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その128の2ー2016年 文月 |
7月4週・・・森の奥に太陽光パネルがやってきた
片栗の森を覆いつくす太陽光パネル 発電量2.2メガワット(2200kw) おったまげた! 左膝を痛め、肋骨骨折をしてほんのちょっとだけ朝の山トレーニングを休んでいたら、 あの美しい片栗の森が、太陽光パネルに覆われてしまった。 この太陽光パネルの森が、どんだけ大きいかは、左下の赤い作業服を着た2人と較べると一目瞭然! てっきりこの片栗の森は市有地かと思っていたら、私有地でこれからは、 立ち入り禁止だとのこと。 山荘で太陽光パネルを設置した2001年は、コストが高すぎて採算が取れず、 この街で太陽光パネルを設置した家など全く見当たらなかった。 それがこんな山奥にまで太陽光パネルが、設置されるようになるとは! |
山荘の550倍の太陽光パネル 厳格な民主党員と工場所有者で上流階級に属する夫婦、 伯爵夫妻、2人の修道女とフランスを象徴する 『美徳の代弁者』達に混じって、 独り不協和音を醸す娼婦エリザベート・ルーセは、 どう行動したか! プロイセン軍に占領されたルーアンを去り、 乗合馬車でル・アーヴルに逃れる決意をした一行は、 プロイセン軍に占拠されたトートの村で足止め。 果たしてごうかツアーは、 如何なる結末を迎えるのか? |
折角の名作の弟子名が ≪子豚のふらちゃん≫では、 余りにも芸が無いと反省し、 夜中にガバっと起きて ≪Boule de Suif≫と 小洒落た仏語に改名しました。 気に入っていただけたら幸いです。 ≪偽善者は誰で、本当の愛国者は 誰なのかを浮き彫りにする≫ 彼女≪Boule de Suif≫こそ、 正しく弟子名・樵婦にふさわしいと、涙を流して 賛同してくれるに違いありません! |
山荘屋根の太陽光パネル |
Ⅰ ごうかツアー体験記 弟子名・≪Boule de Suif≫の記録 ある日、こんな手紙が舞い込みました。 「あなたは 2泊3日ごうかツアに あたりました。おめでとう。9時17分発のでんしゃに乗てきてください。 道の駅でおりてください。別当がまてます。肉もてきてください。とびどおぐもてきてください。山荘主拝」 おかしな手紙だなと思いましたが、毎日の生活に飽いていた私は豪華ツアーという言葉に惹かれ、出かける事にしました。 (肉は持って行くのか、自分の好きなお肉をB&Bでジュワーと焼くのだな。)といつもより少し良い肉をカバンに入れました。 (とびどおぐは飛道具か?持ってこないで下さいの間違えでしょう。)と頭の良い私は考えました。 車窓からの青い山、木々の緑を眺めながら今回の豪華ツアーはどんなものかしら?とワクワクしておりました。 降車ボタンを押しホームに降りたのはたった一人でした。「道の駅」駅は、駅に道が走っているホントの道の駅でした。 さびれた駅に戸惑う間もなく別当が物陰から現れました。別当は「ハイ乗って」とあごで指します。 そこにはごく普通の乗用車が待っていました。 乗るとすぐに「肉たくさん持ってきたか?」と聞くので「少し多めには持ってきました。」というと、 別当は少しがっかりしたようでした。 |
池を漂流する向日葵 |
漂流花の乗員 |
この、夏の朝の
生命に満ちた何と云う静けさ。 森を満たす美しい波が、 蜩の調べや、 雌を求める鹿の一突きだけの 甲高い叫びを載せて、 ひたひたと打ち寄せてくる。 もっと強靭な筋肉を得る為に ゼイゼイハーハーと、 全身汗まみれになって 登る必要はない。 |
より高く困難な山巓を目指して、 1秒でも速く駆け上がる 訓練に身を投じなくてもいい。 ただ美しい波に身を委ね、 波の運んでくる 命の物語に耳を傾け、 ゆっくり歩を進めればいい。 |
珍客の深山紋黄蝶 |
池を漂流する秋茜蜻蛉 |
Ⅱ これでだって、殺せるよ 弟子名・≪Boule de Suif≫の記録 次に「飛道具は持ってきただろうね。」と言うのです。 |
池底浚い&フィルター清掃で鯉も生き生き 痛みに怯み避けていた朝トレを、 やっと甦らせる決意をした。 痛みの消失を 待っていては残り僅かな時は、 総て失われてしまう。 美しい波に身を委ね、 波の運んでくる命の物語に耳を傾け、 ゆっくり歩を進めれば、 苦痛のご機嫌取りなんて 必要ないのでは。 |
朝トレだけを避ける理由なんて、 無い事を充分に知りながら、 おずおずと昼とか夕刻に山トレを始め 苦痛のご機嫌伺いをしてきた。 遠ざかっていたが、 朝の山トレがこれ程までに 贅沢で豊かな躍動であったことを、 すっかり忘れていた。 |
睡蓮に咲いた向日葵 |
Ⅲ 樵の婦人で、何と読みます? 弟子名・≪Boule de Suif≫の記録
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お前はやっぱり 単なる阿呆でしかないな。 仙人の聴覚が狂っているって! ≪認識の原点に苦痛あり≫と 苦痛そのものを目の当たりにし、 誰よりも苦痛を良く知っている 枯葉の襞を知りもせず、 ボンシルバーは自らの無知を 曝け出しているだけではないか! |
今年は発芽少ないゴーヤー |
暖かく穏やかな子宮の海で 漂っていた生命体は、ある日突然、 海そのものが敵意を剥き出しにして 迫ってくることに気づく。 海の圧力は高まり、 海の支配者の苦痛の声が 外界から響き渡り、 苦痛が頂点に達すると海が決壊し、 生命体を外界に排出せんと 更に支配者は喚き出す。 |
黄プチトマト |
ボタボタ落ちる李 |
勝手に発芽し実る山荘トマト |
枝打ちしたらこんなに大きく |
生命体は外界に認識体として 存在する為の儀式を決意し、 恐るべき苦痛を甘受し、 4枚の頭蓋骨を重ね頭を小さくし、 脱出の準備を始めるんだ。 子宮の支配者は 子宮の収縮によって とんでもない苦痛を与えられ、 小さな生命体は 初めての認識として、 頭蓋骨をずらす苦痛を与えられ、 両者の苦痛の極値で外界に 誕生するんだ。 |
次々と桃太郎トマトも |
Ⅳ 真夏の業火ツアー 弟子名・≪Boule de Suif≫の記録
向こうをみると、私のチェンソーが庭先に置いてあります。 |
太陽が真上にあるぜや! ちょっと耳を澄ませば認識体には、 ≪苦痛を突き破れ!≫との囁きが聴こえても、 別に聴覚が狂っているわけでは無いと、 解ったかいボンシルバー君! まーグダグダと詭弁を弄し、 左肋骨骨折も左膝痛も無視して 山トレーニングを再開した言い訳を、 2日間に亘って述べた訳か? で、今日もきっと痛みに呻きながら、 口をへの字に曲げて、 歯を食いしばって山巓を目指すんだね。 やっぱ、莫迦は死んでも治らないね。 |
その一部始終を目の当たりにし、 痛みを共有しつつ生命体を送り出すのが、 幾重にも重なる湿った枯葉の襞なのさ。 どうだ、その事実を知ってしまえば、 ボンシルバーも仙人の 聴覚を疑ったりしないだろう? つまりだ、存在と認識の原点は 苦痛であり、苦痛の齎す闇であり、 この闇から逃れる術は無いと 何処かで認識体は悟っているのさ。 |
どうぞ!向日葵を日傘に |
採れ過ぎ胡瓜 |
何しろ胡瓜と云う奴は ゲリラ的に 突然生り始め、あっという間に 大きくなって、 直ぐ味が落ちてしまう。 そこで今夏は時差播種し、 現在4か所に栽培。 |
洋梨は未熟、20世紀梨は良し |
一昨年ラ・フランスの苗木を 遠くの苗木屋迄 バイクを走らせ買ってきて植樹し 大切に育ててきたが、 さっぱり大きくならない。 その代わり20世紀梨は 今年も沢山実を着け、 秋が愉しみ! |
白ワイン用葡萄 |
ワイン用の赤と白の 葡萄は南瓜、ゴーヤー、 モロッコに棚を奪われ、 どうも居心地が悪いらしい。 それでも頑張って、 《名前だって葡萄棚なんだから、 この棚、僕たちのもん。 ちょっと其処空けて》 |
唐黍はあと2週間かな? |
奥庭を歩くたびに ごつん、と頭に当たる林檎。 つい先ほどまで 存在感なくて、忘れていたのに、 いつの間にか、 うっすらと紅をさしたりして すっかり林檎になってる。 |
ほんのり紅の林檎 |
Ⅴ キャーこわーい! 弟子名・≪Boule de Suif≫の記録 日のかんかん照り付ける庭に出ると、「まず、練習!チェンソーのエンジンを5回かけなさい。」と言われました。 私は娼婦にもなりたくないけれど、樵婦にもなりたい訳ではないのです。 でも買ってしまった飛び道具、やらないわけにはいきません。 傍に近寄るだけで怖いのに、それを動かそうというのですから、困りました。 「キャー、こわーい!」とよよと誰かにしなだれかかれるほどの才能もないし、 何でも出来ますという強い女でもない。ごくごくフツーに生きてきた者です。 でもここにきてチェンソーのエンジンをかけることになってしまいました。 エンジンをかける紐を引いてみる。途中で引っかかってしまう。何度やっても出来ない。 額から落ちた汗が目に入り。痛い!特に左目は針で刺されるように痛い。 汗を吹きふきなんども挑戦するのですが、一向にエンジンはかかりません。傍で別当改め山荘主が怖い顔で見ています。 早くエンジンをかけなければと焦ります。 もうその頃にはエンジンをかけたいという思いばかりでチェンソーの怖さは薄れていってしまっていました。 |
私の消滅 悪意に操られる記憶と人格・・・中村文則 《記憶は、個人の同一性と結びつく。それなら記憶が操作され、実際とは異なる記憶がはめこまれたら、 人は別人格を生きることになるのか》 評冒頭・・・ 蜂飼耳 《僕はこの人生というもの、そのものに抵抗していたのだと思う。 人はもっと静かに生きられる。 たとえこの世界が残酷でも、僕達はやっていけるのだと》 中村文則 豊かに実ったプラムを摘みながら、昨夜読み終えた「私の消滅」の重さを反芻する。 意識的に実際とは異なる記憶を自らインプットし、豊饒を生み出す行為に汗し、 たとえこの世界が残酷でも、静かに生きていけるとの幻想を追い続けることは可能なのかと、 問題をふとすり替えてみる。 認識体の記憶の原初に激しい苦痛とそれに伴う、漆黒の深遠を観てしまった人間は、 幻想と知りつつ、私を消滅させ静かに生きる決意をするしかないのでは! |
美味しくて大豊作の李 今夏の驚きはなんと云っても 山荘プラムの 美味しさにある。 桃、パイン、キウイ、林檎等と較べても 明らかに今年は 山荘プラムに軍配は上がる。 |
オクラの発芽率が50%程で 今年の収穫はあまり期待できないと半ば諦めていたが、 早くも実を着け始めた。 生のまま食べてみたら結構美味しいでは! モロッコ、胡瓜、トマト、茄子、ピーマンは、 まーまー順調で毎朝、サラダ、糠味噌一夜漬けで愉しんでいる。 |
葉に隠れて見えなかったけど李どっさり! |
どうですか美味しそうでしょ! |
昨年の冷凍保存してある干柿を、 ヨーグルトと一緒に毎朝食べているが、 これと較べても今年の山荘プラムは、 甘さこそ劣るが美味しさでは、 干柿を超えている。 今朝も一皿ペロリと 平らげてしまい自分でも吃驚! |
冷やしてカットして桃と一緒に |
目白に持ち帰った山荘の宝石! 鍼灸師の香さんのとこの6歳の燕くんなんか、 トマト大好きで、トマトを手にするや こっそり自分の部屋に行って、 ぜーんぶ食べちゃうこともあるんだって! |
出て来る出て来る! 大きなザックに詰め込んだ桃、プラム、沢山の野菜。 目白のマンションには山荘野菜のファンが居て 毎週、首を長くして待って人がいるとか! |
もっと野菜も加えて朝市じゃ! |
Ⅵ 焼ける厭な匂いが 弟子名・≪Boule de Suif≫の記録 山荘主は「しょうがないなあ、俺がエンジンをかける。」と チェンソーのエンジンをかけられない=無能な生きる価値もない人間というような苛立った様子で チェンソーの前から私をどかすと、少し手間取った様子でしたが エンジンをかけました。 「これを持って山に入る!」エンジンのかかったままの、 ガーガーうるさいチェンソーを持って山に向かいました。 山荘主のと、私の物の2台のチェンソーがガーガー音をたて、会話も出来ません。 これを持って滑る山道を行くのかと思うと、怖ろしくなりました。 滑った時は、怒られてもまず自分の身を守ろう。と覚悟を決めた時、 プラスティックが焼ける厭な匂いがしてきました。 見ると、私のチェンソーから白煙が出ているではありませんか。 すぐにエンジンを切りました。静寂が戻ります。何だかうれしい。チェンソーからの解放です。 |
西瓜もぐんぐん大きくなって |
特に今朝は原野での 背丈ほどもある芒刈り肉体労働で、 汗びっしょり喉カラカラ。 良く冷やしたプラムとヨーグルトが 滅法美味くて箸が 止まらず食べ続けてしまった。 梅雨明けの蒼い空と 強烈な太陽を浴びての肉体労働、 そうかこんな朝は 石卓の木陰で朝からビア、ワインで のんびり山荘の夏を愉しめば よかったんだな! 最後の石卓での朝食はいつだったか、 思い出せないほど昔のような。 素晴らしい山荘の夏を そろそろ復活させようかな! |
天空南瓜が頭に当たってね |
茄子も重くて倒れそう |
モロッコも収穫時期に |
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復活させるには 何か足りませんか? パクリと頬張った肉厚ピーマンが、 ローストした ジャーマン・ソーセージと一緒に 口の中でモグモグ 云ってます。 |
肉厚ピーマンも生でサラダに |
若しかすると、それって ロングスカートの素敵な、 お話しをいっぱい胸に詰めた 卵スープと冷やしトマトの ことかな? 変だぜ、卵スープと冷やしトマトが ロングスカートなんか履くか? どうも仙人の心象は 激しく混濁してるようなのです。 |
Ⅶ はい、この樹 弟子名・≪Boule de Suif≫の記録
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片栗の森の記憶は何処に いつか来たこの道は跡形もなく消えた |
そんなに嘆いていても いつの日か 片栗の森の記憶は彼方に 追いやられ、 追いやられた記憶は やがて居場所すら失念し、 もう想いだすことも 無くなってしまうのだろうか! それとも 記憶は日々新たに 鮮明さを増し 実存を遥かに超えて、 生きて在ったことの波動で 過ぎ去った渚を 打ち続けるのであろうか! |
また新たに 森の伐採が始まり、 嘗て天空を衝いて 葉の海を描いていた樹木は、 丸太んぼうになって 突っ立ち 滑車を付けられ死体となった 仲間の丸太んぼうを運ぶ。 それでも丸太んぼうは 記憶を消されまいと必死になって 丸太の天辺から 僅かな緑を育み、呟く。 《確かに森は在ったのです》 |
記憶を消去する作業は続くが丸太の先端には緑が 手前の滑車は森の伐採後の木材を運ぶ |
片栗の森上部 |
切り裂かれた森の異邦人 |
どうなってしまったのか、 憶測しているだけでは真相は掴めない。 もしかすると有り得ない事ではあるが、 森自身が決断し 膠着状態を切り裂いて新たな途を 志したのかも知れない。 片栗の花々と共に繰り返し、繰り返し 素晴らしい日々を送るために 離婚までしたのだから、 その決断力を新たな晩鐘の時を 生み出すために使うべき。 |
そんな声が聴こえたもんだから、 のこのこ片栗の森へ出かけてみた。 入口には厳めしい立ち入り禁止の看板が どでんと、立てられているので 迂回し平沢の集落まで登って、 船宮神社に出てそこから 太陽光パネルの最上部まで登り詰めてみた。 片栗の森は跡形も無く消え失せ、 片栗の巨大な花弁となって、 赤茶けた大地にへばり付く 太陽光パネルだけが在った。 |
片栗の花が2.2メガの電力へ |
小倉山北尾根裏に山荘 |
Ⅷ 快感!樹が倒れる 弟子名・≪Boule de Suif≫の記録 そして、その狭い場所で怖ろしいチェンソーのエンジンをかけるのです。 こんな思いをするなら、鋸で何時間でもかけて切ります。 と言いたいところですけれど、なんといっても自分の物なのですから、 しかも交換までしてきてくれた飛道具なのですから、やらなくては。 もうどうにでもなれ、の心境です。 ズルズル斜面を下り、チェンソーがやっと置けるくらいの狭い場所でエンジンをかけました。 轟音が響きます。森の中では細い方の樹です。 しかしこれだけの樹、チェンソーを当てた時の反動はいかばかりかと、恐る恐る樹に当ててみる。 あ、呆気ないほど簡単に切れてしまった。 快感!樹が倒れる。やったぁ!と思ったら、その樹が支えていた隣の伐採後の樹が私の上に落ちてきました。 これで、樵の儀式は終わったようです。 帰り道、娼婦と樵婦とどちらが厭か考えてみました。樵婦の方が絶対いいなあ。 |
螺旋星雲となって黄昏れる太陽系 太陽は赤色巨星となって地球を呑込む 最早いくら太陽光パネルを並べようが、螺旋星雲から生のエネルギーを得ることは出来ない。 森は片栗との共生を決意し離婚したものの、失うのは日常の安寧だけでなく、 実は森自らも失うことに気づき、更なる決断を迫られ森からの変身を決意したのだろうか? 森と太陽の晩鐘が重なる。死に行く太陽・螺旋星雲の弱弱しい光を浴びて、 光を電気エネルギーに変換できなくなった太陽光パネルが、寂寥を湛えた眼差しで天空を仰ぐ。 |