仙人日記
 
 その125の22016年  弥生


4月2週・・・ 亀山郁夫→松浦寿輝→蓮見重彦と暴走


山荘の彼方此方で櫻の蘖(ひこばえ)
父親殺し

上下巻で1400ページに
及ぶとはいえ
3か月近くかかって
漸く読了と云うのは
極めて珍しい。

「新カラマーゾフの兄弟」の
時代設定は1995年9月。
「カラマーゾフの兄弟」の
3兄弟の長男ミーシャに
黒木ミツル、次男イワンに
黒木イサム、
3男アリョーシャに
黒木リョウを当て、
現代日本へ置き換え
父親殺しは進行する。
少し前に阪神淡路大震災と
地下鉄サリン事件
があってバブルが弾け、
きなくさく世紀末的な
雰囲気が濃厚に
漂っていた頃で、
物語はその13年前の
実業家黒木兵午の
変死の謎をめぐって展開。

それだけでなく物語本体と
並行して、Kという人物の
手記が挿入され、
それが物語本体の
登場人物と接点を持ち、
絡み合っていく。

柳も咲き出してすっかり春うらら


次々と種類の異なる水仙が

前庭も奥庭も煩い水仙のお喋り
と云う構造なので、
何度か読み返したりと
時間を食ったのも確かだが、
致命的なのは
引き込まれない、
つまり面白くないのだ。

これが読了に
3か月も掛かった最大の理由。
しかしやがて滅茶面白くなるとの確信で
読み続けていたが、
その確信の根拠が
誤りであったと気づき愕然!
全く疑いもせず亀山郁夫を、
三島由紀夫は本当に
死んだのだろうかと投げかけた
「不可能」を書いた松浦寿輝と
勘違いしていたのだ。

あの「不可能」の面白さが
いつ爆発するかと「新カラマーゾフの兄弟」を
読み続けていたのだから、
もう呆れてものが言えない。
その上このHPでも取り上げた
「不可能」の作者、タイトルが、

畑の敵・蒲公英もグングン

真っ先に雪チューリップが



そう云えばこの雪の下から春蘭の声が聴こえていたぞ!(3月26日)
どうしても思い出せず、
昨日から当HPの読書記録を調べたり、
ネットで検索したりするも解らず。
最後の手段と塩山図書館に電話する。

「未だ生きてる
三島由紀夫を書いていて浦の着く
作者の作品なんですが、
タイトル、作者解りませんか?」
 「いやー即答できませんが
暫く時間を下さい。
折り返しお電話差し上げます」、

その数分後プロ根性発揮し
優秀な塩山図書館員は、
見事に作品名・「不可能」と
作者・松浦寿輝を探り出したでは!
そう松浦寿輝だった。
新聞で読んだ映画評論が面白かったので、嘗て傾倒しそうになった詩人、
小説家、フランス文学者、批評家、東京大学名誉教授でもある
松浦寿輝だった。間違いない。

樹麗が東大で松浦寿輝の講座をとっていたか訊いてないが、
映画評論を書いたりしてた頃、松浦寿輝との書簡を
見せてもらった記憶がある。
その松浦寿輝を忘れるとは、何たるお粗末! 

その11日後の春蘭でーす!(4月5日)


辛夷も咲き出し

水仙の喇叭も鳴り出し
劇的な夜明けだった。
昨夕の早春の激しい落雷と
凍てつく北風に森も山荘も
震えあがったが、
夜明けと共に雷雲は去り
海のような碧空。

鍬を大きく振りかざし
大地に深く打ち込む。
掘り返された大地が、
潮の香を僅かに含んだ豊穣な
大地特有の匂いを放ち、
歓びの声を上げる。

あー、やっと大地の歓びの声が
聴けるまでになったな!
耕しても耕しても沈黙を続けた大地が、
やっと命を宿す歓びに
目覚めたんだ。 
発芽したばかりの
アスパラにカメラを向け、
つんつん突き出した土筆が
朝露に濡れた様を撮り、
銀の珠から黄色い小さな花を
爆発させている柳をレンズに収め、
扇山に向かう。

森の中で檀香梅の微かな芳香を
求めて扇山の森を彷徨う。
6本の檀香梅に回り逢った。
上条の森の檀香梅も誰にも知られず、
匂いを放っているのだろう。
来週こそ逢いに行ってあげよう。

惚けの進行度は半端ではない。
実に深刻であると判明。
≪その松浦寿輝を忘れるとは、
何たるお粗末!≫ と一昨日、
記したばかりなのに
その確かな筈の記憶が
誤りであったと解ってしまったのだ。  
 
杏子なんぞほろ酔いで

ホンじゃま、卓上に一輪

ここ春蘭の森なんです


やったぜ!アスパラ発芽(西畑)
となると≪何たるお粗末≫を遥かに超越した重度の宣言的記憶の障害であり、
若しかすると脳の内側側頭葉病変が生じ、
近時記憶障害を引き起こすアルツハイマー病が発症したのかも!
今朝(3月30日)の朝日朝刊を開いた途端、飛び込んできたのが
新潮4月号に掲載された蓮見重彦の「伯爵夫人」への片山杜秀の文藝時評。

この蓮見重彦の名を目にした瞬間、仙人の障害脳が機能を一部回復し、
松浦寿輝と蓮見重彦が入れ替わった。
≪松浦寿輝との書簡≫と記したのは全くの誤りで、
蓮見重彦が東大総長に就任した時に
樹麗がお祝いに蓮見重彦に送った書簡であったと気付いたのだ。
映画評論を書いていた
東大総長との情報は仙人の障害脳に
微かに残っていて、
同じ東大でも総長ではない
松浦寿輝が樹麗の書簡相手にしては
変だなと思っていたので、
即間違いに気づいた。

となると
≪新聞で読んだ映画評論が面白かった≫
と云うのも松浦寿輝の評論ではなく、
蓮見重彦の評論だったのだ。 
 
土筆もひょっこり(ゲート前)
 
サラダにしようかな?(ゲート前)

やや、中畑にも(中畑)
うーん、恐ろしいこっちゃ!
樹麗から見せてもらったその蓮見重彦への書簡は、
樹麗の映画評論の形で書かれ、章の冒頭の一字が赤文字で記され、
それを繋げると実は総長就任のお祝い書簡になっていると云う、
少々凝った文面であったのをはっきり思い出した。

亀山郁夫→松浦寿輝→蓮見重彦
と暴走した重度の宣言的記憶の障害が、これから更に加速し
酒も呑まぬのに酷く酩酊を促し、如何なる恍惚卿を生み出すのか、
いやほんま愉しみやな! 



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