仙人日記
 
 その1302ー2016年  長月

9月2週・・・黒揚羽に吸い尽くされるウロボロス


≪汁出降≫と自称する3代目ボン・シルバー
9月15日(木)雨曇 龍と蛇の赤眼狂乱!

≪汁出降≫ Humor leaves the fall 何て読むんだと龍が訊ねたら、
≪ウロボロスさ≫と澄ました顔で3代目ボン・シルバーが応えたとかで、森は大騒動。
この3代目ボン・シルバーを名乗る鹿のサレコウベは、一体いつから山荘に居るんだ?
2代目にあたるボン・シルバーが奥庭から会話に参加。

≪ほら、7月4週に登場した仙人の弟子見習、覚えているかい?
あいつが小倉山の帰りに迷って、森からプレゼントされたらしいよ。
それを仙人がおいらの下に置いておいて、暫く見習いさせ、3代目ボン・シルバーに仕上げようとの魂胆だったらしい。
でもって、今回就職先が決まって、烏滸がましくも龍様の上に据え付けられたのさ。
さてさてこの下剋上の3代目、何をやらかすつもりか解らんね≫

それにしても新参者3代目はセンス悪いな。汁出とはなんじゃ?
大地から湧きだす泉でも意味してんのか?
そんでもって大地讃頌にこじつけて、そいつが限りなく降り注ぐ尊い役割と、自らの仕事を決めつけ自己満足か!
せめてもっと詩的な言葉に出来ないもんかね?
≪ユーモア(体液)は死から出る≫



3代目ボン・シルバーの汁出

この何処が大地讃頌!
滝の水量が激しいので、
これをただ流水路に落とし
池に流すだけではぜんぜーん面白くない。
そこで仙人は先週から考えに考え、
やっとこさ閃いた。

ボン・シルバー3代目を創り、
激しく水を吹き出させてやろうでは!
それには先ず激しい流れを導く
谷からの導水管とホースを
しっかしジョイントさせなければ。
外径20mmの導水管に、
内径が15mmのホースに
切れ目を入れ、更に
熱して拡げ無理やり嵌め込む。

内径を5mm拡げて
やっと導水管サイズになるので、
切れ目を入れても、
熱して柔らかくしても嵌る筈がない。

弧を描いて降り注ぐ



真紅のハイビスカスの夜明け

卵の殻が割れ、出て来た卵茸
 
虫の大好物・赤山鳥茸
そこで更にバンドで締めようと
探してみたがどれも
サイズが小さくて合わない。
仕方なくサイズの合わないのを無理して
嵌め込み、
どうにか繋げている状態。
従って水流が激しくなると
抜けてしまうのだ。

 
こいつを解決する為
テーパーの付いた
楔型パイプジョイントを
使うことに思い至り、
道具入れを掻き回し探してみたら、
有ったぜ!

しかし残念ながらサイズが
一回り大きくて合わない。
野菜発送序にホームセンターに
バイクを走らせ、
パイプジョイントを探すが無い。
注文したいが土日はメーカー休み。
仕方なくテーパー部分を鋸で切断し、
導水管に打ち込み、
その楔にホースを嵌めて
針金を巻き付け締めてどうにか、
最初の問題を解決。

次に3代目のボン・シルバーに
ホースを通す穴を開け、
ストックのリングに固定し、

偶然にしちゃ出来過ぎだぜ!
蔦を絡みつけ見栄えを良くして
どうにか完成。導水管の弁を開くと、
龍の頭上より高く設置された
3代目ボン・シルバーの口から、
お見事な噴水。
しかし水流が強すぎて、
落下地点に工夫が必要。 

虫が着き易い赤山鳥
 
光に濡れたテラスの雌蕊


ハイビスカスの蜜を吸う大きな黒揚羽蝶
9月12日(月)晴 直径12cmの花弁よりでっけいぜ! 

水流が激しすぎて飛び散り、水路から溢れ出し奥庭に連なる芝桜の花壇が水浸し。
これじゃ折角の芝桜も枯れてしまう。そこで朝から一輪車を押して岩石運び。
重さ数十キロもある岩を見つけて滝下まで運び、落下地点に設置。
どうにか飛び散る水飛沫は抑えられそうだが、芝桜の花壇への浸水は避けられそうもない。
うーん、何かもっといい工夫は出来ないものか!



前庭の石卓を飾る曼珠沙華


前翅の脈と脈との間の
8つの翅室と中室が、
夜明の光に射抜かれ
黒い鱗粉を失い、
半透明な膜となって実に美しい。

開花しつつある池畔の彼岸花
腕を組んでじっくり
考えている様なポーズをとって、
意味も無くふとテラスに目をやると、
競うようにして咲き出した
3種のハイビスカスの花弁が
舞い上がったのだ。

でも舞い上がった花弁は
真紅でもピンクでも白でもない黒。
あれ、黒い
ハイビスカスなんてあったか?

 

 3代目ボン・シルバー滝の
落ち口問題をそっちのけにして、
テラスに近づくと
黒い大きな花弁の正体は、
黒揚羽では!

直径12cmもある真紅の花弁に、
覆いかぶさるようにして
見事な黒翅を拡げ、花芯に留まる。
夜明けの光が黒翅を透かし、
12本の翅脈を浮かび上がらせる。


早速食卓に飾る

あたいの蜜も吸っておくれ!



バッサばっさと音がこえそう!

種蒔きだけでは仙人の筋肉労働組合の
諸氏が納得しないので、雨コースの鉄塔山へ。
森の中で雨音を聴きながら登り続けていると、
いつの間にか胎児になって
子宮に降り注ぐ、まだ見ぬ外界の音楽を
聴いていることに気づく。

無数の雨粒の1つ1つが、
聴き分けられぬ呟きを発しながら、
笠を叩き黄色いゴアテックスの防水着を濡らす。
ボタボタと大きめの呟きを投げかけてくるのは、
風に煽られて森の梢から落ちて来た滴。そうかい、
きっとお前は「早くおいでよ」と云ってるんだね。

でも未だ子宮の奴、
入口を堅く閉ざしたままで、
緩む気配無しさ。もう少し待っておくれ!

雨の匂いがしたので、昨日は
即ホームセンターにバイクを走らせ
蕪、ブロッコリー、玉葱、小松菜、春菊、青梗菜、
大根、ほうれん草等の種を買い込み、
種蒔をしたが、人参とレタスだけは残して置いた。
人参、レタスは雨が続かないと
中々発芽しないのだ。

しかし今朝は雨が降っているでは!
嬉しくなって長靴、ゴアテックスで
完全防水し畑に飛び出す。
ま、人参の発芽は難しいだろうけれど、
冬用のレタスは何とか発芽させねば。

 
深奥部に突っ込み激しく蜜をう黒揚羽蝶


 黒揚羽に吸いくされるウロボロス
9月12日(月)晴

いつの間にか、すっかり山荘の心象風景に溶け込み、彼方此方に現れ挑発するウロボロス。
滝の龍とウロボロスが絡み合ったのを目撃した黒揚羽蝶が、黙って観ている筈がない。
やおら口吻を蜜壺に突っ込み、ちゅうちゅう吸いだしたでは!
ウロボロスはハイビスカスの紅に染まり、黒揚羽の深遠な闇に呑み込まれてしまうのでしょうか!



奥庭をキャンバスにアーチを描く≪汁出降≫

どうも龍が煩がって、
目の上のたん瘤を何とかしてくれと
せがむので、
思い切って3代目ボン・シルバーの
滝の落ち口をアーチに
設置してみたらどうかと閃いた。

それには不安定なアーチを
先ずしっかり固定する事。
次にホースをアーチまで
上げなくてはならぬが、ホースの長さが
不足するので、差し当たり
短い2本のホースを繋がねばならぬが、
継手の在庫があったか?

3番目に大きな弧を描いて
落下する水を受け止め、
安定して池に流せる水路が出来るか?


鉄塔から高芝山に架る虹も≪汁出降≫を祝福
ま、やってみるっきゃないかと、
いつもの能天気ぶりを発揮して工事開始。
ところが想定外の難問、
アーチを固定する支持棒に
ストックを使おうと、
伸縮自在のストックを最大限に
伸ばそうと引いたがビクともしない。

ペンチ、モンキー等あらゆる工具を
総動員して堅く締まっているストックを
緩めようと試みたが緩まない。
悪戦苦闘45分、4本のストックの内
やっと1本が緩んだので、
どうにか固定に成功。

埋め込んだストックが動かぬ様
大岩を運んでしっかり固定。
それからはトントン拍子で
あれよあれよという間に完成。
見事な出来栄え。

爽快な放射にご満悦な3代目ボン・シルバー



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