その97ー2013年師走 |
巨大な水晶と化した南アルプス 12月2日(月)晴 小倉山頂より 風の伯爵夫人を載せて赤石岳と小赤石岳が水晶の煌きを放つ。 山顛から右に大きく広げた小赤石岳の白銀の翼が、夜明けの光を孕み微動をもせず羽ばたく。 羽ばたく度に大気を震わせ目に見えぬ波紋を天空に描く。 ・ その見えぬ波紋が小倉山の山顛に立つ私の肉体を渚にして、繰り返し繰り返し打ち寄せる。 懐かしく心地よい渚の響きが、2ヶ月前の秋山の軌跡から齎された 赤石岳の贈り物であることを私は知っている。 あの白い翼を駆けめぐった、秋の日の刹那の生命が放った脈動と、波紋が共鳴する。 ・ そんな風にしていつもあなたは、私に生きていることの意味を教えてくれるんですね。 |
燃ゆる山荘の森 階段踊場より 母がこれ程までに鮮やかに 輝いて居た筈は無いのにどうして 母の面影が観えるのだろう。 ・ 36歳の若さで伊香保のサナトリウムで死んだ 母の記憶は若いままで停止。 記憶が若く華やかで あったとしても、大窓の森の彩には重ならない。 重なるとしたら彩に潜む死のみ。 ・ さあ、その死と 真正面から対峙し生きようではないか! il faut tenter de vivre |
風立ちぬ Le vent se lève そっと忍び寄り森の項に頬を寄せてみる。 そう森に項が在るとしたら この大窓に切り取られたこの部分に違いないのだ。 ・ 項から湧き立つ香りが彩となって 大窓を満たす。 香りと彩が遠い遠い母の記憶を呼び覚ます。 しかし項には顔が無い。 顔を観るには母の前に立たねばならないが その術を私は知らない。 |
黄金の葉が詠う森 ログテラスより |
おーこりゃ中々の優れもんだな、と解るには履き慣らして1年かかる。 で、その履きごこち、飽きのこないデザイン、耐久性等に惚れて、さてそれでは2足目も同じ靴にしようと店に出向くと 「もうその靴はモデルチェンジされて製造中止です」と宣告される。 最初からこの靴は直ぐ売れなくなると見込んで、手間暇省いた好い加減な靴しか作らないのだ。 ・ だがメレルは頑固で執拗なまでに同じ靴を作り続けたりする。 1970年代、ユタ州バーナルで幼い頃からアウトドアに親しんだランディ・メレルの作ったブーツは 全米で評判になり、1981年には「バックパッカー・マガジン」誌上で「北米で最も機能的で快適な靴」に選ばれ やがて世界135カ国で販売され、その数は年間1600万足を超えたとされる。(参照:amazon) ・ その靴との最初の出逢いは4年前の2009年10月。 こいつを1代目と呼んで4年間愛用してきたが、とても気に入ったので目白のジョック用の靴も同じデザインのメレルにしこれを2代目とした。 先日池袋のABCマートに行ってみたら何と4年前の全く同じ靴が、同じ値段で売られているでは。 この靴の値引きは無しだが製造中止となれば、在庫処分でのダンピングは有り得るが価格は変わっていない。 何でも目まぐるしく変わるこの時代に4年を経て、未だデザインも変えず 同じ靴を作り続けていると云うことはそれだけ世界のニーズがあるとの証明。 その3代目が山荘にやって来たのだ。 |
あたしをお山に 連れてって! 11月22日(金)晴 テラス 新雪の剣ヶ峰でデビューし 大活躍をしたので、 さあこれからは毎週毎週 山に連れてってもらえるぞと 歓んでいたのに 、なにさその後は さっぱりご無沙汰。 |
嬉しくてワルツを舞う新靴 |
秋空を映した碧い壺と高芝山 |
古靴ばかり履いてないで たまにはあたしもお山に連れてって! ・ 折角プレゼントされたのに これじゃまるっきし意味無いじゃん。 と云って文句たらたらなのはメレルの3代目の新靴。 そりゃ無理も無いよね。 何しろ山荘の目の前にはかっこいい ピラミダルな高芝山が おいでおいでと毎日手招きしてるんだから。 |
ほんじゃちょっくら高芝山に行くかと パソコンのスイッチを切ったら 耳ざとく聴き付けた新靴 「やったースイッチ切ったぜ。 いよいよあの山に登れるんだぜ」と 踊りだすでは。 ・ 早速爪先どうしをハイタッチして 「どうだい、高芝山より高くなったぜ」と新靴。 ふーんそれほどまでに あの山に行きたかったのかい。 |
あの尖った山に連れてって! |
メレル新靴、 高芝山へ登る それじゃお前さんが 泣いて喜ぶような とびきり急なルートへ 連れて行ってあげようか。 ・ どうだい此処なら まるで垂直岩壁を登るようで 気分爽快だろう! ・ 1代目の古靴と違って 踝まで足が包まれているから 脚の力が ダイレクトに爪先に伝わり 垂直でも すいすい登れるぜ。 |
こんな素敵な山に 登山路が 記されてないなんて 神の仕業としか 思えないね。 ・ 登山者が来ないので 野生動物にとっては 正に天国。 防火帯が山稜に切り拓かれて いるので地元の樵は 年に1度位は やって来るらしい。 ・ つまりこの高芝山には 山荘の住人が トレーニングに訪れる以外は 殆ど登山者は来ない と云う事なのだ。 ・ こんな贅沢を 許してくれる神に 一度はお礼をしなくてはと 思うのだが さて神は何処に・・・。 |
何とか頂上標識まで新靴を ほんじゃまー、 山荘専属のプライベート・ビーチならぬ プライベート・ベルグを 授けてくれた神に メレルの新靴をお披露目して 感謝の儀式を執り行うとしよう。 |
きっと神は高い処に居るに違いないと 上を見上げると ありゃ、あんな高い処に 《高芝山》の山頂標識が在るでは。 ・ さては仙人め、 こんな日が来ることを知っていて 敢えて手の届かぬ高い位置に 標識を取り付けたんだな。 |
誰だこんな高い処へ着けたのは |
森の彼方に赤石岳(左)・悪沢岳(右)が見えたぜ P2稜線より |
神さんよ、 こんな素敵な山を 山荘に授けて くれてありがとう。 ・ どうでぃー ぴかぴかのメレル 3代目の新靴だぜ。 この靴が 神さんに是非逢って お礼をしたいって! |
それっ!これでどうだ! |
高芝山を 届けてくれた神様、 メレル3代目を 此処に 使わしてくれた仙人様、 MERRELLの創始者 ランディ・メレルに代わり 心より 感謝いたします。 ・ えっ、 何に感謝するかって? そりゃ、決まってるだろ。 《 神と新靴との邂逅》が 実現したことさ。 |
夜明けの耕作 西畑 11月30日(土)晴 この瞬間に肉体と精神を貫く歓びが存在するなんて、どう考えても及ばないことであった。 夜明けと共に起きて大地に深く侵入し、堅く閉ざされた土塊を掘り返す。 繰り返し繰り返し、掘り返すに従い、 徐々に閉ざされた大地が生命を自覚し、息衝き始める。 ・ 生命の兆しは頂点に達し、やがて超新星の爆発を 永劫とも思える長い闇との闘いを終えて、夜明けの生命の光に出逢う瞬間。 ほら、小倉山の闇を突き破って今その瞬間がやって来たんです。 |
キウイも収穫せねば 西畑 午後野生キウイ収穫。老木は折れ、 倒れ今年が最後かな? ここのキウイも例年の10分の1以下。 今年はキウイの外れ年なのかな。 (地、森、山、読より) |
やっと西畑に手が伸ばせるところまで畑作業が進んだ。 少なくて採り甲斐のないキウイも収穫。たったの8kg。 昨年が72kgだから9分の1の収穫量。 従ってほんの十数分であっけなく作業終了。 |
来春の畑の準備もしなくては 西畑 |
窓拭き、換気扇掃除も待ってます 居間より |
駱駝の引越し 玄関 |
この岩、覚えているかな? そう、4か月前の8月までこの岩には山荘の守護神として、龍が鎮座ましましていたのさ。 その龍が奥庭の滝に移り、後任者として奥庭の藪に埋もれていた駱駝がやって来たんだ。 ところがこの駱駝、唯単に岩の上に乗せてあるだけなので極めて不安定。 ・ 芋掘りにやって来た妖精達が見逃す筈のないターゲット。 案の定妖精達が帰った後に観てみると駱駝は何処に? そこで仙人は反省。これは簡単に動いてしまう状態で設置した仙人が悪い。 セメントを買ってきて駱駝の脚を岩に接着。目出度く駱駝は以前よりしっかり固定されましたとさ。 うーん、こうしてみると妖精達の悪戯も、あながち悪いことばかりではないかな? |
太陽をいっぱい吸い込んでね ログテラス |
大根に光が突き抜けて眩しいな ログテラス |
大根干し 12月7日(土)晴 すっかり諦めていた大根。 この氷点下の寒さの中 めげずに成長を続け なんとか沢庵漬が 出来そうなまでに成長したでは。 ・ 早く準備をと 8月に種を蒔き発芽はさせたが その後の散水不足で枯死。 9月に2度幡種したが 時すでに遅し。 今年の沢庵漬は断念。 |
小楢の紅葉に包まれて ログテラス |
だがどうだい。 何とかいっちょまえに 大根らしく育って 「ほら未だ間に合うよ 早くあたし達を ログの屋根下に吊るして 太陽を浴びさせておくれ」 なんぞと宣うでは。 ・ よしよし、解ったよ。 ほんならもう夜は すっかり氷点下になって 大根干しには遅すぎるけど 干してあげよう。 |
大根もやっと干しました ログテラスより |
大根脚のラインダンス ログテラス |
小倉山の蔓梅擬 玄関 |
12月の山荘季語だね 2階イオ |
1年ぶりの交換 玄関 |
蔓梅擬がやって来た! 若しかしたら蔓梅擬が在るかも知れないと、メレル君の靴と共に高芝山に出かけたのだ。 標高の高い高芝山の森はもうすっかり丸裸で、蔓梅擬の紅は一際眼を引く筈なのに 全く何処にも見当たらない。 で、仕方なく12月になると小倉山の山麓で耀いているいつもの蔓梅擬に恐る恐るお伺いした。 ・ 「あのー、今年も山荘の室内アートに参加していただけないでしょうか?」 「えっ、今年もですか?蔓性は成長が早いと云われていますけど 此処まで太く延びるには何年もかかるんですよ。 確か昨年は遠いハンゼの頭の蔓梅擬に声を掛けて、室内を飾ったとか?」 |