豪華キャビン

《A》 快適キャビンへ

あわや激突!
Napoleon Fish


グングン近づいて来る。
焦点の合わない
呆けた視線を斜めに落し
彼なりの歓びを
これでも精一杯表して。

どうも彼はダイバーを
仲間と認識しているようで
ぶくぶく泡を吹く
黒い塊が沈んで来ると必ず
接近してくるとか。

紅海では
ゆで卵で餌付けし
ダイバーの人気者になった
ナポレオンが居たが
メタボになって死んでしまった。
眼鏡持の魚出現(メガネモチノウオ)


パラオのブルーコーナー
にも餌付けされた
ナポレオンが居て人気者。
だがこのモルジブ・
フィッシュヘッドのナポは
餌付けされていないと
ガイドは語る。

ここのナポ君
どうも人間が好きで
ダイバーを見つけると
フラフラと何処までも
着いて行くらしい。

従って先に気に入った
ダイバーにナポが着いて
いってしまうと
後から潜ったダイバーは
当然彼に逢えない。

ラッキーなことに
我々はどうもナポ君に
気に入られたようだ。


どう、似合う?
Napoleon Fish

『やあーやあー
面白いもん着けてるね!
オイラにも
ちょっくら貸してくれんか?』

ダイバーのシュノーケルを
着けて中々似合うよ。
それにしても
シュノーケル着けた
ナポレオンなんて
前代未聞!
こりゃギネスブックもんだね。

と思ったらナポ君の
反対側から
ヌーと現れたのは
シュノーケル着けた人間。


そりゃそうだよね。
いくら人間好きでも
魚がシュノーケル着ける
わけないか?

それにしてもナポ君
君は大きいね!
『眼鏡持の魚』なんて
呼ばれてるけど
ほんとに目の後ろに
眼鏡の蔓が2本あって
眼鏡掛けてるみたいだね。

それにおでこの大きいこと。
雄だけの瘤だけど
それがナポレオンの軍帽
に見えるので
別名ナポレオンだとか。
でけえー!(フィッシュ・ヘッドにて)



はい!ポーズ
Napoleon Fish

それじゃあさ
写真撮らせてくれないか?
そうそう、先ず
突進して来るところ。

はい!そこで止まって。
フラッシュ焚いても
いいかい?
問題無いって!
それじゃハイ、パチリ。

待てよ。
ナポ君いくら人間好きでも
言葉が解るはずないな。
だいたいここは水中。
喋ったって
ブクブク泡が出るだけ。


北アリ環礁・Fish Head


そうかその泡の
大きさ、泡の繋がり方
曲がり方、上昇速度によって
泡を言語化して
理解してしまうんだ。

ダイバーの泡を見つけると
直ぐ近づいて来る謎が
それで解けたね。

そういえばマンタも泡が
大好きでよく
ダイバーの泡の上で
旋回したりするけれど
あれも
言語学習してるのか?

そしてある日
突然変異が起こって
君たちは言語を持った
魚になるんだ。


ベラ最大種
全長2.29m、体重190.5kg


『余りの単純さに唖然!
あのね、あの泡は
そもそも言語とは
関係ないんだ。
あれは単なる呼吸の
排気だから
いくらあの泡を追っても
言語には
行き着かないのさ』

冷静なナポ君は
そう呟くと
もうお馬鹿さんの相手は
これ以上で来ません。
とでも言いたげな
表情をして
俄に方向転換し急速度で
泳ぎ去ってしまった。


イルカのように人間と
ある種のコミュニケーション
が可能だとの
感触を残して去った
ナポ君の無事を
祈らずにいられない。

ナポレオンは
最近の乱獲で著しく
個体数が減少し絶滅危惧種
になりつつある。

確かに刺身に
しても白身の河豚のような
極上の味で
パラオで食べた味は
忘れられない。
でも、もう
食べるのやめよう。
赤のハンター出現



耳を食い千切る
Mustache Triggerfish

夢中で魚を追っていたら
つい、うっかり
ゴマモンガラの産卵床に
ニアミスしてしまった。

途端に牙を剥き出し
威喝し攻撃態勢。
この、前の出っ歯が
恐ろしいのだ。
この歯で固いサザエや
珊瑚を噛み砕く。

指を食い千切られた
ダイバーや
耳をざっくり食い取られた
ダイバーの話を
よく聴く。


胡麻紋柄の牙(ゴマモンガラ)


直ぐ攻撃を仕掛ける
ゴマモンガラは
滅多に攻撃してこない
鮫より
遥かに恐ろしい。

英名のTriggerとは
鉄砲の《引き金》の意味で
まさにこの魚の名に
相応しい。

引き金を引いた途端
発射される弾丸の
ように一気に飛び出し
敵を打ち抜く。

ベラにクリーニングさせ
出撃態勢は整った。
さあ!
標的は何処に?


執拗な攻撃
Mustache triggerfish

目を付けられたら最後。
しつこいの何の!
逃げても逃げても
追いかけて来るのだ。

他のダイバーの後ろに
隠れても
決して見間違うことなく
執拗に攻撃してくる。

ダイバーの容姿を
インプットするのか
一連の動きを察知し
その動きを追うのか?


何しろ
決して最初の攻撃的を
忘れず何度でも
《引き金》を引いて
突進してくる。

美食家で雲丹が大好き。
雲丹の長い棘を
銜えて逆さにし
雲丹の腹側を出して
その弱点を食いちぎる。

英名のMustache
Mous Tacheと同じで
口髭の意である。
確かに口に黒髭模様が
しっかりある。

科の英名と合わせると
『口髭の引き金』で
何やらトレンチコートを着た
怪しげな『殺し屋』を
連想させる。
営巣中は鮫より危険



獰猛顔で温和
Black Spotted Moray

でかいのだ!
2m近くもあり
逢った瞬間思わず腰が
引けてしまう。

温和なのだが
縄張り意識は強烈で
近くに同類がやってくると
恐ろしいバトルが
展開されるらしい。

殆ど他のサイトでは
目にしなかったがここ
南マーレのミヤル・ファル
では数メートル間隔で
棲息しており
かなり縄張り範囲が狭い。

偽碁石ウツボ(ニセゴイシウツボ)


餌が豊富なのだろうが
これ程密集してると
時にはもの凄い死闘が
繰り広げられるのだろう。

碁石の文様が
体表だけでなく口内まで
広がり
口を開いているのか
閉じているのか判らず
シコク雀鯛が
ふらふらと近づいて行く。

偽碁石ウツボの
目の動きが面白い。
何となく雀鯛に強烈な視線を
注いでいるように見える。
でもこのウツボも
胡麻紋柄のように美食家で
鯛なんぞには目もくれず
烏賊や蛸
ばかり食べるのだ。



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