《D》 カカバン島DV

カカバン島

カカバンの島は、孤立した塩水湖で、その独自性は他に類を見ません。
何千年もの前に島は自然に隆起し、周りの海域から海洋生態系を切り離し
4種の触手のないクラゲとイソギンチャクなど、その塩水湖の中で全く独自で
他に類のないユニークで特有の生物層を作り上げました。
海洋生物学者はその湖の中で
多くの新種のイソギンチャク、ホヤ、ヒラムシや甲殻類を発見しています。
海岸線は、マングローブが周囲に並び、その丈夫な根は
海綿、海草、ホヤなどに覆われています。
透明度は、10-12mで、湖の最深部は、18mほど。潮の干満幅は、0,2m程度。
これは、海洋と湖をつなげる地下溝網が原因です。
誰もがシュノーケリングで簡単に見れる生物層のパラダイスです。
(e-DVより)



海水の湖
古代生命の棲む湖

思わず敲いてみたくなる
トライアングルの島。
島の南側に
壊れかけた桟橋があり
ここにゴムボートを着けて
垂直の梯子を昇る。

マングローブと熱帯樹の
ジャングルには
木道がつけられ10分程で
湖へ出られる。

木道からジャングルを
覗くと地面の凹凸激しく
熱帯樹が繁茂し
とても通れそうもない。
以前はアップダウンの
道があったと云うから驚き。

長い間、舟人達はこの島の
中央に湖が在ると
気付かなかったらしいが
さもありなんである。
湖に近づくには
このジャングルを越えねば
ならないのだ。

Jelly Fish Lake




Jelly Fish Lake
古代湖への潜水

重いDV器材を担いで
湖まで歩く訳には
いかないのでここでは
シュノーケリングである。

湖に突き出した
桟橋以外に人工物は
見当たらず太古の静寂に
支配されネッシーでも
出てきそう。

大地の隆起によって
海から切り離された湖で
独自な進化を遂げた生命。
さて出逢いは
どんなものかと早速
どぼん。



先ず無数のクラゲ

ウギャー!、うおー!
潜った途端、無数の
海月に出迎えられ驚き。
大きいのから小さいのまで
下から上まで海月、海月。

海月は長い触手を
持っているのが多いが
ここの海月は
触手が無いと云う

海底はぬるぬるで
動くと泥が舞いあがり
直ぐ濁って何も
見えなくなってしまう。

静かに静かに移動し
岸に近づくと
マングローブに絡んだ
海綿やホヤが
光を浴びて実に美しい。
Jelly Fish




Sea Anemone(DS:Jelly Fish Lake)
湖底に咲く花
花巾着ハナギンチャク

多い日で1日5DV
5日間で計21本DVに
シュノーケリングが加わるが
このプログラムに総て
参加するには
体調の自己管理が必須。

出発直前の検査で
白血球数が
下限値の3900を大幅に
下回る2730と判明。

5種の球の内、特に
好塩基球と好酸球が
10分の1以下の0.2%と
少なく体の防御反応が
低下して病気にかかりすいと
忠告を受ける。

全然関係無いこの白い
花巾着を見て
どうも肉体が白血球不足を
思い出したらしい。



平磯蟹
ヒライソガニ

なんだか出発前から
扁桃腺に痛みがあり
葛根湯を服用しつつ慎重に
ケアしてたが
この湖で突然爆発。

白血球が少ないと
防御が遅れ急激な発熱に
見舞われることが
あるらしいが,どうも
それが
やってきたらしいのだ。

平磯蟹の画面が
ぼやけているのはレンズに
着いた水滴が原因だが
湖から出たら
こんな風に視野がぼけて
発熱開始。

Gaetice depressus(DS:Jelly Fish Lake)





Flat Worm(DS:Jelly Fish Lake)
撮影:村上映子

古代湖の平虫

32℃の冷房を切った
暑い部屋で
寒くてぶるぶる震え
次のDVを休まざるを
えなかったのだ。

その後の夜のDVには
復活したが
残念ながら21DVの
達成ならず。

因みに今回のクルーズで
この21DVを総てクリヤーした
ダイバーは1人。
20本が私と単独参加の
勇ましい大和撫子の2人。

この湖の固有種らしき
平虫が呟く。
「高熱直後に夜のDVを
するなんて
そんなの少しも威張れないよ。
唯のあほさ!」

確かにあほである。
夜のDVの後
如何にあほであるかが
証明される事になる。



花海羊歯
ハナウミシダ


今にも回り出しそうな
海の風車。
一応動物の仲間で海星と同じ
棘皮動物門・海百合網。

海星の5本の腕を更に
増やして腕を羽のように
すると海羊歯の
出来あがり。

雄と雌が居て体外受精を
行うのだが
これが実に神秘的。
羽全体が生殖巣になっていて
羽枝の表面から
放卵と放精が行われる。

まあそこまでは
どうと云うことは無いのだが
生殖が
年間の特定の日の
特定の時刻に行われるのだ。

切り離した羽を実験室の
水槽に入れておいても
同じタイミングで放卵放精が
見られるというのだから
そのメカニズムは
神秘としか云いようがない。

Feather Star(DS:Jeltty)




Tunicate(DS:Jeltty)
撮影:村上映子
黒筋筒海鞘
クロスジツツボヤ

実に美しい
原索動物の首飾り。

《脊椎動物と
無脊椎動物をつなぐ》と
云われる原索動物。
海鞘はその中の
尾索動物亜門に属し
成長過程で変態するのだ。

幼生はオタマジャクシ様の
形態を示し遊泳し
遊泳生活後ホヤの形に
なって定住する。

幼生は眼点、平衡器
背側神経、筋肉、脊索などの
組織をもつのだから
限りなく脊椎動物に近い。

生命の首飾りが
DNAの二重螺旋に似てる
のは単なる偶然?



木の葉緑貝
コノハミドリガイ

発熱後のDVを1本
キャンセルし
サンセットDVを試みる。
カメラにアームを付け
アームに水中ライト
Sea&SeaのLX−15を固定。

勿論漏水しないよう
パッキンのOリングにも
グリスを塗ったのだ。
撮影開始して10分も経って
ライトに異変。

赤い液体が
電球周辺に発生し
使用不能になってしまった。
今回に限って予備の
ライトを用意してないので
ライト無しでの撮影。

村上のライトで被写体を
探してもらい
なんとかシャッターをきるが
露光がうまくいかない。
特にこのような小物は
像を捉えるのも困難。

Ornate Elysia(DS:Jeltty)



扁形動物門
ウズムシ網


黒ビロード地に
金粒を施し銀の縁取りで
贅を極めた
空飛ぶ絨毯・平虫。

軟体動物門の海牛と
間違い易いが
これはプラナリアの
仲間で海中を
ひらひらと舞うことが出来る。

どっちかと云うと
夜行性に近いので
ライトの光に反応したら
どんな光を発するのか
愉しみにしていたが
動く気配無し。
Callioplana sp (DS:Jeltty)



鹿の子黄背綿貝
カノコキセワタガイ

「ウミウシ ガイドブック」
での学名は
ケリドヌラ・ヴァリアンス
Chelidonura Varisns。

全く同じ個体が
「海の生き物
ウォッチング500」
では英名で
Head Shield Slugと表記。

さしあたり「兜海牛」と
なろうか。
となると和名の「鹿の子」
が気になる。

小さい時には和名の
鹿の子模様が発現していない
ものが多いとか。
これは未だ幼生か?
Head Shield Slug(DS:Jeltty)




Pseudobiceros Fulgor(DS:Jeltty) 
Newman図鑑

この撮影に成功するとは
考えてもみなかった。
小さな珊瑚洞窟の
天井に張り付いていて
容易に観ることは
出来ないのだ。

プチュが招くので
近づいて覗くと
観たことも無いペラペラの
平虫がシールのように
岩穴の天井に
張り付いている。

図鑑を調べてみたら
1994年に
レスリー・ニューマン
Leslie Newmanが
当地インドネシアで見出し
同定している。

明確な触角があり
海牛と見紛うが平虫。
多分もう2度と
逢うことはないであろう。


Newman & Cannon
1998


これもニューマン図鑑で
1998年に撮影され
同定されている平虫。
場所は同じくインドネシア。
この平虫との出逢いも
初めてである。

漏水してしまい
役に立たなかったライトと
共に浮上すると
満月に近い赤い月が
ぽっかり。

無限に続く夜の黒い海と
無窮の天空の闇が
世界を2つに分ける。
その闇の渚を
小さな黒い点となって
漂う生命が何とも儚い。
Pseudoceros Iaingensis(DS:Jeltty)




Sea Cucumber(DS:Jeltty)
錨海鼠
イカリナマコ

海鼠なのだから
食べられるのだろうが
食欲は湧かないな。

英名の海胡瓜は
長さから、和名の
錨は頭部の形状から
名づけたのであろう。

この最後の画像を撮って
母船に戻ってから
肉体の反逆が開始され
再び激しい嘔吐と発熱。

トイレに籠ったまま
闘いが続く。
吐くものが無くなっても
胃袋を裏返しにするような
嘔吐が続き消耗。

これ程までの激しい
嘔吐は
ヒマラヤ登山で訪れた
アフガニスタン以来。
32年ぶりのピンチ。
さてさて明日は
どうなることやら。




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