1742ー2020年  皐月


夜明けの彩雲に漂う月齢24日の月
5月17日5時24分 イオの南窓から

夜明け4時を過ぎ、絹雲が仄かに紅を帯びて来た小倉山を見上げたら、下弦の24日月が、彩雲に漂っていました。
空が好きで星が大好きで、いくら月に恋してる雪子さんでも、
こんな早い夜明けの24日月は観てないだろうな!
だからメッセージを送っても届かないだろうけど、若しかすると24日月が、あのキューっと引絞った観えない下弦の力を借りて、
メッセージを1本の矢に託して、ヒューっと、飛ばしてくれるかな!

それにしても彩雲の手前に24日の月がしゃしゃり出るなんてことが、あるのだろうか!
陰部に漂う彩雲は24日の月を突き抜けているようにも観えるし・・・・・。
これって若しや山荘に嵌め込まれた大きな硝子が、互いに反射し合い時空を超えるかの如き屈折を繰り返した結果?
それとも新たに山荘住人として加わった、錦鯉たちの為せるマジック?
錦鯉のプレゼントメッセージだとしたら、解読しなくちゃ!



山荘へおいで!

最優秀賞を取った
錦鯉:松之助じゃ!(酒井社長)

ほな、その子供にして!

錦鯉が12匹に!

35cmの大きな錦鯉2尾、
20cmの可愛い錦鯉8尾を
石和のINC(Isawa Nisikigoi Center)
出かけ購入。

コロナウイルス感染拡大で
休業中のリオスフィッシュセンターで
酒井社長と
13時半に待ち合わせる。

石和橋を渡って
右にあるリオスは一方通行や
路地に阻まれ、ちょっと分かり難い。
カーナビに
住所を入れて何とか辿り着く。

でかい35cmじゃ!
水が変わると繊細な錦鯉は
死んでしまうので、3日間は
餌をやらず
様子を観察して欲しいとのこと。

6年前に購入した8尾
小さい錦鯉は殆ど死に絶え、
30cmに育った鯉が2尾に
なってしまい、新たに購入せねばと
思いつつ3年が経過。

やっと仲間を迎えることが出来た。
今度こそ1尾も殺さず、
何とか大きく生育させたいと、
滝からの空気を含んだ落水だけでなく
池燈の揚水ポンプを回し、
池水に空気を送り込んでいる。

ようこそ山荘池へ!
松之助紅白と黒の入った大正3色
楽天ネット通販10cmのチビ助が10780円

これが新住人、宜しく!

うん、この池、気に入ったよ!
松之助紅白と黒の入った大正3色
楽天ネット通販330,000 +送料1,800円

酒井社長は1割でもってけ!と・・・



5月の山荘

 

晴れ予報の朝にもかかわらず、空は淡い黄みがかった靄のようなものに覆われている。
大陸から飛来する黄砂の影響らしい。

山荘へと向かう急坂、優美な姿を誇らしげに見せるはずの富士山は残念ながら全く見えない。

その代わり見上げた空には、天に向かう薄紫の炎のような桐の花が満開であった。

天に桐・・・ならばと畑をのぞき込めば、あった。地にはじゃが芋の花、まだ12本だが薄紫の可憐な花がひっそり咲いている。
ああ<聖五月>薄紫の風が吹き抜ける。

 

1年ぶりに訪れることができた山荘は、森の新緑に身を隠さんばかりにしながら、大きく両手を広げ「よく来たね」とほほ笑んでくれているようだ。

前庭にはアイリスが咲き誇り、ここも紫の小道になっている。
群れ咲く花のどこかに可憐な姿のイリス姫が隠れているのだろうか?
と想像するだけで愉しくなる。もう山荘の魔法の時間が始まっている。



テラス、カリスト部屋、森の3層が語る
3層が三世を描く

 心象風景が時間と空間を
自在に飛翔するのは、
脳の海馬に記録された
その時の固有の時間や空間が、
踊り出るからである。

8~12ヘルツのα脳波によって
潜在意識と健在意識の
境界線上に導かれた脳は、
更に低い
4~7ヘルツのθ脳波を発し、
深い瞑想から創造性、幻想、
閃きを駆使し、
心象風景に未来の時空をも描く。


ま、云ってみれば
仙人が他者から観ると、
一風どころか、
可也変わっているが如くに映るのは
この時空を超えた心象風景が、
仙人の心象を突き抜けて
現実そのものと置換するからである。

想像を司るα波や
創造を喚起するθ波が常に
垂れ流し状態にある仙人にとって、
ちっとも自在にならぬ
現実の時間や空間にイライラして、
せめて山荘だけでも
もちょっと、心象風景に
近づけることが出来ないか、
なんぞと、寝ても覚めても考えている。

考えているだけでなく、
気がつくと既に手足が勝手に動き、
トイレ壁を突き破って、
こんな3層が三世を描く様な
テラスを造ってみたり!

 
レストラン、森、イオ部屋が踊る



硝子の中に幻想の森

<森テラス>ができたらしいと噂には聞いていたが、はて?家の裏側にテラスなんて想像できかねる。
そもそも、どうやって出入りするのかね?あまり期待もできそうにないが・・・

朝食の盆を運びながらそんなことを思っていたら、「ここからどうぞ」と示されたのは確かトイレのドア、
半信半疑で踏み出したそこは、「わぁ~!」と思わず飛び出した感嘆詞の後の言葉が続かない。
要するに、想像をはるかに凌駕した全く新しい空間の出現だ。


あり得ない!!けど、すごい!

テラスの真ん中がぶち抜かれ、森への架け橋があり、その空中廊下の真ん中にガラスのテーブルが設えられ、
ザイルとカラビナを使ったブランコが椅子になるという仕掛け。

わくわくしながらブランコに座り視線をさ迷わす。アケビのつる越しに下を覗けば、池は満々と水を湛え、
紅白模様の鯉たちが泳ぎ跳ねる姿に、こんなに大きな池だったんだと新たな驚きの発見。

正面に視線を投げれば、大きな出窓の硝子の中に幻想の森が広がり、その森の中にさらに出窓が開かれ鉢の花があり、
ヴィーナスの像があり、里の風景が拡がる。入れ子細工のように多重構造の不思議な風景が生まれる。






池水清浄機取り外し
( タカラ ウォータークリーナー
【ちどり R】 日本製 TW-581 )
錦鯉の憂鬱

で、池水清浄機を取り外して、
じっくり考えてみると
仙人が現実と思って観ている世界は、
物体の色素なんぞが反射する
可視光線と呼ばれる電磁波を脳が、
認識しているに過ぎない。

360nm(ナノメートル)と波長の短い
紫から、長くても750nmの赤
までを認識しているだけであって、
これは太陽の放つ電磁波が、
作り上げた脳が捉えた
現実である。

そう、脳は太陽光に適応して
生み出されたのあって、
脳が太陽光を認識しているのでなく、
太陽光が脳を認識していると
考えるとスッキリする。


水に気泡を入れる
エアレーション効果もある

  太陽光の多くを占める波長域が
360~750nmの領域に
あるので、その光を認識して脳は、
現実を作り上げている。
この領域外の光の世界では、
人間の脳は、何も認識できない。

その波長にとって代わって、
想像を司るα波や
創造を喚起するθ波が作り上げる
心象風景と現実とは
そう乖離しては居ないのでは!


水中ポンプ下のフィルターは! 

 おいおい、池水清浄機を取り外して、
いつまで見詰めているんだ。
太陽光の波長や脳の放つ
α波やθ波を引っ張り出して来て、
現実世界と心象風景を
一緒くたにして、どうするつもり?

それより早くフィルター掃除しないか。
錦鯉が落ち着かず
ウロウロ泳ぎ回っては心配そうに
仙人を見上げてるぜ!

 
フィルター掃除完了

錦鯉は呟く。
≪この池は気に入ったが、
何だかここのご主人様は、どこか
おかしくないかい。
その内あたしたちまで変な世界へ
連れて行ってしまわないか、
しんぱいだね。≫

これで池水が浄化される


摩訶不思議、山茶花に咲いた真っ赤なペチュニア

北出窓に映った森の山茶花に森テラスのペチュニアが重なる。
実在するのは森テラスの君が代蘭だけ。
出窓のガラスが心象風景のカンバスとなり、森を背景としテラスのペチュニアの真紅を加筆する。
カンバスの前に立つ君が代蘭だけが、心象風景から飛び出して太陽光を反射し、可視光線の実像を結ぶ。
正しく心象風景と実存世界の乖離を失った造形。





ビスターリ登山だ!


ガラス窓による思わぬ効果は山荘の魅力の一つでもあるのだが、またしても想像を超えるガラス窓効果は圧巻だ。
それにしてもこのテラスは広い。
階段踊り場の大きな出窓がまるで博物館の陳列ケースのような効果を生み出して、全く新しい部屋が一つオープンした。

反対の席に座れば、森がぐんと近くなり、山荘のどこの場所とも違う感覚で森と向き合える。

どこにもない未体験の森のブランコレストランにすっかり心を鷲掴みにされてしまった。

来るたびに進化する山荘ではあったが、<森テラス>には心底脱帽、仙人の遊び心と創作意欲もますます進化している様子だ。

 

 

仙人に案内され仙人山へと、ほぼ1年ぶりとなる登山へ。
とにかく斜面らしきところを歩くことなく過ごしてきた半年以上の時間を思うと、ついて行けるかなと不安ではある。

そんな不安も歩き出すとたちまち森の魅力に引き込まれ掻き消える。

踏みしめる一歩一歩の感触を足裏から脳へそして心臓へと実感しつつ、山道を歩けることの嬉しさに心が躍りだす。単純だなあと、我ながらおかしくなる。

仙人の足取りもゆっくりゆっくり、これぞビスターリ登山だ。




3日間断食して池水に馴らし給餌
 
3週間で手から食べるまでに馴れたぞ!



お出で!

そら、乾パン食べる!
なんど餌を入れても全く見向きせず
池に投入した餌は、
数日して虚しく排水溝から流れて行く。
食欲を示さないだけでなく
とても繊細で
僅かな物音にも敏感に反応し
直ぐに池中央の島の下に隠れる。


6年前の2014年8月に
池の水総てを排水し、
池の大掃除をやって、総ての錦鯉に
死なれてしまった。

新たに酒井社長から8尾を譲り受け
その内2尾だけが生き残ったが、
今度の錦鯉の様に
人に懐く様なことは無かった。
それだけに手から餌を食べるなんて
とても嬉しいぜ。


大きな口をパクリ!

もっと喰いたい!



極限の状況で自らの決断を下す

ヒマラヤ山脈もチベット高原も日本アルプスの山々も、たくさんたくさん歩いた足なんだ。
よく頑張ったよね、と我が足にご褒美のつもりで、ビスターリ、ビスターリと呟いてみる。

あのたくさんの時間が今も自分を豊かにしてくれる。
あの頃は、ただ目の前の登山にいっぱいで、いつか来る老いの日に、その行為が自身を豊かな想いに導いてくれるなんて、考えてもみなかった。

思い返せば、いつも自分の実力を超えるような登山に魅せられていた。

隊長が居てくれたから安心して挑戦が出来たのだろう。
特にチベット未踏峰に行くようになってからは、隊員が私だけという時もあり、おそらく隊長は未熟な隊員を連れてゆく負担もあったことだろう。
にも拘わらず、実際の登山活動では常に対等に扱ってくれ、登頂の意思も撤退の意思も自らの選択が全てであった。

明日登るのか、止めるのか、一晩中テントの中で悶々と考え、朝の光に背中を押され決断したこともあった。雪壁の途中で一人引き返したことも。

どんな結果であれ、自らが考え選択したことに対してであれば人は納得ができる。

特に登山においては、自分自身の体と心の声に敏感になりきちんと向かい合わなければならない。

極限の状況で自らの決断を下す、日常の中ではおそらくあり得ない体験だろう。

今、自分が名もない山や森を歩くときにも、かくも豊かな想いを抱けるのは、おそらくそれらの体験の積み重ねが齎してくれたのではないかと、
最早仙人に昇格してしまった隊長に心から感謝する
(今更口に出すのは照れ臭いので心の中だけです)

 



橋上ガラス卓での朝食(橋下の池では錦鯉が躍ってます)
 

仙人テラスも花が一杯!

森テラス開店準備中でーす



さて、仙人山の由来は?

稜線に出ると風が心地よい。
冬の稜線上では風は大敵だが、5月の森を登ってきた身体には、吹き寄せるみどりの風の何と爽やかなことか。
久しぶりに汗をかいていることに気づく。長い長い蟄居生活だったんだと、改めて解放感に包まれる。

山荘の裏庭みたいなものだが、この静かな山稜を歩けることは本当に贅沢な時間だと思わずにはいられない。

稜線上はところどころで躑躅の赤い花がアクセントになり、新緑の鮮やかさがまさに眩しいくらいだ。落葉樹の森の素晴らしさだ。


拓けた仙人山の山頂で、「さて、仙人山の由来は?」と謎かけが、なんだっけなんだっけ、
頂上標識に顔を寄せてみて解った!1002mそう<せんにん>なんですね。

此処に一番遠い反対側から登ってきたら、確かに登り甲斐がありそう。いつかそのルートからも登れるだろうか?


そんなことを思いながらの下山だったが、下りの方が緊張する。
油断して滑ったら足を痛めてしまう。そうなればもう2度と登れなくなるんだぞ、そんな声が湧いてきて自ずと足が竦む。

怖いと思うと足に力が入らなくて、不安になる。しっかりと大地を踏みしめ、正しい歩きを思い出そうよ。

富士山が姿を現した。柔らかい紗に覆われているが、だいぶ雪解けが進んだ山肌を見せてやはり優美だ。

 



1002m仙人山


ご無沙汰してました 



氷割ビールで乾杯!

あれ?もしかして扇山へ向かってるの・・
植林された杉が大きく育ち今はほとんど眺望のない道になっているが、この稜線は4半世紀前の山荘誕生当時は明るく見晴らしの良い稜線だった。

冬の夕日がまるで大きな金色の蝶のように金の鱗粉を振りまきながらゆっくりと沈んでいったこともあった。
忘れられない光景だ。

さっき仙人はこの頃は見晴らしも悪いし、扇山より仙人山と言っていたような気がするけど・・・やっぱり登るんだ。

扇山の基部から見上げれば、こんなに斜度があったっけと思わず怯む。登り始めると案の定足が思うように上がらない。
体力の衰えを見事なまでに突きつけられる。


ゆっくりゆっくりと唱えながら、滑り落ちないよう踏ん張り一歩を押し上げる。

山荘時間は不思議と1年もの空白を一瞬でつなぎ合わせて、連続性を感じさせてくれるのだが、
さすがに扇山の急登は長い空白を自覚させられる。<それはトレーニングをさぼったからでしょ!>と風が笑いながら追い越していく。
光が緑が眩しい。風や光の中に居れば、苦しいのも愉しい。

下山はなんと尻セードができた。一気に子供に還った気分で、何とも面白くなってしまった。

 


夕餉は一階のテラスで高芝山の積乱雲を眺めながら氷割ビールで乾杯!

無事に下山が果たせ、夕餉のテーブルは一階のテラスで富士山を眺めながら氷割ビールで乾杯!

1日をものすごく濃厚で充実した時間に仕上げることができるんだっていうことを、あらためて実践させてもらえたことに感謝。
限られた時間だからこそ、どのように生きるのか、もっと自分に問い続けないともったいないぞと気持ちを新たにした日でもある。

生まれたての入道雲はまだまだ小さいが、夏が始まったことを告げている。

空が晴れて透明な青が広がる。明日もいい日でありますように・・・




光が緑が眩しい!
 
限られた時間だからこそ!
 



森テラス橋に咲く金蘭
山荘森に咲く
絶滅危惧II類(VU)の
金蘭&銀蘭


3年前の5月でしたね。
山荘森で絶滅危惧種の
金蘭、銀蘭を
見つけたのは!

≪絶滅危惧される生命は
5つのカテゴリーに分類される。
危惧される度合いの大きさの
2番目の危機に、
晒されているのがⅡ類(VU)である。≫



山荘森に咲く銀蘭

花芯がチラリ銀蘭

いけねー銀蘭を摘んじゃった!

金蘭のお出迎え!



ゆぴてる峰962m

あれ、真紅のペチュニアがプレートの上に着いてる。
うん、それはね
ゆぴてる峰のてっぺんの楢の幹から剥がす時、
プレートに寄り添っていた真紅のヤッケが
一緒に連れてってと、くっ付いてきたんだ。

きっと仙人のお墓参りに来た人が着ていたヤッケだね。
お前さん、やっと墓らしくなってたね!
それでは勲章を着けてあげよう。
いつもの≪1944~2018≫の墓標年代プレートを、
≪ゆぴてる≫に替えてあげよう。
このプレートは仙人山手前の、嘗てP2峰と呼んでいた
峰のてっぺんに着けてんだが、
今この瞬間だけお前にさずけよう。

 
仙人墓の≪ゆぴてる≫



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