仙人日記
   その752012年衣更着

2月1週・・・・ ー11.6℃山荘の最低気温記録


氷柱の下がったキッチン蛇口
遂に水道管破裂
ー11.6℃(外)朝6時53分 −4,5℃(室内)朝7時13分
2月3日(金)晴 キッチン、トイレ


ひたひたと水が迫り居間は既に大洪水。
慌てて水源を追ってキッチンへ出るとマットがしっかり
水を吸い込んでこれまた大洪水。
川となった廊下に出るとトイレで滝のような轟音。
トイレとタンクを繋ぐパイプが破裂し
2箇所で天井に水が吹き上げているでは。

勿論、山荘は寒冷地用に作られており
水道管はヒーターが巻き付けられ凍結はしないのだ。
だが室内の水道管には凍結防止策はとられていない。
室内水道管の凍結防止は元栓を閉め水抜きを行えば良い。
今まで18年間それで問題なかった。
先週もしっかり水抜きし心配はしていなかったのだ。
大洪水は正に青天の霹靂。

破裂し水を噴き上げたトイレ水道管

山荘を開けキッチン蛇口の氷柱を観ても
「おー水抜きしておいたので
問題無し」と意に介せず。
「でもまてよ、トイレタンクの水抜きは
してなかったな」
と思い出しトイレタンクを覗くと完全凍結。
しまったと湯を沸かし注ぎいれる。
そのうち勝手に解けて問題は解決すると
楽観しすっかり忘れてTV観賞。
TVを観ながら変だなと足元を見たら洪水。

湯で氷は解けたものの
破裂した箇所から水が噴出したのだ。
翌日地元ホームセンターに
部品を買いにいくと
既に一部の部品は売り切れ。
この記録的寒さの被害は
山荘や地元だけでなく世界的で
東欧では2日までに寒波死者が139人。
頭から水を被りながらの水道工事で
更に風邪を悪化させ
最悪の週末でした。

漏電を示す配電盤
ばちん!
パソコン操作中に突然電気が消えた。
やべー!と配電盤に直行。
40Aと表示された左の主スイッチの
右隣の漏電スイッチが切れている。

つまり何処かで漏電しているのだ。
しかしその更に右の10箇所の
漏電箇所を示す
小スイッチは何処も切れていない。
(この小スイッチは漏電ではなく
超過電力時に切れるのだと後に判明)

凍結でポンプ停止、モーターに過負荷
となると漏電箇所を突き止めることは
出来ないのか?
後で東電職員から聴いたのだが
実は突き止める方法があったのだ。

この小スイッチを総て切にし
中央の漏電スイッチも切にしてから
小スイッチを1つ1つ入れ
漏電スイッチが切れる場所を探すのだ。


しかしこの時はそんな方法を知らず
総てのコンセントを外し試行錯誤。
それでも漏電は続き
漏電スイッチを入にすると切れてしまう。
帰宅時間が迫り
漏電箇所を突き止められず帰宅。

1週間後、冷凍庫の食品は解け悲惨。
この漏電原因が実は寒気による
水道管破裂であったと
判ったのは
水道ポンプのスイッチを入れた時。

異常音をたて揚水しないのだ。
そこで今週は水道屋から電気屋に変身
揚水ポンプ制御盤の修理。
山荘の仙人になるには
あらゆる知識技術が要求されるのである。


2月2週・・・・大歓迎するよ、地球外生命体のようなパラフさん! 


先ず池の上の木で偵察 2階トイレから

それから池に降りて水のみ 2階トイレから
隠れ山荘主・カケス
2月12日(日)晴 山荘池


大好物のどんぐりが庭にも森にも溢れているのだから山荘はカケスの極上レストランなのだ。
その上、奥庭には水のみ場となる可愛らしい小川が流れクレソンを潤す清水が池に注いでいるとあっては
カケスが群れを成して山荘を飛び交うのも無理は無い。
しかしどうだろう、そうならば山荘日記にはしょっちゅうカケス君が登場しても良さそうなのだが?
時には数十羽から百羽を超えるカケスが山荘に群れ、山荘はカケスに染められてしまうにもかかわらず
何故カケス君は山荘日記に描かれないのか?
そう実は一度もその麗しい藍と黒の容姿がアップされたことはないのである。

その理由は呆気ないほど簡単。撮れないのだ。
他の如何なる鳥よりも優れたセンサーを持っているのか、僅かに人の気配を感じると森の奥へ飛び去ってしまう。
2階部屋のカーテンの陰に隠れたまま静かな動作で望遠レンズを構える。その瞬間、鋭い目は人の気配を捉え瞬時に飛び去る。
ピント合わせの僅か1秒足らずの時間も許さぬ鋭敏なセンサーに泣かされ続け
鮮明な画像を手に入れることは叶わなかったのである。
それがどうだ、このシャープな画像。遂に撮ったぜ隠れ山荘主・カケス君!
撮れた瞬間、嬉しくて何度も再生画像を確かめ、画像を観てはお得意のスキップを繰り返し勝利の一瞬に酔いしれたぜ。



金盞花にもいいね

孔雀羽とも合うし
カケスの贈り物
2月12日(日)晴 居間

前庭にも奥庭にもカケスの羽は
沢山落ちている。
だが落ちているのは背から胸、腹を覆う
淡い茶褐色の羽ばかり。

麗しい藍と黒、ときには白を交えた
横縞模様の羽は
翼の推進力を生みだす外縁部に
僅かに在るのみ。
滅多なことで抜けたりはしない。
百羽を超えるカケスの群に
山荘の森が覆われた数年前の冬の朝。
丹念に森を探し歩き
きっと在るに違いないとやっと探し出した
麗しい藍と黒の1本。

確か貴重な1本と大切に
ガンダーラの仏像に飾っておいた筈。
在ったぞ、これだ!
鮮明なカケスの画像が撮れた
お祝いにこの麗しい羽を
山荘の住人達に紹介してあげよう。

ほらご覧!
これがカケス君の美学だ。

うーんエメラルドも悪くない

どうポリアンサス



うるさい白頭鳥(ひよどり) 2階イオからの前庭
前庭の欅の枝にとまり
ひょうーひょうーキーキーと煩く啼くのは
いつもの白頭鳥だな。
いつだったか前庭で倒れていた白頭鳥
助けてやったことがあって
与ひょうになって待ってたけど
待てど暮らせど《つう》になった美女は
現れなかったな。
さてはお前また騙くらかそうと参上したのか?

林檎の木で銜えた獲物を串刺しにし
《はやにえ》を作ってるのは百舌鳥だな。
《はやにえ》の位置がその年の
積雪の高さを表しているとか云うけど
いくら何でもそんなに高く
雪が降る訳ないさ、賭けてもいいぜ。。

百舌鳥の《はやにえ》? 2階イオからの西畑


氷晶植物・パラフとのアンサンブル
2月12日(日)晴 居間

小さな真珠を無数に鏤めた葉がきらきら光る。
あれっ!氷の粒かな、それとも水滴が光っているのかなとそっと触れてみたが冷たくは無い。
朝露に濡れた高原の草花のようでありながら、明らかに地球外生命体であるかの蠱惑的なインパクト。
観たことも想像したことも無いこの生命体の名・パラフはスワヒリ語で氷晶を意味する。
アフリカの氷晶と云えばキリマンジャロ山頂に広がる氷河。
30年もの星霜を超えて1982年8月9日のキリマンジャロ山頂の蠱惑的な氷河が甦る。
ほぼ赤道直下に在りながら氷河を戴くあのキリマンジャロの氷晶が造形した作品であるなら、肯けるような気がする。
恰もキリマンジャロからの使者であるかのように思えてパラフがいとほしい

この氷晶の正体は氷とは無関係な塩嚢細胞(Bladder Cell)と呼ばれる塩分を蓄える袋だと云うのだから驚きは広がる。
そんな植物が地球上に存在するとは考えてもみなかった無知の驚き。
濃い塩分は細胞の浸透圧を狂わせ細胞が細胞で在り続けることを許さないのに
逆に塩分を取り込んで塩嚢細胞に閉じ込めてしまうとはなんとも豪胆で痛快。

そのまま食べてみたら確かに塩味がして海葡萄のようにぷちぷちと歯触りも良くていっぺんで大好きになってしまった。
あんまり綺麗なのでカケスの羽と同じように山荘の仲間に入れてあげようと先ず卓上の花に載せてみた。
あれーまるでずっーと昔から金盞花やポリアンサスの葉や茎であったかの如く
澄ましこんできらきら耀いているではないか!
きっとカケスのように山荘がお気に入りになって、山荘の住人に成りたいと思っているんだね。
大歓迎するよ、地球外生命体のようなパラフさん!



西畑のじゃが種芋植え
5月女王の種芋植え
2月12日(日)晴 畑&庭

どうだいこの広々と何にも無い畑。
いつもならこの時期には
ほうれん草、白菜、青梗菜、小松菜等が
山荘の厳しい寒さに耐えて
辛うじて生き残っているのに
今年は鹿に喰われてなーんも残ってない。

連日ー10℃と云う寒さの中で
倉庫のメークインがすっかり発芽し
早くも春の兆し。
この広々とした畑に5月の女王を植えよう。

落ち葉もたっぷり・西畑
のんびりと枯葉集めをしていたら
枯葉の下からにょきにょき
出てきたのは水仙の芽。
急に枯葉のお布団を剥がされたので
寒そうで眩しそうで
なんだか痛々しそう。

でもお陰で枯葉プールは
ご覧のように満杯。
朽ちて腐葉土となり有機肥料になる頃
兜虫が来て卵を産み付けるんだ。
毎年沢山の兜虫
ここから巣立っていくんだよ。

発芽したじゃが芋・西畑
それにしても今冬の寒さは
半端ではないね。
最低気温を更新し水道管も破裂と
先週HPに載せたけど実は
寒さに強い君子蘭が凍結し
葉の先端が死んでしまったのだ。

18年間、君子蘭が室内で凍死したことは
一度も無かったのでショック。
哀しみながら死んだ葉を切っていたら
根元から蕾が出てきているでは。
嬉しいね。
なんとか咲いておくれ。

池のクレソンも元気一杯!

にょっきり落ち葉の下から水仙の芽

凍死した筈の君子蘭にも春?



2月3週・・・枯葉を蹴立ててグリセード


心象のカタルシス
2月19日(日)晴 夜明けの光・居間のチベット絵画

鋭い寒気を切り裂いて一条の光が居間の壁画を刺し貫く。
鳥葬の屍肉に舞い降りる鷲の翼を闇から浮かび上がらせる光..。
輪廻転生を司る創造主への祈りを捧げるチベットの若い女は頭上に迫る光との絶望的な乖離に気づくも為す術無し。
干乾びた蔓梅擬きの紅い実の呟きを女は耳にする。

あらゆる風景の中に鮮明に刻印され、
1つ1つの呼吸の中にさえ熱い息吹を重ねて迫って来るのに3次元には存在しない。
そんな、いとおしく切ないような1月が過ぎ2月も終ろうとしています。
 
本当に大切なものは時の堆積と共に《日々に疎し》ではなく日々に鮮烈さを増し、
濁水が不要な不純物を分離し何処までも唯ひたすらに透明になるように心象をカタルシスするのですね。



光の 奥庭小川 

小さな  
早春のせせらぎ
2月19日(日)晴 奥庭

どうだい、透明なせせらぎに
早春の光が降り注いで
実に美しいね。
左のクレソンの葉だって光を反射して
銀色だぜ。

風がね、僅かなんだが水面にそよいで
春の音色を描くんだ。
その微かな造形の凹凸を捉えて
光が水底に春を謳うのさ。
光の春のアリアは小さな滝を下り
岩を叩き枯葉を震わせ
池の水に共鳴し土中に眠る(イボガエル)
に春を告げるのさ。
で、そのアリアを聴いてイボは
いつものようにこう謳うんだ。

 まぶしいな青いな
やりきれんな
春君
ぼくだよいつものいぼだよ

は此処から  

優しいの音色  




枯葉を蹴立ててグリセード
2月18・19日(土日)晴 枯葉沢&高芝山

まースキーみたいなもんさ、グリセードは。
スキー板の代わり足を使いストックは2本揃えて後に突いて雪の急斜面を一気に滑り降りるんだ。
雪を枯葉に替えれば《枯葉グリセード》なる世界で初めてのスポーツ登場と云う訳。
勿論足の方向を変えてスラロームも出来るし、右下画面のように岩を超えてジャンプも愉しめるしスキーと同じさ。

こいつがなんとも愉快で時には腰にまで達する枯葉に塗れて滑っていると飛鳥の翼にだってなれるんだ。
枯葉がズボンやコートの中にまで入り込んですっかり枯葉に覆われると
森そのものになったような気分。

扇山の枯葉沢でさんざ愉しんでからふと高芝山の枯葉ゲレンデを想いだして翌早朝バイクを飛ばして
ゲレンデの登山口・上条峠に向かったんだ。
林道の雪に阻まれ途中から歩いて高芝山南西尾根に取りつきゲレンデに出てみたら枯葉は風に飛ばされ稜線は丸裸。
仕方なく丸裸の稜線をグリセードで走り降りたんだけど、それはそれで又面白くてね。
眼下に南アルプスの白銀の峰々を見つめつつ山荘に向かってびゅいーんと飛ばすのは実に爽快でいいねー。




やっと蕗の薹 奥庭 
微かな春の香り
2月19日(日)晴 奥庭

先週も先々週も枯葉をどかしては
覗いて観たのだけれど
蕗の薹は影も形も無くてガックリ。

例年1月には咲き始める蝋梅も
さっぱり咲かないし
やっぱり寒過ぎて未だ駄目なんだ。

2番目の水仙 奥庭 
でも気になって今週も枯葉を
そっとどかしてみたら
おー、やっと出てきたではないか。
いつも花が咲き始めて
おや、そうだった蕗の薹の季節
やって来たんだなと思う。

花も開いていない蕗の薹なんて
殆ど認識にないから
本当にこれが蕗の薹なの?
と俄かには信じがたい。
でもきっと来週には
葉を出して蕾を膨らませるんだろうね。

上を流れる春 奥庭小川 
Flet’s光が
とうとう山荘にも押し寄せて来た。
NTTが山荘ゲートまで
光ケーブルを引いたので支柱を
立てさせて欲しいと乗り込んで来た。

敷地内に支柱を立てるので
借地料金として年間1500円支払うとか。
支柱の位置には
水仙が芽吹いているので移植せねば。
PCの設置すら難問だったのに
ついに山荘も光ケーブルになるのか。
さて水仙さん、此処でどうだろうか?



おらは死んじまったぜ!チャリンコでちょっと出張
2月22日(水)曇〜24日(金)晴


ちょっとチャリンコ
自宅眼下の病院へ
マーカイン注脊麻用0.5%高比重 

点滴開始、SPO2、血圧計をセットし準備完了。
さて次はどうするのかな?と思っていたら
いきなり背骨へずぶり!
《痛てー》と叫ぶ閑も無く早くも下半身麻痺。
あんまり凄い効き目なので
「これ、なんて云う麻酔薬?」と訊いたら
「効くでしょう、マーカイン高比重0.5%よ」
 
脊髄にずぶり
次に冷たいぜりーを肩に付け
「どう冷たい?」 「冷たい!」と答える。
更に太腿に付けるが既に感覚無し。
「効いてるね、それじゃ始めますか?」
でもって、まな板の鯉になって
上半身は目覚めたまま
ちょちょいのちょいと調理されたのです。
驚いたの何の意識は正常なのに
全く下半身が無くなってしまった。 
マーカインは恐ろしき薬だ。

麻酔で
歩けん

マーカインの副作用を調べてみた。ヒマラヤ遠征登山で使用していたお馴染みのキシロカインと較べてみても恐るべき副作用。
心肺停止、人口蘇生術困難、死亡、呼吸停止、心停止・・・と副作用の続くマーカインは
限りなく死に接近する究極のヤクなのだ。


マーカインの副作用
ショック、徐脈、不整脈、血圧低下、呼吸抑制、チアノーゼ、意識障害、心停止、アナフィラキシーショック、振戦、痙攣、中毒症状、異常感覚、持続的異常感覚、疼痛

知覚障害
運動障害、膀胱直腸障害、神経学的疾患、肝障害、黄疸、AST上昇、GOT上昇、ALT上昇、GPT上昇、Al−P上昇,血圧上昇、眠気、不安、興奮、霧視、眩暈、ショック、
中毒、悪心、嘔吐、過敏症、蕁麻疹、皮膚症状、浮腫、尿閉、複視、クモ膜炎,過度の血圧低下、化膿性髄膜炎症状、敗血症性髄膜炎、中毒症状、血腫、脊髄障害
脊髄損傷
神経根損傷、血圧低下、ショック、徐脈、呼吸抑制、神経障害、持続性眼筋運動障害、
一過性失明心肺停止、中毒、中枢神経系症状、心血管系症状、
人工蘇生術困難、死亡
不安、興奮、多弁、口周囲知覚麻痺、舌のしびれ、ふらつき、聴覚過敏、耳鳴、視覚障害、振戦、意識消失全身痙攣
低酸素血症、高炭酸ガス血症
呼吸停止、心筋収縮力低下、心拍出量低下、刺激伝導系抑制、心室性頻脈、心室細動、心室性不整脈、循環虚脱、心停止、痙攣、心機能抑制、軟骨融解




シェイクスピア劇場の隣の病院

ザックに宿泊装備を詰めてチャリンコで

えっ1番かと思ったらもう25人も!
いざ手術室へ
2月23日(木) 富士山の日

渡された入院診療計画書によると
本日の目標は
《安全に手術が受けられ苦痛を
最小限にできる》
とあり
6:30排便処置のため座薬挿入
7:00抗菌薬内服
その後は一切禁飲食とある。

手術後は翌朝までベッド上での排泄。
今日は富士山の日だと云うのに
山にも登らず
ベッド上での排泄とは情けなや。

迎えてくれたのはお雛様(ナースSt 
「さあ、それでは3階のオペ室に
いきましょう」

 と現れた担当看護士は登山が趣味。
「プロフィール読ませていただきました。
ヒマラヤに登るんですってね。
凄いですね、私も低い山ですが
よく登るんです」


「おーそりゃ嬉しいな仲間が居るなんて」
「どんな山に登ったんですか?」
「HPに載せてるのでよかったら
のぞいてごらん。山荘主で
検索すればヤフーでもグーグルでも
トップで出てくるよ」
手術直前だと云うのに何と云う会話。
やはり煙と馬鹿は高い処に登るのだ。  
帰ってきたヨッパライの
すたっふ

執刀医は2名、看護士4名。
執刀医の1人は主治医の聡美さん。
もう1人は若手男性の金澤医師。
日本へ西洋医学を齎した
シーボルトが活躍した長崎で聡美さんは
医学の薫陶を受けその後
聖路加国際病院や
東大医科学研究所附属病院に勤務。

キャリアを積むに従い
つい錯覚を起こし横柄になり勝ちだが
聡美さんにはその素振りは無い。
優しく丁寧なのだ。
だが突然豹変することもある。

「いや、数人からこの手術の
失敗例を聞いて
こりゃ慎重に手術方法と病院を
選ばなくちゃと思ったんですよ」 と
話したら豹変したのだ。
   「えっ、それは誰が
いつやったオペですか?」

「いえここの病院ではないんですが」
「ここの病院ではないことを
話さないでください」
と気色ばむ。

慎重に選んだ結果
この病院に来たのだとの意が
伝わらなかったのだろうか。
いづれにしても手術に対する聡美さんの
自信の裏付けがびんびん
響いてきたことは確かである。

さて優れたスタッフは医師だけではない。
私の担当看護士のゆきちゃんは
看護学校卒業して1年目の
瞳の綺麗な使命感に燃える新人。

オペのガイダンス、病院案内
手術部位の剃毛などをしてもらったが
至れり尽くせりで
職業とは言え人間はこれ程までに
他者に対し優しくなれるものかと
甚く感じ入ったのである。

退院日の夜明け(眼下シェークスピア劇場)
強力麻酔剤からの目覚め
退院の日・2月24日(金)晴

驚きの体験であった。
意志は全く正常なのに下半身への脳の指令は一切届かない。
大体下半身そのものが在るのかどうかも解らないくらい。
幽体離脱とは正にこのことなり。
死の瞬間の肉体からの意識の離脱がこのようであれば
死は大いに愉快でありまるで天国のようで大歓迎!

天国といえば《天国よいとこ一度はおいで
酒は旨いしねーちゃんは綺麗だ・・・》
と云う歌があった。
第146回芥川賞の2作品(道化師の蝶、共食い)
をつまみにし酒の代わりに
アルジネードウォーター(創傷治癒促進剤)をぐびぐびやりながら
この病院のねーちゃんは
若くてすげー美人ばかりで腰を抜かす程おったまげたと
仙人は申しておりました。

うーんもう少し天国に居たいな(病窓から)



2月4週・・・山荘よお前も死んじまっただか?


やべえ、漏電だ!

先ず東電職員と漏電箇所探索
やっと突き止めたが・・・
2月25日(土)曇 前庭

汗をたっぷりかいて
いつもの朝トレーニング出来ることの
おーなんたる歓び!
失ってみて初めて分かる肉体の歓喜。

手術後2日目にして全身汗塗れになって
肉体に僅かに残るマーカインを
すっかり体外に流し出し
(実はこれが一番恐ろしいのだ。
僅かでもマーカインが頭に回れば
副作用が生じ致命的となる可能性あり)

気分良く山荘に向かったが待っていたのは
山荘の機能停止。
お前までマーカインを打たれたのか?

犬&畑日誌より
《 
またまた漏電で停電状態が1週間続き冷凍庫は解凍。これで漏電理由は水道ポンプではないと判明。
即、東電を呼んで配電盤の1番から10番まで10箇所のスイッチを点検。
大幅に漏電してるなら直ぐ判るがブレーカーが落ちない程度の漏電が続き、1時間後或いは数時間後に切れると云う最悪パターンなので電流計で測定しないとわからない。
どうにか突き止めたのは
3番配線の洗濯機とその裏側にあたる外壁コンセント
東電職員に出来ることはここまでで、あとはこの山荘建築時に配線した電気屋でないとわからないとのこと。
夜になり出張を嫌がる電気屋に来てもらい2時間かけて配電図を見ながらチェック。外壁コンセントから地中に埋設されたラインが漏電と判明。
どうにかそのラインを外し応急的に復活させたが、問題はそのラインが何に使われているのか不明であること。
埋設線を掘り出さねばならないとなるとこりゃ大変な土木作業だぞ!
》 

3週間前に解決した筈の漏電が
実は未だ続いていたのだ。
漏電ブレーカーが作動して山荘の電気が
切れ山荘機能が停止。
発酵中のビアも保温スイッチが切れて
酵母菌が死滅。
冷凍保存食は溶け出してアウト。

何としても今日中に漏電個所を
突き止めねば
この寒い山荘の夜を電気無しで
過ごさねばならない。
陽が沈んでしまえば山荘の心臓である
太陽光発電も
機能を停止してしまうのだ。

配電盤3番は此処だ!

地中への分電を切断



天婦羅にして食べたぞ!
春の光ひたひた
2月26日(日)晴 奥庭

コロッケを揚げようと
卵に浸しパン粉を着けながら
そうだ先週の蕗の薹が開いた筈だぞ。
奥庭に出てみると
あちこちで芽が綻んでいるでは。

その横では黄色い水仙が
《空気が冷たくて凛と引き締まって
実に気持ちがいいね》と
謳っているではありませんか。
2番咲水仙は山荘のそこかしこに
棲んでいるのだが
この可愛らしい小川の畔の奴が
いつも一番早く咲くんだ。

蕗の薹を摘んで、ついでに陶房に
吊るした真っ赤な鷹の爪を
幾つかもいで再びキッチンへ。
鷹の爪はモツの煮込みか白菜漬けに
入れよう。蕗の薹は
早速卵に浸し小麦粉、パン粉をまぶし
さっと揚げて味見。
うーんこの香りとほろ苦い早春の味
堪んないな!

咲いたぜ!2番咲き

漬物、煮物に大活躍

春告げる枇杷の花の終り

生命が生死の危うい境界線を
彷徨いつつも
生還を果たし更に新たな世界を
求めて伸びて行く姿は
いつ見ても深い感動を覚える。

観葉植物を山荘の各部屋に置いて
静かな生命の息吹が常に
山荘を満たしているよう心がけたが
多くの観葉植物は
寒い山荘の冬には耐えられない。

カリストの部屋のストーブを
最低温度8℃に設定し温室にして
総ての室内植物を収納し
越冬を試みてきた。
コンシンネ、スパティフィラムを始めに
十数種類の植物が生き生きと冬を超えた。

ほら浴室の蔦も新芽を吹いて

数年前に節電を決意し
温室なしで山荘の厳寒に耐えられる
観葉植物の育成開始。
その候補の1つがこの蔦である。

奥庭で越冬している蔦ならば
充分室内での育成は可能な筈と
鉢植えにして浴室に置いたが
移植方法がまずいのか
根付かず試行錯誤の連続。

そいつが裸であった根から初めて
小さな小さな葉を出したのだ。
もう嬉しくて嬉しくて
育ちつつある葉の大きさを確かめては
独りにんまりしているのだ。
あれ、死の境界線と云う程の
話しではなかったな。



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