その21夏ー2007年葉月
葉月2・3週・・・生きている宝石と山荘
8月11日(土)晴 山荘居間にて |
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ワイングラスを傾けたら 《飛ぶ宝石》と呼ばれる《唐金蜻蛉》がキラリと身を翻しスタンドの笠に止まった。 あれっ!いつの間に居間に飛び込んだんだ。 さてはワインを狙っているな! ・ 庭の池にはいろんな蜻蛉がやって来る。 池の浮島で交尾したり、睡蓮の葉に止まり尾を池に入れて産卵したり・・・。 ドアの網戸をほんの少しでも開け放しにすると 興味津々ですぐさま居間に飛び込んで来る。 ついでに蝶、蝉、蚊、蚋等なんでも、我が物顔で侵入して来る。 だから決して開け放しにせず直ぐ網戸を閉める。 その僅かな隙を狙って《唐金蜻蛉》は山荘侵入に成功したのだ。 ・ 唐金とは銅と錫の合金・青銅のこと。 青銅のような胸にスタンドライトの光が反射し翡翠の耀きを放つ。 複眼に乱反射する光は宝石を嘲笑うがごとく眩く煌く。 《飛ぶ宝石》君!一緒に呑むかい! |
油蝉変態 土から出てくる蝉幼虫は 土を付けて出てくる。 ・ だが何故か 油蝉の抜け殻には 土は付かないと言う。 ・ よく観察してみると 確かに土は付いていない。 どうして? ・ 雨後の土が軟らかい時 幼虫は 土を掘って出る。 きっと油蝉は乾燥土を 物ともしない強烈な スコップを 親からもらったのだ。 |
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子供から大人に成長する時 蝉は抜け殻を残す。 人間は何を 残すのだろう? ・ 土中で必要不可欠であった その殻は 自由に空を飛べるようになった 蝉にとって全くの不要物。 ・ 殻は例えば玩具?違うな。 必要不可欠といえば親か? そうなのか? ・ 天から墜落した蝉が 逆さになって考えている。 触ったら「ジージー」と喚いて 飛び去った。 |
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8月11日(土)晴 奥庭にて |
殿様飛蝗交尾 赤い点の謎 親子かな? と思ったら大間違い。 トノサマバッタの雄は雌より ずーっと小さいのだ。 ・ つまりこれは 雄が雌に乗っての立派な 交尾なのである。 ・ 普段は人の気配に敏感で カメラを向けられないが 交尾に熱中してるのか 逃げない。 ・ 気になるのは 上画像の油蝉と同じ赤い点。 赤い外部寄生虫は 宿主の死後 その死体を餌にして 何に変貌するのか? |
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碁斑髪切虫 木の殺し屋 ゴマダラカミキリが 十数本在った山荘の 最後の白樺を食い尽くす。 ・ 白樺が枯れる度に 毎年新たな木を植えたが 2,3年で倒されてしまう。 ・ 防虫農薬を撒いて白樺を 保護するか 白樺の生命力に任せ 自然の淘汰に委ねるか 山荘主は悩み続けたが ついに結論が出た。 ・ この白樺が山荘庭の 最後の白樺になるのだ。 |
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8月16日(木)晴 前庭にて |
黄金蜘蛛のX 隠れ帯 一瞬目を疑った。 X型の蜘蛛の巣なんて 見た事がない。 ・ 彼は何の為にXを描くのか? これじゃ、まるで ここに巣が在りますよと 獲物に 教えているようなもん。 ・ じっくり考えてみる。 どうも脚の形と 関係がありそうだな。 ・ 数時間後に再び覗いて 吃驚! |
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Xとなった蜘蛛 澄ました顔し 8本の脚を4本にして 自らXに なっているではないか。 つまりこれは 我が身を獲物から隠す 隠遁の術。 ・ 術には感心するが 問題は獲物が来る方向。 手前から来るか 奥から来るかこれでは 50%の隠遁。 ・ しかもこの巣は壁の上に 造られ壁と巣の間は 僅か数十センチ。 その数十センチの方向に 対し身を隠している。 これでは獲物は来ないぜ。 |
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森 の CD 奏でるは? 森や山稜を 駆け巡る朝トレに アキレス腱炎が変更命令を 下してから 走るのを止めた。 ・ 速度が落ちた途端 今まで見えなかった 森の貌が 見えるようになった。 ・ 森に沢山の 蜘蛛の巣CDがセットされ 妙なる音色が 流れている事に 改めて気づく。 ・ こうして緩やかに森で 終焉を迎えよう。 |
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8月16日(木)晴 前庭にて |
ガガ芋の花 ガガ芋の花が これ程までに優雅な 天鵞絨(ビロード)だとは 驚いたな! ・ 農道を走り抜ける視野に チラリと映じた薄紫。 あれっ! 何だろう? ・ 確か昨年はここに 《ガガ芋》の実が成っていた 筈なんだが。 調べてみたらガガ芋の花。 ・ ガガ芋の実は船となって 終焉の楽園・常世へ いざなうと言う。 ガガ芋の種は強精薬。 |
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彼岸花科 夏水仙 あちらの国と言う意味では 常世と彼岸は 似たようなもんかと 呟いたら 耳聡く聴き付けた夏水仙が もみじの幹の裏で 彩を発した。 ・ 『楽園と涅槃を一緒に するなんて脳構造は どうなってんの?』 ・ そういえば君は彼岸花の 仲間で先に葉が出て 葉が枯れてから 花が咲くんだったね。 生死を司る葉を 総て捨てて 到達した開花なんだ。 |
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8月17日(金)晴 前庭にて |
水 擬 宝 珠 花の五線譜 落葉樹の森は 早春の若葉のような 透明な緑に 満たされていて 心がスキップしてしまう。 ・ この北峠に至る 落葉樹の森を抜け出ると 視界が一気に開け 光が四方八方から降り注ぐ。 ・ この瞬間が堪らなくいい。 スキップしていた心は 光に溶けて ぐるぐる廻ってスーッと 渦を巻いて こんな風に水擬宝珠になる。 |
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大待宵草と羊雲 風たちぬ 高積雲ですね。 1万メートル上空の 氷の粒ですね。 ・ あんな風に空が羊で 一杯になると 秋がやって来るんですね。 ・ 月見草が呟くと 後ろで薄が体を揺らしながら 嬉しそうに応える。 ・ もう直ぐ僕の出番です。 9月の満月の夜には 何たって僕とお団子ですよ。 ・ 山荘では雑草以上の悪役で 常に刈り取られている薄も ここではこんなに大きく! |
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8月17日(金)晴 北峠入口にて |
2年目の西瓜 夕顔対策成功 昨年は酷い目にあった。 西瓜の接ぎ木苗が 総て夕顔になってしまい 1つも食べられず 西瓜0の年を記録したのだ。 ・ 夕顔の強烈な生命力を 利用して夕顔の苗に 西瓜苗を接ぎ育てるが うっかりしていると 接苗を無視して夕顔だけに 成ってしまうのだ。 ・ 今年は夕顔の葉が出る度に 毟り取り ついにここまで 漕ぎ着けたのである。 |
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瓜 坊 アンデスメロン メロンは沢山出来たが 甘さが足りず 失敗作である。 ・ 数年前に熟れたメロンが 滅法美味くて 気をよくしてその後も 毎年作り続けたが どうも上手くいかない。 ・ 馬鹿の1つ覚えで 有機肥料だけの栽培を 繰り返すのは限界なのか? アンデス君 どうなの? どうしたら君はもっと 美味しくなるの。 |
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8月16日(木)晴 西畑にて |
プチトマト豊穣 光の子供 真夏の太陽を そのまま吸い込んで 小さな太陽を 沢山ぶら下げて。 あなたは太陽の子を 産み出す 草だったんですね。 |
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やっと熟したぜ とんもころし 芽吹いたばかりの 小さな芽を食べられてしまう。 鹿か野兎か それとも猪の仕業か? ・ 仕方なく高さ1メートル以上の 網をフェンスにして 畑の周りに張り巡らす。 そして再度種蒔きを行い 発芽を待つ。 ・ 再び食べられフェンスを点検。 頑丈な網が食いちぎられ 大きな穴が開いている。 針金で補強。 ・ そんな繰り返しで やっと実ったトンモコロシ。 |
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8月16日(木)晴 西畑にて |
爛熟無花果 朝のフルーツ 時間を気にせず ゆったりと山荘の夏を 過ごしたい、との願いは 中々実現しない。 ・ 現役中の夏休みは 常にヒマラヤ遠征で 日本に居ない。 今年こそと意気込んだが 8月初旬は パプア・ニューギニア 来週からはボルネオ沖の ラヤンラヤン島でのDV。 ・ 今朝が8月最後の 山荘での朝食なのだ。 石卓横の無花果をもいで 割ってみると美味しそう。 朝のワインとよく合うね。 |
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撥ね出し桃 村人の贈り物 こんなに美味しそうなのに 割れ目があるので この桃は商品化されない。 ・ こんな桃が山荘周辺の 道や畑に落下して ごろごろしている。 ・ 勿論美味しさは無傷の桃と 全く変わらない。 むしろ完熟してるので かえって美味しいくらい。 ・ 山荘前の桃畑の主が この撥ねだし桃を 箱に詰めて沢山持ってきた。 バイクで走っていたら バイクの篭にも村人が 沢山の桃を放り込んでくれた。 桃とワインも ぴったりなんだよ。 嬉しいな! |
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8月19日(日)晴 前庭にて |
光の朝食 黄金虫 前庭の石卓は 山荘の朝食を世界で一番 豪華で美味なものに 演出する。 ・ 畑や芝に朝の散水をする。 しっとり潤った石卓下で エルガーの《愛の挨拶》が 流れ始めると 草花や蝉や蜻蛉たちが 音色に合わせ 身を揺すり奏で舞う。 ・ 南の木立から洩れた 真夏の強烈な太陽が 黄金虫の背に 丸い虹を描く。 ・ この光の中で君も僕も もうすぐ死ぬんだね。 |
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干乾びた兜虫 夏の死 この日、国内最高気温 40.9度を 熊谷と多治見で記録。 ・ 74年ぶりに過去最高記録 40.8度を記録更新。 熱中症による死者11人。 ・ 同日8月16日 宇宙航空研究開発機構は 北極の海氷面積が 史上最小の530.7万平方` になったと発表。 3年前と較べると 日本列島4個分の縮小。 ・ 干からびた兜虫が ガイヤの近未来を暗喩する。 |
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8月16日(木)晴 前庭にて |
金 紋 蛾 漆黒と金 薄暗い森に一際鮮やかな 金の輝き。 よく観ると何だか人の顔に 似た文様。 珊瑚海で見た人面針千本 みたいだな。 ・ 夜に飛ぶ蝶は蛾なんだが この蛾は昼飛行し 蜜を求める。 食草はリョウブなので リョウブの多い 山荘周辺には もっと沢山居てもいいはず。 ・ 漆黒に金だなんて 中々渋いね。 |
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蝦蛄貝に死す ナナフシ 獲りたての鮪や蝦蛄貝を その場で調理し 刺身三昧の日々をおくった パプア・ニューギニア。 ・ その時の蝦蛄貝を 山荘に持ち帰り バケツに入れて漂白。 ・ 数日してバケツを覗くと ナナフシが 貝に張り付いている。 何を想ってバケツに 飛び込んだのだろうか? ・ 遥かに遠い南半球の 蝦蛄貝に見出した 自らの影に惹かれたの? |
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8月17日(金)晴 奥庭にて |
森の目覚め 漆黒の花 太陽が最初の光を 森に投げかける瞬間は いつだってワクワクする。 ・ 山荘のプチ天文台 ガニメデに上がって久々に 森に生命を重ねた。 ・ ワクワクしながら 生命讃歌に身も心も 委ねているのに 眼に映じるのは 実態の失われた漆黒の影。 ・ 最初の光が映し出す 耀かしいあの生命は もう遠い処へ 行ってしまったんだね。 |
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鹿の落し物 4本目の角 山荘夏休みの最後に プレゼントされた 大きくて立派な鹿角。 ・ 枯葉に紛れ山稜で 待ち伏せして 山荘主を驚かしたんだ。 ・ その時の山荘主の 嬉しそうな驚きの声は 今だって森に残っているぜ。 ・ 岩の上に置いて見たり こんな風に幹に 乗せてみたり そりゃ、おおはしゃぎさ。 ・ 右肺下葉背骨側に 肺野型の線癌が 侵攻を開始したのを知ってか 知らずか おおはしゃぎ! |
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8月17日(金)晴 東森にて |
週末から人工孤島ラヤンラヤンまで、ちょっと出張です。
ボルネオ島から南シナ海に浮かぶ絶海の人工孤島へ今年最後の小型機が飛ぶそうです。