仙人日記
 
 その105の22014年葉月
8月3週・・・源泉がもたらした真夏の狂劇 


がもたらした真夏の狂騒劇序曲 
咲き誇る夏水仙と鹿威し

早朝4時には白み始めていたのに、太陽はすっかり遠ざかり、南回帰線への旅に出てしまった。
4時49分、山荘の森が僅かに東の光を捉えると、生殖を終え死に絶えたと
思っていた
(ひぐらし)が最後の声を振り絞って高らかに啼き始めた。
いや声ではなく、翅を震わせ胴体に反響させ、
肉体の総てを楽器にして、最後の音色を絞り出したと云うべきか。



アイベックスで尾する蝉

庭の彼方此方で
咲き出した夏水仙の香りを嗅ごうと、
鼻を近づけたら雌蕊が震えた。
まさか、もしや蜩の音色に共鳴したのかい?
あー、鹿威しまでが
蜩のアリアに聞き惚れて、
通奏低音の調べを流しているでは!

最後の音色をり出し
前庭ゲート

みんみん蝉も 



狂騒劇・Ⅰ

滝の落ち口の処で金色の大きな鯉2匹とちび1匹が死んでいるでは!
10年以上も育てやっと大きくなったのに残念。
滝の水量が減少し水の循環が遅くなり、水中に含まれる酸素量が不足し死に至ったと考えられる。
早速滝の源泉に行って、源泉水槽の重い蓋を開けて中を覗いてみると、
滝への導水管に銀色の長い楔が打ち込まれ導水出来ない様になっているではないか! 

そう云えばジャンダルムに行って山荘を留守にしている間、K造園から目白に電話があり、
源泉地主のS造園とK造園の息子が酒の席で喧嘩し、源泉を止めると通告されたとか。
そうか、これがその結果だったのか。さてこの問題は解決可能なのか? 



水槽の除去

ホース先の小型ポンプで排出
上水槽の大掃除

400mも遡り導水管を埋設し
扇山の谷から水を
引いたのであるから
滝に落とすだけでは勿体無い。
そこで給水槽にも
導水管を接続し生活水としても
使えるようにした。
当然、管理された施設から
給水される水では
無いので、濾過されたり
消毒用の塩素が
加えられたりしてない。

純粋な湧水である。
それが故に多くのミネラルを含み
水槽に貯めると
澱が沈み定期的な清掃が
必要となる。

さて狂騒劇は
此処から始まったのだ。

更に右の水口に澱を排出

最後はデッキで




台所からの水槽
下水槽の大掃

水が止まってしまったのだ。
何やら原因は
里人どうしのトラブルとか。

まー、暫く様子を観ることにして
給水槽掃除ついでに
下水溝も掃除しようと
マンホールの蓋を開けて吃驚!

油脂類が形となり詰る
こりゃなんじゃ!
固形物に覆われ
まるっきし排水が観えない。
排水に含まれていた
油脂や汚水が
マンホールに付着し徐々に
層を成し固形物へと
成長したのであろう。

これが人間の血管であったらと
想像してみる。
うーん、悪夢にうなされそう!

これでは水出来ない
諸器官の蛋白質等の老廃物を
回収して右心房に流れる
静脈血液の流れに
イメージを重ねてみる。

さしあたりマンホールは
リンパ管に相当する
のだろうか?
長年使用し老化し
機能を失ったリンパ管。
悪夢じゃ!
この悪夢を救えるのは死のみ?



狂騒劇・Ⅱ

K造園主がS造園主に「源泉を止めるのだけはやめてくれ」と
土下座して詫びたが、頑として聞き入れず 。
喧嘩の原因も聞いたがはっきりせず。「S造園との和解はとても出来やしねえ」との話。
で、結局源泉の下20m程の山荘の土地に改めて源泉を掘り直すことになりそう。
こちらの落ち度ではないのに、この土木再工事で一体幾らの支出を余儀なくされるのか?
見習仙人組合の乏しいお手当しか収入の無い仙人は、頭を抱えるのであった。

原野購入時に地主の標木さんに確認したら、
原野の北にある3本の柿木も購入原野に含まれるらしいとのことだったので、
毎年その柿と山荘柿を合わせて干し柿を作っていたのだ。
しかしどうもその柿の木はS造園の所有らしいと、昨日のK造園主の話で判明。
そこで今朝一番でロバートブラウン、新潟の濁り酒、渋谷センター街の焼酎を持ってお詫びに。

あー、どうしてウィスキー、日本酒、焼酎と3本も持って行ったかと云うと、S造園主が飲兵衛だとは聞いていたが
好みまでは聞いていなかったので取り敢えず、3種の酒を用意したと云う訳。
源水の件は一言も口に出さず、柿のお詫びに伺ったと話したが、S造園主は姿を見せず奥さんのみの対応。
こりゃ、K造園主との対決は、相当深刻なものらしい。



山荘池の大掃除しかないか?
エアレーションしてみるが・・・


先ず鯉をして

池の水を
横8m70cm、縦2m30cm
深さ1m前後もある池の
大量の水を抜くには
どうしたらいいのか?

風呂場の湯を洗濯機に
汲み上げるポンプを使ったり
疎水への循環ポンプを
回したりしてみたが
何しろやたら時間がかかる。
滝に落とす水を
源泉でなく池水に切り替え
東電の電柱保護パイプを
セットし、その滝の水を
奥庭に流すようにして
排水に成功。

さあ、溜りに溜った澱が
綺麗に取れたぞ!
これで元気になっておくれ。

池底のを掻い出す

底の石がやっとえた


狂騒劇・Ⅲ


昨日午後の畑仕事を終えて奥庭に上がるとSさんが来ていた。
詳しい話を聞いてトラブルの原因が判明。
1時間近く話をし結果として、源泉の水は流してくれることとなり、柿の件も問題なし。
山荘下に以前から買いたいと思っていた廃屋があるが、所有者が解らずそのままになっていたが、
あの廃屋が絡んでいたと知り、長年の疑問の1つが解消。
あの土地を親戚筋に当たる東京の河野さんに別荘地として売ったのがS造園で、
その水を今、山荘で使っている源泉から廃屋に引いたのもS造園。

現在は使われていないその導水管を、K造園がS造園に無断で撤去してしまったことが、
諍いの原因だったのだ。
もう何十年も使われていない導水管なので、
当然、土が詰り割れたり折れたりと、現状ではとても使いもんにならない状態になっている。
K造園も廃棄物として処理することに躊躇はなかったのだろう。

 


金色の錦鯉

次々と9匹て死す 
ところがどうでしょう。
どうも元気が無く
疎水の落ち口に集まり口を
ぱくぱくさせ餌も食べず。

こりゃ酸素不足かと
エアレーションのポンプを回すと
矢張り気泡を
求めて次々とやって来るでは。

しかしその後も回復せず
あれ程敏捷であった動きが
ぴたりと止まって
遂に10年来飼って来た
大きな金の錦鯉が
死んでしまった。

地の闇を切り裂く
奥庭のシンボルでもあった
黄金に煌めく鯉。
永劫の別れだ。
せめて残りの鯉を救わねば!

酸素足か水質か?
錦鯉の主な病気である
白点病 尾ぐされ病 水カビ病
に効くメチレンブルーを
試してみようか?

どれどれ使用方法は?

白点病は、メチレンブルー1回では
駆除できないので
1週間おきに3回ぐらい繰り返す。

色素系薬剤なので、
色がなくなった時点で
効果がなくなる。
使用するときは濾過槽を止める。
濾材が吸着してしまって
効果が半減する。

酸素と結合して酸化する
作用があるので、
エアレーションを必ずしてください。

しかし薬効無く総て死滅。



狂騒劇・Ⅳ


しかしその撤去を無断で行うのはS造園としては許せない。
河野さんの子供たちが再び別荘として使いたいとなったら、どうするのか?
当然、S造園の責任問題となる。
しかし結果として、元の廃管を繋いでおいてくれれば水は自由に使ってください
とのS造園の申し出で一件落着。

水源問題は落着したが、K造園が撤去してしまった河野さんの廃屋への導水管の復活問題が残った。
これはK造園のミスであるので当然、K造園が責任を持って再工事するものと思っていたが、
昨朝やってきて再工事費を山荘で支払ってくれとのこと。
そりゃ零細な個人企業なのだから、台所事情が厳しいのは解るが、勝手にK造園が撤去したのであり、
そのためにS造園ともめ事を起こしたのであるから、その責任はK造園が取るべきなのだ。

 




メチレンブルーの効果?

エアレーションの効果?
新家族8匹遂に付く
狂騒劇の終わり?


死因が突き止められぬまま
新たに石和から
8匹の錦鯉を迎え観察。
魚不在の池には
孑孑(ぼうふら)がわき、放っておけないのだ。

二の轍を踏まじと今度は
最初から
エアレーションし
メチレンブルーで殺菌。

1,2日目は慣れぬ環境に怯え
僅かな足音にも驚き
猛烈な勢いで
ただ逃げ泳ぎ回るだけ。

3日目、試しに餌を与えるが
見向きもせず。
4日目、一番大きな鯉が
餌を追い始めると
他の7匹も水上に躍り出る
勢いで食べ始める。

餌を食べるとは即ち、
新たな環境を受け入れたこと。
やったー!

4日目遂に餌を食べる

競い合い餌を追う



狂騒劇・一件落着

しかし狭い村のこと、今後のこともあり、山荘側での再工事費用支払い了承。
S造園主の母親は小倉山の南の神金から嫁ぎ、その母親とK造園主の母親は姉妹なので
S造園とK造園は遠い親戚にあたるらしいとのこと。
和解出来てほっとしたのは、仙人のみならず、きっと両造園の周辺人も安堵したであろう。
既にこの噂は里中に広まり、仙人と懇意にしている梅林の広瀬氏からも、諍いを心配する話がK造園にあったとか。

再工事点検で水源に向かう途中、K造園主は語る。
「へー、60年前にもなるがジャンダルムにも行ったよ。あの頃はヨタで18~20歳の頃は山ばっか登っててね」
「ヨタ?それじゃ暴走族に入っていたとか?」
「えっ、暴走族?あんころは暴走なんかあったりめーで、ヨタの内に入らんよ」
どうも甲州弁のヨタルとは、不良じみた行為をする≪与太る≫より、一段と次元の高い血気盛んな行為を指すらしい。

20年もの長い付き合いで、基礎工事から庭の造園、ワインセラー、池、上下水道の工事、原野造成と
山荘建設を共にしてきた造園主から、山の話を聞くのは初めて。
ジャンダルム登山での不在中に開幕し、造園主のジャンダルム登山の話で緞帳を下した狂騒劇。
この狂騒劇を仕掛けたのは、若しかする
とあのジャンダルムか?
なんぞと埒もないことを慮りつつ、緞帳の降りた山荘水源地の劇場を、K造園主と共に後にしたのである。

問題の錦鯉も全滅の危機を乗り越えて、新たな鯉が元気に泳ぎ回っているし、
1か月に及ぶ狂騒劇は、一件落着したし、
先ずは、めでたしめでたし!




一件落着・工事終了
 
山荘源水槽 8月23日


一件落着・工事終了 

だが水量は0では!

山荘と他家へのメーター



狂騒笑劇・水の絶えた水源


昨日K造園が源水地の工事が終わったと来訪。
同行して現場の工事写真を撮り、工事のチェック。折角工事が完成してもさっぱり雨が降らず、
貯水槽の水位が給水管にまで達していないので、当然ながら水は出ない。
広島では豪雨が続き、24日現在で

「発生から5日目を迎えた広島市の土砂災害の死者は、これまでに49人にのぼり、
依然として、41人が安否不明となっている」
との悲惨な状況。
真砂土と呼ばれる風化した花崗岩地盤が、災害を大きくした原因らしいが、山荘周辺でも
風化した花崗岩を見かける。

山荘の岩登りゲレンデ坂脇峠の岩壁も、この風化花崗岩で出来ており
この脆い岩壁の崩落で、14年前の2000年、村上が墜落し、重症を負った事があったのだ。
広島並の豪雨に見舞われれば、崖上に建つ山荘も、同じ運命を辿る可能性、大いにあり。
しかし今は、せめて広島の10分の1でもこちらに降ってくれればと願いたい程、
甲州では雨が降らない。。
まー、これで村のいざこざは一件落着だが、水が出ないのでは話にならない。



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