その74ー2012年睦月 |
1月1週・・・・ダイヤモンド・ダストの残り香
謹 賀 新 年 2012年元旦 ゲートから高芝山を望む 鋸を小脇に抱え 東森の出口から竹藪に向かう。 さて、今年はどの竹で門松を造ろうかと あちこち竹藪をうろつく。 よしあれに決めたぞと藪に分け入り ギコギコ竹を切り取る。 ・ 松はゲート前の北森から頂いて、 注連縄は昨年のにちょこっと手を加えて 出来あがったのを ゲートのポスト・ポールに括りつけて、 どうだこれで! ・ そうか蜜柑が在ると様になるなと 葉の付いた伊木力蜜柑を付けたが 重くて柔らかくて何度やっても落下、断念。 仕方ない今年は蜜柑無し。 でもこれでどうにか元旦に賀状を配達してくれる 郵便屋さんに間にあったかな。 ・ さあ、出来たてほやほやの門松と共に 一休の狂歌登場。 《門松は冥土の旅の一里塚 めでたくもあり、目出たくも無し》 《門松は死の足音》とはさすが大徳寺の狂雲。 |
ときめき・7時39分(東京の日の出より50分遅れ) |
あの顔面を突き刺すような 鋭く冷たい風の仕打ち。 一呼吸毎に肺腑を抉りとるような ダイヤモンド・ダストの 透明な刃を含んだ大気。 ・ それらの残り香が未だ肉体の そこかしこに在って なんだか嬉しくて とても心が豊かになってしまう。 |
乳房燦々 7時40分 |
山荘の山々が齎す豊饒さとは 異なるこの豊かさは 山の大きさと厳冬期ならではの賜物。 「あーこれだから 山は止められないな!」と しみじみ思う。 ・ このひ弱な老いさらばえた肉体と精神が 敢えて凍てついた山稜を求めて のこのこ出かけるなんて なんとも愉快ではないか! |
山荘元旦払暁 2012年元旦7時39分 居間から |
生きている限り肉体も精神も 自らのテリトリーの拡大を目論んで 虎視眈々と 生命を拒絶する虚空の彼方を 見つめているのだ。 ・ だからほんのちょっと 生命を拒絶するような世界に触れると 精神も肉体も嬉しくて つい心が弾んでしまうに違いない。 |
アンブラッセ曙光 7時41分 |
元旦の日の出だからと云って 特に心に響くものが在る訳ではないが 2日前のダイヤモンド・ダストの 残り香がヴィーナスと共謀して 山荘主の残された僅かな命を煽るのだ。 ・ 《うーん確かに今朝の太陽は いつもより美しいな》 なんて山荘主に言わせちゃうなんて ヴィーナスも中々やるね! |
ヴィーナス讃称 7時42分 |
海の幸・アボガドと鮪,数の子 |
ささやかな元旦の朝宴 2011年1月1日(日) 快晴 |
山の幸・山荘産唐黍&パン |
畑の幸・生ハムと畑の野菜 |
果実の幸・初収穫の葡萄でヌーボ |
太陽の幸・露枯柿とカマンベール |
んでもって共謀に乗せられて ダイヤモンド・ダストの 残り香と光り輝くヴィーナスと共に 2012年元旦を祝うことにした。 ・ 先ず海の幸を太陽に捧げよう。 鮪の刺身とアボガドを 生醤油と山葵に漬けて、手製の イクラと数の子をカクテル・グラスに盛って おー美味そう! ・ ついでに黒ラムたっぷりの スイート・ポテトに生クリームを トッピングしてと・・・。 |
大地の幸・スイートポテト&エチオピア・コーヒー |
「チーン」と加温終了を告げるレンジから 山荘特産の唐黍とパンを 取り出して、畑の野菜に生ハムを乗せて 干し柿にカマンベールをあしらえて これでどうだ。 ・ それじゃ山荘の太陽が育んでくれた ワインで乾杯しよう。 あれ、テラスから覗いているのは グランだな。 よしよしグランも仲間に入れてあげよう。 今年も一緒に いっぱい登れたらいいね! |
高芝山からの豪快な初満月 1月8日(日) 月齢15夜ならぬ14.4夜 居間より 《嵐の大洋》と《雲の海》が高芝山の稜線から静寂を湛えて浮かび上がった。 満月の右半分を占めるデカルト高地が地球からの反射光とは思えぬ目映いばかりの光を放ち 月面最大級のチコ・クレーターが3000kmに達する光の矢を高地に振り撒く。 《雨の海》の西に連なるアペニン山脈を率いて中央左方に見えるコペルニクスが燦然と煌く。 あまりの美しさに心も体も吸い込まれてしまう。 ・ 12月10日の皆既月食に触発され木星衛星・イオの食に心魅かれ光速計算の旅に出て早1か月。 満月は再び還って来たが最早同じ月ではない。 1年で月は地球から3.8cm遠ざかり1億年で沖縄から択捉島までに相当する3800km離れる。 この1カ月では月は3mm程地球から離れてしまったことになる。 総ては合し離れ集い散り、遠く去ってしまうと頭では理解しながらも、その3mmと云う宇宙では零に等しい距離が 愛おしく切なく胸がしんしんと痛む。 |
1月2週・・・・だがこの宝石達は人間嫌いなのさ
凄いぜこの枯葉の海。 犬と共にジョックすると枯葉が 波のように盛り上がって しぶきのように飛び散り愉しいね。 ・ ごらんよ、怠け者でいつも のたのたしているオバマでさえ 真面目に前を向いて走ってるぞ。 グランなんかもっともっと 速く走りたくてリードをピーンと張り 尻尾を帆のように高く掲げ まるで疾走する帆船さ。 ・ こうして2つの犬の帆に曳かれて 枯葉の海を突っ走っていると 8千年前に描かれた エジプト・ナイル渓谷の壁画を 想い浮かべるな。 ・ どうやらその遺跡に描かれた 壁画の帆船が 人類最初の船らしいんだ。 |
枯葉の海を犬帆走 1月9日(月) 小倉山 |
紀元前6千年と云えば石器時代の ど真ん中で狩猟採取で主な糧を得 これから農耕文明が生まれんとする時代。 そんな遙かなる昔、ナイル河を帆船で 走り回っていた人々が居たなんて驚きだね。 もしかするとその人達は 家畜化に成功した犬達を帆船に乗せ 豊饒なナイルに 無限の可能性を秘めた農耕文明を 夢見ていたのかな。 ・ で山荘主はその夢を実現すべく 山に籠って犬と共に畑を耕しているのかい? となると仙人日記は未来に棲む 過去人の記録でもあるのかな。 ありゃいつものように脱線しちまったぜ! ・ それじゃ次は谷に下って 冬将軍や寒太郎が届けてくれた 宝石を観にいこうか? |
冬の贈り物・谷の宝石 1月9日(月) 竹森川 そら、どんな宝石でも持ってこい! 較べてみろよ。 この美しさに敵うか? ・ だがこの宝石達は人間嫌いなのさ。 美しいからと云って ペンダントにして胸に飾ろうとか 指輪にして人に見せようとしても駄目だね。 ・ その人間が宝石の生み出された 清冽な環境に 身を置かない限り宝石は 身に着けられた瞬間に消えてしまう。 ・ あの顔面を突き刺すような 鋭く冷たい風の仕打ち。 一呼吸毎に肺腑を抉りとるような ダイヤモンド・ダストの 透明な刃を含んだ大気。 ・ 宝石を留めておくには 自ら鋭く冷たい風の仕打ちを求め 肺腑を抉りとるような ダイヤモンド・ダストの 透明な刃を含んだ大気と友達に 成れなければ駄目さ。 ・ この宝石はいつだって、とんとんと 生命の扉を叩いているんだ。 《さあ、ぬるま湯から飛び出して この宝石を着けてごらん》 |
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あれ!冠羽着けた見慣れぬ鳥だぞ 1月15日(日) 奥庭 グリゴリ、ぐりごり、高芝山を眺めながらコーヒー豆を挽いていると群青の空に1条の光が舞う。 光は高芝山を借景とする奥庭に優雅な軌跡を描き林檎の木に留まった。 《やー、いつもの山雀(ヤマガラ)だな。巣箱の偵察には未だ少し早いのでは?》 と話しかけると《あら、誰のことかしら?》とばかり小首をちょっと傾げこちらをじーっと見つめる。 だが胸がオレンジ色なので、てっきり山雀だと疑わず望遠カメラを向けパチリ。 ・ パソコンの大画面で観てびっくり! 鮮やかな橙色の冠を着けているではないか。急いで鳥類図鑑を開いて調べてみるが見当たらない。 嘴から眼に走る太い黒帯と眼の下に走る細い帯は頬白(ホオジロ)そのもの。 だが頬白には冠羽は無い。 同じ頬白科に冠羽を着けた頭高(カシラダカ)や深山頬白がいるが頭高の冠羽は黒く深山頬白は黒と黄色。 それに頭高の胸には茶色の縦斑があり、深山頬白は胸に三角の黒いネクタイを締めている。 となるとこいつあんまり寒いので思わずぶるっと震え逆毛を立てた瞬間の頬白か? と思ってネット図鑑をサーフィンしてたら確かに冠羽を立たせた頬白発見。 やっぱり! 冠羽を立たせた頬白 《ことりのさえずり》より |
1題・白菜漬ついに成功 |
2012年初仕事3題+1 1月16日(月) 目白への初出荷 「美味しい!」 目白にほんの少し初出荷したら更に 2軒におすそ分けしたらしく その感想が届いた。 ・ いつもは単なるお礼の定句と思っているが 今回だけは その感想に自信を持って納得。 確かに美味いのだ。 |
2題・うめー!太陽沢庵 |
レシピをしっかり読んで 農家を訪ねこの里に適した漬けものの 漬け方を教わり それでも毎年失敗を重ね 赤黴を生やしてしまった白菜漬。 ・ 収穫された沢山の白菜を前にして 途方に暮れ 性懲りもなく今年も白菜漬を仕込む。 どうせ又赤黴が生えて とても食える代物ではないだろうと 樽を開けてみると おー、何とも美味そうでは! |
3題+1・ついに独力で登ったぜ! |
ついでに隣の干し大根を漬けた樽も 覗いてみるとこれまた良い香り。 一切れ摘まんでみる。 これぞ長年求めていた味ではないか! ・ 海外では和食の味が恋しくなるので 遠征の度に美味しい沢庵を探して デパート巡りをしたが 納得出来る沢庵には逢えない。 しかし遂に逢えたのだ。 ・ 大根が本来持っている甘さを 太陽が充分に引き出し 香りも申し分なし。 |
最後の万里長城を築く |
山荘主が新年早々 初仕事で成果を上げているのに おいら達がのんべんだらりと 無為徒食の輩でいるのは腑甲斐ない。 とばかりグランとオバマが 隙間階段に挑戦。 ・ 犬は下が見える隙間階段を恐れる。 グランとオバマにとっては 小倉山・ログ階段の下段は登れるが 狭く急な上段は恐怖の対象。 さて今年の初挑戦はどうなるか?。 |
さて岩に穴が空けられるか? |
どうにか防獣扉設置 |
次は南面の長城に着手 |
石段入り口にも扉を |
3題・痛てて!酷い肩凝り 1月14、15日 西畑 なーにハンマーを振るうのは ロッククライマーの御家芸とばかり 岩に穴を開け始めたが この花崗岩、予想外に堅い。 ・ いくらジャンピング・ドリルを打ちこんでも 扉を取り付ける穴が開かない。 蝶番固定には上下2か所の穴が必要だが 1つでギブアップ。 《嘗ては岩壁のオーバーハングで 宙吊りになって 岩に穴を開けたのに・・・》 ・ なんぞとぶちぶち愚痴りながら やっと開けた穴に鉛の楔をぶち込み 螺子を押しこむ。 |
完成!どうだい最後の砦だぜ |
で、どうにか胡麻化して西畑入り口の 扉は付けたものの 西畑を鹿や猪から護るには 畑全体を万里の長城で囲まなければ。 ・ 今度は重い掛矢で延々と杭打ち。 最後に石段入り口にも 防獣扉を設置してどうにか完成。 ついでに雑草で覆われた堆肥用囲いに 火を放ち枯葉集めの準備も完了。 ・ さてその晩のエライこと。 右肩はバンバンに堅くなり腰は痛いし。 でもこれこそ肉体労働が 与えてくれた究極のご褒美。 ・ 肉体疲労は肉体のセンサーを研ぎ澄まし 味覚を鋭敏にさせ深い眠りを齎す。 さてこのご褒美をビアの摘みにして 大いに呑もうぜ! |
1月3週・・・・カタルシスの透明な光を紡ぎ
ひたひたと打ち寄せる
呑み込まれる里 |
雪雲の重い朝 1月22日(日)雪曇 哀しみは果てしなく澄んだ透明が
それでも微かに 碧の香りを忍ばせて 実は透明ではあり得なかったと 告白することに在る。 ・ 寝室のカーテンを開くと 迫りくる哀しみの氾濫を見出す。 ふと何故 《汚れちまった悲しみに》が 若き日の私を捉えたか理解出来た。 ・ そうだ哀しみは 果てしなく透明で在りたかったのだ。 際限も無く涙は滴り カタルシスの透明な光を紡ぎ ひたひたと打ち寄せる。 いつしか海となった涙は微かに 海が碧を帯びていることに 気づいてしまった。 ・ 哀しみは告白せねばならない。 《わたしは 透明では在りませんでした》 |
ですぺれーと福生里 |
氾濫の畔に佇む山荘 |
北峠にて中也を想う |
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汚れちまった悲しみに
いたいたしくも怖気づき 汚れちまった悲しみに なすところもなく日は暮れる |
カタスタロフィの朝 |
汚れちまった悲しみは
なにのぞむなくねがうなく 汚れちまった悲しみは 倦怠のうちに死を夢む |
山荘の雪の森 1月22日(日)雪曇 北峠稜線 汚れちまった悲しみに 今日も小雪の降りかかる 汚れちまった悲しみに 今日も風さえ吹きすぎる 呑んだくれで酒癖の悪い中也にも 27歳で出版した第一詩集・ 「山羊の歌」に収録された44の詩篇にも 《汚れちまった悲しみに》を 除いては興味を持てなかった。 ・ この『汚れちまった悲しみ』だけが 執拗に私の青春の片隅に こびり付いて 何処かで私を嘲笑っていた気がする。 ・ 朝トレーニングをどうしようか暫し迷ったが 《カタスタロフィの朝》を暴くには 今日も小雪の降りかかる 北峠の森に身を晒すのが良いのかもと えっちらほっちら。
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ざわっとさんざめき森が雪を降りかける。 黒ジャンパーの襟を立て赤いマフラーを巻いているのに 小雪は赤と黒の間隙に忍びやかに侵入する。 素肌に降りかかり一瞬鋭い痛みにも似た冷感をメッセージし 僅かな湿り気を残し小雪は使命を終える。 ・ それが《カタスタロフィの朝》を齎せた《汚れちまった哀しみ》の メッセージと云うなら敢えて小雪に打たれよう。 呑んだくれて太宰治にからみ太宰の同人仲間である壇一雄にまで 「太宰の腰巾着」と罵りの言葉を浴びせ その醜態の中で薄汚れてしまった自らの詩人の魂と対峙しつつ 30歳で中也は死んだ。 ・ 絶えまなく続く小雪のメッセージを聴きながら 切り立った稜線に出てみると背後の森を透かして牧丘の里にも氾濫する雲海。 山荘眼下の福生里だけが迫りくる哀しみの氾濫に存在の意味を奪われ うろたえていた訳ではなかったんんだ。 中也よ呑んだくれて大いに嘲笑え、俺は山に登り続けるぞ! |
後 編 |
遂に突き止めた。 木星の影から衛星イオが姿を現した瞬間を計測していた高校生が居たのだ。 ・ 観測された時は2004年6月4日、7月13日。8年前この年の私の天文年鑑「木星の衛星の運動図」のページは 山荘望遠鏡で観察した木星衛星の位置があちこち書きこまれ 私も又この高校生と同じく熱い視線を木星に送っていたことが想いだされネット上での資料邂逅とは云え感無量。 ・ 《人類初の光速計算への旅》前編で述べたように国立天文台からも得られぬ情報ならば自ら観測すべしと決意。 コンピューターで星を自動追尾する山荘2台目の望遠鏡Meade Auto Star Model DS-115は8年前の購入時には最新鋭と認識。 今回の観測用にこの望遠鏡とカメラ・ペンタックスKXを接続するアダプターを買おうと販売店とメーカーに連絡。 ところが「最早時代遅れでこのアダプターは販売してないし勿論作ってもいない」との返事に唖然! ・ これであっさり《人類初の光速計算への旅》は終わってしまうのかとガックリしつつもネットサーフィンを続ける。 キーワードはSSHであった。Super Sciennce High Schoolの指定校となった慶應義塾高校の 2004年度生徒の課題研究成果に辿り着いたのである。 発表された29本の研究成果の23番目に「レーマーの光速測定実験」が載っているではないか! ・ 逸る心を抑えてページを開き仰天。 メーカーが最早時代遅れと云った意味がよーく解った。 カメラ、望遠鏡の他に動画を静止画像に変換するArea61と云うビデオ・プラウザを使い木星と地球の距離を測定するソフト・ ステラ・ナビゲーターを用い更にはすばる画像処理ソフト・マカリでイオを測光せねばならないのである。 単純に望遠鏡でイオを覗き木星の影から現れた瞬間を撮影し時間を記録すればいいと思っていた私にとって正に驚きの一語。 だがこの優秀な高校生の記録のお陰で 《人類初の光速計算への旅》は未だ続けられることになった。 それではこの高校生のデータを基に後篇の旅に出よう。 |
[E] イオの光度変化表
A》 | 先ず光度の単位が解らない。月は平均して20万μlx(マイクロルクス)、星は50μlx(0.00005lx)程なのでこれは更に小さいnlx(ナノルクス)なのか? |
B》 | 国立天文台が提供しているすばる望遠鏡画像解析ソフト:マカリ −Makali`iを使ってイオの光度を測定してるのでこのソフトから光度の単位が判明するだろうと早速インストール。ところがこのソフト星の資料(ステラ・ナビゲーターによって変換されたFits)を打ちこまないと何も出てこない。仕方なく勝手にナノルクスと判断。だがそうすると星の明るさは5千ではなく5万ナノルクスとなり0が1つ足りなくなる。計算違いか?ナノは10億分の1だから0.00005lx×10億=50000nlx.
間違いなし。最初にしてギブアップ。誰か教えておくれ。・・・・・解ったぞ!イオが肉眼では見えぬことをすっかり忘れていた。星の5万nlxは観える星の明るさであり小さくて暗くて観えぬイオが5万nlxに耀く筈がない。その約10分の1の光度と考えればぴったり。やったね! (と、とうしろうの無知の旅は続くのだ) |
C》 | 大気の揺らめきのためイオの光度は常に変化している。縦軸に光度、横軸に時刻をとりその光度の幅の平均値を4秒毎に2分28秒間記したのが上図である。 |
《1》 | さてそろそろイオが出て来るぞ!とカメラをセットした望遠鏡を覗きながら、パチリとやるのかと思いきや動画撮影。そうか考えてみれば確かに動画で撮って後から静止画像にした方が撮り逃しがないなと又又なーんも知らないとうしろうの呟き。 |
《2》 | イオ出現前後10分程撮った動画をデジタルに変換し更にそれを動画の再生や処理の出来るArea61と云うソフトを使って静止画像にする。ここまでしてやっと6月4日イオ出現の連続静止画像を目にするのである。 |
《3》 | ここで宇宙の総てが解ると云っても過言ではないもの凄い天文シュミレーションソフトが登場する。その名はステラナビゲーター。過去20万年もの星空の再現、月や惑星から観た星空表示、プラネタリュウム機能、1600万個の恒星に対応する能力等を備え今やこのソフト無しで天文は語れないのだろう。が、そんなの全然知らず今まで星と共に過ごしてきたなんて!ただただ自らの無知に驚くばかり。 |
《4》 | でもって高校生はこのソフトを使って静止画像をFits画像に変換したのである。FitsとはFlexible Image Transport Systemの略で天体スペクトルなどのデータ、X線観測のイベントデータ、天文カタログデータ等を収めるファイルの代表的フォーマット(形式)であるらしい。これまた初めて聞く言葉でこうなると何も知らぬ我は石器時代人か?と思わず疑ってしまう。 私は我がPCを石器時代の石と同程度にしか使ってないのだ。 |
《5》 | 飛んでしまった話しを戻してと。このFits画像を昨日やっと石器時代人もインストールしたすばる望遠鏡画像解析ソフト:マカリ −Makali`を使って解析しイオの光度を4秒毎に求め、22時15分27秒から17分55秒まで38の点を入れた2分28秒のグラフが完成したのである。 |
《6》 | ついでにこの優れたステラナビゲーターで6月4日の地球と木星の距離を測ると5.40796AU。1AUは地球から太陽までの距離で149 598 000
km、ほぼ1.5億kmであるから8億197372kmとなる。 それにしてもこのソフトにイオ、地球、距離、日時を入れるだけで即5.40796AUが出て来るなんてガリレオやカッシーニ、レーマが聞いたらさぞおったまげるだろうな。勿論、石器時代人も真に驚いておるのでございます。 だがしかしそれでは測定したのはソフトであって自ら測定したことにならないのでは!とぶつぶつ呟きながら、計測器そのものがソフトにとって代わってしまったなーと、遅ればせながらしみじみ実感したのである。 |
《7》 | いよいよ出現時刻の決定まで漕ぎつけたぞ。22時15分27秒から16秒後の15分43秒までは1000nlxを上下している。これはイオの出る前の木星表面近くの背景宇宙の平均的な明るさを示しているのだろう。次の4秒後からグラフはほぼ安定して上昇し光度が刻々と増していることを示している。これをもって高校生はイオ出現時刻を22時15分47秒と決定したのである。 まーまーご苦労さんでした。あっ!出てきたパチリ、ハイ時刻は22時15分47秒でしたでは済まなかったんですね。 |
[I] 6月4日から7月13日までのイオの動き
《1》 | 7月13日のイオの出現時間も6月4日と同じようにして20時49分50秒と決定。これより先ずこの間の経過時間を小学生に還って算出してみよう。 | ||
《2》 | さてこのイオの出現から38.94日後の出現までにイオは木星を何週したのだろうか?これは簡単で | ||
(38.9403125日)÷(イオの公転周期1.769138日)=22.0108959843回 となるが出現から出現までを観測したのだから22回である。 |
|||
《3》 | 22回のイオの公転はいいとして木星の影の位置は木星の公転により当然移動している。となるとその移動分だけイオも公転しないと影からは脱出出来ないはずである。その移動分を求めれば7月13日にイオが出現する時間が計算上求められるので、次にこの木星の移動した公転角度を計算しよう。木星の公転周期は11.86155年=4329.46575日なので | ||
(38.9403125日÷4329.46575日)×360度≒3.2379度 |
|||
《4》 | さあ、これで木星の移動分を加算するとイオは22回と3.238度公転。 | ||
つまり22回×360度+3.238度≒7923.238度回転したこととなる。 |
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《5》 | この角度をイオの公転数に換算すると7923.238度÷360度≒22.008994回転 |
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《6》 | この回転数にイオの公転周期1.769138日を掛ければ7月13日の計算上のイオ出現時間が出てくる。 | ||
22.008994回×1.769138日/回=38.9369484日≒38日22時間29分12秒 | |||
《7》 | 6月4日22時15分47秒から38日22時間29分12秒後に22回目のイオは木星の影から姿を現したのであるから単純に加えればいいのだが実は引き算した方が簡単。又又小学生に戻り時間計算すると | ||
《8》 | これでやっと計算値:7月13日20時44分59秒と観測値:7月13日22時49分50秒が出そろった。この差 |
20時49分50秒ー20時44分59秒=4分51秒=291秒こそが光の遅れによる時間である。 勿論光が遅れる筈はない。これは地球が遠ざかり距離が長くなった為の現象である。 |
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《9》 | 従って6月4日から7月13日までに地球が木星から遠ざかった距離をこの291秒で割れば光速が求まるのである。 |
遠ざかった距離は5.97503AUー5.40796AU =0.56707AU=0.56707×1億49 59万8 000 km=8483万2537km | |
《10》 | この8483万2537kmを光は291秒かけてやって来たのだから 8483万2537km÷291秒≒29万1520km/秒 とまあ、光速29万9792458km/秒にかなり近い値が得られたのである。(因みに観測者は同じデータで27万6000km/秒と算出している) |
旅の終わり 終わってしまった。 山荘のテーマが《木星》でありながらイオと木星が人類史上で果した偉大なる役割について今まで触れなかったのは 明らかに山荘主の怠慢である。日記を竜に例えるのは余りにもおこがましいが山荘日記においても画竜点睛を欠くものであった。 これで山荘日記は《木星》に向かって竜が昇るが如く飛び立つ準備が完了したような気がする。 ・ さて聡明な山荘会員(?)は前編の「地球と木星の衝と合」を使った光速計算に大いなる不満を抱いたことであろう。 前編は説明するには確かに都合の良い、読む方にとっては理解し易い光速計算への旅ではあった。 だが肝心の観測時間との差1382秒がどこから齎されたのか、 地球が合の位置に近づくに連れて木星は太陽と同方向に来るため木星は昼の出現となり観測不能と成るとの疑問を 聡明な山荘会員は抱いた筈なのである。 この致命的な2点の疑問はイオ出現を実際に観測したデータの入手により後編でクリアーした。 ・ 観測値と計算値との差1382秒はイオの出現時間さえ判れば小学生程度の算数で算出できるし 2回目の観測日を合にしなくても僅か38日程ずらすだけで光速計算は可能であったのだ。 実際レーマは衝と合にとらわれず観測可能な夜の木星の2つのデータを使って光速を算出したのであろう。 それにしても性能の劣る出来たてほやほやの望遠鏡と振り子時計から生み出された極めて不正確なデータから よくぞ光速を22万km/秒を算出したもんだと心底恐れ入る。 同時にガリレオの望遠鏡を人工衛星望遠鏡ハッブルに代え、大型ハドロン衝突型加速器を用い現在のカッシーニやレーマが 宇宙の彼方、量子の彼方に存在の根源を求めているのだと思うと実にわくわくする。 ・ |
1月4週・・・・妖精の氷晶となって私の息吹が森の窓ガラスに還ってきた
[A] ざ・Overture
美優はね由美せんせに英会話を習ってるの!
氷晶絵画展へようこそ! 1月29日(日)晴−8℃ 山荘の窓 |
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氷のダイヤモンドを 幾重にも鏤めて冬将軍が絵を描いた。 6角形の氷晶を無数に連ね 精巧な筆致で天地創造に迫る。 ・ 唯ひたすら透明であり 無でしかなかった窓ガラスに コスモスが突如誕生。 このダイヤを齎した水素2つと酸素1つの 分子は昨夜私の肺から 吐き出されたのだ。 |
それでも咲いた3輪の水仙(前庭) |
カーテンを開くと恰も その瞬間を待っていたかのように 小倉山の水晶峠から 太陽が昇った。 ・ 山荘の窓という窓が 氷のダイヤと化し太陽光を独奏楽器にして 厳かに協奏曲を謳いはじめる。 あーこんな風にして 私の息吹が氷晶になって透明な音色を 紡ぎ出すなんて嬉しいね。 |
[B] 雪と氷を超えてやって来たNymphs
妖精の氷晶となって私の息吹が森の窓ガラスに還ってきた
助けてくれ!登れないよ(山荘手前登坂) |
「先生!車が動かなくなっちゃった」 「よーし今から助けにいくから そのままじっとしていろよ」 ・ 雪タイアを履いて颯爽と登場する 筈だったハッシーはどうも 山荘への雪道を甘く観ていたのです。 「いいか一度バックして加速し 一気に登るんだ」 しかしやはりスリップし登れません。 「ハッシーの腕では無理だな。 冬用の下の駐車場に下ろう」 「いやもう一度やります」 |
もう少しだ頑張れ!(2番目の難所) |
妖精達の熱い視線を浴びて ハッシーはしっかりハンドルを握り締め アクセルをふかし スリップしスピンする車を抑えつけ ついに山荘まで上り詰めたのでした。 ・ さてこんな風にして ー8℃にまで冷え込んだ森での 妖精達の1日が 始まろうとしています。 |
やっと着いたぜ山荘に!(山荘ゲート前) |
太陽光で暖められた 山荘に入ると美優は背中のリュックを 降ろし何やら取り出しました。 雅輝が可愛い手に握りしめ 持ってきたのは 小さな《マイ!マイまいん》のキャラ封筒。 ・ 裏は金のシールでしっかり封印され どうもお年玉の封筒のように 観えるのです。 |
先ずリュックから取り出したのは? |
「センセ、手を出して!」 これは凄いことが起きるのではと 山荘主は緊張しながら 右手でカメラを構え左手を出しました。 ・ 「はい!お年玉です」 「うわー嬉しいな。お年玉なんて 貰ったのはもう50年もの昔。ありがとう」 ドキドキしながら開けてみたら 目がハートになったホラーマンのカードが。 きっと大切にしてるカードの 1枚なんだろうな。 妖精からお年玉を貰えるなんて最高! |
センセ、お年玉上げる |
[C] ざ・Restaurant in 冬森
森のレストランはそんなにも妖精達を待っていたのです
森のレストランへ |
森のレストランが呟くのです。 「どうもいかんな! 木々の芽が吹きだした春と 森の葉が燃える秋と 1年に2度しかレストランに足を 運ばんとは山荘主も老いぼれたか」 ・ 「そうだったな。 枯葉集めに行かねばとは思っていたが それじゃ森の大好きな妖精を 連れて冬のレストランを 久々に開こうか」 |
雪と枯葉のテーブルには |
真っ白なテーブル・クロスが掛けられ 山荘の畑で採れた5月の女王 (メークイン)で作った海老ポテト・サラダや 真夏の黄金ダイヤ・とんもころし、 栗、胡桃、薩摩芋に 生クリームを載せたスイーツやら 干柿とカマンベール等山荘の贈り物が 妖精達を待ってました。 ・ でも枯葉の上に未だ雪の残る森の レストランで小さな妖精達は 寒さに泣きだしてしまうかも知れません。 |
山荘で採れた果物&野菜だ! |
ところがこの妖精達 ひ弱な街の見せかけだけの妖精とは どうも違うらしいのです。 (後で大変なことになったのです) ・ 暖かな光が森を包んでいるとは云え 何しろ朝はー8℃まで 冷えたのですから寒くない筈ありません。 食事の後は雪の森を散歩し 更に枯葉集めでずーっと森で 過ごしたので、すっかり凍えてしまい もう外はこりごりかと 思ったのです。 |
栗と胡桃の入ったスイートポテト |
あれ、此処にも食卓があるぞ! |
これは夏のとんもころし |
ふかふかだね!枯葉の絨毯 |
そこで大活躍の後は暖かい山荘の 室内で食事をしようとしたら 「やだー外で食べたーイ」と 駄々をこね始めたのです。 更には出渋るハッシーに 盛んに訴え 「森に行ってもっと葉っぱを集めたーイ」 ・ こりゃ参ったな。 この妖精達、すっかり森に気に入られ どんぐりまでお土産に貰っちゃって もうすっかり森の虜。 |
どんぐり見ーつけた! |
突然、雪森になって吃驚! |
雪森の入り口でーす |
さあ、雪道の登りだよ |
[D] Rake up the 枯れ葉
小さな妖精達は飽くこともなくいつまでも枯葉と戯れるのでした
足で固めるんだ |
いいかい集めた枯葉は こうやってギュウ、ギュウと足で 踏み固めてもっともっと枯葉を入れて こいつを山荘の西畑まで えっちらこっちら運んで枯葉プールに 滝のように落とすんだ。 ・ それじゃ仕事分担しよう。 美優と雅輝は熊手で枯葉を集める係。 ミッホーは袋に枯葉を入れ ハッシーは枯葉の袋を畑の枯葉プールに 運んでナイアガラの滝にして 落とすんだ。 |
妖精達は熊手で集めて |
さて、もっと上からも集めよう |
2人共夢中になってます |
どうだい僕の働きっぷり |
何しろ森はずいぶんと広いし 幾ら枯葉を集めても 果てしもなく仕事は続くのです。 枯葉プールだって大きくて ハッシーが何度ナイアガラの滝を やっても一杯には成りません。 ・ でも美優は飽きもせず 森の斜面を登っては枯葉を集め 下まで降ろし続けます。 雅輝もよちよち歩きしながらも 小さな手に熊手を握って 雪の枯葉だって恐れずに 集めるのです。 ・ 「あ、いっけねー転んじゃった」 いつもなら大泣きするのに 雪の上に立ちあがって 「ちめたーい」と 手を差し出しぐっと我慢する雅輝。 冷たくなった指先は綺麗なピンク。 |
うーん枯葉のベッドは実に気持ちいいな! |
歩くのが面倒になったか 枯葉の海の真ん中で突然寝転び 枯葉をベッドに一休み。 ・ えっ!カメラマンのやらせだって。 そんなことないよ。 だって未だ2歳直前で言葉だって よくは通じないんだから・・・。 向けられたカメラの前で突然ゴロンと 寝たので吃驚した位さ。 ・ きっと本当に心から枯葉が 好きになって ふわふわでお母さんみたいに気持ちよくて それでつい抱っこされたくなったんだよ。 ほらもう半分目を閉じて 夢の世界へ向かっているような。 でも未だしっかり枝を握っているのは・・・。 さては仕事を続けるつもり。 |
あれ、雪で転んじゃった |
ずいぶん沢山になったね |
うわーん手が冷たいよ |
あたしもう枯葉集めのプロよ |
「OK落としてもいいよ」 手を上げて合い図し現場監督する雅輝。 うーん中々様になってる。 深い枯葉の海に沈みそうになりながらも 枯葉のプールがすっかりお気に入り。 ・ 「ほらほら、もう少し離れないと ナイアガラの滝に 埋まってしまうぞ!」 声をかけながらハッシーは遂に 音を上げたのです。 「先生、もう終わりにしてもいいですか?」 美優も雅輝も作業を終える 気配は全くありませんでした。 |
また転んだの駄目ね! |
いいよ、枯葉を入れても |
うわー枯葉が滝のようだな! |
枯葉のプールで泳ごうか? |
[E] A Concert by 妖精
体を歌に合わせて揺らしながら妖精はキーボードを叩き光と氷晶の協奏曲を奏でるのです
さて森で拾った宝物は幾つかな? |
《生まれて初めてこんなに働いたぜ!》 と云っても生まれて未だ 2年にもならないのだから未だオムツ。 ・ さて森から沢山どんぐりを もらったしこいつを宝物入れにしまってと。 オムツを替えてもらって さっぱりしてからエネルギー補給して もう一仕事すっか! ・ それにしても気持ちいいな。 太陽を一杯浴びてオムツを替える贅沢。 山荘の太陽、気に入ったぜ! |
団栗しまったらオムツ替え |
みっほー手作りの餃子に舌鼓 |
森で働いた後は美味しいね! |
山荘の人参パン大好き! |
センセの眼鏡でお仕事しよ |
もう一仕事だって? 何やら良くない予感に襲われたのですが 気が着いたら最早 山荘主の書斎はルーム・ジャックされ 眼鏡をかけた美優が パソコンのキーボードを引き出し 便乗した雅輝が画面を見ながら キーを叩きまくるでは。 ・ 森の枯葉集めをPCの大きな画面で 見せてやろうと2階に上がった センセの秘かな動きを 見逃さなかったのです。 折角大写しになった画面の妖精達は キーで滅多打ちにされ 消えてしまったのです。さあ大変! ・ お別れは美優のピアノを独奏楽器にした 光と氷晶の協奏曲です。 曲名は美優お得意のアンパンマン。 全身を揺すってリズムを取り 満面に笑みを浮かべ歌いながら 実に滑らかにキーを叩くのです。 途中から雅輝も参加し連弾となりましたが ここまでキーの音階を無視した 愉快な演奏会は空前絶後! ・ 眩い妖精の光に満ちた1日でした。 |
パソコンならオイラの出番さ |
アンパンマンを弾きながら歌うのでした |
キラキラ星の連弾しよう |