山荘日記
そのT・冬-2005年師 師走・5週
2005年12月30日(金)晴 30℃ 於
Alotau
極彩色で 顔そのものを仮面と化し 槍を持って 《地球最後の楽園》を 守る男達の世界 パプアニューギニア 例え昼間であっても 首都・ポートモレスビーで 外国人の外出は 禁止されている。 当然町には外国人相手の お店なんぞは無い。 外国人にとっては 何も無い国。 何も無いことこそが 楽園であるとのパラドックス。 在るではないか! こんな美しい 夕焼けが! |
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05年最後の楽園残照 |
氷の花開く 2005年12月19日(月)晴 ー6℃ 於 北の森・猪浴場上 《きっと森で待っている》 カメラをポッケに忍ばせ西の森へジョック。 12年前この森の入り口で 紫蘇科の霜柱に初めて出逢った時の 驚きが甦る。 植物なのに本当に氷の花を咲かせるの? 沢山の氷の花が微笑んだ。 《どうぞ触って!》 −42度Cのマントを閃かせ 今朝やって来た冬将軍。 マントの寒気を吸って氷の花は あの日のように きっと待っている。 |
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冬将軍の指輪 12月19日(月)晴 ー6℃ 於 北の森・猪浴場上 枯れ葉に覆われた西の森はひっそり。 氷の花の踊り子達が 互いに手を 取り合っていたなんて幻影だったの? 何処かで微かな 囁きが聴こえた。 《北の森へ行ってごらんよ》 扇山の山頂から北の森の猪浴場へ下る。 《わー、こんな所にいたんだ》 数箇所に散って 氷のショールを 靡かせている氷の踊り子。 そうか、これは 冬将軍への贈り物の指輪の舞なんだね!
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晶・邂逅と錯乱 12月18日(日) 快晴 −5℃ 於 山荘居間ガラス卓上 何かが閃光を放った。 1250度Cの灼熱の洗礼を受け 器として甦った陶器が 惑星表面のように 光を散乱させる。 惑星上に突然 緑の太陽が昇る。 《えっ!どうして あんなところに星が?》 |
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時空都市に誕生した太陽
12月18日(日) 快晴於 山荘居間ガラス卓上 一瞬にして緑の光は 黄金に変わった。 惑星は2つに分裂し増殖を始めた。 海からの晶は突然の 星との邂逅に錯乱し もう1つの実態の無い分身を 分裂した惑星に捨象した。 最早、晶に肉体は無い。 純粋なスピリッツとなって 時空を 永遠に彷徨うのだ。 |
一瞬にして赤色巨星と化す 12月18日(日) 快晴於 山荘居間ガラス卓上 次の瞬間、黄金は朱に。 星ならば数十億年の時が流れたはず。 誰が星を誕生させたのか? 光を追う。 勿論ガラステーブルの下に 赤色巨星は無い。 反射角に等しい入射角の彼方を追う。 《あいつだ!》 エレクトーンの上にさりげなく置かれた 直径1センチにも満たない 小さな水晶で出来たガイア。 |
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惑星に迫るオーロラ 12月18日(日) 快晴於 山荘居間ガラス卓上 朱は瞬時にして超新星爆発に転じ オーロラ光を放ち 星を消滅させた。 透明な表面に地球図を刻んだ水晶球が 朝の水平な太陽光を 散乱させ ガラステーブルに星を生み一瞬にして 消滅させたのだ。 「惑星」と名づけた陶器に オーロラが迫る様を目前にして 山荘のギヤマン達の創造性に息を呑んだ。 冬の山荘の太陽と ギヤマンは 時空を超えた芸術家。 |
木星への燦爛 12月18日(日) 快晴於 山荘居間食卓上 冬朝の太陽と 山荘ギヤマンの壮大荘厳なドラマに 圧倒され 朝食はテーブルに忘れ去られたまま。 お腹が空いた! 急いでテーブルに着いて ワインをグラスに注ぐ。 大型油絵をランチョンマットにした 宇宙が揺らめく。 何とMt・Sakaが ワインの光を散乱させて いるではないか。 |
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ワインに染まるMt・Saka 12月18日(日) 快晴於 山荘居間食卓上 ワインを揺らす。 透明な朱が Mt・Sakaの山巓から 《ゆぴてる》の大赤斑に向かって放射される。 8年前の初登頂が フラッシュ・バックされる。 山巓直下での表層雪崩。 津波のように大きく波立ち 膨れ上がり 我々を襲った雪崩が精子型の大赤斑に 吸い込まれて行く。 本当はあの時雪崩に巻き込まれ 死んでしまったのだ。 ふと そんな気がした。 |
2005年12月11日(日) 快晴 於 北の森
晩秋の森の葉が 朝の太陽を浴びて 最後の生命の 彩を放ち 森を染める。 数枚の葉を残した 小枝が 僅かに震え 葉が光を散らし 舞うべきか 未だ暫く 枝にとどまる べきか 思案している。 |
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彩・ログハウス晩秋 森を走り、山稜を駆け抜けトレーニングが終わると朝餐。 さて、朝食は森テーブル?前庭の石卓?ログテラス? 贅沢な悩み。 |
12月11日(日) 快晴於 山荘テラス食卓上
足踏みしていた 冬将軍の先触れが そっと森を揺する。 数万の葉が 一斉に触れ合い 囁きを交わす。 幽し音色が 森の静寂と調和し テラスの 食卓に流れる。 音色と共に森を染めた 光がやって来て ワインを刺し貫く。 ほら 新しい赤い星が 生まれた! (山荘日記生命の記録・より) |
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ワインから生まれた赤い星 山荘の朝食はワインがメイン。 先週瓶詰したばかりの山荘ヌーボをテラスで楽しむ。 |
師走・1週(映像記録開始)
2005年12月3日(土)〜5日(月)
12月5日(月)
於 山荘テラス |
天候(3日:晴、4日:晴後雪、5日:快晴) |
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森の高台に 山荘・ゆぴてるを建て 森の住人となって 生命との 沢山の出会い がありました。 特に 猪家族との戦い 鹿や夜鷹、虎鶫、鷹 狐や栗鼠 兎との出会い 月の輪熊の捕獲 初夏の蛙の大合唱 蛍の風呂訪問など 忘れられません。 |
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山荘払暁 2005年12月5日(月) 快晴 富士が僅かに薔薇色を帯びる。 初雪に空の青が映る。 目覚めと共に宇宙が忍びやかに肉体を包み、生命に満たされる。 |
12月3日(土)於 山荘テラス
ライトの中に 飛び込んで きた瓜坊には ビックリしました。 初冬12月の 冷え込んだ夜 静寂と闇を 切り裂いて 走ってきた 私の車の直前を 猛烈な勢いで ダッシュする母猪 必死で後を追う 6頭の瓜坊。 あまりにも突然の 出現だったので ブレーキが間に合わず |
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水晶・爆発 やがてテラスの彼方・水晶峠から 太陽が昇る。 最初の赫奕たる光に出逢う度 生命に満たされた肉体は幾つもの超新星爆発を迎える。 それは素晴らしい山荘活動の今日のプロローグ。 |
12月5日(月)於 前庭石卓
最後の瓜坊に接触。 鋭い悲鳴をあげ 左足を引きずり ながら それでも母猪の後を 追って森に 消えていきました。 数ヵ月後、 同じ場所の山荘前で ワイヤリングの罠に 足を取られ 捕獲された猪は もしかすると この時の仲間 かも知れません。 |
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前庭石卓の光と影 光は新雪に覆われた庭に長い影を落とす。 新雪の朝トレに心が弾む。 小倉山?扇山?上条山?さてどの山に最初の ラッセルを刻もうか? |
12月5日(月)於 西の森
春から夏 にかけて 山荘の畑に棲む カブト虫を狙って 夜鷹が毎晩やって来ます。 あの高い独特な声 「キチキチ」が 遠く近く飛び交い 虎鶫の不気味な 暗い声が 時折重なります。 |
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森と陽光 寝静まっていた新雪の森が目覚める。 1つ1つの神経細胞の記憶を 呼び覚ますように光が影を追う。まるでニューロンの森。 |
昼は 山荘眼下の 森の上を 大きな鷹・ ノスリが 輪を描き 獲物を 狙います。 |
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テラス雪化粧 今冬初めての雪に、テラスも陶芸作品も大喜び。 雪を喜ぶなんて誰に似たのかな? |
12月5日(月)於 西畑
テラスで見ていると 緩やかな優雅な動きが 一瞬にして 獲物を狙う 鋭い落下直線になり 生命の緊張に 満たされます。 鷹は時々恋人を連れて 2羽で飛翔したり 山荘ゲートまでやって来て 羽を休めたりして 雄々しい姿を じっくり見せてくれます。 |
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花梨の雪帽子 雪の降る前に そろそろ花梨酒を仕込もうかなと思っていたのに! |
12月5日(月)於 前庭・石卓
春には山荘の巣箱 争奪戦が始まり 四十雀が沢山の 雛を孵します。 テラスから 1メートル程しか 離れていない巣箱 にも営巣し 食事中の我々を 楽しませてくれます。 獣毛と苔を敷き詰めた 柔らかな巣から 雛を取り出し、 毎年雛数を数えますが 多い時は1つの巣箱で 10羽近くも 育っています。 |
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秋珊瑚の赤と雪 冬将軍の群青のマントに赤が映える。 真っ赤な果実酒を造ろう。 |
12月3日(土)於 山荘ベランダ下
早朝や夕刻に 山荘裏の 扇山の森で トレーニングしていると 木漏れ日の中に 鹿の子斑の 小鹿が疾駆したり 野兎がキョトンと 佇んでいたり 栗鼠が木々を垂直に 走り抜けたりします。 |
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枯露柿と高芝山 12月3日(土) 晴 冬の山荘風物詩・枯露柿簾。 甘くて柔らかな枯露柿に触れるたびに 人恋しさの想いに満たされる。 |
12月5日(月)於 山荘ゲート生垣
全力で疾走する 美しい狐の尾も 印象に残っています。 展望抜群の 山荘風呂 の灯を仲間と間違え、 遥か下の 竹森川から 飛んできて 風呂の窓ガラスに 止まった 1匹の蛍の仄かな光も 忘れられません。 |
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山茶花映ゆる 数十本の大きな山茶花が山荘の雪に映ゆる。 もうすぐ本格的な冬がやって来る。花弁が凍る日も近い。 |
ナンガ・パルバット峰 遠征準備の 最中でした。 風呂場の大窓に 明滅する光。 それまで山荘周辺に 蛍が棲息するのを 知らなかったので びっくりして 隊員に告げました。 その儚い淡い光に 自らの命を重ね ヒマラヤへ旅立った こともありました。 |
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雪の日の収穫 12月4日(日) 晴後雪 「わっ!雪だ」 ショパンの「風の精」が入ったCDを聴きながら、 ワインの瓶詰をしていたらワインセラーの外で雪が舞い始めた。 セラーの上のキューイが「寒くて凍っちゃうよ」と 叫んだので、急いで収穫。 |
12月5日(月)於 前庭キューイ棚
蛍の光だけでなく 山荘は 生命を宿した 沢山の光に 満たされています。 天空の星々は 勿論 山荘眼下に広がる 知的存在の 放つ海の光 夜の森に蠢く 動物達の 瞳が放つ光。 |
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星の誕生 これ、何の光か分かりますか? そう、新雪が朝陽に溶けて出来た水滴に、太陽が飛び込んで 新たなる星が誕生した瞬間なんです。 |
12月3日(土)於 山荘ゲート
彼らは 観光地の動物 と異なり 侵入者に鋭敏な 野生動物 ですから 自ら森の住人になって 目と耳を凝らさないと 姿を見出すことは 難しいのですが 山荘に通い 続けるなら きっと 逢えるでしょう。 |
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枯れ葉の絨毯 12月3日(土) 晴 珊瑚海から2週間ぶりに戻ったら、 山荘はもうすっかり晩秋。 枯れ葉をざくざく踏みしめて、ただいま! |
12月3日(土)於 前庭
山荘コーラス合唱団の 蛙や秋の虫たちの 定期演奏会も ワンダフルですが、 山荘に集う仲間が 時々 演奏するピアノや 弦楽器の 演奏会も 楽しみの1つです。 |
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春待ち水仙 未だ晩秋だと思っていたのに、つんつんと枯れ葉を押しのけて もう芽吹いているのは誰だ? |
12月3日(土)於 前庭キューイ棚
夜鷹や虎鶫、蛙や 秋の虫たちは 山荘から 流れる音色 を耳にし 「オッ!人間も なかなかやるね」 なんぞと 思っているかも 知れません。 |
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たわわなキューイ 水仙から目を離して頭上を見上げると すっかり葉を落としたキューイが「お帰りなさい!」 明日は収穫してあげよう。 |
12月3日(土)於 山荘石段
私達人間が 彼らの仲間であり 生命体として同一 であることは 言うまでもありません。 もっと深く 山荘の自然と 調和し 森の生命と 一体化しつつ 蜜蜂を飼ったり 山荘の土で 器を焼いたり 畑を耕したり。 |
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冬薔薇 畑に下りる石段で薔薇が2輪。 蕾の薔薇がにっこり微笑んだ。《どんなに寒くても待ってたんです》 そんなこと言われたら切なくなっちゃうよ。 |
そうする事 によって 或る日突然 秋桜の声が 薔薇の囁きが 森の独り言 さえもが 聴こえてくるかも 知れません。 本当は彼らはとても お喋りなんです。 ただ 私達が彼らの言語を 理解出来ない だけなんです。 |
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乾冷秋桜 西畑に降りたら秋桜の花弁が凍り付いて ドライフラワーになって待っていた。すっかり色が抜けて それでも凛として《来年の秋にお逢いできますよう》 |
どうしたら理解 出来るかって。 そりゃ 簡単! 外国語習得と同じ その世界に入って 一緒に 生活 すること。 |
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枇杷佳香 誰か忘れてはいませんか? そんな声が聴こえたような気がして微かな香りを追って行くと枇杷が満開。 5年目でやっと咲いてくれたね。 |
12月3日(土) 於 山荘・踊り場出窓
山荘で生活 する意味は そこにあります。 会話の相手は勿論 動植物に限りません。 宇宙の深遠 にも望遠鏡で 触れたりして 生命の彼方を追い続け 山荘日記を記録 したいと思います。 (山荘日記生命の記録・より) |
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晩秋・北の森 玄関ドアを開けると大窓いっぱいに 北の森が広がった。 零下の寒さの中で葉を落とさず 森の木々も珊瑚海からの私の帰りを待っていてくれた。 |