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その119の2、3ー2015年 神無月 |
10月2、3週・・・おれはひとりの修羅なのだ
薔薇に染まる初冠雪富士 10月11日(日)晴 山荘テラスより ボン・シルバーの角の根元から登山道が、ジグザグを繰り返し薔薇に染まる頂に迫る。 ボンシルバーがもっと近くで、大きな富士山が観たいと云うので、 大サービスで富士山を大きくしてやった。 「どうだい、こんな大きさで!」 「うーん、美しいね!雪の富士山に魅せられて登り続ける仙人の気持ち、解るな!」 ・ 富士山初冠雪の最早日は8月9日(2008年)で、最晩日は10月26日(1956年)、 平年値(1981年~2010年)は9月30日、昨年は10月16日。 つまり今年の初冠雪は昨年より5日早く、平年より11日遅いことになる。 |
ボン・シルバーも初雪に大喜び 山荘中庭より |
「何だって8月9日だって! 真夏の一番暑いときに 初冠雪だなんて 信じられない。 それもつい最近で7年前の 2008年だって!」 ・ さぞかし興奮して きっと仙人は写真を 撮りまくり HPには真夏の雪富士画像が 満載してるのでは! そう思って調べたら ありゃ!仙人は モルジブへお出かけでは。 ・ ではその日の画像を ちょっとお借りして。 おりゃ雪富士みたいな 白亜三角形の 豪華クルージング船じゃ! |
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「うっそー! たった7年前だなんて、 とっても信じられないぜ! だってさ、 髪の毛だって、ふさふさと 云えないまでも どうにか禿げずに健在だし。 ・ 顔に張りが在って 頬に皺があるものの、 実に生き生きしてるぜ! この写真ほんもの?」 とボン・シルバー。 ・ ほんものさ。 つまり60代の7年間は 物凄いスピードで 老化、劣化が進んだと云う訳さ。 さあ、仙人も いよいよ最後だぜ。 一体この後、残された 僅かな時間で仙人はどんな悪戯を やらかすのかね! |
夜明けに満ちる生命の歓びを謳うかの如くボン・シルバー |
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午後から大菩薩の岩場ルートに マークを着けに行く。 此処では、何度も岩場の 取りつき地点を間違え、 雷岩の北西に出てしまっている。 ・ 以前は決してそんなことは 無かったので、 多分取りつき周辺の沢が 崩壊し地形が 変わってしまったせいだろう。 さてどうなるか? |
赤テープを巻き付けマークに |
長年の謎がやっと解けた。 重い雲が垂れこみ始めたので、 大菩薩山行は 延期しようかと思ったが、 明日は雨予報だし バイクに跨って出発。 ・ 富士見山荘の庭に在る壊れた ブランコ前にバイクを置いて、 富士見新道に入るが 1本目の谷までの笹道が荒れていて、 踏み後が定かでない。 |
紅葉の始まった森 |
2つ目の谷を越え 更に森を登ってから、一番右側の 谷に入り、右方向を示す 富士見新道の標識を見送り、 谷をそのまま直上。 ・ いつものお気に入りの フェース(岩壁)で写真を撮り、 これより右に雷岩の在る谷が無い事を 確かめつつ更に谷を詰める。 ・ 稜線に出ると嘲笑うが如く、 右に雷岩が屹立しているでは! なぜ右に雷岩が在るのだ! こうなったら雷岩を下って 取りつき地点を 確かめる以外に手は無い。 ・ 下ってみて初めて 長年の謎がやっと解けたのだ。 雷岩の下は確かに谷状になっているが、 谷から押し出されたガレは 森の途中で消え、 その先はどちらかと云うと 尾根状の森となり、 谷とは繋がっていないのである。 ・ これでは幾ら右側の谷を目指しても、 雷岩には出られない。 帰りは飛ばして23分で山荘着。 茄子畑を耕し施肥しマルチを張って 60本の玉葱を移植。 1時間程で終わらせようと励んだが、 1本1本の移植に時間が掛かり、 2時間を経て17時にどうにか終了。 さすがにバテバテ。 |
あれあれ、これじゃね! |
生きの良い木を選んで |
これで次回から迷わずに! |
燃え始めた大菩薩の森に漂う湖と富士 10月10日(土)曇 大菩薩嶺雷岩下部岩壁 「そら、今登って来た岩を登り返してごらん!」 岩壁を登攀する仙人を、危なっかっしい岩場で撮り続けた村上に声をかける。 「そうそう、その位置で止まって、燃える森に漂う湖や富士山を従えて、実に鮮やか!」 あーこんな瞬間をむしゃくちゃ喰って、仙人は生き永らえているんだね! |
さてルートはどっちだ!大菩薩嶺雷岩下部岩壁 さあ、もうすぐ稜線 大菩薩嶺雷岩下部岩壁 |
在るか無いかの僅かな突起に 左手の指を這わせる。 火成岩の粗い粒子を指が捉える。 指の先から石英閃緑岩が、 するりと忍び込み「さあ、お出で!」と囁く。 ・ 指先に徐々に体重を掛け左脚を上げる。 若しもこの時、 石英閃緑岩が指を裏切ったら、 いとも簡単に肉体は、 重力に曳かれ落下を開始する。 ・ 大地への激突、肉体の毀滅で、石英閃緑岩の 裏切りは完遂する。 |
岩壁を彩る紅葉大菩薩嶺雷岩下部岩壁 |
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「さあ、お出で!」との囁きを 聴くことが出来なくて高校時代の登攀は、 いつも荒っぽかった。 岩の囁きが微かに聴こえるようになってからも 裏切りに怯え、岩と一体化した 伸びやかな登攀は中々実現しなかった。 ・ やがて難しい岩壁を登るより、 岩と遊ぶ愉しさを知るようになってから、 岩が裏切る瞬間も察知出来るようになった。 裏切りの要因は岩でなく、 当然ながら自らの指にあったのだ。 ・ 空間に躍り出る歓びを教えてくれた 指と岩の交歓を祝福せねば。 |
岩壁は唐突に天空へ消える 大菩薩嶺雷岩
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いつ来ても美しい姫ノ湯沢右股 それから訪れる人の無い この谷を経て雷岩の岩場を登るルートの 虜になり、通い続けている。 ・ 大菩薩と云えば人気の山で、 いつも登山者でいっぱいのイメージ。 しかしこのルートでは、 未だ嘗て登山者に逢ったことはない。 仙人だけのルート。 |
姫ノ湯沢左股から 右股へのルートは笹に覆われ藪漕ぎ この美しい谷の名を記した地図には 中々お目にかかれない。 日川の支流の姫ノ湯沢までは出ているが その先に位置するこの谷は 人目に触れることもないせいか、無名らしい。 そこで勝手に姫ノ湯沢右股、左股と命名 したのは20年前。 |
ひっそりと流れる苔生す谷 |
初めて下る未開の森 大菩薩嶺雷岩下部 人影の絶えた森は原始の美しさを湛え、ひっそりと佇む。 上部が岩場なので今まで登ったことしかなかったけど、下ってみるのも悪くはないね。 落石にさえ気を付ければ、雷岩の下降も難しくはないし、 何たってこんな静かな森に出逢えるんだから、これからは下降にもこのルートを使おうかな。 ・ ≪岩場に掛けられた鎖を撤去したので、このルートは危険です≫ そんな警告が出されて早数十年。 このルートを勝手に乗っ取り、仙人はお気に入りの散歩道にしてしまったのだ。 ・ ≪いけないんだ、いけないんだ、せんせにいってやろ!≫ せんせって仙人のことだろ?だったら、いったって駄目さ! なんぞと嘯いているのは誰だ? |
網戸よさらば! |
一番大きなテラスの網戸 |
網戸を外して 透き通った光を入れよう! さあ、透き通った 秋の光を入れよう。 |
出窓の網戸はビスで 固定してあるので外すのは ちょっと面倒。 先ずビスを緩め、開閉レバーと カーテンレールの狭い間を 通して無理な力を加えず外す。 |
名も入った仙人手製エプロン |
お気に入りエプロン大活躍 |
たわわに稔り色着いた柿とボン・シルバーもそのエプロン欲しいってさ! |
山荘も色付き始めたね! |
出窓の網戸は計21枚、 大窓は4枚。 計25枚もあると云うことは、 山荘は窓だらけ。 ・ そのいずれの窓からも 太陽が差し込むのだから、 正に山荘は光の館。 |
さあ、これが最後の一枚 |
あれ、太陽が胸から! 鉄塔峠 老い耄れて街を歩くのでさえ、やれ段差があって危ないとか、 坂道は滑るから杖を突いてとか煩いのに、 道なき未開の森を彷徨い歩いたり、岩壁を命綱無しで登ったり、言語道断、狂気の沙汰。 だいたい一文の得にもならないし、何の役に立つのですか。 ・ あー安全第一で、利潤追求だけが、金科玉条であるかの如く洗脳された 資本主義の哀れな奴隷達よ。 そうやって利潤追求の戦線から離脱した食み出し人を、 大いに嘲笑うがいいでしょう。 そしてある日、空疎な胸に響く己の嘲笑いに喟然と慄き、 あなたの胸の中からは、決してこんな風に太陽は昇らないと気づくのです。。 |
2階イオの窓に先ず光を! |
こんな太い幹が伐れるか! |
ジプレッセン(糸杉)の変身 アート制作開始! その光の館の窓に 忍び寄り出窓を覆い光を 奪う奴出現。 |
2つの幹の梢から伐ろう |
やったー! |
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そうかそうか、お前は 「こんなに大きくなったのだから 何とかしておくれ」と 訴えているんだね。 そんなら虚空夜叉にしてあげよう。 |
そら光が入ったぞ! |
あージプレッセンよ!お前の本当の正体は虚空夜叉だったのか! 寝室のテラスが煌々と月明かりに照らされ、竜舌蘭科の鋭い剣先葉が淡い影を落としている。 むっくり起き上がり、濱田節子とは何者なのか追ってみた。 ウェブサイトは元ラジオNIKKEI契約アナウンサーの浜田節子ばかりで、 「春と修羅」解析の濱田節子はブログ、フェースブックにあるだけでプロフィールが掴めない。 フェースブックは止めてしまったので、ログイン出来ないし、 ブログのプロフィールも読者会員にならないとログイン出来ない。 ・ 禁欲的な賢治に迫り、無謀にも性交を試みた濱田節子。 その結果生み出された私生児は、ひっそりと身を潜めていた。 何故今まで私生児の存在に仙人自身気付かなかったのだろうか? どうして日本のマスコミは無視に等しい沈黙を私生児に対し、とり続けたのか? 月明かりの元で、改めて「おれはひとりの修羅なのだ」との賢治の背景に想いを馳せる。 (10月26日夜明け前のメモより)
が、あの迫り方は今までの如何なる賢治研究家にも見られなかった 正に衝撃的な手法で、賢治の肉体に入り込んだとしか考えられなかったのです。 不愉快な礼を欠いた仙人の振舞いをお許しください。
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ぐははは、ばれてしまったか! |
『Zypressen』 西洋では 死・哀悼・絶望 を指し、死や喪の象徴とされる。 「ZYPRESSEN 春の一列 」 とは死者への葬列か? 心象スケッチ「春と修羅」の表題作、詩篇「春と修羅」の中に 「ZYPRESSEN」という単語が三度繰り返されている。 この「ZYPRESSEN」は、賢治が岩手で見ていたかもしれない糸杉ではなく、 紛れも無くゴッホの作品に描かれた糸杉である。 ゴッホは1890年7月に亡くなっているが、 その前年の1889年にサン・レミの療養所に移転した後、 再三に渡り糸杉を描いている。 ・ ヨーロッパでは古来死を象徴すると言われている 糸杉をゴッホは「糸杉のことで頭がいっぱいだ。 その線とプロポーションはエジプトのオベリスクのように美しい。 …そしてその緑は素晴らしい。 最も興味深い黒の色調…そして最も表現し難い黒の色調のひとつだ」 (テオ宛書簡)と述べ、 幾重にもうねりながらくねくねと天空へ伸びてゆ く独特のフォルムで画布に表現している。 ・ ゴッホにとっては糸杉が自身を象徴していたのでは ないかと評されているが、ゴッホの糸杉に、 賢治も象徴的に自身を重ね合わせ 触発されるものがあったのであろう。 (第25回例会報告-賢治とヘーゲル 伊藤 信也) |
今日からは俺が山荘守護神じゃ! |
Mental sketch modified 濱田節子 詩は一見自由奔放なスケッチに見えるが、 熟慮された構想のうえにその手段としての 心理的トリックを駆使した世界観の呈示である。 (mental sketch modified)この断りは「考え方の草案をつくるのに修正(変更)した もの」だから、 逆の作業、英語あるいは疑似語の範疇で修正して読んで下さいという暗 示だと思う。 ただし、何でも他の言葉に置き換えれば読めるというものでもない、 賢治は法華教の精 神を顕さんがためにこのような手段を用いたのである。 ・ 思えばわたし自身、長い時間を要して作品世界の扉を発見したのであって、 扉は観念 的なものではなく幾十、幾百の在るが無いといった問答のなかから彷徨を繰り返し余儀 なくされ、 それでもなお輝く志向の高さに惹かれながら、むしろ有り難くも遭遇できた という境地である。 |
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あけびのつるはくもにからまり あけびは通草。pass, grass→glass, pass は通行許可証、草は鏡の暗示。 あの世への通行許可証だろうか。 「やまひめ」ともいうから山で太陽の暗示とも。 つる→turu, true→真実。 くも→苦悶。 からまり→twist,→歪む。 【あの世への通行許可証の真実は苦悶に歪み】 |
のばらのやぶや腐植の湿地 のばら→nobara→nobel→新しい。 やぶ→grove, globe→地球。 腐植→corrosive, correlative→相関的な、 湿地→damp ground, damp→湿気、失望、落胆。 ground→地球の暗示。 【新しい地球や相関的な失意の地球】 |
いちめんのいちめんの諂曲模様 いちめんのいちめんの→つまり二つの面。 諂曲→twist, twice→二度、二回、二倍。 【二つの景色の二つの風景】 |
正午の管楽よりもしげく 琥珀のかけらがそそぐとき 正午→noonday, new die→新しい死。 管楽→the wind、 wind→風→who→誰。 より→to→too→何何も又、 しげく→frequent, free quest→自由探求。 琥珀→琥珀色した天球というのは地球のことで 、琥珀は地球の暗示。 かけら→splinter, sprit→霊、精神。 そそぐ→flow→生じる。 【新しい死の誰もが自由探求、地球の精神が生じるとき】 |
いかりのにがさまた青さ いかり→anger→angle→角。 corner→corona→コロナ。 にがさ→bitter, vital→生命力。 青さ→青はセイ→sainted→在天の、死んだ、 今は世にない。死界を暗示。 うららか→bright,clear,fine, fine→美しい、 とし子の特性というのは「若々しさ」と 「死んでしまった」という表裏の条件。 「緑青は水平線までうららかに延び」というのは 「若々しさはどこまでも美しい」 「一きれのぞく天の青」というのは 「平和が見える自由の死界」などの意味だと思う。 |
四月の気層のひかりの底を 四月→死月→死month→死の入り口。 気層→奇想→crank, ひかり→shine, sham→見せかけの、にせの、 底→the sole, sol→太陽。 【死の入り口という奇妙な考えの見せかけの太陽】 |
唾し はぎしりゆききする 唾し→spit、→(ぱらつく)小雨、小雪 (雨は支配者の暗示、雪は太陽の暗示) はぎしり→grind one's teeth, glide one's earth, (glide は水面、雪の上、空中などをすべるようにすすむ) 【小さな太陽となってどこでもすべるようにすすんでいく】 |
おれはひとりの修羅なのだ ひとり→sole,→soul→精神。 修羅→阿修羅→Asura→Earth→地球の暗示。 【わたしは地球の精神なのだ】 |
風景はなみだにゆすれ 風景→sight→見地、見解。 なみだ→tear, tear→裂く、むりに引き離す。 ゆすれ→shake, shackle→束縛、拘束。 【見解は束縛を引き離す】 |
砕ける雲の眼路をかぎり 砕ける→broken→衰弱する。 雲→cloud, crowd→群衆、人々。 眼路→medium→中間、媒体、媒介。 (眼路は見渡す限りの意) かぎり→bound→出発しようとしている。 【衰弱した(死に向かう)人々は <現世とあの世の>中間を出発しようとしている】 |
れいろうの天の海には れいろう→rainbow→虹。 (玲瓏は玉などが光って輝くさまの意) 天→ten→十→自由。 海→sea, seam→つなぎ目。 【虹の自由へのつなぎ目には】 |
聖葉ハ璃の風が行き交い 聖はセイ→sainted→在天の、死んだ、 今は世にない。死界を暗示。 ハ璃→針→needle→穴をあける。 風→who→誰か。 【死界に穴をあける誰かが行き交う】 |
心象の亡骸の移住者のところへそっと行く あの世への通行許可証の真実は苦悶に歪み 新しい地球や相関的な失意の地球 二つの景色の二つの風景 新しい死の誰もが自由探求、 地球の精神が生じるとき 死の入り口という 奇妙な考えの見せかけの太陽 小さな太陽となってどこでもすべるようにすすんでいく わたしは地球の精神なのだ 見解は束縛を引き離す 衰弱した(死に向かう)人々は <現世とあの世の>中間を 出発しようとしている 虹の自由へのつなぎ目には 死界に穴をあける誰かが行き交う ああ、悲しい光輪の周辺 |
ZYPRESSEN春のいちれつ ZYPRESSEN→糸杉→哀悼、喪の象徴。感嘆の意。 春→Halo→光輪、光冠。 いちれつ→a row, around→回り。 【ああ、悲しい光輪の周辺】 |
節子は決意したのだ。 賢治の精液を自らの子宮に導き、懐胎することによって賢治を生み出す。 自らの肉体の半分を賢治にのめり込ませた新生賢治は、 母になった節子にmental sketch modifiedを語ってくれるに違いない。 ・ 節子はこう語る。 ≪納得出来るまでには数 年、否、十年近い月日をかけている。歩いていても、 電車に乗っていても、食事のとき も賢治を考え、自ら朗読した mental sketch modifiedの録音テープを聞きながら仕 事をし、 就寝時にもそれを回すという奇妙で孤独な生活が続いた。 そしてある日、言葉 が言葉を超えて解読の手がかりを直観したのである≫ ・ その日、節子は懐胎したのですね。 精液との遭遇、その交情の瞬間を語る節子の歓びが激しく胸をうちます。 ≪それでもなお輝く志向の高さに惹かれながら、むしろ有り難くも遭遇できた ≫ |