その25冬ー2007年師走
師走1週・・・燃ゆる山荘
燃ゆる山荘 12月1日(土)晴 東の森から |
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椎の木黄葉 都心から離れ 山荘に近づくに連れて 肉体が 森バージョンに変容していく。 ・ 中央沿線の山々が 眼から細胞の1つ1つに 埋め込まれ 山荘に付く頃には すっかり総ての細胞が 森化してしまう。 ・ 最後に残された たった1つの細胞が 山荘の森に着いた途端 置き換えられ 気がつくと私は椎の木 の葉になっていた。 |
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12月1日(土)晴 勝手口から |
山荘がすっぽり
枯葉に包まれる1年で
一番美しい季節が
やってきたんだね。
落葉と唐冠 トウカムリ 目に飛び込んできたのは
石卓上で何かに 聴き入っている貝の耳。 ・ 今、石卓は落ち葉の海。 南の海から運ばれた 白い貝は 故郷の海を追憶している。 それとも 森が海であった頃の 太古の記憶に耳を澄まして 聴き入っているだろうか。 ・ そっと貝に顔を寄せると 南の海の潮騒の音色が 聴こえてきた。 きっと山荘の森の遠い記憶も 夏の間石テーブルで 交わされた楽しい会話も 貝の耳は 憶えているに違いない。 |
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12月1日(土)晴 石卓上から |
染まる満天星 テラスの躑躅が 赤く染まり透明な冬日を 紅に変えると ドウダンツツジの存在を 思い出すのだが その都度 「あれ! どんな漢字だったっけ?」 ・ 『満天星』なんて どっからどう読んでも ドウダンツツジだなんて 読めっこない。 でも何て粋な漢字。 ・ 中国の太上老君が 仙宮で霊薬を練っているうち 誤ってこぼした 玉盤の霊水が たまたまこの木の枝に 降り注ぎ かたまって壷状の玉になり 満天の星の花になって 輝いたそうな。 |
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12月1日(土)晴 テラス横にて |
落葉の絨毯 ふかふかの枯葉絨毯が 織り上がると 枯葉の下から一人の イタリア人が 毎年笑顔を覗かせる。 ・ 彼の名は フォスコ・マライーニ。 厚い枯葉に包まれた 12月の雲取山を 彼とのんびりと逍遥した。 ・ 途中枯葉に潜り込んで 昼寝をしたり 稜線でランチパーティを 開いたり。 ・ 彼はムッソリーニの 「サロ政権」に反抗し 愛知の強制収容所に 妻子と共に捕らえられた 反戦闘士。 ・ 彼も椎の木の葉に なったんだね。 ようこそ山荘へ! |
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12月1日(土)晴 前庭にて |
落葉絨毯の昼食 25年前の明日 12月2日に 私とマライーニさんは 落葉にくるまれて お茶を飲みながら チベットの話をしていた。 ・ 彼から贈呈された著書 『チベット そこに秘められたもの』 『ヒマラヤの真珠』 に書かれた内容は 彼の2回のチベット遠征を 元に書かれた 大変興味あるものであった。 ・ 第1回目の遠征が 1937年であり 70年前のチベットが 書かれており 話は尽きない。 |
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1982年12月2日(土)晴 雲取(後山新道塩沢)にて | (左:Fosco Maraini) (右:山荘主) |
マライーニさん 送別会 私の連続9回の チベット遠征が 開始されたのは マライーニさんと 出逢ってから 16年後の1998年。 中国政府はチベット入域を 許可しなかったのである。 ・ 3月から4月の春合宿で 横尾尾根から 南岳~北穂へと縦走し 雪焼けで真っ黒になって 帰京すると マライーニさんの送別会に 出てくれと連絡あり。 ・ この3ヵ月後 ヘルマン・ブールの 初登頂ルートを狙って ナンガ・パルバットへと 私達は旅たったのである。 |
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(右:Fosco Maraini) (左:山荘主) |
1983年4月9日(土) 赤坂料亭にて |
森観の大窓 山荘に 還ってきたんだね。 マライーニさんの ドロミテの山荘もいいけど きっとここも 気に入るよ。 ・ 『山荘・ゆぴてる』の 常連になって あの日のように一緒に 山を逍遥しよう。 ・ ほら、この窓から 森を見ると木々の 一本一本が 手招きしてるのが 判るだろう。 |
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12月2日(日)晴 北出窓から |
漆黒の額縁 森観の大窓の階段を 登って二階廊下に 上がると 仄暗い空間を矩形に 切り裂いて 東の森と高芝山 平沢の里が 一幅の絵画になって 瞳を射る。 ・ あのピラミダルな 高芝山坂脇峠には 仲間と切り開いた 岩登りゲレンデがある。 そうだ! マライーニさんを 連れて行ってあげよう。 |
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12月2日(日)晴 東廊下出窓から |
黄葉の誘い いそいそと倉庫に行って 登攀準備を始める。 ・ ザイルは40mが2本 カラビナはこの袋かな? 30枚程入っているから 充分だな。 ハーケン、ナッツは不要。 ・ そうそう クライミングシューズと ミトン、ヘルメットも 持っていこう。 ・ 高芝山の坂脇峠も 黄葉した枯葉に彩られ 綺麗だろうな! |
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12月2日(日)晴 踊り場出窓から |
森の林道閉鎖 トランクに登攀具を 積み込んで 高芝山に向けて 森をぐんぐん登る。 ・ 山女の養魚池を過ぎて 山椒魚の棲息する 谷川にさしかかる。 何と!林道が 閉鎖されている。 ・ 12月から冬期間は 通行禁止との表示。 ここから荷を担いで 登ったら陽が 暮れてしまう。 ・ 山荘に戻ると 未だこんなに明るい。 ログハウスが 午後の残照に浮かぶ。 |
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12月2日(日)晴 寝室出窓から |
仰ぎ見る森 再び階段を降りると 出窓の森が迫る。 ・ 「よしよし、わかったよ それじゃ ほったらかし温泉の 上にある棚山へ マライーニさんを 同行しよう。 ・ それにしても もう時間が無いから 急がなくては! ・ 森そのものの山荘 に居ても 君達は森の中へ どうしても 誘い出したいんだね。 |
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12月2日(日)晴 吹き抜け窓から |
只今調理中 畑から大根を 3本引き抜いて 小松菜、春菊を摘んで 蕪、青梗菜を採って キッチンへ運び夕食準備。 ・ 茹でてから水分を絞って 俎板で切る。 蕪は薄切りにし 軽く塩揉みし 柚子の皮をまぶす。 これビアの摘みに最高。 ・ 目の前の窓からも 黄葉の山々が広がる。 豊かな気持ちになって ついでに ワインの摘みも作る。 やっぱスイートポテトだな。 ワインには。 ・ 今夜は久々に マライーニさんと乾杯しよう。 |
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12月2日(日)晴 キッチン窓から |
書斎温室と化す 山荘一階には 10の窓・ドアがあり 吹き抜けに2つ 2階廊下には5つ 2階3つの部屋に計5つ 総計22もの 窓やドアがある。 ・ 曇りガラスのキッチンドア を除けば何処からも 森や山が見える。 つまり山荘は森と山に たゆとう方舟なのだ。 ・ この窓の1つが 冬の温室に提供される。 今年も引越しを 終えてカリストに 観葉植物が揃った。 さあ!いよいよ 本格的な冬だぞ。 |
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12月3日(月)晴曇 カリストにて |
里の落葉焼き 沈んだ朱が 山荘の森を染め白煙と 明暗を成す。 ・ 都心では禁止され すっかり消えてしまった 落ち葉焚きも この里では欠かせぬ 冬の日常作業。 ・ でもあの焚き火に 薩摩芋を入れて 待ってる子供達はもう 何処にも居ない。 ・ 最後の紅葉と 落ち葉焚きの白煙が 山荘の借景を飾ると 新たなる年が迫る。 年賀状の画像を選ばねば。 |
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12月3日(月)晴曇 東の森にて |
12月3日(月)晴曇 書斎にて 氷雨が紅葉の森をより一層寡黙にし 山々は雪が舞い始めた。 帰京までの時間を使って今年の数千枚を超える画像から 一枚の賀状用画像をスクロールした。 ココ島でDVチームを組んだプロ写真家イヴ・グラドゥが撮った この一枚を敢えて選びキャプションを入れた。 ・ DV後、母船のコンピューター室で 私のみを撮った十数枚の画像を見せてくれた。 いつの間に撮ったのか全く気がつかなかっただけに驚きは大きかった。 その場で私のメモリーカードにインプットしてくれ ウインクしながらイヴはこう言った。 《300本ダイバーへの心からの私のプレゼントです。 商業用に使ってはいけませんよ。私の収入が減ってしまいますからね。》 ・ 世界の珊瑚海に潜り続けて数年 ココ島で300本の記念DVを迎えた瞬間の決定的ショットである。 イヴありがとう! |
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モーニング コンサート 黄葉した無数の葉が 風雪のように舞い 山荘を金管の音色で 満たしたのは またまた山猫の仕業。 葉は手紙だったんだ。 ・ 落葉を拾ってみたら やっぱり 『上野の森』への招待状。 ムンク展が開かれ トロンボーンの演奏会が あるらしい。 ・ 次週山荘へ来る前に 府川雪野の トロンボーンを聴いて ムンクを観てから おいでんなさいとの ことらしい。 ・ で、山荘と異なる 都会の森で金管の音色と 金色の銀杏落葉を 堪能しムンクを横目で ちらりと観てから 山荘へ向かったのさ。 |
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12月7日(金)晴 上野の森(文化会館)にて | |
目覚める山荘 晴れ渡った空が 嬉しくて 一気に小倉山へ 駆け上ったら南アが 白銀の輝きを 放っていてドキドキしたね。 ・ 山の陰が 手前に後退し 尾根の末端にある 山荘が 朝日を浴びると トロンボーンが 天空を震わせるんだ。 ・ トロンボーンは 教会音楽では神々の 登場場面で鳴り響くんだって 府川さんが言ってた。 きっと山荘も この瞬間に神々の声を 聴いているんだ。 |
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12月8日(土)晴 小倉山山頂にて |
山荘に集う 大阪から新幹線を 乗り継いで 久々に岩本さんが 山荘にやって来た。 ・ 9月赤ワインの仕込み 10月白ワインと 秋の年中行事が続き いよいよ最後の 瓶詰時期を迎えたのだ。 ・ 村上、馬渕、更に新人の 小村君も加わり 落ち葉に覆われた山荘は 活気付き 森に歓声が響きわたる。 ・ さあ!瓶詰の後は 朝と夕の楽しい森の散歩が 待ってるぞ! |
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12月9日(日)晴 鉄塔の森にて |
ワイン 瓶詰開始 山荘に着くや否や テラスに山荘ワインの ヌーボが出され 摘みに山荘主ご自慢の スイートポテトが テーブルを飾る。 ・ 「おっ!これは美味い! モンブランの味だ。」 それもそのはず この朝のため山荘主は 昨夜から山荘に来て パプア・ニューギニアで 手に入れたラムとバニラを 使って仕込んだ 自信作のスイートなのだ。 ・ これは夜の宴でも 大人気でお代わり続出。 やったね! |
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12月8日(土)晴 前庭にて |
瓶へのサイフォン 先ず全員がワインセラーに 集合して 瓶に付いたワイン黴を 1年ぶりに拭き取る。 ・ それからタンクに入った ワインや空き瓶 瓶詰の工具などを 前庭の石卓に運び出す。 ・ 瓶詰工程で一番 デリケートな作業が サイフォン引きなのだが 誰に任せるか? ・ 馬渕君によると 新人の小村君は 京大卒で社内でも 優秀な人材とのこと。 ・ それとどうゆう関係が あるのか不明だが この大役は小村君になった。 |
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12月8日(土)晴 前庭にて |
コルク打ち 「あれっ!これ 難しいじゃないですか?」 ・ 山荘主が手本を見せて コルク打ちを教えたのだが どうもコルクが 真芯に入らず横に ずれてしまうらしい。 ・ 「どれどれ、コルクを 打栓器の奥まで入れて 力の方向を直線にして レバーをこう 下ろすんだよ」 ・ 小村君が詰めたワインを 受けて馬渕君が コルクを打つのだが 骨を飲み込むまで 悪戦苦闘。 |
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12月8日(土)晴 前庭にて |
コルク切断 馬渕君のコルク打ちの 次は岩本さんの はみ出しコルクの切断。 ・ 前回の瓶詰の時は 雪が降って 瓶詰が終わる頃は 山荘は真白。 ・ あの時も岩本さんは 大阪から 駆けつけてくれましたね。 第一回のチベット遠征にも 参加し初登頂を 果たした岩本さん。 山荘との付き合いも もう15年になりますね。 ・ 今夜は2次会のログで じっくり呑みましょうか! |
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12月8日(土)晴 前庭にて |
シール処理 最後はコルクにシールを 被せて熱着させる。 更に今年のラベル 2007を貼り 山荘ワインのラベル 《ゆぴてる》を貼って 2007ヌーボ完成。 ・ 最初はサイフォン引きが デリケートで生産工程に 遅れを出し 悩んでいた小村君も 僅かな時間差を会得し 完璧な瓶詰。 途中参加したベテランの はずの村上さんが 適わぬ程の上達。 ・ 折角会得した新人の この技術を次回に 生かさぬ手はないな。 |
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12月8日(土)晴 セラーにて
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夜の森へ それじゃ今年の ヌーボ完成を祝って 森の散歩に出かけよう! ・ セラーにワインを 運び込んだ頃は太陽が 稜線の彼方へ 沈み始めていたので 急いで森へ飛び出す。 ・ 北の森からP2の頂に 立った時は既に 闇がひたひたと打ち寄せ 森は夜の世界。 ・ 感覚の総てをセンサーに 変え本能に身を委ねて 灯り無しで 夜の森を逍遥するには 絶好のチャンス。 |
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12月8日(土)晴 セラーにて |
夕闇の森からの 帰 還 P2の頂からは 最早、獣道すら無い。 昼ですら 自分の現在位置を 確認するのは難しい。 ・ 初めての山荘散歩に 参加した小村君 無事帰還の 歓びと興奮を祝って ついでにワイン・ヌーボの 完成も祝って カ ン パ イ! ・ テラス卓上には 村上シェフの 特製スペアリブや じっくり煮込んだおでんが 並びシクラメンが 小村君の山荘デビューを 心から歓迎してました。 |
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12月8日(土)晴 テラスにて |
朝の散歩? 山荘眼下 闇の底に煌く盆地の灯を 見つめながら 山荘特産ビアを味わい 2次会はログハウスへ。 ・ 普段は呑んでも寡黙な 岩本さんが若手を 相手に雄弁に山を語る。 ・ 死の恐怖や苦しみを超えて 垂直の岩壁や 冬の凍りついた岩稜を 登り続けてきたのは 何故だろう? 夜のログで大いに語り呑む。 ・ さて、明日は楽しい 心躍る 朝の散歩が待っているよ。 |
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12月9日(日)晴 鉄塔稜線にて |
あのー!ここ 登るんですか? 枯葉にすっかり覆われた 岩場で小村君が 何やら呟いている。 ・ 「そうだよ、 よーく観ると階段のように 見えてくるから そこに足を掛けて 登るんだ」 ・ 皆が直上したルートから 逃げて 左へ出たものの やはりここも難しいらしい。 ・ でもニコニコしながら マイペースで登り続ける。 |
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12月9日(日)晴 鉄塔稜線にて |
熊だ!! 岩壁の上に出ると 小高い丘になっていた。 左ルートを取った小村君が やっと岩壁を抜けた。 ・ 恰も垂直の岩壁が 未だ続くかのように 丘を這い上がって来る 姿がまるで森の熊さん。 ・ よく頑張ったね! 京大生だった頃は ビアを担いでよく 大文字山へ登ったとか。 ・ 山荘の山々も 好きになってくれると 嬉しいな熊さん! |
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12月9日(日)晴 T2稜線にて |
太陽の朝食 散歩を終えて 朝の暖かい太陽を いっぱいに浴びて テラスでの食事。 ・ 夜明けの太陽を追って 森を駆け抜け 山稜を逍遥してからの 朝食は先ず よく冷やした白ワインから。 ・ グラスに注ぐと金色の 白ワインに氷が析出し 太陽を孕んで ダイヤのように光る。 そいつを一気に 呑み干す時の爽快さ! ・ さて合宿の仕上げは 温泉の山にしよう。 勿論下山後は温泉どぼん。 |
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12月9日(日)晴 T2山頂にて |
週末から南太平洋のフィジーまで、ちょっと出張です。
ビチレブ島から更にママヌザ諸島のビーチコマーという小さな島に入り終日DVの予定です。
師走4週・・・山荘大掃除・換気扇、床ワックス、etc
枯葉の森 誰も居ないのに 何という 賑やかなテーブル。 ・ 枯葉の1枚1枚が 押し合い圧し合い喚き合い 日向ぼっこ。 ・ そこへ南回帰線の 真夏の太陽で こんがりと肌を焼かれた 山荘主が現れると 一瞬の沈黙。 ・ 『何だか懐かしい 強烈な太陽の香りが するぜ』 |
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そうそう君達にも 話してあげよう。 ・ 大地を暖め 海を暖め 暖かい風を呼び 沢山の雨を降らして 森に生命を吹き込んだ あの真夏の太陽は 今、南半球に居るんだ。 ・ 逢ってきたんだよ。 強烈な光の矢が 無数に突き刺さり 海の中は 総てがキラキラと輝き 宝石になって 生命に満ち溢れ そりゃ美しいもんさ。 ・ もう直ぐ又あの太陽が 森に還ってきて 森を豊かな緑で 塗り替えるんだね。 |
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12月30日(日)晴 北の森にて |
芸術の冬 山荘の池も 森の疎水も路傍の 水溜りも 冬将軍の息吹で たちまち凍りついた。 ・ テラスの陶芸作品にも 氷が張りつめた。 僅かな冬の太陽を浴びて 硬質の輝きを失い 周囲の闇に 溶け出す氷塊。 ・ まるで漆黒に浮かぶ 星雲のようだね。 いよいよ冬将軍の 芸術の冬が やってきたんだ。 |
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12月30日(日)晴 テラスにて |
冬の竜 陶器の中に 星雲を彫刻したかと 思えば大地には こんな絵を描いた冬将軍。 ・ 空気を氷に混ぜた 白銀の絵の具で 描いたのは竜? ・ 神獣とされる竜は 一声吼えて雷雲や嵐を呼び 竜巻となって 自在に天空を舞う。 ・ 中国全土を統一し 前漢を興した劉邦の母は 劉邦誕生直前に 竜に犯され劉邦を 産み落としたとされる。 ・ 神獣・竜のように 地に嵐を起こし竜巻となって 天空を駆け 冬将軍は大地を制覇 したいのだ。 |
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12月31日(日)晴 森の路傍にて |
慌てん坊の 山楝蛇(ヤマカガシ) 馬鹿だね! ・ そりゃ竜はインドの 蛇神であり水神でもある ナーガが 生み出したんだが そうかと言って 大地に描かれた竜を見て 冬眠の穴から出て ご挨拶に来るなんて 無謀極まるね。 ・ ほらごらん! 寒くてもう動けないだろ。 日向ぼっこなんかして 暖まったって もう遅いよ。 君はもう直ぐ凍えて 死ぬんだ。 |
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12月31日(日)晴 東の森麓にて |
大掃除 床ワックス塗り さて、いよいよ 追い詰められたぞ。 ・ 南太平洋珊瑚海での ダイビング三昧の つけが回ってきた。 帰って来たら 新年は目の前。 ・ 重い腰を上げて ついに大掃除に着手。 先ずは床の ワックス塗りだが 家具の移動が一仕事。 ・ 1階の居間を終えて 2階にかかる頃は 最早夕暮れ。 急げ! 明日は元旦だ。 |
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12月31日(月)晴 寝室にて |
水晶の歓び うーん! 部屋綺麗になったね。 気持ちいいね。 ・ 水晶で造った 小さな小さな地球儀が 光を孕んで 輝きだしたよ。 ・ この水晶とっても 綺麗好き。 透明な光が大好きで 山荘のガラス磨きをすると とても喜んで 直ぐに感応し 太陽の光を部屋中に 散乱させるんだ。 |
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12月31日(日)晴 ピアノの上にて |
青との邂逅 ほら光った。 ・ 不思議なんだ。 この光を見ようと思っても 駄目なんだ。 ・ 或る時、或る角度で 突然煌くんだよ。 水晶は球ではなくて 平面でカットされ 多面体となっているんだ。 ・ だからどの面が 光を分光するか予測出来ず どんなスペクトルが 現れるかも 解らないんだ。 ・ それだけにこの光に 巡り逢った時は 本当に嬉しいね! |
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12月31日(日)晴 ピアノの上にて |
超新星誕生の瞬間 青から緑に 光が変わった瞬間 小さな水晶地球儀は 数百万度に白熱し 死の輝きに 満ち満ちた。 ・ なんと壮烈な死。 ヘリュームや水素を 核融合でせっせと 鉄、珪素、炭素や窒素に 変え生きてきた星。 ・ 蓄えた元素を広大な 宇宙空間に一気に 放出し 新たなる星星を 生み出すんだね。 いつの日かそれらの元素が 僕達の肉体をも 形成するんだね。 ・ |
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12月31日(日)晴 ピアノの上にて |
1987年マゼラン銀河で 観測された SN1987Aに因んで 君にはSN2007Cと 名づけてあげよう。 SNは超新星 Cは山荘の意だよ。 ・ ピアノの反対 北側のCDラック上にある 陶芸作品が 翡翠の光を発しながら 呟いた。 ・ 『そりゃ水晶は素敵でしょ。 でもあれは自然の産物。 この緑の器は あなたが生み出した 作品でしょ? 名前くらい付けてくれても いいんじゃない?』 ・ よしそれじゃ 宇宙で最も美しい おうし座かに星雲M1の 超新星残骸から 命名してあげよう。 NGC1952Cだ。 |
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12月31日(月)晴 CDラックの上にて |
花梨の呟き 綺麗になった山荘を 喜んでくれるのは 室内の オブジェだけではない。 ・ テラスにさり気無く 置いた花梨も 高芝山を見上げて 気持ちよさそうに 呟く。 ・ 『さあ、これで明日は 心置きなく山に いけるでしょう』 ・ そうだね。 高芝山も 暫く登ってないし でも明日は1年のスタート もっと高い山に行こうか。 |
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12月31日(月)晴 テラスにて |
里の大晦日 こちらの花梨は シクラメンと並んで のんびりお喋り。 ・ 『どうにか山荘主は 死なずに 2007年を終えそうですね』 「そうですね。 でも今年はヒマラヤも ドタキャンしたり 肺癌が見つかったり それなりに波乱万丈 だったようですよ」 ・ 『山荘主が死んだら この手のかかる山荘は 見捨てられ 草茫々になって 又森に還るんでしょうね』 ・ おいおい 簡単に殺すなよ。 これから山荘は益々 面白くなる予定なんだぜ。 |
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12月31日(月)晴 テラスにて |
最後の飾り 《謹賀新年》と書かれた 注連飾りを ゲート前のポストに付けて 大掃除並びに 新年準備は総て完了。 ・ 明日は高芝山でもいいが えこちゃんに声掛けて 山荘北側の 乾徳山に行こう。 ・ 標高2千mを超えているので 雪や氷もあるし 山頂直下の岩稜帯も アルペン的で 面白いし1年の スタートトレーニングには もってこいの山。 ・ 山荘の御蔭で 豊かな時を過ごすせました 来年も宜しく! |
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12月31日(月)晴 ゲートにて |