仙人日記
   その97の22013年師走
12月2週・・・獲れたて鹿がやって来た!

《A》 鹿肉がやって来た

 獲れたて鹿がやって来た!
12月2日(月)晴 広瀬さん届けてくれる

汗びっしょりになって小倉山から駆け下り、朝風呂に飛び込むとゲートにバイクの音。
そんじょそこらのバイクの音とは明らかに異なる。
最大で約23度の登坂能力を発揮すると云う、あの伝説のエンジンの音かも。
そう31年前1982年6月10日に発売されたクラシックバイクのホンダ・モトラの唸りのような。
と云うことはあのクラシックバイク収集家・広瀬氏では?

「獲れたての鹿肉食べる?背中の一番美味しいところ。
えっ、今お風呂なの?ほんじゃ玄関に置いとくは」と言い残して広瀬氏、姿も見せず風と共に去りぬ。
風呂から上がってテラスのお皿に載せて、初めての鹿肉をしみじみ眺める。
うーん、山荘窯で焼いた大皿の藍に映えて実に美しいでは!

モトラ:(4.5馬力のスーパーカブ系49cc空冷4サイクル単気筒エンジン搭載バイク)


これおらっちが作った

それじゃ速ステーキに

枯葉で隠しを入れるとバチッ!


この罠に踏み込むと
穴の中の台が落ちて
パイプに回してあるワイアが
飛び上がって
鹿の脚を締めてしまうんだ。

昨日観に来たら
見事引っ掛かっていたので
造園業者の川村さんちへ
運んで皆で
解体して肉を分けたんで
おすそ分け。

ジビエ料理は油の載ってる
秋が最高。
特に2歳位の若鹿なんぞ
究極のジビエだね。
淡泊で臭みの無い若鹿の
赤身肉はステーキが一番。

こんな風にけなくなっちゃうんだ
だが頭や首の急所を狙って一発で
即死させないと
暴れて肉に血が回ってしまい
血抜きが出来なくなってしまう。

そうなるととても
食べられたもんじゃないが幸い
これは罠に掛ったので
一発で即死させ血抜きも完璧。

肉は数日冷凍して熟成させ
肉を包む皮膜を剥がすか
切れ目を細かく入れ
皮膜を切断するかして調理。

さてそれでは青トマトを
オリーブ油でソテーし
塩胡椒で味付けしステーキに添え
これでどうだ!
そうそう滝のクレソンも載せよう。



クレソンとトマトをえて

スルメの皮のようなを取らねば

臭みがなくて品な味



《B》 闇を切り裂く光と響き
 鹿のみかとなっている山荘原野の紅葉
背景:鈴庫山(左)、高芝山(中央)、大菩薩嶺(右)

大好きな山荘原野なので、その想いを画像で表出しようと何度も試みたが果たせなかった。
魂魄を込めたライティングとアングル、原野の表情をと狙い続けたが
どうしても捉えられなかったのだ。
アングルには、山荘トレーニングに欠かせない3つの山・鈴庫山、高芝山、大菩薩嶺が入らねば。
となると左右から迫る尾根の狭間に3山が展開するこの位置がベスト。


要のライティングは
夜明けか落日と決めて
朝夕のトレーニングで通い
チャンスを狙った。

夏ならば正面の高芝山から
太陽が昇り
原野は逆光となり
渺茫たる闇としての原野が
捉えられるかも。

しかし夏の原野は青々とした
芒が跳梁跋扈し
生命が漲り、我が原野への
想いとの乖離は
どうにも埋め難いのだ。
で、光は
冬の夜明けにしようと決意。

葡萄の想い出・・・原野の芒り始まる
さて原野の表情であるが
無闇に明るいのも
そうかと云って暗過ぎるのも
我が想いには馴染まない。

生と死の淡い交合が
昇華する瞬間、
そんな表情が捉えられれば
申し分ないのだが・・・。

そんなたわいも無いことを
つらつら想いつつ
原野にカメラを向けたら
せっせと原野の芒を
刈ってくれている人が
居るではないか。

そう云えば確か
葡萄を持って原野の芒を
刈らせて欲しいと
里人が訪れたことがあったな。



冬の光をみ森の闇を切り裂く芒

生と死の淡い交合が昇華する瞬間。
にしては明らかに光が鮮明過ぎてシャッターを切るのを躊躇ったが、
死に内包された生としての芒の種子が急に叫び出したような気がして、
そんならそれでいいかとシャッターを切ってみた。

光の粒子となって永劫の闇に旅立つ芒の小さな種子が観えるようで思いもよらず
気に入った1枚となった。



闇をくアイスバイル

闇をく水1つ

闇をく水鐘3

し巡礼の鐘

シシオドシの音色が永劫の闇を彷徨う巡礼の鐘となって、その幽し響きで闇を切り裂くとは!
そのことに気づいてから巡礼の鐘の音を求めて、シシオドシの改良試行錯誤が始まった。
先ずその響きを確かなものにする為に末端に石を括り付けてみた。
当然重くなるので重心の位置を変えねばならぬが、その成果は素晴らしく、カーンと高い響きが実現。

それではと次に石の代わり南部鉄で作った風鈴を着けたら、これが実に深い澄んだ音色。
これに嵌ってザックに着ける熊よけの鐘を求め、鐘を3つに増やした。
驚いたことに夜ごと闇に乗じて山荘にやってくる鹿の鳴き声も猪の唸りも全く聴こえなくなった。
だが其のうちこの巡礼の響きに慣れ親しみ、鑑賞の宴を催すのかも?
うーん、そうしたら一緒に巡礼の響きを愉しもうぜ!



の闇への巡礼



えっ!巡礼の響きで飾るってどうすりゃいいんだ?

巡礼は巡る、巡るは循環
循環は輪廻転生、輪廻とくれば曼陀羅、
「曼陀羅」は、サンスクリット語の音
漢字で表したもので円を意味し
完全・円満を表わす。

よーし、それなら蔓梅擬で輪廻を表わす円を
作ってこれでどうだ!
漆黒を切り裂く礼の響き
蔓梅擬と輪廻転生
 

そうなると黙っちゃいないのがヴィーナス。
「ねえ、ねえ、あたしを巡礼の響きで
飾ってくださらない?」

廻転生のヴィーナス曼荼 




 《C》 おらっちの白菜食ってけろ!


甘みがすんだよ

さあ、おらっちの野で勝負だ!

ほら段々くなってきた


鹿肉のお礼に
お気に入りフィリピンの
ドライマンゴ7Dを
持って広瀬宅を訪問。
そう7Dと云うのは
数あるドライマンゴの中でも
とびきり美味い奴。

あれ、玄関は開けっぱなし。
だけど誰も居ないぞ。
以前目にした畑の鶏小屋に
出向くと両手を
大きく広げて叫ぶでは。

「さあどうだ!
山登りじゃ敵わないが
おらっちは野菜で勝負だ。
さあ、白菜でも大根でも
人参でも持ってけ」

柿とお揃いで向ぼっこ
まー山荘でも色々と
作っているので
貰っても困っちゃうが
ほんじゃまー
山荘のと食べ比べてみっか!

山荘白菜は発芽が遅れ
白菜漬に間に合わず
今年は諦めていたのだ。
が、広瀬氏の白菜はきちんと
巻いて立派に成長。
これなら白菜漬に出来るぞ。

早速山荘に運び
柿と一緒に陽向ぼっこ。
例年は1週間も陽向ぼっこさせ
水分が飛び過ぎて
漬けた後に
水が上がらず失敗の連続。
今年の陽干は1日だけにしよう。



内側にもしっかり塩を込んで

ガラスからも太陽が

さあ、それじゃけようか

落葉のに長い尾を曳く影

分は3%にしてと
もう我慢できなくて3日後に
樽から1株取り出して
食べてみたら、がーん!
もの凄い味。

まるで白菜のお刺身では。
そのまま食べても
勿論山葵醤油でも信じられぬ美味さ。
小さい頃から白菜漬は
大好きで、たーくさん食べてきたが
これ程までに爽やかで瑞々しい
白菜漬に出逢ったことはない。
広瀬白菜に完敗したけど
嬉しいな。

柚子、山荘唐辛子、布たっぷり



《D》 闇に鏤められた朱
実はこの大型花器
焼きあげた直後
気に入らなくて犬小屋の前に
放っておいたのである。

造りに凝って大きな穴に
リングを付けたり
呉須で縁取りし、リングが
釉薬で接着しないようにしたり。
手間暇かけたのだが
どうも訴えるものが無い。

捨ておいては
あんまり可哀そうだから
山葡萄の蔓を
穴に通してシクラメンの鉢植えを 
入れたら、あれ!
どうにか様になったでは。
捨てなくてよかったな。

新作・花器にえられた太陽




 
漆黒の蝶
山荘シンボル



同じく捨て置かれた
アニメイラスト《漆黒の蝶》。
これも凝りに凝って
山荘で撮影した日蝕と蝶を
組み合わせ生と死の
淡い交合ではなく
逆に熾烈な交合を意図し制作。

影でしか無かった筈の
朱を含んだ闇が
漆黒の蝶と共に光を巻きこみ
濃密な交合を演じる。

不毛な闇との交合から
生み出される嬰児に
未来を観ることの出来ない光。
熾烈な交合に溺れつつ
決して嬰児を生みだすまいと
光は闇の孕みを拒否する。

拒否の叫びは
長い尾を引き限りなく細くなりつつ
決して闇に融け込むことなく
不毛なる永劫の交合輪廻を
繰り返す。

これからはこの山荘シンボル
《漆黒の蝶》を
もっと使ってあげようかな。
ねえ、漆黒の蝶さん!

野でんで来た冬の彩 
 
漆黒の蝶
山荘シンボル


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