211の1ー2023年 水無月
たべちゃうぞ!食卓に出現した靫葛 6月9日(金)雨 食虫植物ウツボカズラ ランチョンマットに描かれた木星にちょこんと載せられた靫葛(ウツボカズラ)が蓋を開き桃菜に囁く。 《あたしの花言葉は甘い誘惑よ!さあ、おいで!指を突っ込んでごらん! 蕩けるようなあまーい甘い蜜がたっぷり詰まってるのよ!》 ウツボカズラの穴に指を突っ込んだ桃菜! 《あら、指の先にペロペロチョコレートが着いてきたわ!美味しそう、食べてみようかしら!》 ペロペロチョコはウツボカズラの消化液で出来てるんですよ! あーでも桃チャンは食べてしまったんですね。 ウツボカズラのもう1つの花言葉は《絡み着く視線》、ほらウツボカズラの袋はどんどん大きくなってきて、穴の入口は妖しく光り、 大きく蓋を開きペロペロチョコに気を取られている桃菜に、絡み着き始めたでは! |
新品チェーンソー交換 |
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さては仙人、危険な臭い! |
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今回、馬車別当に 連れて行かれたのは 山荘の下の海辺でした。 (おや、山荘に こんな所があったかしら。) 静かに寄せる波打ち際には 桃の木が一本立っていました。 |
仙人様は桃の木の下の 大きな籐の椅子に 座っておられるのでした。 そして、その周りには 薄絹を纏った何人もの天女の 皆さんが控えていて、 銀のフォークに刺した桃を 仙人様の口に運んで 微笑んでいるのです。 |
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新品梯子出動か! |
いざ出陣じゃ! |
あらら脚が溶け出してきた! 消化液に溶かされて食べられちゃうのかしら! |
伐採するは左の3本だ! |
人は 死ぬ直前には 私はここはどこかと不審に思っいながら近づくと、 一人の天女さんの顔が突然鬼の形相になり言うのです。 『6月1日の件!なぜあなたはあんな梯子を購入したのですか!』 (はぁ?状況が呑み込めません。 こんな所に連れて来られて、この言いよう、 私は反抗的な気持ちがこみあげてきたのですが、 情けない事につい素直に答えてしまったのです。) 以前、ここへ伺った時、仙人様はよくある5段ほどの梯子に 長い梯子を組み合わせて高い木を切ろうとしておられました。 斜面に組み合わせたそれは登るまえから不安定で 地面にしっかり乗っているとは思えない状態でした。 初めから長梯下の左側が曲がっていましたから。 そして、仙人様の体重が掛かると今度はその梯子の右側も ぐにゃと曲がり始め梯子は地面から浮きあがりました。 |
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アルミはこんなにも簡単に 曲がるのだと 不安と共に見ておりました。 まさにその時、ばさっと 仙人様が落ちてきたのです。 首にロープが掛かり身体は 真っすぐでした。 人は死ぬ直前には こんな顔をするのでしょうか。 今まで見た事のない 表情をしておられました。 私はまず首つり状態になった ロープをはずさなくてはと 思いましたが、 二つの梯子と絡まるロープの中 どう近づいていったら よいのでしょうか。 |
左の2本伐採、残り1本! |
ところが、仙人様は 私が助け出す事も無くご自分で 脱出してこられました。 後で思うとそれは ほんの一瞬だったようです。 それでも首に赤くロープの後が 付いておりました。 このことから、私はつい 「新しい梯子を買いましょう」と 言ってしまったのです。 『ではあなたはその梯子が どのように使われると 思っていましたか?』 どのようにとは 思っていませんでした。 |
欅の最上部を この梯子で登って切る ただ、壊れた梯子を使い続けるのは危険だと思ったので、 新しい梯子をと言ったのです。 それのどこがいけないのですか? 梯子から落ちた前回の様子を見た方なら皆そう言ったでしょう。 『あーら、今頃何言っているのかしら、 あんな物を与えたら高―く登るに決まってるでしょ。ねぇ。』 と言いながら天女さんは仙人様の口に桃を持っていきます。 私は山荘の総てを把握している訳ではありません。 山荘は仙人様の思いを形にしたものという認識はありましたが、 私にはそれがどのような物かは 仙人様の頭の中にある限り分かりようがありません。 ただぼんやり、梯子が壊れていては山荘生活に不便だろうと思っただけで、 その梯子をどう使うかは全く考えていませんでした。 『どう使うか全く考えていません?』はい、ただ、梯子を購入後、仙人様は この梯子の最初の仕事は決まったみたいなことは言われていました。 欅の最上部をこの梯子で登って切るというのです。 件の欅は高―く聳えておりました。 最上部を切る目的は何なのでしょう。 |
遂に3本の伐採に成功! |
山荘森に屹立する欅 |
Tombe la neige 欅とはいえその欅の下方は広く枝を伸ばしてはいないのです。 今までにも枝切はされていた為、す~と高く延びています。 従って欅によって日影になる他の木はありません。 そしてその欅の最上部の枝は扇を広げたように空に向かっていました。 見上げるととても良い形をしています。 大体欅に付けたあの赤い登山靴を見る度どうやってあんなに高い所に つけたのだろうと思っていたのですから、 それ以上上の枝を切るのは冗談だと思っていました。 『冗談!あなたはそれ位の思いで当日を迎えたわけですね。』 はい、でも危険な匂いはしましたので、 当日は雨が降って中止にならないかと祈っておりました。 |
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『当日の天気は?』 雨が降る予報でしたが、 残念なことに 時々陽がさしておりました。 作業の最中は樹上に居る仙人様を まともに見る事が 出来ない位の逆光でした。 『では当日の動きを教えて下さい。』 (何でこいつらに 話さないといけないのか? 着ている薄絹からして 天女だと思ったけれど、 天女が居るはずもない。 検察?どんどん追及してくる。 もう絶対に話さないぞと 強く思ったのに 私は又すらすらしゃべってしまう。 あー自己嫌悪である。) |
2つ目の赤い靴にも光を! |
その日、仙人様は 新しい梯子を駐車場より取り出し、 一番長くなる所まで伸ばしました。 アルミ製ですが、 長い梯子は意外に重く、 支えるのも一苦労です。 まず、地面が不安定なので梯子に 付いたロープを 側の木に括り付けました。 梯子には「Tombe la neige」 の銘が入っています。 tombe降る⇒落ちる? 嫌な予感がします。 欅の幹に取り付けた 梯子上方も支えは太いとはいえ 木ですので曲線を描いています。 もうこの時点で 不安定この上ないのです。 そこで梯子の上方は ヤクのロープで欅に固定しました。 |
首が痛く なるほどの高さ 固定したとはいえ、幹に辛うじてついている風でした。 私は「いくら新しい梯子でもこれは無理だ。」と仙人様が 諦めるのをひたすら待っておりました。 ところが、私の思いとは別に仙人様ピンクのロープを持って 不安定な梯子を登って行きました。 次に私が気が付いた時には何処をどうしたものか梯子の上の方の 足がやっとのるくらいの短い枝に足を乗せていました。 その時これはロッククライミングをしてるのだとやっとわかりました。 私はそのような事はやった事がありません。 狭い枝に乗り仙人様は怒っています。「このロープを引け!」 このロープって?何でこんな場面に遭遇してしまったのだろう。 仙人様はあらゆる事に怒っておりました。 「よく見てろ!」見ていても木の上は遠くて 逆光で何をしているのか全くわかりません。 庭の端に行き見ていても首が痛くなるほどの高さなのですから。 |
配線完了、点灯したぜ! |
えっ!靫葛って時空回廊なの! 消化液に溶かされた桃菜が現れたのはイオの火山! |
どれどれ宝石の出来は! |
地響き を立てて落ちて 仙人様は私のやる事全てに怒っています。 もっと登山経験のある方に代わって欲しかった。 私は作業の間中何とか終わらないかと、大雨や雷を期待しておりました。 仙人様がご自分で止める様子はなかったからです。 そんな私が優秀な助手を務められるはずも無く、 罵声を浴びせ続けられたわけです。 『ところで、最上部の枝は切れてますね。』はい、 仙人様は良い具合に切れたと言われていました。 チェンソーで切った枝は何本もドーンと地響きを立てて落ちてきました。 木に残った部分は天に挑戦するかのように指を立てています。 『あら、あなたは気に入らないような口ぶりですね。』 いいえ、気に入るかどうかでは無く、それを見ると、辛くなります。 枝は今後、時をかけて欅が自分で美しく伸びてくれるでしょう。 |
うーん驚き、薹立ちしたのは1つだけ、後は総て宝石になったぜ! |
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高い欅界の ジョナサンにする これから欅がどのような形になるのかは楽しみです。 でも、、、、『でも?何かありますか?』欅が枝を伸ばすには あまり時間は掛からない気がいたします。 また、今回のような事が行われる可能性が大いにあるのです。 一連の作業が終わった後、仙人様はあの木はどの木よりも 高い欅界のジョナサンにすると言われました。 それを聞いて私はやっと今回の作業の意味が見えてきてほっとしたのです。 意味も無く行動させられるのは奴隷です。 同じ目的をもって一つになってこそ力が出るのではないでしょうか。 ジョナサンという言葉は魅力的でしたのに 作業が終わってから聞いたのは残念でした。 欅は大きく枝を広げ始めます。それはきっと美しいに違いありません。 しかし、それは仙人様が再度最上部に登り枝を切る事を意味します。 その時欅は今よりずっと大きく成長しているのです。 私はそのような時に仙人様の近くにいたくはありません。 新しい梯子がジョナサンへのトリガーになってしまった事は 自分の意図したことではありませんが、結果として罪を 償わなくてはならないのかもと思えてきました。 これ何処かで騙されている気がします。天女の皆さんどう思います? |
どれこいつに光を! |
これって仙人の宝石なの! さてと、それでは今年の玉葱の収穫量は何kgかな! 脱衣室に置いてある体重計を持ってきて 計ってみると1籠が6.5kg。 全部で10籠あるから合計65kgか。 どれも仄かに甘く 肉体を貫く強い刺激臭を発しながら光っている。 こうして太陽の光をたらふく食べさせてやれば、 明日の夜明けにはみーんな宝石になって、 碧や紅紫や黄金の光を発するんだ! そういえば桃菜がキラキラ光る宝石が欲しいとか。 呼んでやろうかな! |
《イオの宝石があんまり綺麗だったので仙人様に 「あれ、欲しい!」って云ったんです。 そうしたら靫葛の時空回廊から突然、採れたての玉葱の上に 運ばれて「そらどうだ!宝石ゴロゴロ・・・」なんて 仙人様は云うのです。 変だな、宝石なんか何処にも無いのに! あたしきっと騙されているんだわ!》 |
あらっ、ほんとに玉葱が宝石になってる! |
やっと黒薔薇が咲きました! 仙人ベッドの上のセンサー灯が黒薔薇を咲かせ、アマルティアの木星大赤斑を蠢動させる! |
書斎テラスの光を孕む黒薔薇! |
あれっ、玉葱を載せていた体重計に突然現れたのは桃菜! 《仙人様あたしを幻術で騙そうとしても駄目です。 これはどう見ても宝石ではありません。》 そうかな、そんなら体重計の数字を見てごらん! 幻術ならば数字は正しい体重を示さないぞ。 《あれっ、12.42kgだ!6月1日に計ったのとおんなじだわ! じゃ、やっぱりこの玉葱は宝石なの?》 イオの部屋で夜明けに目を覚ました桃菜を 迎えてくれたのは幾つものクリスタル。 微かな夜明けの光を吸い込んで、どれもキラキラ。 よーく観ると光の真ん中に昨日見た 玉葱が揺れているではありませんか! |
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イオ火山の光に乱反射するクリスタル! |
黒薔薇に仕込まれた光! |
望遠鏡に光を屈折する黒薔薇! |
闇の中から森の翳を浮かび上がらせ、ビッグツリーを登る赤い靴から 少しづつ光を奪い、夜明けの光は森羅万象の輪郭を描き出し始めました。 桃菜はイオ火山の光に乱反射する光と翳に吸い込まれ、 うっとりしながら夜明けの光の海に泳ぎ出しました。 イオの部屋から北の森や前庭のビッグツリーが見える廊下に出ます。 北の森の手前にある森テラスや奥庭上に立つ仙人テラスの クリスタルが桃菜にニッコリ! 《モーニン!どう、どっからどう見ても玉葱では無く宝石でしょ! 土を頌えられる人は、宝石が土から生まれることを知っているんです》 カリストの部屋の前を過ぎて仙人様の書斎に入ると、 光を通さないあの真っ黒な黒薔薇さえもが、夜明けの光にキララきらら。 これって、太陽の光と山荘の大地と仙人が創り出した カンタータ「土の歌」の終曲・大地讃頌なんだよと黒薔薇がモノローグ。 頌えよ 頌えよ 土を (誉めよ 頌えよ) 母なる大地を 母なる大地を 頌えよ 誉めよ 頌えよ 土を 母なる大地を ああ 頌えよ大地を ああ |
仙人テラスと森の光を映す宝石! |
大地讃頌を謳う靫葛&サラセニア! 時空回廊としての食虫植物は漆黒の闇に踊る |
森の生命を吸い込み漆黒に煌めく! そうか仙人め、天空まで延びた大欅を登り詰めて 天女に逢おうと企んでいるな! そこには決して老いることなく永劫に12.42kgの 天女桃菜が居て仙人は《アルムおんじ》に変貌し・・・。 うんにゃ、そでない。 どんなに欅が大きくなっても50mも延びれば限界。 仙人はそれを承知で大欅の枝を切り続け、 やがて成長の止まった大欅を 心象風景に迎い入れ、天女に逢えないと知りつつ 永劫に登り続け様としているのだ。 |
知っているのです。 確かに次々と延びてくる枝を切り落としてしまえば、 残された唯1本の幹は、天空の光と大地からの水を 思う存分吸い込み、他の枝に養分を 奪われることなく、高く高く何処までも延びるに違いありません。 だから仙人は母なる大地を頌え、せっせと耕し 大欅の枝を切り続けるのですね。 |
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天空への回廊は届くのか! 大欅の漆黒シルエットにしがみつき、 シーシュポスの神話を天空に描く仙人。 |