m





1月1日(金)晴 丸山林道(標高1208m)
南アルプス前衛峰へ
長ーい林道歩き

千頭星山(2139m)
を初山歩きに選んだが
林道が閉鎖されているとの
地元情報。
そこで櫛形山の丸山林道は
どうかと甲府の
タクシー会社に問い合わせ。

池の茶屋林道まで
車で入れるとの返事。
半信半疑ながら信じて出発。
ところがどうだ。
池の茶屋どころかその
遙か手前、櫛形山林道分岐で
通行止め。

この長ーい往復16㎞もある
林道を歩いて
櫛形山を日帰りするなんて
とてもハードな話。

でも引き返すなんて
立てたばかりの
元旦の決意《変革の可能性》
を早々に捨てるようなもの。
ただ前進あるのみ。
   


寒波襲来
登山者の姿なし


寒波襲来で山は大荒れ。
奥穂高で3人遭難死。
聖岳で2名ヘリにて救助、1名
が死体で発見されるも
収容出来ず。

寺地山で動けず7人から
救助要請、更に
尾瀬で1人行方不明と
遭難が続くことになる寒波が
ここ櫛形山にも襲来。

標高1600m辺りから
森や登山道は
雪と氷に覆われ人の影無し。
避難小屋も雪の中。

この初めての深い雪を
舞瑠は実に優美な
動きでラッセルするのである。
リードを解くと
弧を描いてジャンプし
喜々としてラッセルする。

1月1日(金)晴 避難小屋(標高1860m)



 
1月1日(金)晴 稜線直下の森
雪嵐の前の静けさ
櫛形山頂は近し


日没前に車の置いてある
林道登山口まで
戻らねばならない。
その為には長い林道を飛ばし
時間を稼ぐしかない。

休まず速いペースで
登り続け稜線直下の森に
出たが村上は遅れ
最早姿は見えない。

しかしラッセルの跡は
明瞭なので
吹雪に消されない限り
迷うことはないだろう。
ピッチを上げて舞瑠と
稜線を目指す。

雪雲と風花を通して
寒々とした陽射しが僅かに
差し込む森で
風が怒号を始める。
   


間歇ブリザード
飛ばされそうになる舞瑠

稜線に飛び出した途端
風が激しい圧力の
塊となって襲いかかる。

リードに結ばれた
舞瑠の身体が一瞬
浮き上がる。
氷の粒を孕んだ白い
風の渦が黒い舞瑠を包み
稜線から
引き剥がさんと荒れ狂う。

次の瞬間、はたと風は止み
不気味な静寂が訪れ
再び地と天から
雪が舞いあがり風が唸る。

飛ばされないよう
舞瑠をしっかり導標に結び
風の静まりを待って
写真を撮る。

1月1日(金)晴 櫛形山頂稜線(標高2052m)



 
1月1日(金)晴 櫛形山頂稜線
 凍りつく犬の顔
氷の粒に覆われる舞瑠

それにしても犬は凄い。

ブリザードに備え
こちとらはダウンのベストを
着て更にゴアの
ウィンドヤッケを着こんで
それでも寒いのに
犬は素足、手袋無しで
勿論ウィンドヤッケなんて
着ないで云わば
素っ裸でこの寒さに
耐えているのだ。

現地点での気温はー17℃。
瞬間最大風速は
20m/秒を超えている。
風速1m/秒につき
体感温度は1℃下がる。
従って現在の体感温度は
ー30℃を超えている。

寒いより鋭い痛みとなって
犬に襲いかかっている筈の
寒気に舞瑠は平然と
耐えているように見える。

顔は硬い氷の粒に
覆われながらも
飛雪に叩かれる度に
目を閉じ初めて体験する
ブリザードと闘っている。
   



繰り返す死闘
山荘での支配順位争い


未熟なチビとオバマには
-30℃の寒気は
とても耐えられない。

森人の犬小屋の地面に
穴を掘って抜け出し
山荘にやって来たが
櫛形山に連れて行く訳には
いかない。

山荘ゲートに駆けつけ
舞瑠、悠絽と一緒に
車に乗り込もうとしたが
敢えて山荘に置き去りに。

山荘に戻ったら
遙か離れた森人の家から
再び跳んで来て
2頭の先陣争いが始まる。

山荘ではオバマは
チビの支配下にあったが
どうやら下剋上を企み
山荘でのボスの地位を
狙っているらしい。

1月3日(日)晴 山荘奥庭



 
1月3日(日)晴 山荘奥庭
血に染まるチビ
オバマとチビの闘い


悠絽、舞瑠には一目置いて
チビもオバマも
いそいそと2頭に従い
4頭で仲良くやっている。

だがチビ、オバマの2頭に
なるとチビはオバマを
威喝する。
チビが食べ終わるまでは
オバマは餌も遠慮し
びくびくしていたのだが
ついに反逆を開始。

つい1か月前までは
甘咬みしてじゃれあって
いた2頭とはとても
思えない激しい咬みあいで
チビもオバマも
血みどろになってしまった。

さてさてこの先どう決着が
つくのか?未だ暫く
激しいバトルは続きそう。
   



初日を浴びる4頭
初山トレーニング

たわわに実っている
野生のキウイが見捨てられ
勿体無いので昨朝
4頭を引き連れ収穫に行った。

従って本年初めての
山荘での山トレーニングは
3日の今朝が初日。
初山頂を何処にするか
左耳を裂かれ血の
滴るオバマに聴いたら
鉄塔山に向かって「ワン」

そこで鉄塔山に向かったが
その途中でも
激しく2頭は咬みあい
更に脚から出血。

それでもびっこをひきひき
脚の傷を舐めながら
2頭は山頂に立ちました。

悠絽、舞瑠はバイクで
山荘主と一緒に
賀状の返信をポストに投函。
その後
鉄塔山に駆けつけ
4頭揃って初日を仰ぎました。

1月3日(日)晴 鉄塔山頂



 
1月3日(日)晴 山荘書斎
 早くも咲き出す蘭
忍び寄る春の気配

あんまり陽当たりが
よくってかたばみまで
生えてきたけど
書斎は
暖かくて気分いいので
もう咲き出しました。

早すぎるって!
実は秋から蕾を付けて
待っていたんだ。
奥庭の石楠花さんも
春を待たずに
もう咲いているんだよ。

左にマウスが覗いて
右はテラスの床かな?
この机で山荘主はいつも
HPを書いているんだな。
ちょっとマウスを押して
君子蘭のページ
出してみようかな。
おや、やっぱ咲くのは3月
なんだね。
   



 通い続けたパキスタンで元日早々痛ましいテロ。
98人も死んだのに既に悲劇は日常化され
新聞記事も小さな扱いでしかない。
我々の登山装備を預けてあるイスラマバードの
今週のBigニュース №1
督永さんは無事だろうか?

 
 1月01日:パキスタンでテロ。バレーボール試合会場で自爆テロで98人死亡。
☆ 1月02日:壁に穴 銀座で高級時計盗む。3億円の被害。
☆ 1月03日:年末年始に寒波襲来で冬山遭難。奥穂などで死者、行方不明6人。 






 

1月2週・・・・生きて在る歓び





初雪の朝焼富士
うっすらと初雪


そして、そのとき
窓の外のやや下方に
富士山が見えたのです。
とても近くでした。
・・・
怖いです。怖かったです。
思いださせないでくださいもう。
思いだしたくない恐怖です。
お客様はもう声もでなかった。
私も、これはもう死ぬ
と思った。
まっすぐ落ちていきました。
(生存者・落合由美)

25年前のその日
日航事故機JAL123便は
山荘上空を迷走し
山荘北側に位置する
破風山北側・御巣鷹山に激突。
520名死亡4名救出。

昨夜、今話題の映画原作
「沈まぬ太陽」の3巻
《御巣鷹山編》を読み眠る。
夢の中でずたずたに
引き裂かれた乗客の内蔵と
血に染まった富士に
うなされ浅い眠り。


1月9日(土)晴 2階テラスから

寝室のカーテンを開けた途端に飛び込んできた赤い富士。
雪の気配が全く無かったので突然の初雪にも
驚いたが、昨夜の夢と相まって赤い富士には慄然とさせられた。
まさかあの日の事故機が山荘上空を飛び山荘北側の
破風山近くに墜落したとは知らなかった。
あの時私はインドカシミールの最高峰ヌン(7135mに居たのだ。



 
1月9日(土)晴 ログ屋根 
待っている2頭
またまたやって来た


そして一瞬の登頂。
時間が鮮烈に存在感を
浮き彫りにする
稠密な一刻であり
そこには確かに生きている
ことへの素朴な
感動がありました。
(報告書・ヌン峰より)

事故は8月12日
ヌンに登頂したのは3日後の
8月15日である。

帰りのキャラバン途中で
ポーターから初めて
事故を聴いた時の驚愕が
鮮やかに浮かぶ。

そんな山荘主の25年前の
追想なんぞ感知せず
早く雪の散歩に出かけたくて
オバマもチビも
こちらをじーっと見つめて
唯待っています。
   


雪と枯葉に埋もれ
何だかたいへんそう!

20㍑の重い石油タンクを
車のトランクから5つ
どっこいしょとおろすと
鳴き声も立てず
オバマが「おかえり!」と
云わんばかりに
ヌーと出迎えてくれる。

リードに繋がれて奥庭に
居るチビは
前庭には来られないが
逸早く気配を察して
くんくんと鼻を鳴らしている。

もうすっかり山荘の犬に
なって金曜日には
必ずお迎えに来るのだ。

目的は勿論森の散歩。
雪の森に連れだすと
チビは野生の本能を剥き出し
獲物の臭いを追って追跡。
オバマはチビに付いて
野生の見習い中。

1月9日(土)晴 扇山の登り



 
1月9日(土)晴 北の森
 森の中は雪無し
朝日を浴びて


暗い森に朝一番の
朝日が差し込む。
小倉山の水晶峠から
真っ赤な坊主頭が
僅かに昇ると
明暗だけの森は瞬時に
彩を取り戻す。

光がチビのクリーム色の
むく毛を貫き
枯葉を目覚めさせ
凍てついた大気を暖める。

チビが野生動物の気配を
キャッチすると
鈍なオバマが真似して
森の奥を見つめる。

「耳の立てる方角が
間違っているな。
もう少し右方向だぞ」
とでも言いたげなチビ。
   



夜明けの雪原
1月10日(日)晴 座禅峠

翌日も未だ日陰の雪は残っていました。
寒々とした森に最初の光が差し込む瞬間を犬と共に今朝も共有出来た歓び。
チビは懸命にリードを引いてその歓びを表しています。
オバマは果してこれは歓びだろうかと思案しているような・・・
オバマ、生きて活動出来ることがどんなに大きな歓びであるか
日航機事故生存者の落合由美さんに訊いてごらんよ。

その日航が25年を経て本日(1月12日)事実上の死を迎えた。
170円前後で取引されていた日航株は
ストップ安の37円(翌13日には7円)に下落した。
今後、日航は会社更生法を申請し7千億円の債権をカットしてもらい
企業再生支援機構や日本政策投資銀行から総額1兆450億円の
出資、融資を受けるとの法的整理に向けて歩み始めた。

日航事故の遺族・美谷島邦子さんは「安全問題を置き去りにしないでほしい」
とする要望書をこの日(12日)前原国土交通省大臣に提出した。


今週のCinema №1 沈まぬ太陽
                             於シネマ・ロサ
                           
 1月14日
                               評価:★★★☆☆

こうなったら豊子へのオマージュとして
是が非でも映画も観ねば・・・。
メディアに顔を見せなくなって久しいが先日TVで
車椅子に乗って大阪から出てきた85歳の山崎豊子が姿を見せ
老いても尚健在ぶりを示した。
さて目白周辺では、おっ!シネマ・ロサで上映中だな。
早速観に行こう。

観てきました。
緻密に描き上げた全5巻の「沈まぬ太陽」を3時間半の
映画に凝縮した無理があり
筋が荒くなり人間描写が不自然。

3巻
(御巣鷹山扁)をコアにしてドラマを進行させ
キャストも錚々たる顔ぶれで充分愉しめる内容ではあるが
人間が描ききれていない。
原作を超えられなかったな。



映画名:沈まぬ太陽

制作国:日本
(配給東宝)
監督:若松節朗
製作:角川歴彦
製作費:28億円
上映時間:3時間22分
受賞:
渡辺謙は第34回報知映画賞・作品賞 主演男優賞。
三浦友和は第22回日刊スポーツ映画大賞助演男優賞



沈まぬ太陽を追って
山崎豊子

最初の出逢いは
「白い巨塔」であった。
有無を云わせず
強烈に惹き付ける文体と
鋭い社会性で
大学病院の腐敗を抉り
山崎豊子は
華々しく私の書架にデビュー。

以後「華麗なる一族」
「不毛地帯」・・と読みあさった。
毎日新聞学芸部勤務時代は
副部長の井上靖の部下と
して訓練を受け
作家として開眼していく。


《参考とした資料を
ほとんど脚色せず作品に
反映させたため
盗作との指摘を資料の
執筆者から何度も
受けている》

との批判に怯まず
日本文芸家協会から
脱退し孤高を貫く。
「沈まぬ太陽」もJALをNALと
して御巣鷹山事故を
そのまま再現させた。


1月9日(土)晴 扇峠

「沈まぬ太陽」は昨年10月に映画が公開された。
日航は内情暴露に怒り遺族を盾に取り
即以下の反論を社内報で開始。


「作り話で商業的利益を得ようとする行為は
遺族への配慮が欠けている」と批判しており
法的な訴えも辞さない姿勢を見せている。 (Wikipedia)



今週のLivre №1 沈まぬ太陽                          
著者:山崎豊子
出版社:新潮社
発行日:2002年1月1日

定価:各巻590円+税(文庫
読書期間:1月10~17日
評価:★★★☆☆

白い巨塔と同じく5巻まである長編なのでとても読み切れないと云う人には
3巻の御巣鷹山扁がお勧めである。
この巻に限って評価するなら★は4つ以上といってもいい。


85歳・山崎豊子は語る
根底に「不条理許せない」・・・2010年1月18日(月)朝日朝刊

自分の血で描いているという思いがあります。
社会派作家と呼ばれますが、弱い立場の人を見過ごせない
不条理を許せないという、女の子なのに”小坊ちゃん”と呼ばれていた頃の
やんちゃな性格がもとになっているのです。


山崎豊子の他の主な作品
暖簾、白い巨塔、華麗なる一族、不毛地帯、二つの祖国・・・



今週のBigニュース
№2
汚職で逮捕された《時の権力者 田中角栄、金丸信》に仕え
金と権力操作に溺れる小沢が民主党に
居る限り政権交代の成果は期待出来ない。
何故なら
金権政治の小沢は自民党そのものだからである。

13億4千万の人権を踏みにじり軍備拡張に努め
汚染物質を垂れ流し、環境破壊しつつ経済発展を遂げ
ついに世界のトップに躍り出た中国。
13億の爆発の日は目前に迫っているのかも・・
   
 ☆ 1月05日:中国が新車販売で世界1位。2009年の販売台数1223万台。
 ☆ 1月06日:政権交代後初めての閣僚辞任。小沢絡みか?財務相後任に菅直人副総理





 

1月3週・・・野生・雪への回帰




 
雪のお風呂大好き! 
1月16日(土)晴 扇山頂-9℃の朝

まるで海に飛び込むように大きくジャンプして雪に突っ込んだものだから
雪原は華々しく雪飛沫(ゆきしぶき)を上げ
飛沫の1つ1つが朝の光を浴びてそれはそれは美しく輝きました。

雪の頂で舞い上がる白銀の宝石に出逢ったので
なんだか嬉しくて
スキップしながら森を下りました。






 
1月16日(土)晴 扇山頂 
何でも咬んじゃう
リードもずたずた


あの日、犬小屋のリードを
咬み切ったのは
別に逃げ出したい訳では
なかったのだ。
ただそこに咬み易い紐が
あったから
ぐんぐん延びて来る牙を
試してみたかったんだ。

雪の中から小枝を見つけ
ばきばきと咬み砕き
「なんだ、簡単に折れちゃって
つまんない」とばかり
次はリードに挑戦。

登山用のザイルは
そう簡単に
咬み千切れはしないが
犬小屋で一晩中
咬み続けられればザイルも
そりゃ切れてしまうな。
   


あー気持ち良かった
雪まみれのチビ

どうですこの顔。
狼のように牙を?いて
雪に飛び込んだり
リードを咬み切ろうとしたり
していたかと思えば
次の瞬間にはつぶらな瞳で
「もっと雪の沢山ある
高い山に行きたいな」と
云わんばかり。

雪深い森でラッセルする
舞瑠の美しき技に
感嘆したがチビも舞瑠に
勝るとも劣らず
実に優美なジャンプを披露。

背を弓のように撓らせ
大きくジャンプし
深い雪の上を飛んで行く。
寒がりの舞瑠よりも
雪大好きのチビの方が
冬山には向いているのかな。

1月16日(土)晴 扇山頂 



 
1月16日(土)晴 扇山頂
森の後ろに雪山が
南アルプスの白銀の輝き


森に入るとチビは
俊敏な狼の如きハンターに
見事変身する。

雪に鼻を突っ込み
野生動物の気配を追う。
脇目もふらずにセンサーの
総てを総動員し
雪を蹴立てて疾駆するのだ。

そんなに森が好きなら勝手に
山荘の庭から
出かければいいのに
リードを外していても
庭から出ない。
偶にふらりと出かけても
直ぐ戻って来る。

いつでも森人の家に
帰れるよう繋がずにおいても
さっぱり還る様子もない。
どうももうここが
自分の週末の家と
信じているらしい。
   



さあ散歩は終わり
もっともっと走りたい!

もしかするとチビも
オバマも予想外に賢くて
曜日を理解してる
可能性が充分にあるな。

金曜午後に山荘ゲートを
越えると必ず
この2頭が出迎えるのだ。
「今日は!」でも
「いらっしゃい!」でもなく
山荘主がこの時間に
来るのは当然と云う
顔をしてぬーと現れるのだ。

今週は悠絽と舞瑠を
連れて来る予定であったが
既に2頭が来ているので
犬小屋は空けられない。

「でも来週こそ悠絽と舞瑠が
優先だから金曜に
来ては行けないよ。」
と散歩の終わったチビに
話しかけたが知らん顔。

1月17日(日)晴 山荘の森出口



 
1月16日(土)晴 西の森
 雪谷と森の軌跡
朝日を浴びて


《ペレルマンが興味を
持ったのは物理的な
宇宙の形などでは
断じてなかったし、その中で
暮らす人間でもなかった》
(尾関章の書評より)

数学界最高の栄誉
フィールズ賞(2006年)
辞退し巨額な懸賞金や
有力大学のポストも
受け入れず
知の孤独に生の自由を
求めたあの
グリゴーリー・ペレルマンだ。

ペレルマンの心象風景には
きっと犬さえ居ないのだ。
にも関わらず
この「雪谷と森の軌跡」には
100万㌦を拒否した
天才数学者
ペレルマンの気配が在る。

そのペレルマンを描いた
「完全なる証明」と題した
ドキュメンタリーが出版された。
読めば森とベレルマンを
結ぶ透明な絆が
見つかるだろうか?。
   



野焼きして開墾
あわや山火事に!

とても慎重にやったのだ。
先ずホースで水を引き
バケツを用意し
消火態勢を整え
延焼を防ぐために林檎畑の
ぐるりの草を刈って
防火帯をつくった。

次に 風の向きを確かめ
風下から小区間に区切って
枯れ草に着火。
とても巧く野焼きは進み
ほっと一息。

ところが突然林檎畑の
真下から火の手が
上がったのだ。
2mのコンクリートの壁と
舗装道路に何故炎が?

と思う間も無く炎は
山荘の森に迫る。
焦ったな!
炎に飛び込んで足で炎を
踏み消しどうにか
延焼をストップ。
いやー危なかったな。

1月16日(土)晴 山荘林檎畑

もし山火事になったら山荘も燃えてしまい今はもう
何も残っていなかったかも・・・。



 今週のBigニュース
№3
 17日の阪神・淡路大震災の追悼式2日前に
カリブ海に浮かぶ小さな島国ハイチを
M7の地震が襲った。
15年前の阪神・淡路地震の10倍以上の死者が確認され
更に死者20万人に達するとの報道もある。

なんの予告も無しにやって来る自らの終焉を敢えて甘受するなら
今在るこの一瞬を大切にするしかないのだろう。
 

 ☆ 1月12日:ハイチでM7地震発生、死者7万人を越える。(その後2月には埋葬出来た死者だけでも23万人)
 ☆ 1月15日:小沢氏の元私設秘書で民主党衆院議員の石川知裕容疑者を逮捕。4億円の不透明な資金は?
 ☆ 1月19日:日本航空(JAL)会社更生法の適用を東京地裁に申請。






 

1月4週・・・・追想・陽だまりの山顛







 
1月24日(日)晴 滑沢山登山口 

仕方なく4頭を引き連れてバイクに繋ぎトレーニング開始。
山荘から坂脇峠まで標高差500m、距離8kmと
かなりハードな林道をバイクで走り登り
その後道なき道を登り滑沢山を目指すことにした。
4頭立てバイク疾走
標高差5百m8kmを走り登る

もう興奮して凄いパワー。
いつもは時速20kmで
塩山駅近くから
山荘までの登坂路を疾駆するが
今日は5kmアップ。
つまり時速25kmを維持し
登り続けるのだ。

3週間も山荘に来ていない
悠絽と舞瑠が
どんなにか山荘活動を
願っていたかその意気込みが
時速25kmに
顕れているのだ。

先週はチビとオバマが山荘に
先にやってきて
犬小屋を占拠したので
今週こそ悠絽と舞瑠を呼んで
活動させてやらねば。

2頭の犬には来週は
「金曜日に来てはいけないよ」
と云っておいたし
と思ったが甘かった。
山荘に着いたら
森人の家から脱走した2頭が
悠絽と舞瑠をお出迎え。
あーあー
又4頭になっちゃった。

   


獲物発見!
むむむ・・何のほねだ!

それもその前に
山荘から扇山のP2を登り
更に北峠を越えて
鉄塔峠まで朝トレーニング
した直後。

充分疲れているから
チビやオバマには
バイク走行は無理かもね。
以前の悠絽や舞瑠のように
肉球が剥けて
出血し動けなくなるかも。

そうなる前にバテたら
リードを離し追い返そう。
悠絽や舞瑠には
とても敵わないと諦めて
森人の家に
帰るであろう。

おや鉄塔山の森で
何か見つけたぞ。

1月24日(日)晴 鉄塔山の森  



 
1月24日(日)晴 鉄塔の森

ほんの一瞬の不注意が人影の絶えた原始の森では
致命的となり死に直結するのだ。
鹿の骨だ!
襲ったのは誰だろう


おー鹿の膝の関節が
剥き出しになって
食い千切られているでは。

どうしたのだろう?
この辺では大型の鹿を
襲って食う奴は居ないし。
・・・
膝を岩にぶつけ
膝蓋骨を折ってしまい
走れなくなったのだろうか。

動けぬ鹿に近づいた狐が
先ず最初、喉に
食いつき息の根を止める。
血の臭いを嗅ぎつけ
やがてや狸、オコジョなどの
森の肉食獣が次々に
やって来て食い漁り
脚だけが残されたのか。

人の来ないこの森で
同じように膝蓋骨を折って
動けなくなったら
人間だって森の動物に
食われてしまうのだろう。
   



動物のオアシス
雪をむさぼり喰う

ザックには犬用の水と
携帯電話を持っていないので
代わりのトランシーバーを
入れてある。
一瞬の不注意で簡単に
死ぬわけにはいかない。

もし骨折して動けなくなったら
あの日のように
周波数を次々変えて交信し
救助を求めるしかない。

ハードな疾駆に耐えて
一気にここまで
登りつめてきたので
そろそろ水をやろうかと
思ったが森影に雪。
犬達は夢中で雪を貪り食う。

野生動物は谷まで
下らないと水を呑めない。
しかし雪があれば
渇きを癒すことが出来る。
残された足跡が
ここがオアシスであると
示しているのだ。

1月24日(日)晴 滑沢稜線




陽だまりの滑沢山
1292m




 
1月24日(日)晴 滑沢山頂

《あの日のように》と云うのは19年前・1991年3月の
この北アルプス明神岳東稜登攀後の
遭難事故のことである。

北穂で合流予定の槍ケ岳硫黄尾根隊を呼び出し
東京の留守本部に連絡し第一次救助隊を出動させ翌朝
我々も奥穂南壁下部にあたる岳沢に向かう。


確かここが滑沢山の頂の筈なのだがと辺りを探すと
枯葉に埋もれ朽ちかけた白い三角点測量標を発見。
更にひん曲がったブリキに墨書されたらしき頂標《滑沢山》も出てきた。
穴が空いているので木に巻きつけてあるピンクテープを剥がし
穴に通し頂標として甦らせる。
さあ、これで山頂らしくなったぞ!
 探し出した頂標
朽ちた三角点標


雪が最も多くなり
登山者が全く絶える
3月の北アルプス明神岳。
悪天下の東稜を登攀し
明神山頂に立ち
奥明神沢コルでザイルを解く。

アンザイレンから解放され
前穂から奥穂高へと
早いピッチでラッセル。
17時50分奥穂岳山頂。

漆黒の闇に閉ざされる前に
何とか
奥穂の避難小屋に
潜り込めるかと思った瞬間
新人の新井が
「あっ!」との叫びを残し
奥穂南壁に墜落。

闇での捜索は不可能。
トランシーバーで周波数を
小刻みに変えて
数十本のSOSを発信。
15360MHZで
SOSがキャッチされた。

我々の電波をキャッチした
ハム仲間に県警へのヘリでの
救助要請と東京の
留守本部への連絡を依頼。

事故発生の為暫く
15360MHZを使わせて
もらう旨を無線家に詫び
夜中まで交信を続ける。
   


僕1292m
それじゃ僕が頂に

奇跡が起こったのだ。
標高差千m近くを滑落し
新井は生還したのだ。

絶望は瞬時に歓喜となり
激情の波に襲われる。
今から1時間前の
9時14分に新井はヘリに
よってピックアップされた。

事故発生から僅か
15時間で救出作戦は
成功したのだ。

「低空飛行で梓川を
這うようにしてやって来た
へリコプターは
出現した次の瞬間には
私の横に着地した」
(報告書POBEDA 1991より)

こうして私と岩本もヘリで
豊科の日赤病院に運ばれ
生還した新井に再会。
元気な口調で
新井はこう語った。

「クラストした雪を
踏み破り足を抜こうとして
バランスを崩し転倒。
そのまま滑落し意識を失って
しまったんです」

1月24日(日)晴 滑沢山頂

「ふんふん、それでその後どうしたの?」
頂標を付けてもらった舞瑠がその先も話してと
せがむように吼えるので、それじゃもう少しだけ・・・




 
1月24日(日)晴 滑沢山頂

どれその頂標を首から外してごらん。
この山頂はほとんど来る人が居ないので本当は頂標なんて
要らないんだ。
けどきっと名も無い静かな山が大好きな人が心を込めて
折角作った頂標だからもっと目立つ位置に
付けてあげよう。
 さあ、ここが山頂だ
朝登った鉄塔山が下に


その後が凄いのである。

全身の打撲複雑骨折で
一命を取り留めた遭難者を
家族に引き渡してから
当会の隊員達は
急遽登攀チームを編成。

不要になった東京からの
救助隊はそのまま
前穂高の北尾根に入り登攀。
坂原は単独で乗鞍岳を超え
新穂高に入り西穂へと
更に北アルプスでの登山を
続けたのだ。

中島修をヒマラヤで失った
直後であっただけに
新井の奇跡の生還に修の霊を
感じ修と登った穂高に
詣でたのである。


《奇跡は天空の意思によって
演出されたのかも知れない。
より苛酷な条件下で
ヒマラヤの絶頂を
追い続けるスビダーニェ同人の
理性はここ暫く
天空の中島修が
追い続けるであろう》
(報告書POBEDA 1991より)
   





 
追想・陽だまりの山顛
1月24日(日)晴 滑沢山頂

ふかふかの枯葉の絨毯にどっかり腰を降ろして
温くとい陽だまりにたっぷり浸かって、大好きな愛犬2頭を抱いて、とても幸せそうなのに
どうしてそんな寂しい表情をしているの?

そういえば山に登っている山荘主の顔はいつも沈んでいるね。
好んで登っている山なのにどうして笑顔がないのだろうと不思議に思っていたけど
きっとヒマラヤ計画で失った7人の隊員がいつも脳裏に去来しているんだね。

なんだか悠絽も舞瑠もしーんとして暗い顔をしています。




今週のCinema アバター
               
№2              於シネマ・サンシャイン
                           
 1月28日
                          評価:★★★★★

もの凄い映画である。
先ず、煌びやかな珊瑚海に棲む生命と共に未知衛星に漂っている自分に気づく。
多数の放射管を靡かせて海月が目の前に現れ
その背景となる広大な空には2つの衛星を従えた木星型惑星の大赤斑が浮く。

未知衛星の森に地球珊瑚海のディフォルメされた華麗な生命をふんだんに嵌めこみ
極限の生命美を描きつつドラマは進行する。
パラグライダーで空を翔けスキューバ・ダイビングで自在に海を舞った者なら
自らアバターになって3次元映像の世界に
何の違和感も無く溶け込んでいることに驚愕するであろう。

2010年1月、台湾で『アバター』を観た42歳の男性が興奮し脳卒中で死に
中国各地で当局が行っている宅地の強制収用に対する反発をあおる事態を恐れ
中国の国家ラジオ・映画・テレビ総局は『アバター』を
「孔子」に差し替える通達を出したと云う。

究極の生命美の中で進行する、人間性や自然環境の本質を問う
オーソドックスな物語が1人の男を感動の極致に追いやり
1つの国家権力を震えあがらせた。
正しく映画史に於けるエポック・メーキングである。




映画名:アバター(原題Avatar)
制作国:アメリカ(配給20世紀フォックス)
制作費:2億3700万$(約210億円)
興行収入(約1ヵ月後):18億5900万$(約1673億円)
収益率:8.0倍
公開日:2009年12月23日(日本)
監督・製作:ジェームズ・キャメロン
キャメロンの主な作品:「ターミネーター2」、「タイタニック」等
出演者:サム・ワーシントン、ゾーイ・サルダナ、シガニー・ウィーバー
上映時間:2時間42分
受賞:第67回ゴールデン・グローブ賞・作品賞&監督賞




アバターは山荘スピリット

「アバター」の映像は山荘に籠められたスピリットそのものなのだ。
木星と名付けられた山荘の各部屋には
木星の衛星名が付けられ、部屋の大型油絵が「アバター」の世界を彷彿とさせる。
更に世界の珊瑚海の生命を追い求めて活動する山荘には
「アバター」のディフォルメされた生命スピリットが満ち満ちている。
「アバター」の森には当HPでお馴染みの《ハンマーヘッド》の陸生版や
一瞬にして閉じる巨大な《茨簪》を始めとして
実に多様な珊瑚海の生命が登場するのである。

どうしてこれ程までに強烈に惹かれるのか考えてみたら
なんということはなかった。
「アバター」の森は山荘スピリットそのものだったのだ。





 
民主主義を封殺して権力の維持を図り
№4今週のBigニュース 《天安門事件》をネットから削除し更に《ダライ・ラマ》も
検索不能にし、なりふり構わず自国民の知る自由を奪う。

13億の爆発の日は目前に迫っているのかも・・・
と期待したいが民主主義の存在しない国家の権力者の弾圧は
実に残虐で恐ろしい。
9年間通い続けたチベットで、常にぴりぴりと肌を刺す姿無き弾圧を
そこかしこで感じざるを得なかったのだ。

イラクでまたまた連続テロ。フセイン元大統領の従兄
アルマジド元国防相の25日死刑執行と3月7日に迫る国民議会選挙
が絡んでのテロとの見方が強い。
 

  ☆ 1月12日:グーグルがサイバー攻撃や検閲を理由に中国撤退の可能性ありと発表。。
  ☆ 1月21日:中国政府に叛旗を翻したグーグルへの支持をクリントン米国務長官が「ネットの自由」と題して述べる。
  ☆ 1月22日:
(米側の非難は)事実に反し中米関係を損ねる言動だ」と中国外務省の馬朝旭報道局長の談話を発表。
  ☆ 1月25日:同時テロ・3つのホテル標的。イラクの首都バクダットで36人が死亡71人負傷。自動車爆弾での自爆。
  ☆ 1月26日:2日連続テロ。バクダット繁華街カラダ地区の法医学研究所で18人が死亡80人負傷。自動車爆弾での自爆。




 

1月5週・・・・鋭い寒気と知の孤独



やっと咲いた蝋梅!
忍び寄る早春・素心蝋梅

未だ眠りから醒めぬ
頭の中には
昨夜の読書のフレーズが
ぐにゃぐにゃ
這いずり廻っていて
総てが位相空間に在るよう。

ところが鋭い寒気の中で
こいつに出逢ったら
そのぐにゃぐにゃが
突然しゃんとして
《ポアンカレ予想》が
見えてきたような・・・。

《単連結な3次元閉多様体は
3次元球面S3
同相である》

1月16日西の森の欄
触れた
グリゴーリー・ペレルマンを
追った「完全なる証明」が
手に入り昨夜から
読み始めたのだ。

1月30日(土)晴 福生里  



 
1月30日(土)晴 福生里

自由が欠如し思想も理想も色褪せた70年代のソ連の子供達は
「私達の世代はもはや何も信じてはいなかった」

その閉塞した国家体制下であっても色褪せぬこの鮮やかな
紅梅の存在が
純粋思惟の数学の世界では可能であると
ペレルマンは思ったのだろうか?
零下6度の開花
シャッターの指がチンチン

序章のフレーズはこうだ。
「百万ドルの賞金が
かけられた数学上の7つの
難問の1つ
ポアンカレ予想。
それを解いたその男は
名誉も金も総て拒否し
森へ消えていった」

そうかその消えた森と
1月16日の西の森が
潜在意識下で結びつき
あーあの男はきっと
この森に消えたのだと不意に
連想したのだろう。

何故森に消えねば
ならなかったかを語る著者
マーシャ・ガッセンは
ペレルマンと同じように
旧ソ連のユダヤ人家庭に育ち
数学専門学校で学んだ。

「ソ連全土で毎朝
同じ時間に学校に同じ服で
出かけ同じ内容を学んだ」
   



迎春花・黄梅
山荘の梅はまだまだ

凍りつき透き通った
鋭い寒気の中で
総ての生命は影を潜め
辺りはしーんとして
まるで冥界なのだ。

体表面を最小にして
針葉樹となって寒気と闘い
黒い影を落とす森。
葉を落とし
小さな芽となって枝の奥に
命を隠す落葉樹の
光に満ちた森。

いずこにも生命の彩は
見出せないのに
この鮮やかな花々は
いったい如何なる生命なのだ。

よりによって1年で1番寒い
この時期に何故
これ程までに華麗な生命を
謳歌するのだ?

華麗な花々は他の生命と
リンクし生殖し
初めて共に生きている
歓びを謳えるのでは・・・。

1月30日(土)晴 小倉山麓




 
1月30日(土)晴 奥庭
凍死ジョウビタキ(雌)
サハリンからの旅人

冬将軍の冷酷な息吹は
遠い北の国
サハリンからの旅人の
生命をも奪った。

ガラスのようにぴーんと
凍りついた朝の大気は
妙に明るい冥界なのだ。

しかし敢えてペレルマンは
暖かく快適な
他の生命に満ち溢れた世俗に
背を向け
《ポアンカレ予想》証明を
透き通った鋭い寒気
の中で開花させ
その結果を金銭、名誉、権威と
交換することを
頑として拒み続けた。

知の孤独とジョウビタキの死
蝋梅や紅梅の彩が
目まぐるしく交差しペレルマンと
二重映像となって迫る。
   



食われた梟
オバマも興奮!

《単連結な3次元閉多様体は
3次元球面S3
同相である》

単連結とは穴の無いとの意で
《単連結な3次元閉多様体は
穴の無い球となる》
と云うような意味である。
ドーナツのようなトーラスは
穴があり
球とは微分同相ではない。

微分同相と云うのは
無限に伸縮する位相空間で
変わらぬ同じ幾何的
性質を意味する。

本著では輪ゴムを使って
説明している。
輪ゴムをかけてその輪ゴムを
一点に縮ませることが出来る
多様体を 3次元球面S3と
説明している。

何とも摩訶不思議なのは
4次元以上での
証明は既に為されていて
この3次元のみ難攻不落で
百年もの間
《ポアンカレ予想》として
人類の叡智が
問われてきたことである。

1月30日(土)晴 鉄塔山の森

オバマが吼え立てる。
一面に羽が散乱し未だ肉片の残る骨が
如何なる惨劇が繰り広げられたかを物語る。

こうしてついに食われてしまった《ポアンカレ予想》は
残された数学者の体内を駆け巡り新たな滋養となって
壮大な未来を切り拓くべく人類に貢献するのであろうか。
それとも知の孤独を謳った1編の詩として終わるのだろうか?



モノロ-グ
あらゆる生命を委縮させる凍りつき透き通った
鋭い寒気は弧絶したペレルマンの愛おしい唯一の真実の世界。

《n次元ホモトピー球面はn次元球面に同相である》
大学時代に黒くなるほど書き込んだ「位相空間学」の本を元に
4次元でしか作れない
4次元十字帽子作成に熱中した日々は遙か地平の彼方。




 
1月30日(土)晴 竹森林道

もう駄目だ!進めないと思って歓んでいるな。
甘いね。そんな魂胆じゃ何処にも行きつけないぞ。
そりゃ日没は近いのでバイクが使えなければ登頂する時間は無い。
ならばバイクを捨てて暗くなる直前まで走ればいいんだ。
駄目だ!進めない
ついにバイクもお手上げ

その難攻不落を
どのように解いたかって?

世界のトップに立つ
数学者達がペレルマンから
説明を受けた時の
状況はこうだったんだ。


「まず、ポアンカレ予想を
解かれた事に落胆し
それがトポロジーではなく
微分幾何学を使って
解かれた事に落胆し、そして
その解の解説が全く
理解できない事に落胆した」
(wikipedia)

なにしろ数学者には
縁遠い熱量・エントロピー
などの物理的な
用語を使って解いた証明は
ちんぷんかんぷんだった
と云うのだから笑ってしまう。
   



№2今週のLivre 完全なる証明                          
著者:マーシャ・ガッセン
訳者:青木薫
出版社:文芸春秋
発行日:2009年11月15日

定価:1667円+税
読書期間:1月30~2月3日
評価:★★★☆☆

マーシャ・ガッセン
43歳(1967年モスクワ生まれ)の「US News & Word Report」誌の女性特派員。
旧社会主義体制下でのユダヤ人に対する差別を逃れ
大学進学を待たず1981年(14歳)に一家で米国に移住。

自らの2人の祖母が東欧のユダヤ人としてホロコーストとスターリンの圧政下を
如何に生き延びたかを綴った「「2人の祖母」(Tow Babushkas)を著す。

青木薫の他訳本
「フェルマーの最終定理」、「暗号解読」、「宇宙創成」・・・著者:サイモン・シン
「宇宙を織りなすもの」・・・著者:ブライアン・グリーン



氷の滝だぜ!
1月30日(土)晴 竹森林道

すってんころりん!
まさか犬が転ぶなんて見たことないな。
先ず先頭を走るオバマがずっこけ、続けてチビがするすると滑り出し「きゃん」と一声。
だいたい4本も脚があってどうしたって転ぶ筈ないのに、さては怖じ気ついたな!
ここが正念場さ。






太陽が沈み始めた
獣道に迷い込む
 

それじゃ誰が
その証明が正しいと
理解出来たんだい?

ペレルマンは数学専門誌に
発表せず
直接インターネットで
公表したんだ。

2002年11月12日(火)
午前5時9分2秒(東部標準時)
その衝撃的論文は
arXiv math.DG/0211159に
掲載された。

複数の数学者チームが
論文の検証を
試みたが何しろ原論文が
理論的に難解であり
かつ細部を省略していた為
検証作業は難航。

報告論文が出揃ったのは
4年弱の歳月を経た
2006年5~7月で、3つの
数学者チームが漸く
成し遂げたんだよ。

1月30日(土)晴 高芝山頂
 

「 ほら森の木立から薔薇色の光が漏れて
もうすぐ陽が沈んじゃうよ。
暗くなったら道の無い森の中では帰れない」

チビが心配したように下り始めて直ぐに獣道に迷い込み
登り返してどうにか南西尾根に戻れましたが
危機一髪であったことは確かですね。


 
1月30日(土)晴 高芝山頂

真っ黒な熊が夕闇に紛れて活動を始めました。
険しくて奥深い高芝山には地元の鉄砲撃ちもやって来ません。
里山で追い立てられた熊、猪、鹿がここまでやって来て
棲家にしているので我々は侵入者なのです。
でもきっとペレルマンなら彼等も受け入れるような気が,ふとしました。
黒い獣、疾走
やばい!熊だぞ

で、どうして百万ドルを
拒否したり沢山の有力大学
のポストを蹴って
森に消えてしまったんだい?

難しいけど彼の
生み出した証明が彼の
心象風景のなかで
世俗に塗れた金や名誉、権力と
等価値として
取引されることが許せなかった
のかなと感じたね。


彼が手にしたものは
「自分の空想世界の中で
抽象的な対象とともに
生きる自由」だったのである。
尾関 章氏は述べている。

今ペレルマンはどうしてるの?

2006年8月に
フィールズ賞が授与されたけど
賞金も受け取らず
その直前まで勤めていた
ステクロフ数学研究所も退職し
無職で僅かな貯金と
母親の年金で生活してるとか。
   



エピロ-グ

真っ暗でした。山荘に着いた時には。
でもなんだか今降りてきた高芝山が語りかけているような
呼びかけているような・・・あーそうじゃない
抱きかかえてくれるような・・・そんな気配がして振り向くと
高芝山の山頂が光輪に輝いています。
うっとり見とれている間に光は氾濫し突如満月が山頂から飛び出し
辺りの闇をきれいに拭い去ってしまいました。

その掛替えの無い一瞬がどれほど崇高で気高い光であったか
誰にも伝えられないもどかしさに
ペレルマンの寡黙な影が重なり、なんだか哀しくなりました。
やっぱりペレルマンは哀しいのです。



今週のCinema 100年の難問はなぜ解けたのか
№3                             NHKオンデマンド
                           
 鑑賞日:2月4日
                              
 評価:★★☆☆☆

人類が長年、問い続けてきた謎に大きく迫るヒントが2006年に見つかった。
百年もの間、誰も解けなかった数学の難問「ポアンカレ予想」が証明され
宇宙がとりうる複数の形が初めて明らかになったのだ。
番組は、ポアンカレ予想が解けるまでの百年にわたる天才たちの格闘のドラマを追い
CGと実写の合成を駆使し、“天才の頭の中”を映像化する知的エンターテイメント番組とする。
(NHKスペシャル案内文)

とまあ凄い宣伝文句が続くが、なぜ観た記憶が無いのだろう?
いくらTVに無関心だからと云ってこんな凄い番組を観落とす筈はない。
サンクトペテルブルグまで出かけての映像なので大いに期待。

観た記憶の無い理由が解った。
酷くつまらないのである。前回観た時も直ぐ眠くなり何も覚えていないのだ。
唯一思い出せたのは次元を高めるともつれた紐が絡まなくなり
四次元以上での証明が三次元の《ポアンカレ予想》より先に為されたと云うくだり。



副題:天才数学者 失踪の謎
制作:NHKスペシャル

初回放映:2007年10月22日
放映時間:59分





 
あの小さな島・台湾に向けて中国は短距離弾道ミサイル1千基以上を
配備していると云う。
№5今週のBigニュース つまり台湾は中国の意思でいつでも一瞬にして吹き飛ばされる
状況下にあるのである。
軍事バランスを考慮しての米国から台湾への武器売却だが台湾が強く要望した
攻撃能力のある戦闘機F16の改良型C/D機や潜水艦は売却されず。
しかし如何なる理由があろうと
人を殺す道具が国家間で売却されると云う野蛮な行為
が正当化される筈はない。
売却された武器が巡りめぐって自らに向けられるのを誰よりも良く知っている人類は
いつになったらこの愚を乗り越えることが出来るのか?

「強烈な憤慨、深刻な破壊的行為」と中国側は反応してるものの
「想定内の売却で軍事バランスは変わらない」との中国関係者の見方もある。
恐ろしいのは中国の軍事費の著しい増大である。
ここ21年間2桁台で伸びを続ける背景には如何なる意図が潜んでいるのか?

バートンが逸早く中国の牽制球に対し反応し
ダライ・ラマ14世とオバマ大統領の会談実施を発表したが《報復警告》には
「意見の相違は率直に議論出来る」と弱々しい反論。

民主主義を殺して権力だけが突っ走る恐ろしさは実は
中国だけのお家芸が齎す訳では無かった。
なんと公明正大な選挙で貴乃花への1票を投じた安治川親方が
退職に追い込まれたのだ。
さすが日本の世論は黙ってはいない。1日で退職は回避されたがさてさて・・・
 

  ☆ 1月29日:台湾向けに総額64億㌦(約5800億円)を上る武器売却を米国防総省が決定したと議会に通告。
  ☆ 2月02日:ダライ・ラマ14世とオバマ大統領が会談すれば中国は米国への報復措置に出ることを強く示唆して警告した。
  ☆ 2月02日:中国の警告を受けバートン大統領副報道官はダライ・ラマ14世とオバマ大統領は会談すると記者団に述べる。
  ☆ 2月03日:1日の日本相撲協会の理事選挙で貴乃花親方に投票した安治川親方が退職に追い込まれたが、世論が味方。退職撤回。
  



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