1743ー2020年  皐月

輪郭が柔らかく浮かび上がる
5月14日(金)山荘テラスの曙光




朝の詩


闇がゆっくり退きはじめ世界の輪郭が柔らかく浮かび上がってくる時刻、
夜が明けるにはまだ少し早いが、薄明かりの中ではすべての事象が混沌と並列している。

森は懐に深く闇を抱いたまま、暗緑の塊となり堅牢な城塞の如く視界を塞ぐ。

そこに空間があるかどうかも定かではないが、じっと目を凝らすと色のない隙間が風穴のように点在する。


その隙間から見える虚空は透明感さえ感じさせ、どこか別の空間へと誘う回廊のようだ。
希望と呼びたくなるような、ほんのりと心を揺らめかす何かが含まれている。

濃い緑の闇は時折揺らめき、小刻みに打ち震えるさざ波のような葉の存在が見える。

風が通りすぎる瞬間だ。闇に走る風を観る。心の中にもふっと風の通り道が開け、思わず深呼吸している。



森の曙光

別の空間へと誘う回廊

闇に走る風
 

濃い緑の闇は時折揺らめき

小刻みに打ち震える


森の画廊
5月14日(金)山荘テラスの残光





道なき道にマークを滑沢山まで20分の南西尾根上)

 
あれっ、7年前に設置した陶板標識が無い!



平沢に下る尾根分岐点

漣の様に葉が震える 




第二鉄塔(左が扇山、右頂が仙人山)
   
 
山頂の赤立翅
 
第一鉄塔山の直下
 
死を受け入れた狸



眼下に小倉山が横たわる




太古からの永い記憶


少しずつ少しずつ光が滲み出すように明るさが増し、ただの塊だった森にも陰影が生まれ、奥行きが生まれ始める。

森の闇に最初の太陽光が差し込む瞬間、それまではただの森という塊に過ぎなかったのが、
光を浴びた一本一本の木々は解き放たれ、己の輪郭を一挙に明らかにする。

森は一気に覚醒した。森が森になる瞬間、イオのテラスで、それを目撃できたのはちょっと感動的だった。

 

森はあの深い闇の中に、太古からの永い記憶を抱え繰り返し反芻しているに違いない。

その記憶が古びていないことを確かめるために、新しい若葉を再生し続けるのだ。

太陽の光に目覚めたいま、
新緑の若葉たちは新しい一日の詩を謳うために、一時もじっとせずきらきらと光を弾き、絶え間なく囁きあっている。

 



太古からの永い記憶を掘り起す
畑のど真ん中に巨大隕石か!




繰り返し反芻する
 
キラキラと光を弾く



さあ、種を蒔こう!

例えば心の奥の

暗く曖昧な塊も

闇から解き放たれ

耕された記憶



新緑の若葉たちは新しい一日の詩を謳う




若葉の戦ぎ

若葉の戦ぎを目にしながら、ふと想う。

例えば心の奥の暗く曖昧な塊も、ある瞬間一条の光が射すように、
言葉という光によって闇から解き放たれ、確かな形を示すことがあるのではないか、と。

その言葉は、時に太陽の光のように他者から発せられ照射されるものなのだろう。

自分の内側を自らの照明灯だけで照らし出すのは難しい。


それが、ある時全く違う角度から、背後からであったり、斜めからであったり、他者の言葉で照らし出される真実もあり得るのだろう。

尤もそんな言葉の光を受けとめるだけの感受性がなければ、きっと見えない風のように素通りしていってしまうのだろうが。

 森の中には若葉の形をした無限の言の葉が埋め尽くす。

その中に私の心を照らし出す確かな言葉も、煌めき鏤められている筈だ、と不思議な確信が湧いてくる。

さあ、言の葉を集めに森へ飛び込もう。



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