仙人日記
 
 その1301ー2016年  長月

9月1週・・・兎を呑み込む蛇・・・兎の瞳には碧い空と白い雲が

日本最大の・ウロボロスがやって来た
9月5日(月)晴 西畑
青大将の襲撃

ウロボロスは金属質の光沢を放つ拒否的な鱗で、全身を覆っているが、その意味がすらりと解けた。
鎖の様に連ねた黄金の鱗は、
捕食の瞬間に最大限まで拡がり、獲物を呑み込み、金属の鎖で締め殺し、
獲物の消化と共に鎖を閉じるのだ。


山荘ゲート前に現れた猪

息を潜める背黒露虫
山荘ゲート前のアスファルト道路を
悠然と猪が歩む。
山では数十メートル先でも猪は
人間の気配を感じ取り、
猛烈ダッシュし逃げ去るのに、
どうしたことか
こちらに向かって迫ってくるでは!

動きから判断すると、
おそらく未だ人間を認識していないのだ。
カメラを向けて
シャッターを押した瞬間に、
気づいたらしく、
道路下の藪に
猛然と突っ込み逃げ去る。

ふんふん野生が臭うぞと女郎蜘蛛

仙人に気付き走り出す猪



どうやら襲われたのはらしい
9月5日(月)晴 西畑


大きさからすると成獣と幼獣の中間で生後1年ほどだろうか!
あと半年もすれば性成熟に達し、繁殖活動を始めるのだが牙は未だ生えていない。
それとも雌で牙が小さくて見えないのか?
画像を再生してみると、こちらに向かって歩いて来る姿が、しっかり捉えられている。

22年に及ぶ長い山荘活動で、何度も猪との遭遇を体験したが、
その都度、先に気付かれシャッターを押す前に逃げられ、未だ一度も猪の撮影に成功したことが無い。



ピーマンの下で蠢くウロボロス

うわっ!なんじゃこりゃ!
 貴重な画像であると思っていたら、
更にもっと凄い貴重な
野生の修羅場に出っくわしてしまった。
野兎を呑み込んでいる蛇を西畑で目撃。

ピーマンの下に何やら蠢く物体。
二重三重に
巻き付けられたコイルの端から、
にょっきり突き出ているのは、
兎の後ろ足。

蛇ならば頭は何処にと、
ピーマンの枝葉をどかしてみると、
コイルの中央に兎の頭を
呑み込もうとしている蛇の
小さな頭が現われる。
兎の頭は蛇の頭より遥かに大きいのだが、
その頭を咥え、
頭に連なる胴体を膨らませ、
喉奥に向かって反り返りっている歯を
じわりじわり前進させ、
決して頭が外に出ないようにして、
確実に不可能を可能にしつつあるでは!

正しく信じられない光景が展開!
もしや未だ兎は生きているのではと、
後ろ足を突いてみる。
既に絞め殺されてしまったか、
上顎にある2本の毒牙によって
噛みつかれ毒殺されてしまったか、
兎はピクリともしない。 
 
蛇の顎の構造
 
締め付けられ兎は動かない
 
胴体を膨らませ呑み込む蛇



頭は既にみ込まれ見えない
9月5日(月)晴 西畑


そうだこいつ青大将だから毒は持っていないのかな。
因みに青大将の英名はJapanese Rat Snake、つまり鼠を喰う蛇と云う意味なので、
こいつにしてみれば、いつもの鼠より大きな兎に挑戦し、自らの顎の限界を最大限に押し広げ、
喰うか、武器である顎を失い死するか、を賭けた壮絶な捕食バトルなのだろう。

それにしてもこいつの集中力は半端ではない。
漆黒の眼をギラギラさせ、総てを呑み込むことに生命力を集中させ、
恰も地球までも呑み込まんばかりの気配。



台風の風で倒木散乱

2か所で切断せねば通れない
コイルの修羅場を撮影し易い
場所に動かそうと、
巻き付けられた兎を、
立鍬で移動しようとしたが蛇は
逃げようともせず、

咥えた獲物を離さないどころか、
移動そのもの全く無視しているかの如く。
いったいどうしたらこの蛇の
集中力を解くことが出来るのか?
兎の頭と蛇の口に
立鍬の刃を捻じ込ませてみたが、
ちょっと怒りの素振りは見せたものの、
獲物を離す意志なんてとても覗えない。

そんなら尻尾に
ダメージを与えたらどうなるかと、
数回叩いたら、煩いと云わんばかりに
振り向き、遂に獲物を離した。

ログから森への途が遮断

どうだ!これで通れるぞ



兎の胸の辺りまでけかかっているでは
9月5日(月)晴 西畑


細い蛇が、この大きな兎を呑み込むだなんて信じられない。
(すべりひゅ)の褥に横たわる兎は、前脚を天に突き上げ、総てを受け入れているかに観える。
蛇はこうして大きな獲物を捕らえ、歓んでいるのだろうか?
兎は突然襲われ、命を奪われつつある身を、嘆き哀しんでいるのだろうか?

いいや、ここには歓びも哀しみも無いのだ。
生命の永劫の流離が奏でる幽し音色が、流れるのみ。


百日紅が太陽光パネルに被さり

伐らねば発電力が低下してしまう
誰がどう観たって、
どう読もうとしても百日紅を
サルスベリとは読めない。
猿も登れぬ程すべすべの幹を
してるので猿滑と
名付けたのだが、猿は易々と登る。

この花の花期が長いので
百日も紅く咲き続ける花とした中国名が
そのまま和名の
さるすべりに当てられたのだろう。

まあ、美しい花で、
唐代の長安では宮廷(紫微)に
多く植えられたため、
紫薇
と呼ばれたり、
中国や台湾では市花として愛でられたりと
中々の人気者。

しかしこいつ、いつの間にか成長し、
2階の屋根上に達っし、
太陽光パネルの光を食べて、
山荘発電所の僅かな収入を
奪い始めた。
ちょっと遠慮してもらわねば!

左手で伐らねばならず悪戦苦闘

大木になった譲葉(ユズリハ)も枝降し




脅したら呑み込んだを吐き出し退散
9月5日(月)晴 西畑


捕食の瞬間に、最大限まで拡がった金属質の光沢を放つ拒否的な鱗は元に戻り、
危機感を募らせた蛇は退散。
呑み込まれていた兎の頭部は、蛇の消化液によって融かされ始め、黒く変色している。

辺りを伺い敵の正体を確かめようと蛇は、暫く蠢いていたが、やがてピーマン畑から立ち退き、
崖下へと身を隠す。


西畑にウロボロスが、
現われたもんだから、
龍の奴興奮して
激しく水を噴き出したかと、
思いきや、
どうやら単に台風の増水で、
水量が増えただけの
事らしい。

それとも何か、
アッピールしてるんか?

台風の増水で荒れ狂う龍



8人の美女山荘来訪

西畑ではオクラが咲き誇り
うーん、勿体ないな!
この8人の美女、
こんな小さな、僅か350ピクセルに
閉じ込めてしまうなんて!

980とか1100ピクセルに
してやれば、
その清楚な
美しさに圧倒されるのだが!
ほら、この伐採してしまった
百日紅の花も
中々捨てたもんじゃないだろ。
英名はCrape myrtle と云うんだ。

クレープはあの
パンケーキのクレープで
焼いた際にできる焦げの縮緬模様が、
花弁の縮れに似てるからとか。
myrtle は金梅花のこと。

太陽光パネルの邪魔者・百日紅

山荘に氾濫する吸蔓



時には機関銃の如く水弾を連射
そうか若しかすると
お前は仲間を欲しがって
いるんだな!
いつも一人で、いや一龍で
孤独に谷の水を吐き出し、
山荘に忍び寄る悪霊を
追い払っているんだから、
時には鬱になったり。

まー考えておこう。
実は山荘の守護神として
採用してはくれぬかと、
ボン・シルバーに
秘かに頼まれているんだ。



兎の瞳にはい空と白い雲が
9月5日(月)晴 西畑


呑み込まれた兎の頭がポロリと零れ落ち、大きな瞳に、碧空と積乱雲がぽっかり浮かんだ。
死が齎した奇跡の、その瞳の碧空と積乱雲を見つめた。
ウサギは眼を見開いたまま生まれてくるので、悪魔の力から防御する力があると云われているが、
死ぬときも眼を開いているのだろうか?

それとも偶々開いたまま息絶えたのであろうか?
恐ろしい蛇の体内で、悪魔の力から防御する力を発揮して、最後に兎が認識した世界は、
夏の永劫の終焉を告げる積乱雲が
ぽっかり浮かんだ碧空だったのだろうか!



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