山荘日記

その2006年卯月

 


卯月・3週・・名残雪と桃源郷の山荘

卯月3週山荘眼下の桃源郷・・・撮影&アート:宮沢晃



4月16日(日)雪後曇夕刻晴  於 小倉山山頂直下にて

《ドゥ》と
音が聴こえてくるような
断裂面に
雪がうっすらと積もった。
たぶん
これが最後の
名残雪になるのだろう。
最後の名残雪



4月16日(日)雪後曇  於 東の森にて

不意に
呼びかけてくる。
立ち止まって耳を傾ける。
樹幹にあてて
耳を澄ますと
水分を吸い上げる音に
混じって微かに
ムンクの叫び
が聴こえる。

リョウブの呻きが
森に暗い影を落とす。
令部の呻吟 「リョウブ」は救荒植物。
凶作に備えて令法によって植樹が決められていた。



4月16日(日)雪後曇夕刻晴  於 奥庭にて

あの可愛らしい花芽が
一斉に開いた。
まるで結婚式の
ドレスの様に
輝いているね。

7月になると
撓に実り
庭で遠征準備に勤しむ
隊員のデザートになる。

今年も沢山
実をつけておくれ。
ブライダルプラム



4月16日(日)雪後曇夕刻晴  於 奥庭にて

うわー!
思わず歓声を
上げてしまった。
太陽光に煌く産毛までもが
鮮明に映し出され
あまりの美しさに忘我。

それは
この画面を編集で拡大
した瞬間であった。
これまで
今使っているカメラの
画素数を敢えて
意識した事は無かった。
しかし・・・

850万画素
デジカメ写真映像が
切り取った
圧倒的な真実に驚愕。
林檎の花芽



4月15日(土)  於 扇山稜線にて

冬枯れた
落葉樹の森は
総てが枯葉色に染まる。

眠りに就いた
無数の生命の
密やかな温もりが
枯葉色に滲む。
枯葉色の枝先に
集められた
密やかな温もりは
早春の太陽を
いっぱいに浴び
微かな
紅紫の点となり
やがて
小さな宇宙を生む。
三葉躑躅・宇宙創生


4月15日(土)  於 扇山稜線にて

ゆっくりと
光速に近い速度で
小さな宇宙が爆発する。

枯葉色のスクリーンを
真っ先に破るのは
いつも
三葉躑躅。

発光してるかのように
ほの暗い森で輝き
生命回帰を
高らかに宣言する。
枯葉森の鮮烈



4月15日(土)  於 扇山稜線にて

落葉松のふぶきを
知ってるかい?
黄色い針葉が
チラチラと
天空を埋め尽くし
ブリザートになって
地を駆け巡り
それはそれは
幻想的な世界なんだ。

ヒマラヤでの吹雪は

ごめんだけど
落葉松のふぶきには
又逢いたいな。
落葉松の芽吹き



4月16日(日)雪後曇  於 居間にて

ジンジャーと
山荘キューイを
フレーバーにした
黒ビールが
もうすぐ終わる。
次は久々に
ラガーにしよう。

先週1次仕込みを終えた
2樽を
保温クローゼットから出し
泡立て用の
プライミングシュガーを
入れて
これでよし。

春の宴には
きっと呑めるだろう。
自ビール・ゆぴてる



4月16日(日)雪後曇夕刻晴   於 前庭にて

朝のは最後の残り雪だよ
水仙が囁いた。
それなら山荘の車も
ノーマルタイヤに換えよう。

倉庫裏からタイヤを運び
ジャッキで車体を上げる。
全体重を掛けて
レンチに乗り
ボルトを緩め
冬タイヤを外し交換。

さあ!
これで山荘にも
春がやって来たぞ。
水仙とスタッドレス



4月17日(月)  於 奥庭にて

生命の枯渇した
褐色の枝先が
僅かに膨らみ
新たな生命が
顔をのぞかせる。

膨らみは星になり
膨張し続け
やがて蕾になる。

その朝
あまりに魅惑的なので
《美しいよ》
と囁いたら
石楠花の蕾が
突然爆発し
紫の喜びが迸った。
2つ、3つ、・・・
7つも花開いた。
まるで超新星だね。
7つの生命炸裂




卯月・2週・・・目覚める山荘


4月8日(土)晴れ  於 奥庭にて

モルジブの
珊瑚環礁から山荘に戻ると
清楚な杏子が
にっこり微笑んで
迎えてくれた。


今、下界で咲いている
桜に比べると
随分地味だけれど
滲み出る暖かさがあるね。

雪と氷そして岩
生命の絶えた世界から
山麓の村に戻ると
たわわに実った杏子が
隊員を狂喜させる。
長い間
目にしなかった果物。
それは
生命そのもの。
ヒマラヤの杏子



4月9日(日)晴れ  於 奥庭にて

生命の枯渇した
褐色の枝先が
僅かに膨らみ
新たな生命が
顔をのぞかせる。

膨らみは星になり
膨張し続け
やがて蕾になる。


蕾はDNAからの
1葉の手紙を
携えていた。
文面が光に透けて見える。
《この子はやがて
太陽の
赤い実に成ります。
大切に育ててください》
林檎の目覚め



4月9日(日)晴れ  於 奥庭にて

春の光は
美味しいかい?
風の中に妙なる音色が
聴こえるかい?
そうさ
ついに
生命の季節
巡って来たんだよ。
欠伸する洋梨


4月8日(土)晴れ  於 座禅草公園にて(朝トレーニング)

さあ!
冬は終わった。
重いマントは捨てよう。
光の中に
鋭い槍を突き立て
無窮の天空に
飛び立とう。
座禅草の脱皮 マント:仏焔苞



4月9日(日)晴れ  於 上条の森にて

ほんの少し
ここは未だ
風が冷たいのさ。
山荘より
標高が高いからね。

枯葉の絨毯に
折り重なる自然倒木。
この死の静寂から
超新星のように
一気に
命が爆発するんだぜ。
眠れる森



4月8日(土)晴れ  於 東の森にて

おいらは
昨年の早春に
農学事始Uで
植えつけられた椎茸さ。

寒いんだけど
おいらだって
負けちゃ居られない。
雪が降っても毎日毎日
ちょっとづつ大きくなって
春の祭典に出るのさ。

食べてみろよ。
牛肉なんて目じゃないぜ。
舌が落ちても
おいら知らんぜ。
美味しい冬子 参照:3月21日の山荘日記HP



4月9日(日)晴れ  於 北の森にて

山荘の石垣の
春蘭が咲いた。
小さな呟きが
聴こえたような気がして
北の森を覗いてみる。
在った!
あんまり地味な色なので
今まで全く
気がつかなかったんだ。
よく見ると枯葉に埋もれて
あちこちに咲いている。

石垣の春蘭は三頭山で
樹麗と見つけ目白で育て
株分けして山荘に移植。

でもきっと仲間の声が
北の森群生地から聴こえて
お話してたんだね。

山荘開き後13年目の
新発見!群生地

群生する春蘭



4月9日(日)晴れ  於 山荘ゲートにて

どうして
その麗しい顔を
見せてくれないの?

山荘に来てから
もう10年以上にもなるのに
未だ一度も
振り向いてもくれないね。

とっても綺麗だよ。
もっと自信を持って
太陽を見上げてごらん。
恥らう片栗





Index