1681ー2019年  霜月

土星の時空闇にむ紫薔
太陽を土星が覆い光が透過し棲人を暴く
NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute

この美しさは何だ!CGで創作した心象にしか存在しないスケッチに違いない。
そう思って、土星探査機カッシーニが太陽と土星を重ねて撮ったこの最高傑作を暫く誤解していた。
誤解の経緯を確かめようと2年前2017年9月15日のHPをチェックしたら、誤解してないと判明。
HPにはこう記されていた。

NASAと欧州宇宙機関(ESA)が開発し、1997年に打ち上げられた土星探査機・カッシーニ。
地球に送り届けた累計45万枚もの画像の1枚≪太陽を背に光る土星≫の、この美しさには言葉を失う。
高貴な魂、神々のメッセージ、生命のパンテオンと月並みな言葉しか思い浮かばないが、精神の深奥部にグイグイと迫りくることだけは間違いない。


誤解してないと判明した刹那、光によって闇となった土星に紫薔が浮かび上がった。
そうだったのか、お前は誤解の誤解によって土星の時空闇に24年も封印されていたのか!
さあ、これで今こそ自由になった。豊かな乳房に秘められた千夜一夜物語をたっぷり聴かせておくれ!


 

山荘に棲む子狸!(中庭)
山猫じゃない
子狸じゃ!
11月3日(日)山荘庭で狸徘徊
『ニャー、小さく声を出してみる。
最近はこうやって毎日下の村から
山猫莊の周りを見回っています。
少々太目の私には
ちょうどいい運動習慣でしょう。

たまに美味しい肉の欠片や
魚の骨に出会えるしね。
そしてテラスに寝転がって
富士山を眺めながらの昼寝は
最高なのです。

さて、そろそろ木々も色づき始める頃、
山猫莊はいつにもまして
賑わってきました。

どうやら今月は山猫莊の
祝祭月らしいのです。
季節お構いなしに花々は
咲乱れ祝祭を盛り上げて、
プレゼントの数々も送られて、
豪華な料理も
用意されているようです。
「明日は本番じゃ!」
と山猫様が叫んでいます。


ところが、当日早朝から
盛大に打ち上げられるはずの35砲が
上がらないのです。


今日の為に用意した花々や料理が
控えているのに
肝心の祝砲があがらない。
担当の幸ちゃんは
「少しは訓練してきたのに」
とすっかりうなだれています。

山猫様は「大丈夫だよ。
人生長いのだから、
また今度頑張ってね。」と
優しく言って、バナナを
1本置いていきました。

幸ちゃんは人生は長いのかしら?
また今度ってあるのかしら?
と心配になりました。
一方、山猫様は
「僕はエビメテウスの
山猫莊に行っちゃおう。」
とポンと飛び移ってしまいました。

エビメテウスでは祝砲がどんどん
上がって山猫様を
お祝いしているようです。
美味しいお料理に
美しい女神に楽しい会話。


豪華な料理だって!
「遺伝子と遺伝子の間に・・・」
なんてこのヤヌスでは
聞いたことがありませんからね。

幸ちゃんは離れていく
エビメテウスを眺めながらずっと
私の和毛を
撫で続けるのでした。』

バナナは半分か!(奥庭)



豊かな胸がる千夜一夜物語
ヤヌスとエピメテウスの摩訶不思議な振る舞い

そりゃないぜ!土星の周りを馬蹄形の軌道を描いて回るなんて絶対あり得ない!
何と愚かな知性であろうかと思っても、紫薔は口には出さず僅かに微笑み千夜一夜物語を語り始める。

いいこと、この図は≪回転座標系に乗って描写したヤヌスとエピメテウスの馬蹄形軌道≫なのよ。
つまりヤヌスもエピメテウスも土星の周りを円軌道で回っているのよ。
にも拘らずヤヌスもエピメテウスも角速度を変え4年に1度、僅か50kmしか離れていない内側と外側の軌道を入れ替える。
この動きを回転座標系で表して初めて馬蹄形軌道がみえるのよ



サハリンからの尉鶲が皿に止まる
尉鶲の独白
土星から来たジョウビタキ

                         

日本で越冬する為
サハリンからやって来た尉鶲に
憑依し紫薔は語る。

静止衛星は飛んでいるのに
どうして止まって観えるかご存知?
そう、地球と衛星の角速度を
同じにすれば止まって観える。

今テラスの陶器に止まっている
あたしは地球表面と同じ
時速1667km
(4万km÷24時間≒1667km/時間)
で同じ方向に飛んでいる。
つまり地表と角速度は等しく
止まっている訳。

若し月が地球の自転と
同じ角速度で公転していれば
地球から観える
月は止まったままになると
理解できるかな!


さてあたしがソーラー灯から
飛び立ち空を
駆け巡ったらその軌跡はどうなる?
ソーラー灯を土星に
あたしをヤヌスかエピメテウスに
見立てて土星から
あたしを眺めてごらん!

そうはっきりとあたしの飛翔軌跡が
観えるでしょう!
内側の公転軌道を1日で0.19度ずつ
角速度を増しながら
ヤヌスに接近するエピメテウスは、
2006年の1月21日に
最接近し外側軌道に移り減速開始。

同じ速度で土星軸の周りを飛び
外側軌道に移ると、
軌道距離は長くなり角速度は落ちる。
角速度が減少すれば
当然ながらエピメテウスはヤヌスから
離れていく。


ソーラー灯で
縄張り宣言!

逆にヤヌスは内側軌道に入り
角速度を増しエピメテウスから
遠ざかって行く。

4年後に最接近するまでの
2衛星の軌跡は馬蹄形を描くのが
土星からはっきり観えることになる。

ヤヌスがエピメテウスを産み
分かち合った肉体が
夫々馬蹄形軌道を描きながら
再び合体する刹那に、時空ゲートが
口を開くのでしょうか!

テラス皿から離れない


大変だ!北森の防獣柵が倒木に潰されたぜ!
11月3日(日)曇 頑丈なH鋼がグニャリと曲がり扉開かず!

大昔から此処は猪や熊、鹿の棲家であり活動場所だったので、そこで栽培される野菜や果実は
当然ながら彼らの餌なのだ。
しかしそれでは里人の生活は成り立たないので、この万里の長城のような防獣柵なんぞが必要になる。
頑丈なH鋼で出来ている2m以上もある柵が延々と張り巡らされては、
力持ちの熊でも抜群の突進力を発揮する猪でも、ジャンプ力に優れた鹿でも柵を越えて里には入れない。

所がこんな風に森は彼らに味方し、いとも簡単に頑丈な柵をぶっ潰しシュプレヒコールを叫ぶ。
≪さあどうだ!これで自由に出入りできるぞ!≫。
自らの巨体を犠牲にして柵を倒す役割を引き受けるのは、死に瀕したした森の長老たち。
死して土に還る前に、ひと暴れして彼らの為に万里の長城をぶっ潰すなんて実に大したもんだと賞賛してやりたいが、
それでは仙人の畑仕事も意味を失ってしまい、里人の生活も立ち行かぬこととなる。



伐るたって!どうすりゃいいんじゃ!

上から伐ると刃が取られる

うーん、難しい!

丸太を下に当ててるしかない!

そこでしっかり刃を研いでおいた
チェーンソー引っ提げ
北の森へ出撃じゃ!
 
と此処までは良かったのだが、
この大物、やたらと大きくて
長く簡単に伐採出来そうもない。
上から伐ったら、
下に落ち込む大木の重みが
切断面に掛かり
チェーンソーが抜けなくなるのだ。


 太くて伐れないぜ!

しかし巨木の下側に刃を当てて
切断するなんて危険なだけでなく、
力を加えることが出来ず、
技術的に不可能。

巨木の下に丸太を入れて
持ち上げるしかない。
うーん、ビクとも動かない。
こりゃクレーン車で引き上げるしか
方法は無いか!
クレーン車を森に入れるのは
更に大変!どうする!

 

刃が喰い込み丸太を持ち上げねば

これで伐れるか!

未だ駄目だ!



曲がった支柱は直せるか!

ザイルを掛けて引くか!

真っ直ぐには無理!

えいこら、エイコラ!

クレーン車を入れず伐採に成功!
だが次の難題は曲がった
支柱をどう直すか。
果たして人力でH鋼の曲がりを
元に戻せるか!

駄目元でザイルを支柱の先端に結び
体重を掛けて引く。
最初はぴくともしなかったが、
徐々に動き出す。


ありゃりゃ曲がり過ぎ!
こんな風にして森と
戯れていると肉体がすっからかん
になって風がひゅーっと
通り抜けたり、
森の木の葉が舞い踊りながら
心象に影絵を描いたり。

あれっ、影絵が2つに分かれ
馬蹄形の
軌道を巡り始めた。

逆曲がり、これじゃ駄目だ!

そうか、元々肉体なんて
無かったんだ。
ヤヌスもエピメテウスもちょっとだけ
姿を見せたけど、
あれは限定された3次元幻像。

肉体を持つ仙人を時空ゲートに
誘き寄せるには、
分離したヤヌスとエピメテウスの幻像が
必要だったのか!



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