山荘日記

その49冬ー2009年師走

 

12月1週・・・・記憶の回廊・都の森編





12月2日(水)晴 新宿御苑・イギリス庭園
暮れなずむ都の森
夕日に舞う銀杏

チャリンコで早稲田の
面影橋までグイーンと降りて
明治通りを花園神社
まで飛ばすと
新宿御苑はもう目の前さ。

そこで本を一冊
小脇に抱えてよく行くんだ。
夕日に間に合うかなと
思ってイギリス風景式庭園に
跳び込んだら
真黄色の銀杏を赤く染めて
正に落日寸前。

1か月前の山荘の銀杏より
華やかで、どこか
シェイクスピアの舞台を
思わせるなと感心。

広大な芝生に
巨木を配したイギリス庭園の
長ーく延びた影を追って
暫し童心に帰る。



メタセコイアの森に
NTTドコモ代々木ビル


五代将軍の綱吉に
気に入られた
柳沢吉保(川越藩主)が築園した
六義園だって
自宅横の不忍通を
スイッと降れば直ぐなので
お馴染み読書スポット。

特に築園を見下ろす
藤代峠はお気に入りだが
このメタセコイアの
森には及ばないな。

深い森を何処までも
歩いて行くと
高いメタセコイアの樹間に
突然ドコモタワーが
摩天楼のように聳えるんだ。

知っていても
森と摩天楼の
この瞬間の出逢いには
胸が躍るね。
生きた化石と
現代文明の最先端建造物
との時空を超えた邂逅。

12月2日(水)晴 新宿御苑・母と子の森

300万年の眠りから覚めたメタセコイアが目にしたのは
自らの10倍の樹高272mで天空にそそり立つドコモタワー。

眼を閉じて石の中に300万年眠りアファール猿人に還る。
再び眼を開き300万年後の
私が目にする光景がフラッシュされる。
その瞬間が迫り胸がときめくのだ。
 


《書簡・メタセコイア》

なぜメタセコイアは300万年前突如世界から姿を消し
中国四川省磨刀渓村だけに生を留めたのか?
最古の人類ラミダス猿人の後を継ぐかの如く出現した
メタセコイアはラミダスの女神《アルディ》から
何らかのメッセージを託されたのだろうか?

ラミダス後のアファール猿人はメタセコイアに秘められたメッセージを
解読しメタセコイア抹殺を企てたとすると
メッセージの内容は何であったのか?
メタセコイアの森に超然として佇む現代のメッセンジャーNTTドコモとは
そもそも何者なのか?


12月2日(水)晴 新宿御苑書簡に隠されたドコモタワー

10月2日の朝日朝刊記事《440万年前のラミダス猿人》が
メタセコイアの森に去来し私の300万年前のイマージュを掻き乱す。

そうかメタセコイアのDNAそのものがラミダスの書簡なのかも知れない。




12月2日(水)晴 新宿御苑・日本庭園
お気に入り読書庭
遠景・ドコモタワー

さて何を持って行こうか?
リトルアリョーヒンが
脱出した処まで読んだ
「猫を抱いて象と泳ぐ」も
いいし再読中の
「もの食う人びと」もいいな。

借りたばかりの
「素数に憑かれた人たち」に
しようかな?
それともグリシャムの
「謀略法廷」にするか?

悩んだ末「謀略法廷」を
抱えて日本庭園の
お気に入りの芝生へ直行。
ここは奥まった芝生で
いつも人影は少ないが
今日も1組しかいないぞ。

芝生に寝転ぶと
手前の植え込みに隠れて
人影が消えた。
この広大な庭園で突如
1人になってしまった。
   


森の位相変換
モード学園コクーンタワー


落日がコンクリートの森を
薄い薔薇に染め
常緑の緑と紅葉した赤が
補色の不協和音を超えて
晩秋を謳う。

光ならば透明に
絵具ならば無彩色に
なってしまう補色。

補色のデュエットこそ
晩秋を謳うに相応しい。
躍動の終焉唱が
透明になるか無彩色になるか
耳を傾けながら
暫く読書に熱中しよう。

12月2日(水)晴 新宿御苑上の池
活字の森からふと目を上げ外界を見渡す。
テッコンキンクリートがにょきにょき生えて
森の上に森を形成している。

その森が池面に光を落とし蜃気楼のような架空の森を生み出す。
森の上に硬質の森が在り森の中に幻の森が在る。
3相の森に寝転び4つ目の活字の森に彷徨う。
森がラテン語の死・Moriと同じ音であると知った時の
衝撃が活字の森で不意に甦る。



 
12月2日(水)晴 新宿御苑玉藻池
 密使ダイサギ
ココ島の邂逅以来?

あれ!ココ島に上陸した時
出逢ったGarza(浜鷺)だ。
でもここは海じゃないから
浜鷺ではない。
大体日本には浜鷺なんて
居ないはずだな。

嘴先端は黒くないので
中鷺でもない。
残るは大鷺しかないな。
しかしどうして
何処からこんな新宿の
ど真ん中にやって来たのか?

池ではオシドリ、真鴨
金黒羽白、軽鴨、カイツブリが
泳ぎ廻っているが
大鷺は見当たらない。

《新宿御苑の野鳥たち》にも
記録されていない。
若しかすると今日この瞬間
だけ姿を見せたのかも。
きっと誰も
気付いていないのだろう。
さてはラミダスの密使?
   




プラタナスの並木
誰も座っていないベンチの列

《記憶の回廊》として
インプットされ
フランス式整形庭園が
新宿御苑のイマージュと
なったのは大学生の頃。

何故《記憶の回廊》なのか?
枯葉の舞う
プラタナスの並木を
逍遥しているうちにここが
回廊の原風景だと
思いあたった。

ベンチに1人でも人が
座っていたら
その記憶は決して索引に
姿を現しはしなかった。

あの日と同じように
人影の絶えた並木であった
からこそ原風景に
辿り着いたのであろう。

あの頃から私の
《記憶の回廊》には
人が居なかったのだ。

12月2日(水)晴 新宿御苑フランス庭園




12月7日(月)晴 自宅からのDawn

ラミダスが最古の人類であるならば最初の知の曙光が
放たれたのは300万年前である可能性が高い。

記憶の回廊の彼方に知の曙光が微かに揺らめく。
早朝トレーニング
トレーニング中の夜明け

人類の夜明けを
高らかに告げるラミダスの
《アルディ》は
エチオピアで1993年2月
に発掘された。

果して今まで最古と
考えられていた
アウストラロピテクス属

(アファール猿人、アナメンシス猿人)
よりも古い猿人であるのか?

自らエチオピアで化石を
発掘した東大総研博物館の
諏訪教授は
こう述べている。

「ラミダス猿人が
新しい人類なのは特徴的な
歯が数点揃った92年の
時点でわかった」

発見から15年の歳月をかけて
米科学雑誌サイエンスに
11本の論文を公表し
CA大バークリー校のティムら
総勢47人のチームは
ラミダスが最古の人類との
解釈を述べた。

   



石と鉄の茂る森
Dawnラミダスの書簡

初めて2足歩行し
石器を使った猿人が
壮大な300万年後の未来に
向けて放った
書簡の内容は何だったのか?

知の曙光をバトンタッチした
筈のアファール猿人は
なにゆえに
中国四川省磨刀渓村だけに
書簡・メタセコイアを残し
他の総てを
世界から抹殺したのか?

そんな途方もなく
根拠のない
奇想天外なアナロジーに
ビル群を照らし出す
曙光が肯く。

大地から無数に
ニョキニョキと
聳え立つメタセコイアに
代わって林立する建造物。
情報を司るドコモの
尖塔が一際鋭く天を衝く。

12月7日(月)晴 自宅からのドコモタワー

300万年後の知的存在の所産を睥睨するドコモタワーは
多分書簡・メタセコイアの内容を知っているのだろう。
人類が叡智を傾け築きあげてきた壮大な未来図の彼方に
常に終末論がちらつくのとラミダスの書簡は
どこかで結びつくのかも知れない。






新雪とゆぴてるヌーボー




12月5日(土)雨 山荘前庭
ワイン瓶詰
雨のゆぴてるヌーボー

午後から90%の確率で
5日の山荘は雨。
で、予報通り降ってきた。

バイオリン演奏も
チベット遠征報告も流れて
良かったなと
思っていたが村上さんは
スペアリブを
仕込んでくれたし
馬渕君も久しぶりの
山荘活動を愉しみにしてるし。
3人での瓶詰決定。

そこで雨の中
ワイン瓶詰作業を開始。
ワインセラーで
瓶詰
すれば濡れなくて済むが
午前中に石卓での
準備を完了してるので
今更セラーに戻れない。

まさかこの大きな日傘が
雨傘として役に
立つとはね馬渕君!
   



純粋ワイン完成
酸化防止剤、添加物無し

これが総て手作り
だと云うのだから驚き!
あーこの地下室の
コンクリート打ちだけは
業者に任せたけど。

ワイン造りは先ず
リサイクルの瓶集めから
始まるんだ。
使用済み瓶を洗浄し
ラベルを剥がす。

醸造過程は省いて
本日の瓶詰作業を述べると
馬渕君がタンクから
瓶にワイン原液を澱引く。

村上さんが液量を調整して
山荘主がコルクを打つ。
コルク上端を
ナイフでカットしシールを
被せ熱処理する。

最後に2009年と
「ゆぴてる」のラベルを張る。
さあ、これで1年間
高貴な香りと味が堪能
出来ると云う訳さ。

12月5日(土)雨 ワインセラー



 
12月6日(日)曇晴 扇山山頂
山頂もすっかり落葉
宴の後の朝トレーニング

昨夜は《ゆぴてるヌーボー》で
乾杯し村上シェフの
スペアリブを始めとする
沢山の手料理に舌鼓。

山荘主手作りの
お得意スイーツK2
ヌーボーによく合うし。

山荘産蜂蜜とボルネオの
黒ラム、バター入りの
スイートポテトK2の後は
ババロア、山荘産干柿
カマンベール、苺を
持ってログハウスで2次会

それから確かアンデス遠征の
記録ビデオを観て
更にカラオケまでやって
それでも6時起床で
朝トレーニングありだもんね。
   




木の間越しの峰
押し寄せる雲海

悠絽と舞瑠は
食べきれぬ程の
スペアリブの骨を前に
興奮し声が裏返ってしまい
そりゃもう大変!
ご満悦で扇山に出発。

昨夜山々に
雪を降らせた雲海が
牧丘と福生里の谷から
迫り上がり
森を呑みこみ山頂を包む。

木立を透かして
雲海に屹立する山脈が
見え隠れする。
本格的に雪化粧した
奥秩父や大菩薩が
手招きするのか
犬たちが実に嬉しそう。

もうすぐこの山頂にも
雪がやってくる。

12月6日(日)曇晴 扇山山頂



12月6日(日)曇晴 山荘散歩路

芯や種は取らずそのまま、皮は剥かない。
縦横6〜8個くらいに刻みホワイトリカーに漬け込む。
漬けてから2ヶ月程度で淡黄色になる。
半年程度の熟成を経て飲み頃。

今から漬けても呑めるのは来年の夏なんだね。
花梨の香り
花梨酒を造ろう

扇山を下ると
黄色い果実が森に映え
冬のガラスの空に凛とした
音色を響かせる。
花梨の最後の演奏会。

甘酸っぱい独特な香気を
漂わせ大地では
晩秋を黄色に点描する。
花梨のお別れ絵画展。

ジャムにしても
花梨酒にしても美味しいのに
誰も拾わないね。
どうしてだろう?

鹿や猪、狸も食べないから
こんなに沢山
落ちているんだね。
もったいないから幾つか
拾って花梨酒造ろう。

レシピ
ホワイトリカー:1リットル
花梨:3個
砂糖:200グラム
   



高芝山、小楢山?
それとも雁ケ腹摺山?

やっほー!
ついに雲海が冬将軍の
息吹に蹴散らされ
息絶え絶えになって
消えていくぞ。

未だ高芝山の中腹に雲が
しがみ付いているけど
北風小僧の寒太郎も
追い立ててるし
空が群青に染まるのは
もうすぐだ。

どうも1500m辺りから
上の山にはたっぷり
雪が降ったようだな。
となると今冬初めての
新雪ラッセルが愉しめるぞ。

舞瑠、どの山に行きたい?
高芝山それとも小楢山。
思い切って1985mの
牛奥雁ケ腹摺山にするかい?

12月6日(日)曇晴 高芝山

「えっ!今、扇山に登ったばかりなのにこれから
また山に行けるの?嬉しいな。
もう何処でもいいから連れてって!」



雪の小楢山



 
12月6日(日)曇晴 小楢山
雪だ!
やっぱり雪だったんだ!

車が焼山峠に着いたら
すっかり銀世界。
悠絽と舞瑠は車から
跳び下り雪に鼻を突っ込み
走り回り大はしゃぎ。

森を切り開いた
防火帯に入ると木立が
長ーい影を曳いて
新雪に無数の影絵を
描いています。

嬉しくて舞瑠は
ぐんぐん全力疾走するので
馬渕君は汗だくで
ゼーゼーハーハー。

悠絽も飛ばしたくて
もう我慢出来ないのだが
「駄目!もっとゆっくり」
と村上さんに叱られ
恨めしげに
じーっと村上さんの顔を
見上げています。
   




ふかふかでいいな!
ラッセルにはしゃぐ悠絽

雪国の人々にとって
雪は人を閉じ込め
仕事を奪い生活そのものを
阻害する敵でしかない。

犬が雪に興奮し
歓び走り回るのは野生の
本能に依る処が大きい。
匂いだけでなく
雪の足跡を追っていけば
獲物にありつける。

犬でもない山荘主が
雪に心躍らせるのは一体
どうしてなんだい?

そりゃね多分、青春時代から
雪や岩、氷河の世界に
慣れ親しんできたので
その世界に出逢うとまるで
そこに本当の自分が
いるような気がするんだよ。

12月6日(日)曇晴 的岩上部

つまりさ、人は最も多感な青春時代に何と
出逢ったかによって価値観や感性が創られるんだ。



12月6日(日)曇晴 小楢山山頂

どうやら馬渕君も村上さんもこの話に乗ったらしく意気投合し
12月から1月にかけての冬休み舞瑠、悠絽と共に
八ヶ岳に行こうと云うことになりました。

登山前によくブラッシングして毛を落としておかないと
テントで抱いて寝るわけにはいかないぞ舞瑠、悠絽。
度はテント泊だぜ
八ヶ岳にしようか?

で、どうだろう。
実は前から君達を3千mの
冬山に連れて行けないか
考えていたんだけど・・・

問題は2つある。
1つは果してマイナス20℃に
耐えられるか。
もう1つは凍りついた岩を
登れるかだが
この問題は易しいルートを
選べば解決出来る。

最初の問題もアラスカの
犬橇レースでは
マイナス30℃にも耐えてるし
南極では樺太犬の
タロ、、ジロが
越冬して生き延びているし。

そこでだ。さしあたり
八ヶ岳にでも行ってテント泊し
硫黄岳(2760m)にでも
登ってみようか?
   





 反転する認識
12月6日(日)曇晴 扇山山頂

ほんの僅かに空の蒼が垣間見えるものの世界は唐突に彩を失った。
求め続けた山顛で、反転する認識がいつの日か訪れるとの
予測が無かった訳ではない。

ただ反転する認識が《森羅万象の意味の喪失》を伴い
予測を遙かに超えた渺漠たる寂寥であったことに、うろたえてしまったのだ。





12月2週・・・・逢えて嬉しいなチャラ!


氷雨の雲海去る
チビ、森人も捕らえられず

冷たい雨が
どしゃどしゃ降って
これじゃ犬を山に
連れ出すのも可哀想。

でも土曜日の朝には
激しく雲海が流れ
太陽が山荘を包み
絶好のトレーニング日和。
なのに犬が来ません。

いつも森人が金曜日には
連れて来てくれるのに
どうしたのかな?

心配になって迎えに
行ってみたら
「いやーチビが捉らなくて
連れていけねーずら」

チビは森人の庭を
自由に走り回り
森人が呼んでも紐を
着けさせません。

チビは飼い主にさえも
決して気を許さない野生の
本能を秘めた半狼。

12月12日(土)晴 テラスから



 
12月13日(日)晴曇 テラス

あれっ!チャラがテラスにいるぞ。
あれっ!チャラだ!
いつきたの?

仕方なくオバマだけを
バイクに繋いで
山荘に向けて走りだしたら
な、な、何とチビが
全力疾走してバイクの先を
リードするではないか!

人間に慣れないチビも
山荘は好きなのだ。
紐無しで暫く山荘の自由を
謳歌していたが
ついに山荘主の作戦に
引っかかった。

山荘より好きなのは
車に乗って遠くの山に
出かける事。
そこで車での捕獲作戦。

車のドアーを開く。
チビは大喜びで飛び乗る。
そこで御用だ!と首輪に
紐を着けられ一件落着。
   




チャラとのお喋り
テラスの階段もやっと!

そうか犬を迎えに
行った時チャラは山荘主を
見て山荘での
愉しい日々を思い出し
老いに鞭打って
山荘までやって来たんだ。

ようこそチャラ!
逢えてとても嬉しいな。

テラスの階段を
登るのもやっとのチャラが
山荘主を見るや否や
飛び跳ね抱きつき
大はしゃぎ。

テラスでは
ワインを呑む山荘主を
じーっと見つめたまま
視線を外しません。
きっとチャラも山荘主に
逢いたかったんだね。

12月13日(日)晴曇 テラス



12月13日(日)曇晴 西畑

水道タンクも凍結しないよう毛布で巻いて
柿、林檎、梨、杏子、李の枝落としも今やっておかないと
来春の芽が膨らみ始めてしまうし、忙しいな!
と云いながら森に入って落葉を大きな袋に詰めて西畑に
運んで堆肥造りまでやったんだよ。
おかげで夜は習慣性ぎっくり腰再発でダウン。
これじゃ犬との冬山テント合宿なんて実現出来そうもないな。
冬仕度急がし
地中貯蔵、白菜巻き、スタッドレス交換
水道タンクの毛布巻き、落葉集め
果樹枝落とし



変な大根!
何だか手みたいだな。
そうか山荘主の手抜きか。
種蒔き前の耕運が
不十分だったので土が
硬くて長ーく延びられず
こうなったんだ。

大きくなった大根、蕪を
掘り出して冬支度。
山荘の最低気温は最早
マイナス。
畑の野菜は凍りつき
全滅してしまう。

土中に埋めて
凍結を防がねばならない。
大きな大根30数本と
大きな蕪もついでに埋めて
白菜は外側を紐で巻いてと。

そうそう今週は
雪の予報も出ているので
車のタイヤも
スタッドレスに変えねば。
   





12月3週・・・・氷点下のアートと炎の宝石




凍結された生命
死の花に織り込まれた虫引虻

蚕が絹の糸を口から
吐き出すように
枯草の茎が絹の布を
織り出した。

天女の羽衣のような
透き通った華麗なレースに
織り込まれた生命の影。
虫引虻だろうか?

清楚な霜柱の花弁
集う虫を狙って
或る秋の日に霜柱の茎
身を潜めたのだ。

足早に秋が過ぎ去り
虫引虻は寒さで
動けなくなりそのまま
霜柱の茎にとどまった。

そして冬将軍の到来。
茎から吐き出された華麗な
レースに編み込まれて
羽衣になったのだ。

12月20日(日)晴 小倉山の森




 
  冬森の宝石     
 





 
12月20日(日)晴 小倉山の森
氷花の群落発見!
しもばしら・氷の花の森

ふと横道に迷いこんで
みようかと思って
森の小道をずんずん
奥まで進むと
枯葉の絨毯に咲き乱れる
無数の氷の花々。

ほっほー
こりゃ凄いぜ!
こんな処に誰にも知られず
ひっそりと美しく
凛として咲いているなんて!

更に落葉樹の森を登ると
そこかしこに
キラキラと白銀の光を
放つ冬将軍の宝石。

夜になると狸や狐
鹿や猪も出て来て、さて
どの宝石で飾ろうかと
喧しく喚くのだろうか?
   



     
冬
森
の
宝
石
   
   
     




小川の宝石
マイナス6℃のアート

森に至る小径には
小川が寄り添っている。
水田に水を引くために
長い年月をかけて
村人が竹森川から
引いた小さな疏水である。

結構な傾斜なので
速い流れが
岸辺の草や苔に跳びはね
冬になると
ご覧のシャンデリアを
到るところで創りだす。

冷たく長い夜が終わり
最初の光が
シャンデリアに差し込む
瞬間が待ち遠しい。

ほら、その瞬間
氷に閉じ込められた命が
新たな生命を帯びて
光輝くんだ。

12月20日(日)晴 福生里



 
12月20日(日)晴 居間

沢山あるけど朝のこの美味しいワインさえ
在れば山のような仕事も又愉し。
枯露柿とカマンベールを食べると焼きあがったばかりの珊瑚海が
顔を覗かせて南太平洋のDVにおいでと囁く。
枯露柿とヌーボー
カマンベールと太陽

なにしろ忙しいのだ。
師走の仕事を
メモしたら15項目もある。
優先順位を書いて
さしあたり本日中に
やらねばならぬ仕事を
決定し時間配分する。

朝トレーニングで犬と
汗を流した後のワインは
仕事との闘いの前の
安息である。

さて先ず
お世話になった方へ
礼状を添えて山荘ワインを
送って、それから
キッチン換気扇の油落とし
数十鉢の観葉植物の
ハイポ(肥料)交換と
受け皿、鉢の汚れ落とし・・。

そうそう収穫したキウイも
腐らぬよう
新聞紙で包んで
段ボールに保存せねば。
   




大変だ5頭になった!
慌てて森人駆けつける

2頭だった犬が
朝起きたら、レレレ・・・
4頭に増えている。
悠絽と舞瑠に
森人のチビ、オバマが
加わっているのだ。

更に翌日にはチャラまでが
山荘にやって来て
5頭になってしまった。
早速森人から電話。

「犬が3頭居なくなって
しまったんだが
そっちに行ってねーずらか」

「来てますよ。
いやーさすがに5頭
は面倒見切れないので
引きとりに来て
くれませんか?」

12月21日(月)晴 山荘の森



12月24日(木)晴 中庭

まさか白菜を取り込む為だけに山荘に行く訳にいかないし。
今年も白菜漬け物は失敗か?
大きな白菜収穫
花梨酒と白菜漬物

大きな硬い花梨を
出刃包丁で8つに割って
砂糖200gと焼酎1リットルを
加え瓶詰してから
畑に放置されてる白菜が
気になった。

一応冬越し出来るよう
先週紐で縛っておいたが
幾株か漬け物にして
冬の味覚を愉しむのもいい。

だが数年前に失敗し
黴を生やしてしまったので
今回はしっかり陽に干してと
帰京間際に慌しく作業。

これで1週間後には
太陽をたっぷり吸いこんで
美味しくなるだろうと・・・。
帰京後レシピを見てガックリ。
漬け物白菜は半日の
日陰干しと書いてあるでは。
   





12月4週・・・アデオス2009年!



大晦日の大掃除
年1度のワックス掛け

大きなテーブルと
TVや座卓を移動したら
左の大窓に
高芝山がぐーんと迫り
右の窓に小倉山の
なだらかな稜線が横たわる。

更に右の大窓には
小金沢連稜から
雪富士が雄大に展開。
大パノラマを堪能しつつ
せっせとワックスを塗る。

それにしても
何と素晴らしいパノラマか!
17年前に
この地に初めて立った時の
静かな感慨が甦る。

世界の高峰を駆け巡り
息を呑むような光景に何度も
遭遇していながら
この地に立った時は
深く心を打つものがあった。

《とうとう巡り逢えたね。
随分探し求めていたけど
ここがその場所だったんだ》

(閑話休題)
それでね諦めていた
白菜の漬物。
余りにも長く太陽に干したので
重しをしても全然
水が上がらなくて・・・

で、食べてみたんだけど
こいつが驚き!
太陽の甘みがたっぷりで
めちゃ美味いんだ。
即一株を夕食で平らげて
自分でも吃驚!

12月31日(木)晴 居間




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