仙人日記
 
 その107の22014年  神無月
10月2週・・・・あの水晶の光がワインになったよ!

治療後仙人、ワインを仕込むの巻


アンネ薔薇の濡れた花芯を抱く背黒露虫

すっかり仙人は忘れていたのです。

何しろ生まれて初めての
鍼地獄と艾の炎熱地獄を覚悟して
臨んだ鍼灸治療が実は
天国への途であったと気づいてしまったのですから
そりゃ動転して、仕込んだ葡萄を
忘れてしまうのも(うべ)なるかな。

さてそれでは鍼地獄と艾の炎熱地獄から
天国を観た仙人には
早速しっかり働いてもらいましょうかね!
 ワイン紅に輝く薇花芯
奥庭に咲き誇るアンネ薔薇

「さて先週仙人が仕込んだ山荘の葡萄は
どうなったかな?
あの一角獣座から届けられた水晶葡萄
ワインになったら
きっと美味しくて、頬っぺが落ちるね。
仙人は呑ませてくれるかね?」
呑ん兵衛の背黒露虫が呟いています。

 
互いに抱き合う恍惚の2匹


葡萄プレスを設置して
前庭の石卓

この葡萄プレス機は
何しろ重いのだ。
日本では製造されていないので
態々イタリアから輸入し
山荘ワインの歴史を共にしてきた
頼もしい仲間。

便利ではあるがとにかく重くて
独りでは持ち運び出来ず
山荘活動日に集った会員の力を借りて
移動するしかない。
馬淵君、村上さん待ってるよ!
発酵した葡萄を入れて
ワインの良い香が

えんやこら、どっこいしょと
倉庫から前庭の石卓にプレス機を運び
葡萄を仕込んだ樽を
石卓に乗せ、いよいよ本年度の
ワイン絞り開始。

発酵した葡萄をプレス機の籠に入れ
ハンドルレバーを締めて
圧力を加える。
急激に圧を高めると籠の穴から
ワインが吹き出し
辺りに飛び散ってしまうので
液量を確かめながら
徐々に締めていく。

それでも飛び散るので
籠のぐるりにアルミフォイルの遮蔽壁を巻き
ワインを下の樽に誘導する。

さあ、
ワイン
が出て来たぞ!

白&赤ワイン各1樽

この瞬間が実に堪らんね!
で、待ちきれなくて
醸成中のワインを小瓶に入れて
ちょっとだけ試飲。

≪うおー、蕩ける!≫
未だ充分にアルコール化せぬ
葡萄の甘みが
舌から全身に広がり肉や骨を溶かし
味覚そのものを蕩けさせて
唯うっとり!


陶芸活動の前に
先ず葡萄
りを
Kiln Owner&Chef :村上映子

山荘の葡萄がワインになる。
嘗ては、葡萄農家から仕入れたり
農協から買い入れたりで、
大量ワインを仕込んだこともある。

今、山荘の畑で育てられた葡萄たちが、
こうして収穫されワインへと
変身して行くのかと思うと、
感慨深いものがある。

プレス機のハンドルを
もっと強くして

収穫には参加できなかったが、
ワイン作りの最後の場面に参加でき、
大地への感謝を込めて、
大きくハンドルに力を入れて、
赤い果汁を搾り尽くす。

やがて、芳醇な香りと
深いベルベットのような光沢を放ち、
山荘ワインが生まれるのだ。
太陽と大地と育てた人間の想いと、
それら全てをブレンドし熟成させて、
今年のワインは
どんな味わいとなるんだろう。



赤ワインの搾りかす
この葡萄の搾り滓
とおーっても甘くてワインも
たっぷり含んでいて
ジャムになんぞにしたら最高!

粒粒の少し残った搾り滓コンポートを
ヨーグルトのトッピングにして
こいつを摘みにして
出来立てワインを呑んだら
余りの美味さに
失神すること間違いなし。

だが調理が面倒と云うだけで
惜しげもなく仙人は捨ててしまったのだ。
許せんぞ!

白ワインの搾りかす




ザイルで石垣に

 
今年の夏も雑草が覆い尽くし
石なんぞ全く見えない石垣となってしまった。
このままでは凌霄花どころか
石垣下で大切に育てているアスパラガスも
生育を脅かされ
中畑に繁る薩摩芋にも影響を
及ぼしかねない。
 次は石垣の雑草りじゃ!
中庭と中畑の間の石垣

この垂直の石垣を凌霄花(のうぜんかずら)の紅を含んだ橙色で飾ろうと
3年前に計画し挿し木を続けて来た。
しかし陽当り100%の天国のような、この石垣を
貪欲で繁殖力抜群の雑草どもが
見逃す筈はない。

 
眼下に広がる芒の海 
 



墜落防止にヤクの毛ザイルで確保 

手が使えないとなると
大きな剪定鋏を武器にして戦うことは不可。
ならばいつものお馴染みの
クライミング・ロープに登場を願おうでは。

倉庫に出向くとチベットのヤクの毛で編んだ
ヤクザイルが待っていて
「あたしを偶には使ってよ!」と云うもんだから
少しチクチクするが採用決定。

さあ、チベット高原の草をも食い尽くす
ヤクのお出ましじゃ、
雑草ども、覚悟せい!
さあ、仙人がやっと重い腰を上げ
垂直石垣の雑草に宣戦布告!
とは云え敵は
垂直という絶好の地の利を得ているので
クライミングしつつ闘うこととなり
手が使えない。

垂直に繁る雑草を


森から降りて来た熊が
じーっと見つめる。
「丸くて四角くて
真ん中が動く変な奴!
きっとあいつは
新式の罠に違いない。
そんなもんに
引っかかるほど
オイラは阿呆じゃないぜ!」

そう思って熊が
山荘畑を避けてくれるとか
・・・・・

葡萄畑に念願の計設置
山荘畑の薩摩芋の
いい匂いに惹かれて
やって来た
鹿と白鼻心と狸が
さて鉄柵を越えて
美味しい芋を
ゴチになろうとした瞬間、
秒針が月の光を
反射してキラリ。

おったまげた3匹は
一目散に森に
逃げ帰ったとか・・・
そんな都合のいい妄想を
抱きつつ
仙人は時計を設置
しましたとさ。

やっと作陶じゃ!  

軽くウオーミングアップの轆轤回し

1枚の大皿を創る為には、
抱えきれないほどの土塊を
何回も練り上げ、
成形するまでの苦労は
並大抵ではない筈だ。

その大変な作業を経て、
やっと乾燥にまで
辿り着いた作品を、
罅ばかりではなく形も
納得いかないからと、
仙人陶芸師は潔く壊し、
乳鉢の中で音を立てて砕き、
また土塊に戻して行く。


誕生オーナー
試作品のつもりで作った小さな鉢。
先日の火入れの際に参加できなかった私に代わって、釉薬も掛けてもらって、
窯に入れてもらえたので、思いがけずに作品として仕上がっていた。
胡桃をイメージして作ったつもりだが、ちょっと使ってみたくなる
小鉢に仕上がっていて、内心嬉しくなった。

師匠は一言「持って帰って、毎日使ってみなさい。
そうしてどうすれば、もっといいものが出来るのか考えること!」
簡単に満足してしまっては、
いい作品は仕上がらないのだと思い知る。
「これからは、良い作品だけを焼こう!」仙人師匠は固く心に誓っている。
轆轤回しが自由になるまでにだって、1年はかかると云う。



さてこれからの歳月で、
自分が満足できる<良い作品>が、
一作でも創りだせるのだろうか?


難しいことに
挑戦するからこそ、
遣りがいがあるのかもしれない。
仙人師匠が皿を壊している隣で、
そんなことを
つらつらと考えながら、
土を練り、轆轤の準備をする。

久しぶりに触れた土は、
ちょうどいい練り具合になっている。
全身で土と格闘し始めると、
色んなことは
どうでもよくなってくる。


6作目の大皿にも僅かな発生・・・大物は難しい!


単純に土と遊ぶのが愉しいのだ。
泥んこになりながら、なかなか思う様にはいかない轆轤作業も、何とか形らしきものが出来ると面白い。
もちろんそんなものは、焼ける代物ではないから、作った先からまた壊す。

土とれたい
壊して土を練り直すのも、
なんだか楽しい。

こうしてあっという間に
時間が経ってしまう。
 

轆轤に夢中になっている間に、仙人陶芸師はまた新しい大皿作品を作り上げたようだ。
(外の作業場で作っているので見ていないが)
私の作品が形になるのは何時のことだろうか?それでもまた、土と戯れたい。



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