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その131の2ー2016年 神無月 |
10月2週・・・誕生日の祝いは山に決まっとるじゃろが!
誕生日の祝いは山に決まっとるじゃろが! 10月15日(土)晴 大菩薩神成岩 こすもすの碧とかおすの闇を突き破って、光が踊る。 72年前の10月、この碧と闇の狭間を切り裂く光は、仙人の誕生を祝ってくれたのだろうか! それとも闇のあまりの重さに、光は押しつぶされ寡黙に弱弱しく項垂れていたのだろうか! 光を孕んだ漂泊詩人の雲が、ソプラニストになって能天気な澄んだ声でうたう。 ≪おめでとう!72年間も活躍し続けた、60兆個もの細胞諸君! こうして1つの肉体宇宙を成し、ただ存続しているだけでなく、闇の山巓にまで老いた肉体を押し上げるなんて素晴らしいぜ! さあ、全身を60兆の光の粒子で満たすが良い≫ |
稜線の紅葉 |
標高2千mの紅葉 大菩薩稜線では標高2千mで 紅葉が始まったばかり。 七竃がやっと赤い実を付け、 真弓が赤紫の鞘を染め始めたけど、 昨年より2週間ほど 遅れている今年の紅葉。 昨日の朝夕2回のトレーニングで 一触即発となった膝痛がどう出るか、 思い切って7月11日に 肋骨骨折した大菩薩の神成岩へ。 |
満天星(どうだんつつじ) |
真弓の赤い実が顔出し |
イタヤ楓 |
七竃(ななかまど) |
赤八汐躑躅かな? |
夜明けから畑で大活躍し、 ストーブ業者と打ち合わせしと 大忙しの朝であったが、 空を観たら 実に久し振りの澄み切った碧空。 この碧空を観たらもう、 居ても立っても居られない と云うのが本音であるが、 いつまで経っても回復しない 膝痛への自虐的反旗の翻しでもある。 |
イロハ紅葉のような! |
膝痛はどうなってんだ! 熊笹が生い茂り、殆ど消えかかっている トレースを追って 稜線直下から落ちる谷に入る。 さて今日は神成岩直下の岩場を登るか、 左の開けた谷に立ちはだかる 小さな岩で遊ぶか! 天気がいいので開けた谷に決める。 ザイルを取り出すと 慌てふためいて左膝が喚き出す。 ≪もしや、このか弱い私に、 この岩場を登れと云うのではないでしょうね!≫ あたりー! おめでとう!さあ、久々の晴れ舞台じゃ、 四の五の言わず さっさと登っておしまい。 |
7月骨折の雪辱戦じゃ! 今回は慎重にザイルを使って 更には7月の骨折を プレゼントしてくれた神成岩への 復讐的お礼参りでもある。 こんな不貞腐れたな動機で岩登りなんぞしたら、 今度こそ致命的ダメージを被り 入院生活を余儀なくされ、 完全に再起不能になるのではと! 明日大菩薩マラソンとかで 既に駐車場はいっぱい。 大菩薩湖北駐車場に車を入れて、 福ちゃん荘まで森の中を歩くが、紅葉の気配無し。 |
まーまーそう硬いことは云わず! |
腐るを待つ富士見山荘 |
庭のブランコは使用禁止 |
失礼な! 腐るを待つだなんて! 未だ現役ですよ 驚いたぜ! てっきり廃屋の山小屋と 思っていたが、念のためとネットで 検索したら、ありゃ予約受付中。 どうも室内はリホームして 外観ほど老朽化してないらしい。 もっと驚いたのは 屋根がスライドして開く、 スライディングルーフ式天体観測所を 備えていて、 天体観測も出来るとか! 宿泊予約が入ると、 その日だけ小屋を開けるらしい。 |
さてこの大菩薩嶺案内図、 確か数年前までは、 この富士見山荘から直接 稜線へ突き上げる 富士見新道なるルートが 記されていたのだが、 ペンキで塗り潰してあるでは! 岩場の鎖も腐って撤去され、 落石も頻繁に起こり 危険なので遂に消去したらしい。 このルート、仙人のお気に入りで 仙人ルートと勝手に名づけ 20年も通い続けたが、 登山者に遭遇したことは、 一度もない。 まっ、これで完全に仙人ルートと なった訳で大歓迎 ! 此処の岩場はどれも小さくて、 ボルダリングに最適。 湖を従え、湖の上に聳える 秀麗な富士を 眼下に眺めながらの登攀は最高! |
危険で消された仙人ルート |
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鎖が切れてるぜ! |
丸太椅子も腐って! |
ありゃ、足が上がらん |
スタンス在るのに体重掛けられない |
小さな岩の割れ目に 登山靴の爪先を掛けてみる。 2cm程しかないが、 靴底のビムラムがしっかり捉える。 体重を少し掛ける。 全体重を掛けても、 この小さなスタンスは裏切らず、 肉体を支えてくれるだろうか? 一瞬の判断で 次の行動に移る。 リズムを取り戻した肉体は、 歌うように岩を攀じる。 そう、その調子じゃ! |
歌に時々不協和音が混じる。 ≪あのー、痛いんですけど! もう少しゆっくり、 傾斜の緩い壁を選んで、 登ってくれると助かるのですが≫ ほら、グングン赤いザイルが伸びて、 空に向かっていくだろう。 実に爽快じゃないか! 山荘に帰ったら、 72年間も活躍してくれたお礼に 良く冷やした山荘産ビアと ワインを呑ませてあげよう。 イタリアの スパークリングワインのLa Rovere だって冷やしてあるんだぜ≫ 驚いたのなんの! さすが仙人の左膝、それを聴いた途端、 痛みなんぞ、どこ吹く風、 あっという間に登攀終了。 |
空に向かうザイルじゃ! |
そりゃ行くぜ! |
後方に大菩薩湖見ゆ! 岩って寡黙だろう! 岩は余りにも悠久な時を重ね過ぎて、 いつもただ静かに押し黙っている。 その時の重みは半端じゃないぜ! 数千年、数万年、数億年だぜ。 そいつがね、無心に攀じっていると 不意に呟くんだ。 その瞬間に悠久な時が、香りを放つ。 存在の深奥に潜む香り。 |
背に湖を背負って登攀終了! 何とも満ち足りた、贅沢な香りを放つ豊穣な瞬間。 何が稔ったかって! ほら、覗いてごらん。観えないって! そうか君は心象風景を共有する切符を 持っていないんだ。残念! |
登攀終了点 |
これが72歳誕生日の祝いじゃ! 老い耄れ仙人ご満悦! 10月15日(土)晴 大菩薩神成岩 ≪知っているのだ! 誕生の記憶をこんな風に山が祝ってくれるのは、恐らくこれが最後であると!≫ とか何とか言って、来年も再来年も永劫に山が、 仙人の誕生の記憶を祝ってくれると、あっけらかんと信じているのだから、心底仙人はお目出度いぜ。 そうそう、見習いだけど何しろ一応せ・ん・に・んだからね。 本物仙人は不老不死だとか云うけど、見習いとなるとどうなるのかね? 修行らしき修行もしてないグーたら怠け者だから、まー精々平均寿命プラス2,3年も生きれば上出来。 処で見習い仙人の生まれた1944年の平均寿命は幾つだ? ありゃ、古すぎて出てない。3年後の1947年が男50.06歳、女53.96歳だって。 つまり、もう死んどるんじゃな! ほなら今、見習い仙人が生きとんのは、おまけみたいなもんかの! |