仙人日記
 
 その1303ー2016年  長月

9月3週・・・ウロボロスと中空に漂う森滝との語らい

ウロボロスと中空に漂う森滝との語らい
9月19日(月)曇 龍滝上の森に遊ぶウロボロス

1箱30kgの野菜を詰めた段ボールを2個、無理やりバイクのステップに積み込み、
宅配便に出そうとバイクに乗ったら、止んでいた雨が降り出し、コンビニに着くころにはずぶ濡れ。
雨は断続的に降り、≪汁出降≫は増水した谷の水を爆発的に噴射し、中空に浮く≪汁出降≫を支えるアーチが曲がってしまった。
今朝観たら、噴射の反動で後にそっくり返り、滝の水は水路に堕ちず、滝上の地面を抉り、
このまま抉り続ければ石垣崩壊の恐れあり、ヤバイ状況。

もっと根本的に構造を造り替え、揺ぎ無き≪汁出降≫に改造せねば。
そう云えば昨朝も今朝も震度6、5を記録する素晴らしい噴射反応ではあったが、2度とも躍動後に機能を失い、ガックリ!
昨朝は50ミリ、今朝は25ミリにバルブを調整したが、もっと微調整を繰り返し、
森に残されている生命力に合わせたベストなバルブ調整をせねば。
なに莫迦云ってんだか、とウロボロスは嗤っています。



莢蒾が紅く熟すと秋の収穫

今日も採れ過ぎ野菜がどっさり!

森では茸がニョキニョキ

唐黍大豊作 ハニ―バンタム・ピーター610
天空南瓜なので
地中に居る南瓜実蠅に
やられることも無いしと、完熟するまで
葡萄棚棚に置いておいた。

ところが激しい日射のせいか
棚に乗ったまま割れてしまう。
割れた直後の、
オレンジ色に輝く割れ目は
如何にも美味しそうで、
実際調理してみると
極上の南瓜になっている。


熟れ過ぎたゴーヤー

この美味しそうな割れ目を
虫たちが放って置く筈は無く、
割れ目に気づくのが
1日遅れると、最早虫天国。

美しいオレンジの割れ目も
黒黴が蔓延り、
食べられなくなってしまう。
その割れ南瓜が例年になく多く、
収穫量は激減。
棚に残っているのはどれも小さくて
未熟な南瓜ばかり。


右上が融けかけた西瓜

数十個収穫したが、
どれも美味しそうではない。
しかし西瓜に比べれば未だ良い方で、
20数本植えた今年の西瓜は、
ほぼ全滅に近く、
今まで満足に収穫出来た西瓜は

2個ほどでしかも甘味が足りない。
その他の西瓜は大きくなる前に
蔓が枯れてしまい、
充分な大きさに育つ前に
腐ってしまう。

 
天空南瓜の最後の収穫

美味なる過熟トマト 
 
このゴーヤー箱詰すると熟れてしまう



今年のオクラは大きくても柔らかのが多い
畑の管理は手を加えただけあって、
雑草も抑えられ
今までで最高のレベル。

が悔しいかな
何種か豊穣なる収穫には
結びつかなかった。
せめて冬野菜で
雪辱を晴らせないか!

残念ながら西瓜は不作

今年も豊作予感のキウイ

大好きな肉厚ピーマンもどっさり!

まさか、山荘で木通が採れるとは!
「あらあら、可哀想に
すっかり葉が覆い繁ってキウイの実に、
陽が当たらず大きくなれない。
こんなに沢山稔ったのだから、
大幅に葉を落として、
ほら、こんな風にしてやると、
キウイ嬉しそうでしょう!」

とキウイ担当の村上が大活躍。


採っても採っても採りきれない茄子
木通を求めて森を彷徨い、
見つけると、
せっせと心象風景に描き入れ、
秋がやってくるたび
愉しみに訪れていた。

2階への踊り場の出窓から
外を見ると、
おりゃ立派な木通が幾つも
連なり薄紫の色を深め、
熟して、割れているのもあるでは!



何じゃお前は森にいとるの!
9月19日(月)曇 龍と滝上の鹿角

秋雨前線を台風が刺激して愚図ついた天候が続いたので、
昨日の貴重な晴れ間を活かしてタオルケット、夏掛け布団、ベッドカバー、枕を2階テラスに干した。
夜は20℃迄気温が下がり山荘では寒いくらいなのだが、布団に潜り込むと暑くて堪らん。
そっか布団が太陽を吸い込み過ぎて、燃えているんだ。
タオルケットを剥いで、タンクトップ1枚でごろり。



朝の卵茸でーす

鬼の鉄棒、白鬼茸

夕の卵茸でーす

ベッドの裾のタオルケットの丘に
左足を載せ、その上に
右足を載せたらドッキン、どっきんと
激しい鼓動が左脚から昇ってきて、
太腿から腰、更には
胸へと全身に広がり、生命が波打ち始めた。

手首、頚部での鼓動を感じることはあっても、
アキレス腱そのものの様な
足首で鼓動を捉えるとは驚き!


聴覚が捉えられる
ギリギリの音量で、流されるベッド上の
ピアノの旋律が、
アキレス腱の鼓動に忍び込み、
動脈血の横溢する濡れた襞を
微かに震わせる。

生命の鋭い嗅覚が何かを捉え、
動脈血に出動を命じ、
活動を開始したのだ。


ちょっと紫の薄い紫占地茸

占地茸の大集合の様な

扇山を茸ので飾ってあげよう!

珊瑚茸の仲間だね

頭の尖った黄小傘茸

蝙蝠茸のような花弁茸のような



踊り場に幽し音色が流れる
目を閉じて全神経を
掌に集中させ、
動脈血の横溢する
濡れた襞を愛おしむ。

先ほどまでしっとりとはしていたが、
濡れてはいなかった襞が、
吸い込み過ぎた太陽を
発散するかのように熱を帯び、
熱と共に小さな
真珠の粒を生み出す。

真珠の粒は掌を駆け巡り、
仙人の心象風景にいきなり突入し、
僅かに残されている生命を
激しく揺さぶる。
昨日完成した中空に浮かぶ
3代目ボン・シルバーが、
空気を孕んだ
扇山の谷の水を、
怒り狂ったように射出し、
チベットの龍を打ち、
石垣を叩き奥庭を濡らし、
尚も猛り狂う。
3代目ボン・シルバーの
架けられたアーチの、優美な曲線を
愛おしむように、
掌をゆっくり曲線に沿って滑らせ、
射出口に語り掛ける。

「もっと激しく大地の汁を噴き出し、
静寂に潜む
ピアノの旋律に載って
大地讃頌を謳い、
森羅万象を濡らすが良い。

そうやってお前は自らの
アイデンティティーを、
高らかに謳い上げ、
あたらしの
肉体を手に入れるのだ」

音色は各部屋の木星壁画に流れ幽玄な生を奏でる



紅小傘茸にしてあげよう
  ≪Boule de Suif≫の記録

さて、今回の最終日は
雨も降りそうなので小倉山です。
これは楽勝!と山荘を出たのです。
ところが、ザゼンソウ公園を
抜ける頃には太陽が
キラキラ輝き出しました。

そして、尾根道にさしかかった時
「天気になってきたので上条山へ行く」と
仙人の声が
上の方から聞こえてきました。



ビートルズの髪型みたい

久々に逢えて上条山はとても嬉しそう!
「はぁ?!」新しい山、
嬉しいけれど、ほんのちょっと
不安がよぎります。
尾根道を小倉山と反対に行くらしい。
道標もある。

そんなに大変な道ではないようだ
けれど、置いていかれないように
歩きます。尾根道をまっすぐ進みます。
真っ白なキノコがあちこちに。
キノコが生えていたと覚えておこう。

 急斜面にすっくと!
大きな傘のキノコが右側という事は
帰りはこれを左に見て
帰ればいいだけです。
風格のある樹も見ました・・ただし、
うろこ状の樹皮は
前側と後ろでは全く色が違うのです。

少し嫌な予感がします。
尾根道をどんどん行き、
山頂がそろそろ近づいたかと思う頃、
仙人の姿が
忽然と消えてしまいました。

  

笠のぐるりに白い輪を描いてみました 

茶の胡麻を塗してどう!

左手には平坦な道が見えます。
ただし、下っていくようです。
右手は少し小高くなっていますが、
道らしきものは見えません。
さてどっち?ここは初めての場所、
いつものパラレルワールドには
絶対に入りたくはありません。

そこで私は少し考えます。
登頂を目指しているのだから、
道はなくともまず、
上へいってみよう。
木の根方に足をかけ、
ヨイコラショと登ってみる。
 

その上は広場になっていましたが、
頂上ではないようです。
倒木が横たわって、
さびれた雰囲気がプンプンします。
この広場をウロウロしてみました。
さて、ここから
訳がわからなくなってきました。
不安になり笛を吹いてみます。

返事はありません。
しょうがありません、方角は
間違えているかもしれませんが、
とにかくこの尾根を行ってみよう。
少し行くと、思いがけずに
仙人の気配がしました。



可愛らしいキノコなんか一つもありません

何とか頂上に行き着いたのです。上条山の標識に飾られた可愛いキノコたちが迎えてくれました。
ところが、登頂の幸せ気分は束の間でした。
「はい、後は来た道を帰っておいで!」と、いとも簡単に言われてしまいました。
「えー、私は迷走地図の上にいるのですけど!」と言う間もなく仙人の姿は消えて行ったのです。
一人になった私は再び倒木の横たわる広場へ。

一体自分はここへ来るときどこから登ってきたのでしょうか?下を覗いてみます。わかりません。
来るとき私は道無き道を来たのですから、帰りも道無き道を行かなくてはならないのです。
これが道無き道を来てしまった者の宿命で、全く帰り道がわかりません。
登りとは違うような気がしましたが、帰りは道らしき所を見つけ下りてみました。
ところが、これが似非山道だったのです。

後ろを振り返り、来た道を見上げてみると、見たこともない風景が広がっていました。
もうこの時点で自分の居場所は全くわからなくなっていました。

とにかく尾根道を行ってみよう。方角はあっているのでしょうか?
太陽に向かっていけばいいのかもしれません。歩き始めます。しかし、この尾根道は行きとは全く違うのです。
可愛らしいキノコなんか一つもありません。




過熟トマトの煮つけ

それでも私は自主独立の気概に
溢れた高雄民族の末裔、
藪と蜘蛛の巣をかき分け進みます。
すると、突然、尾根が無くなりました。
いつものパターンです。
はい、今は帰り道です。
どこへ行くかわからないけれど、
とにかく下ればいいのです。

植林された山の斜面を、
木から木へズルズル下ります。
この斜面のずっと下には
光がさしています。
そこに希望を見た私はあの光は
どこかの村に通じているかもしれないと
思い下りていきました。



大葉の香りで包んで

ズルズル、ズルズル、
ここでケガをして歩けなくなっても
だれも通らないでしょう。
もし携帯が通じても、私は
今何処にいるか説明できないと
助けも来られないでしょう。

慎重に斜面を下ります。
ズルズル、ズルズル。
斜面を
ズルズルしていると、私の前になんと
突如道が現れました。
道は行こうと思っている方向と
反対へ向かっているような気がします。

奴豆腐と彼岸花

このまま斜面を右方向にズルズルいくか、
左に突如現れた道を行くか。
ここは考え時です。うーん、いつもは
見失うばかりの道が今回は現れただなんて、
なんという天啓でしょう。

私は光輝く左の道を行くことにしました。

暫く行くといつもの如く道はなくなり、
ゴロゴロ石や
木切れのある谷に出たのです。
やっぱりまた迷走しだしたと、
思い始めた時、村の有線放送の声が
かすかに聞こえてきました。


骨付きラムと山荘南瓜

藍に映える蓮根

採れ過ぎ茄子をどっさり!



なんだか見た事のある景色

何処の村かは知れないけれど、人が居る所に出られそうです。古い缶コーヒーの空き缶も一個転がっています。
これは誰かがきここに来た証拠です。
あれ、セミの声がする。
この大量のセミの声が小倉山下のセミだったら、あの道はまさしく天啓!
なんてわずかな期待を抱いて進むと、なんだか見た事のある景色が広がっているではありませんか。
おや、少し登ったところに地図がある。走るように登り地図を見ました。

いつも見ている地図でした。現在地を確認してニンマリ。ザゼンソウ公園の近くでした。

ここまで緊張のせいか手や足がジンジン痺れていました。ホッとしたのかここでその痺れはおさまりました。
そして、下りでずっと痛かった右の靴紐を締直し、ペットボトルの最後の水を口に含んで山荘に戻ったのでした。
いま、地図を見ながら思うのです。空間って、上下の他に東西南北があるって。
(そんなの当たり前じゃん)と思っている貴方、あの辺りで一人ぼっちになってみる事ですね。



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