ランギロア・ダイビング

珊瑚海・生命への旅

            珊瑚海其の32・・・・・・・もう1つのヒマラヤ

 
 Contents
《A》 呪われた画家の絶望を追って!
《B》 らんぎろあ村の昼下がり 
《C》 島で、のらりくらり
《D》 さて、海にでも潜ってみようか!
《E》 イアオラナ!海中のごーぎゃん達
 Rangiroa
 
撮影日:2014年11月~~12月
場所:タヒチ・,ランギロア環礁  
撮影&編集:坂原忠清

撮影助手:Tefura・G

《D》 さて、海にでも潜ってみようか!

41回目の海外DV

左図の何処を探しても
40番目の数が見つからない。
40はフィリピンの
甚平鮫で有名なオスロブ。

しかしご覧のように
フィリピンでのDVは多く
最早書き込むことが出来ない。
珊瑚海DVと限定すると
どうしても赤道周辺にサイトは
集中する。

久しぶりに広々とした
南太平洋に41を記してみると
どうして今まで
タヒチを放っておいたかと・・・。

VT-534便の機長とアテンダント
首府パペーテから
アバトル村へ

夕刻16時35分に成田を離陸し、
ー19時間の時差、日付変更線を経て、
過去である当日の朝8時45分にパペーテ着。
この間12時間程を狭い機内で
過ごさねばならない。

しかし今回は超ファーストクラスの座席を確保し
よく冷えた瓶詰シャンパンを
呑みまくって、ぐっすり寝ている間にタヒチ。
更に国内線に乗り換え、
あっという間に、南太平洋の辺鄙な村
アバトルに着陸。

あー地球は、こうして時間を失い、距離を消去し
新たな海への旅を始めるのだ!
なんぞと、妙な感慨に耽るのであった。



で堪らん!午前1本、午後1本だぜ!

何故敢えて同じ様な画像を2枚も載せたか?
これには深い訳がある。
右の画像を観て解るように、怒っているのだ。

この数分前トップDVのカウンターで交渉。
「午前1本、午後1本では
待ち時間が長すぎて時間の無駄になるから
午前中に2本にして!」
と頼んだのだが、拒否されたのだ。

今まで41回の海外DVで500本程
潜ってきたが、いずれも午前中2本か
夜明けDVを行った場合は3本を
こなすのが当たり前。
何故、午前中の2DVが出来ないのか?
理由は安全第一を利益優先の隠れ蓑にした
PADIのNitRox作戦にあったのだ。
 
ダイバーは23kgの通常荷物の他
ダイビング器材用として
更に23kgの荷物を
国際線航空機に積み込むことが出来る。
しかし国内線は20kg制限。
ダイバーでも23kgまでなので結局、器材は持ち込めない。
そこでDV器材総てをレンタルに決定。


DV前の無聊 スーツ含めて器材総てレンタル 


南太平洋(外洋)と礁湖間の水路に
激しく流れ込む潮流に乗る豪快なドリフトDVとか!

7月末に40代日本人女性ダイバー死亡、本日は40代仏人男性ダイバー、エントリーで頭蓋骨骨折と事故続く

長さ80km、幅20kmの珊瑚の巨大首飾りに囲まれた海の中の湖・ランギロア環礁。
潮の満ち引き毎に、外洋と湖の海水は珊瑚島の狭い水路に集中し、
激しい潮流となって、イルカ、ナポレオン、鮫等を始め多くの魚を呼び寄せる。
この激しい潮流に乗って、魚たちと海中ドリフトを愉しむのが、ランギロアDVの醍醐味である。

当然危険を伴い、中級以上のダイバーの活躍場であるが事故は多発している。
4か月前に水中でパニックを起こし、レギュレーターを口から外し
肺に海水を呑み込み、溺死した日本人ダイバーは気にかかっていたが
まさか、ダイビング初日の当日に事故に遭遇するとは!



今日はYannick(32歳)

バックロールでは、
金属タンクを下にして飛び込むので、
金属タンクが海中ダイバーの頭を直撃。
即死してもおかしくはないが、
幸いダイバーは頭部を数十針縫うだけで
一命を取り留めた。

実に初歩的なミスであるが、海面に
光が反射すると海中のダイバーが
観えぬこともある。
時間は掛ってもダイバーが自ら確認して
エントリーする方法に変えるべき。
特に水面集合は危険!
ゴムボートからのエントリーは、
ボートのバランスを失わぬよう、
両サイドに同じ人数のダイバーが座り、
トロア、ドゥ、アンで一斉にバックロールで飛び込む。

この3,2,1の掛け声に遅れた奴が、
一呼吸置いて飛び込んだもんだから、
先にエントリーしたダイバー上に落下。
水面集合なので、ダイバーは
潜水せず海面近くに漂っていたのだ。

さあ、アバトル・パスへ出航! 



アバトル・パスDV


霞蝶々魚・Pyramid Butterfly Fish
カスミチョウチョウウオ

赤羽太
 アカハタ
blacktip rockcod

曙蝶々魚 アケボノチョウチョウウオ
Blackback butterflyfish

尖り恵比寿(トガリエビス)
Long-Jawed Squirrel Fish

涙黒ハギ ナミダクロハギ
Japan surgeon fish

笛奴鯛・Long Nose Butterfly Fish
フエヤッコダイ


エントリーの事故はダイバーの確認で防げるが、
水中で突然レギュレーターを外すような行為を、未然に防止する手立てはあるのか?
1つには窒素がもたらす酩酊状態等を和らげる為、エアーの酸素量を増し、窒素量を減らすことである。
そこで登場するのがEnriched air NitRoxである。
NitRoxとは潜水病を防ぐ為、空気より酸素量の多いエンリッチドエアー(酸素調整空気)のこと。

通常空気の酸素:窒素は21:79と窒素は約80%を占める。
水中に潜り高圧の空気を呼吸すると、血液中の酸素は呼吸により消費されるが
高圧下では吸収され易い窒素は残り、窒素濃度は高まる。
窒素は人体に麻酔作用を及ぼし、思考力 判断力を鈍らせ 動作を遅くさせるので
水中で酔っぱらいレギュレーターを外すことは、大いに有り得るのだ。



錦奴Regal Angel Fish
ニシキヤッコ

蝶  斑
Raccoon Butterfly Fish

白点気担 ハクテンカタギ
Chaetodon reticulatus Cuvier

旗立鯛
Red Sea banner Fish

白点気担 ハクテンカタギ
Chaetodon reticulatus Cuvier

四点蝶々魚 シテンチョウチョウウオ
Chaetodon quadrimaculatus Gray



浮上により気圧が下がると、血液中の窒素は気泡化し、毛細管を塞ぎ血液の流れを阻害する。
特に関節では窒素気泡が出易く、骨髄では僅かな気泡でも障害を引き起こす。
関節痛程度で収まるなら未だしも、骨髄では知覚障害、運動障害、自律神経症状(膀胱直腸障害など)
引き起こし、脳の血液循環を遮断し 意識不明や 永久的な障害が
生じるので、実に恐ろしい。
そこで登場したのが、酸素濃度を高めた酸素:窒素32:68(or36:64)のNitRox。
NitRoxは窒素(Nitrogen)と酸素(Oxygen)の合成語。




ギンガメアジ 銀紙鯵
学名 Caranx sexfasciatus

ヘラルドコガネヤッコ
Centropygeherald

ギンガメアジ 銀紙鯵
学名 Caranx sexfasciatus

背黒蝶々魚(セグロチョウチョウウオ)
Saddle Butterfly Fish

ヤスジチョウチョウウオ 八筋蝶々魚
 学名
Chaetodon octofasciatus

三筋蝶々魚 ミスジチョウチョウウオ
  Pacific Pinstriped butterflyfish




NitRoxを使うと如何なる効果があるのか?
通常の21%の空気で18mの潜水深度を保つと、10ℓ、200気圧のタンクでは56分
32%のNitRoxでは39分多い95分潜れる計算になる。
約1.7倍もの潜水時間が確保出来るのだ。

通常の空気
(酸素21%)
EANx32
(酸素32%)
EANx36
(酸素36%)
18M 56分 95分 125分
22M 37分 60分 70分



スダレチョウチョウウオ
Chaetodon ulietensis Cuvie

姫笛鯛 ヒメフエダイ -
Humpback red snapper

長範 チョウハン
Raccoon butterflyfish

鼻黒蝶々魚ハナグロチョウチョウウオ
Chaetodon Omatissimus

ゴマチョウチョウウオ 胡麻蝶蝶魚
学名:
Chaetodon citrinellus

玉頭 タマガシラ
Unarmed dwarf monocle bream


NitRox使用のメリットを上げると、先ず潜水病リスクの軽減。
NitRoxを使って通常のDVをすれば、1.7倍の余裕を持ってイグジットするので
血液中の残留窒素は低く抑えられ、当然潜水病の罹患率は下がる。

2つ目は疲労感の軽減。
NitRoxを使ったダイバーは、「疲労感が少ない」「呼吸が楽」「頭痛を起こしにくい」などと云っているとか。
モルジブ、ココ島、此処タヒチでも使ったが、違いは全く感じられなかった。
肉体は濃酸素の恩恵を受けている筈だが、感じられる程では無かったのである。

3つめは減圧不要時間の延長。
これは実際1.7倍の潜水が可能になるのだから確かである。



風来蝶々魚 フウライチョウチョウウオ
Vagabond butterflyfish

胡麻紋柄 ゴマモンガラ

Mustache
  Trigger

風来蝶々魚 フウライチョウチョウウオ
Vagabond butterflyfish

玉頭 タマガシラ
Unarmed dwarf monocle bream

大筋非売 オオスジヒメジ
Dash-and-dot goatfish

ムトンスナッパー 笛鯛
mutton s
napper


さて良いことずくめのNitRoxであり、フランス領の此処タヒチやニューカレドニア、更には
有名リゾートであるモルジブ等のDVショップでは、広がりを見せているが
問題は通常エアーのタンクを使用するダイバーに対して、DV制限を課すことである。
DVコンピューターを使って、血液中の窒素濃度をチェックし、安全DVを行っているダイバーに
NitRoxを使わないなら、2本目は午後にして下さいと云うことが、許されるのか?

そりゃ、PADIにしてみれば、新たな免許取得料金や、タンク使用料で更なる利益獲得を
企んでいるのだろうが、DV制限まで課すのは、余りにも露骨では!
又それならDV予約を入れる時に、「NitRoxを使わないなら2本目は午後」と断るべき。
そうと解ればDV制限をするショップを選ばないことも出来る。
実際タヒチでも他のDVショップ(シックスパッセンジャー等)では、
通常エアーで午前中2本のDVを実施しているのだ。



ムトンスナッパー 笛鯛
mutton s
napper

ツマジロザメ 褄白鮫
Silver Tip Shark

ムトンスナッパー 笛鯛
mutton s
napper

ツマジロザメ 褄白鮫
Silver Tip Shark

ツマジロザメ 褄白鮫
Silver Tip Shark

ツマジロザメ 褄白鮫
Silver Tip Shark



NitRoxの使用はダイバー自身の選択に任せるべきで、DV制限するなら
事前通告はDVショップの当然の義務である。
しかし今回使用したトップDVからは、代理店を通しての数度の問い合わせに事前通告無し。
NitRoxを使わぬDVは1日2本までとの連絡はあったが、
午前と午後各1本との重要な制限は連絡して来なかったのである。

初日のみSP免許(NitRoxのSpecialty Licence)無しでのNitRox使用のサービスDVをしておいて
2日目からはSP取得の為、2万円程の料金を払わねば、
午前中2本のDVはさせないと通告。
やり方が汚くはないか?

こんな汚い、安全第一を利益優先の隠れ蓑にした
トップDVのNitRox作戦に乗って堪るか!
こうして仙人はトップDVのやり方に、大いに怒って仏頂面し、キアオラのロビーで
≪DV前の無聊≫を託っているのだ。




簾蝶々魚・スダレチョウチョウウオ
Chaetodon ulietensis Cuvie

大筋非売 
オオスジヒメジ
Dash-and-dot goatfish

長範 チョウハン
Raccoon butterflyfish 


尚、NitRoxの使用は良いこと尽くめではない。
酸素濃度が高いため、酸素分圧が1.6ATAを超えると生じる、神経系(急性)酸素中毒の危険性が大きくなり
視覚障害 ・聴覚障害 ・吐き気 ・痙攣を引き起こすのだ。
通常の空気の酸素分圧は、酸素:窒素が21:79なので0.21ATAとなる。

安全値を取って酸素中毒の酸素分圧を1.4ATAとして計算すると、通常空気では
1.4ATA÷0.21ATA=6.66・・・となり、約6.6倍の気圧で酸素分圧、1.4ATAに達することが解る。
1気圧は水深10mとなるので、
大気圧の1を引いた56.6mまで潜水すると酸素中毒の、危険帯(最大深度)に突入する。

酸素暴露限界深度
使用タンク 最大深度(1.4ATA) 危険深度(1.6ATA)
空気 56.66m 66.19m
EAN32 33.75m 40.00m
ATA:atmosphere absolute (絶対気圧)

32%のNitRoxで計算すると 1.4ATA÷0.32ATA=4.375倍となり、
1大気圧10mを引いた33.75mで危険帯に達してしまう。
この差22mは大きい。
従って、NitRoxを使用する場合は30m以下での潜水は、避けなければならない。



ゴマチョウチョウウオ 胡麻蝶蝶魚
学名:
Chaetodon citrinellus

角出し ツノダシ
Moorish Idol 

錦奴Regal Angel Fish
ニシキヤッコ


つまり優れている筈のNitRoxは、浅い30mまでの話しで
それ以下では通常のエアーの方が、酸素中毒には強いのだ。
ハンマーヘッドを追ってラパスやラヤンラヤンで、55mを超える深さまで潜水した経験があるが、
もしあの時、NitRoxを使っていたならどうなったか?


酸素中毒じゃ!

酸素分圧を算出するとこうなる。
深度55mの海中での水圧は、大気圧を加えると65mに相当するので
酸素分圧は65m×0.32=20.8ATA
危険深度で受ける1.6ATAを遥かに超え、酸素中毒による
視覚障害 ・聴覚障害 ・吐き気 ・痙攣を引き起こし、海中で身動き出来なくなり
生きてはいなかったであろう。


Index

Next