仙人日記
 
 その1184ー2015年  長月

9月4週・・・妖精が南瓜に乗ってやって来た


妖精が南瓜に乗ってやって来た!

こんにちは
カボチャはおすそわけした後に
先生から
メールをいただいたので、
カボチャそのものを
写せなかったのですが、
今豚汁を作ったので
恵太を入れて写真撮ってみました。

今回、芋虫は
跳ねるということを知りました!!

さてそれでは採れたて野菜を送ってあげよう!
嬉しいな、さすが葉子!
その一言を
どんなに待っていたか!

南瓜の中に超元気な蛆虫が居て
ぴょんぴょん跳ねるもんだから
おっ魂消(たまげ)
≪こいつ腐ってる!≫
なんて叫んで
捨てちゃったり!




笑顔が引き攣るぜ、あの蛆虫野郎め!(あや&恵太)
折角送って貰ったんだからと嘘ついて
「大変美味しかったです」と仙人に礼状を出し
蛆虫については黙っていたり。

でもきっと誰か勇気を出して、気味悪い跳ねる蛆虫が
うじゃうじゃ居たよとの報告があるに違いないと
実は待っていたんだ。

 
山荘の南瓜で豚汁じゃ!(恵太)

そいつの名は≪南瓜果実蠅(カボチャミバエ)≫。
無農薬で栽培すると
こいつがやって来て小さくて未だ柔らかな実に
卵を産み付け、孵化した幼虫は、
実の中心部に入り種子周辺を食害するんだ。
こいつが入ってる方が美味しいと
語る食通もいるとか! 


南瓜果実蠅(カボチャミバエ)

道の駅で買ってきた無農薬カボチャを切った所、中から蛆虫のような物でピョンピョンと跳ね回りました。
台所で切ったので、足元に数十匹落ちました。
びっくりしたのと、どうしたら良いか解からず、しばし呆然としていました、
やっと我に返り箒とちりとりで、ビニール袋に入れ、捨てました、カボチャも捨ててしまいましたが、
今考えると食べられた見たいです。

近所の農家の奥さんに話したところ、たまに居るんだよ、気にする事ないよ???
と言われました。
逆に虫がいるほうが美味しいとも聞きました、今度は怖気づかずに、食べるつもりです。
でも、もう3年以上、お逢いしていません。
今度、お目にかかったら、「いらっしゃいませ」と笑って声をかけようと思ってます。#!”$”

(そば工房ゆりの木より)


南瓜果実蠅大きさ12mm

南瓜果実蠅の成虫

体を2つに折って20cmもジャンプ

体長の20倍もジャンプ

農薬を掛ければ南瓜果実蠅は南瓜の皮に卵を産めないけど、
南瓜の皮には農薬が残る。
さて卵も産めない農薬汚染された南瓜を食うか、南瓜果実蠅が喜んで卵を産む
無農薬の南瓜を、南瓜果実蠅幼虫と一緒に仲良く食べるか?
君は君自身の本質を試される、生き方を問われる難しい選択を迫られているのだ!
なーんちゃって!お前、南瓜果実蠅の回し者か?





お兄ちゃんの真似するくん(右)


やったあ~!カボチャがいっぱい、はいポーズ!

このカボチャは空に生ってたんだって

それじゃ、天空カボチャ踊りしようか!
One♪two♪♪t hree♪♪♪…♪全部でTenもあるよ!!

ばぁばのプリンが100個もできるんじゃない?

もっとできるかな?

じゃあ、かおちゃんが手伝ってあげるから

999個つくろうよ!


 
素数が大好きなくんは早速2,3,5に分けて
 
そーら出て来いぴょんぴょん虫!
 乗っかっても、
ぴょんぴょん虫さんは出てこないんだよ。

馬車にだってなんないんだよ・・

・・でも、空に生ってたカボチャなら
馬車になるかもしれないし

ん~、どうしたら
ぴょんぴょん虫に会えるんだろう?

(兄ちゃんは弟の期待に
こたえなければならないんだ)

仙人おじさん、
次は虫さんのいるカボチャをおくってください

それから馬車の呪文をおしえてください

おねがいします。


“Salagadoola mechicka boola bibbidi-bobbidi-boo!”
さらがどぅーら、めちかぶーら、びびでばびでぶー!

そうだ、間違いない、この南瓜だ!
そう云ってお兄ちゃんがその南瓜を右手で押さえると、透かさず光くんは右足でしっかり南瓜を踏んづけました。
光くんが微笑みながら口ずさむのは、あの馬車の呪文。
「せねかでゅーら、めちかでゅーら、びびでばびでぶー!おまじないはいつでもびびでばびでぶー!」
あれこのおまじない、ちょっとシンデレラと違うね。
飛んでくる間に重力レンズで歪んだかな。

ふふん、薫くんは今、大好きな13と17の素数の声がこの南瓜の中から響いて来るのをキャッチしたね。
そいつを独り占めにして、自然淘汰に打ち勝つ素数を手に入れ、
永劫の命を操ろうと企んでも、そうはいかないよ。
なにしろ僕は、お兄ちゃんがでんぐり返しをしたって届かないとおい遠いめるせんぬ素数 257885161 − 1から
光になって飛んで来たんだから、素数については何もかも知り尽くしているんだ。

 

あーこの数字はね2×2×2・・・を5788万5161回やって、1を引いた数だよ。
何々未だどのくらい遠いか解らないって!一、十、百、千、万・・・・・と1742万5170桁まで続く世界さ。
その素数はね、現代の人間の叡智を総て集めて、やっと2013年1月25日に捕まえられたんだ。
その瞬間に僕は生まれたんだよ。だからぼくは今2歳と8か月。
太陽系での戸籍は2013年8月28日になっていて7か月も遅れているじゃないかって!

解ってないな!あのね、凄ーく遠いんだから、めるせんぬ素数からやって来るには時間がかかるんだ。
本当は光の速さで飛んできても7か月では、着かないんだけど、
ほら、真面目に飛んでると飽きちゃうから時々宇宙にトンネル掘って、近道してさ。
面白いんだよ。トンネルを抜ける度に、星の流れが逆になったり、星雲の描く風景が全く異なったり、
重力レンズの奴が空間をひん曲げて、変梃りんな演奏会を開いたり。



寒太郎が来る前にいっぱい食べなくちゃ冬が越せないぜ!とお喋り女郎蜘蛛
「さて、素数の大好きな薫くん。
未だ5歳だけど
掛け算も出来るんだって!
それじゃ今から112年前の
1903年10月の
掛け算のお話しをしてあげよう」
あれあれ、お喋り女郎蜘蛛が
しゃしゃり出て、知ったか振りして
煩いね。でも聴いてやっか!

「数学者の集まる米国数学会でね、
小学生のやる掛け算をやって、
その余りの凄さに1時間も
学者たちは沈黙し
やがて正解と解り凄ーい拍手。
その掛け算とは
     193707721
× )761838257287
147,573,952,589,676,412,927

単位を着けると
1垓47,57京3,952兆,589,6億76,41万2,927
とまあ、とんでもない数」
「おふざけはその辺にしとき。
続きはあたしに任せな」
とまたまた知ったか蝦蟇が登場。

「その計算をしたのは
米国の数学者で当時42歳の
フランク・ネルソン・コール。
この計算を完成するまで、
毎週日曜日に計算し3年かかったとか。
39歳で始めて3年間もだぜ。

池から出て来た知ったか蝦蟇寒びーぜ!そろそろ森の中に穴掘って眠るか!


 
美味しい秋胡瓜収穫
そう、問題はこの計算が何を
意味するのかさ!
実はこの数、M67と呼ばれる
めるせんぬ数なんだ。
つまり M67 = 267 − 1は、2を
67回掛けて1を引いた数。
 
ほうれん草播種後石灰を
  こいつが素数でないことは
数学学会の開かれた27年前の
1876年にエドゥアール・リュカ
によって証明だけはされていたんだ。
しかし何と何を掛け合わせたら
M67になるのか?

世界の数学者がこの簡単な掛け算に
熱狂し
27年間も掛ったと云う訳さ」

セラーで醸造中の今年のワイン

「アメリカ数学会(AMS)と云えば、
泣く子も黙る
最先端頭脳の集積。

えっ黙んないって!
それじゃこれでどうだ!
AMSは組版処理ソフトウェア TeX
主唱者であり、
AmS-TeX や AmS-LaTeX の開発を支援≫


里芋、人参も収穫目前

これだけで黙るだろ!
駄目だって、ほんじゃ更に追加。
TeX はマークアップ言語処理系であり、
チューリング完全性を備えた関数型言語でもある。


その凄い数学の学会AMSが、
小学生がやる掛け算を
真面にやったんだぜ!
笑えるだろ。

やっと発芽し成長した白菜


さて、素数の大好きなお兄ちゃん。
お兄ちゃんは2から始まって97で終わる100までの素数は、25個全部覚えてるよね。
n(natural number)を自然数とすると
n2進法で表す10、100、1000・・・・となるのは解るかな?
ほら昨年の11月に宇宙も生命も時間も2進法なんだよと、お話ししたの覚えてない?
忘れたって!それじゃ、もう一度。
あのね、n=1だと2=2だから、2×+2×になるだろ、だから10さ。
でもってn=2だと2=4だから、2×+2×+2×になって100

「なんだかデジタルコンピュータの扱うデータの最小単位のビットと同じような気がするけど。
ビットは英語の binary digit (2進数字)の略だから、そうかやっぱ、これってコンピューターと関係ありありだ」
とお兄ちゃんの薫くんは目がキラキラ。

「次にその数から1を引いてごらんよ。
つまりn=1だと2=2、この2から1を引くと1、これは2進法でも2になる。
n=2だと2=4、1を引いて3、3=2×+2×だから11

 

そうそうその調子でいくと、1を引いた数は1、11、111、1111・・・となるとわかるだろう。
この2n − 1をMnと表してメルセンヌ数と呼ぶんだ。
その中で素数で在るものをメルセンヌ素数と名付け、現在48個見つかっていて、その48個目がM57885161。
2n − 1のn=57885161が素数であると見つかった日、2年前の2013年1月25日が
光くん、つまりぼくの誕生日なのさ」

突然やって来たこの小さな弟が、実は大好きな素数からの贈り物だと、賢いお兄ちゃんが気づくのは
いつの事でしょうね。
つい先日までママの年齢が20歳だとママの言葉を信じていたんですから、まだまだ当分は、
「変だなこの弟、なんでこんなこと知ってるのかな?」なんて時々思うだけかな。
光くんの正体が実は素数そのものであると知った瞬間、薫くんはきっと新たな旅に出るんだね!




スタインベックの≪怒りの葡萄≫じゃ!

遅すぎた収穫に怒り勝手にワイン化する葡萄
もう待てません!9月23日(水)晴 前庭石卓

こりゃ酷いね!
《今、枝から捥いだばかりの採りたて葡萄だよ》と云ったって誰も信用せんよね。
葡萄と云うよりか、これもはや葡萄の残骸、屑、ゴミだよ。
匂いを嗅いでごらんよ、もう醗酵し始めて天然ワインになりつつあるぜ!
仙人のぶつくさ云うのを聴いて葡萄め、怒髪天を衝くが如くに怒りに怒って叫ぶでは!

「いいかい、毎日まいにち葡萄畑に来る度に、あたしゃ早く収穫しておくれと言い続けてきたんだよ。
隣の畑の巨峰なんぞを冷蔵庫に入りきらぬほど沢山貰って、
美味しい葡萄を毎日食べ放題。
あたしのようなワイン用の葡萄なんか目に入らぬ気分だろうけど、1年もかけて
やっとここまで熟したあたしを、どうしてくれるんだい?
そんな老い耄れ顔を曝して、
老い耄れて収穫を忘れたなんて言い訳が、通用すると思ったら大間違いだよ!」


過熟し怒るアルモノワール(Harmo Noir)

母親はフランスの東にあるオーストリア出身の
ツバイゲルトレーベ(Zweigelt Rebe)。
忍耐強く、寒さ耐病性に優れ
早熟で子だくさん、つまり早くから妊娠し
量産すると云うこと。

でもってこの両親から1988年に生まれた
アルモノワールは
色濃くフルーティーでタンニック、酒質は非常に優れ
その上栽培容易と、云うことなし。
(参照:植原葡萄研究所冊子)
この怒り狂っているお姉さん・アルモノワール、
実は中々の出自。
お父さんは全世界で栽培されている最も有名な
カベルネソービニヨン(Cabernet Sauvignon)で
フランス・ボルドーの
赤ワインと云えばカベルネ。
豊かなタンニンと濃厚な色素、香味成分が特徴。

甲斐ブラン(Kai Blanc)は食べ頃 



仕込み後のワインをセラーに入れるには、昨年のワインを整理しなくてはとセラーを覗いたら、
ありゃ!棚として使っているカラーボックスが腐食し、崩れワインが落下しているでは。
が、棚を直す前に開かなくなってしまったセラーのドアを開けなければ。
先ずドア前の蔓延った芝、雑草と盛り上がった土を取り除き、ドアサッシに食い込んだ土を除去。

それ程セラーへの不在が長きに亘っていたとは驚き!
そう云えば昨年のワインも1カ月ほどは呑み続けていたが、
いつの間にかワインからビアに戻り、すっかりセラーに顔を出さなくなっていた。
重いワインプレス機を倉庫から運び出し、石卓に載せ樽や柄杓、タオル等をセットし、葡萄を潰しワインプレスの籠に入れ絞る。
唯これだけの作業で半日かかってしまい、
セラーに1次仕込みのワインを運び込むと、最早1日が終わってしまったような気分。



鍵盤上の秋桜

栗も稔りました
山荘のパテシエ

ええーとPieceは
1片とか、かけらだから
きっとケーキの1片だな。
Monteeは登る、だけれど
名詞だと山のことだから
直訳すると
《山のケーキだ!》

モンブラン(La Piece montee)


「ラ ピエスモンテ」
大きな夢いっぱいのケーキ
という想いをのせて名付けました。

ミロワール(La Piece montee)
畑にいっぱいの秋桜が咲いて
柿の実が色づいて
栗の実がポトンと落ちて来て
山荘に秋がやって来たもんだから
パテシエの奴慌てて
栗の実でモンブラン作ったり、
シフォンケーキをチョコで
包んで
ミロワールを作ったりして!

柿だって色付いたよ

床上の秋桜


ようこそ!森のワイナリーへ
小さな小さな葡萄酒醸造所  9月24日(木)晴 前庭石卓

さあお待ちどうさん、今年も葡萄絞りの季節がやってきましたよ。
紅葡萄のアルモノワールは殆どが熟し過ぎて、最早ワインの仕込みは出来ませんが、
フランスの高級ワイン用として名を馳せたピノーブラン(Pinot Blanc)と甲州葡萄から
生まれた白葡萄の甲斐ブラン(Kai Blanc)はたっぷり収穫できました。
さて今年のワインは、どんな味になるかな?



酵母を活性化させて
あれ、このワイン酵母・
バイオファーム
使用期限が2012年9月だぞ。
未だ生きているかな?
確かめるには
20~30℃の水100ccに
砂糖を10g入れて
ラップし1時間も置いておけば解る。
ほら泡立ってきた。
つまり未だ生きているんだ。

葡萄をよく潰して

潰した葡萄の良い香り

それではプレス機に入れて

プレス機の蓋を閉めて
絹糸のような
細く煌めく小さな流れが
観えるだろうか?
糸は暫く大地に引かれ、
唐突に切断され
真珠の粒となって落下する。

その最初の一滴が
白い樽の底で跳ね返り
樽を共鳴させ
秋の到来を静かに呟く。

余りにも(かそけ)し真珠の呟きを
聴き取ることが
出来るのは誰かな?

最初の一滴が落ちる瞬間がいいね!
あのね、それって
究極の音楽は
絶対的な静寂であるなんて
訳の解んない
禅問答とおんなじじゃない!

そんなの聴こえる方が
おかしいし
そんなのまで聴こえたら
この世は煩くて
生きていけないじゃん!

そうなんだよ。
その通りさ、そんでもって
その病んだ精神を引きずって
森に埴生の小屋を建て
週末だけ仙人になったつもりで
此処に通っているのさ。



ぐいっとハンドルを回すとが流れ落ちる

親鳥の気配を感じると
巣に犇めいて大口を開けて、
ありったけの声を振り絞って喚く雛になった
丸太椅子の煩いこと。
ワインプレス機から溢れる葡萄液を
餌にしている丸太椅子には、
プレス機の動きは母鳥の気配なのかな。
 「ふふん、病んだ精神だなんて
(へりくだ)った素振りを見せても駄目さ!
ちゃーんと御見通しさ」
と、さも解ったような口ぶりで囀るのは、
石卓の下で親鳥からの
餌を待ち受けている雛のような丸太椅子。

 
丸太椅子が口をけて葡萄液を待っている


ジョンはを垂らして、もう待ちきれねーぜ!

ぐいっとハンドルを回し、葡萄液が勢いを増し落下すると丸太共の歓声が上がる。
「堪らんね、この匂い!跳ね返って零れ落ちるその一滴が、じんわりと年輪に染み込むと時が蘇り精が漲り、
来年の秋まで生きていけると思えるから、実に大したもんさ」

そうだったのか!森の木のように芽吹き、葉を繁らせ花を咲かせ紅葉し落葉することもなく、
生命を奪われて丸太椅子となって朽ち果てるだけが、君たちの
未来の総てになってしまっていたんだ。
でも1年に1度だけ過去の記憶に注がれる葡萄液が、時を蘇らせてくれるんだね。
で、その朽ち果てるだけが未来の総てになった君達は
一体、仙人の何を御見通しなんだい?




白鬼茸誕生
山のケーキ屋さんです




大きな唐笠茸と携帯

笠の開くに連れて溢れる衣
どうです、
この旨そうなケーキ!
おフランスのケーキと云えば
La Piece monteeなんちゃってるけど、
まーこの森のケーキと
較べたら月とスッポンだね。

文句ある?
文句あんならこの真っ白な
生クリームを指で
ちょっと掬って食べてごらんよ!
どうだ、参ったか!
おいおい、目を白黒させて
どうしたんだ!
何だって、目がぐるぐる回って
心の臓が早鐘の如く
激しく轟き出したって!

そうだろ、そうだろ
そんなにも旨いと云うことだ!
勝負は着いたな!

滴る生クリーム

美味しそうだけど毒性不明




靴下は血に染まり
9月26日(土)曇 轆轤室ドア

「やっちまった!」  
それでは次に西畑に移って、そうそう序に石段の雑草取りと剪定をしなくちゃと、
剪定鋏とラジオを持って轆轤室から出ようとドアを開けた瞬間、激痛が左脚の踵に走った。
1秒後激痛は耐えられぬ激しさで迫り、その後徐々に引いたが、かなりの持続する痛みが残った。
傷口を視るのが怖いが確かめない訳にはいかない。
靴を脱ぐと既に靴下は血に染まり始め、血潮はぐんぐん広がっている。

閉めつつあったドアの下で左足を持ち上げ、ドアの角にアキレス腱をぶっつけたのだ。
ぶっつけた瞬間、勢いは止まらずそのまま足を上げたので、
アキレス腱から踵にかけてギザギザに切り裂かれてしまった。
鋭利な刃物ではなく直角のドア角で切り裂いたのでギザギザな切り口になってしまった。

 


紫蘇花に茶斑挵蝶(チャマダラセセリ)

冷たい風に戦ぐ野菊

鷹の爪もすっかり赤く



そのまま凶器に吸い込まれ

何故また左足なのかとの疑問が先行し、ドジな行為をそっちのけにして暫し傷口を見つめるのみ。
ドア開閉の度に気を付けてはいたのだが・・・。
このアルミサッシで出来たドアは、ちょっとしたミスで充分な凶器になり得る。
ドアに挟めば手指の切断も考えられるし、開閉時の勢いで足を切り裂くこともあるだろう。
しかし自らが歩むために持ち上げた足が、そのまま凶器に吸い込まれるようにして、
切り裂かれるとは正に想定外であった。

ドジを踏んだ報いは当然払わねばならない。
傷口をキズドライで消毒し差し当たり、リンデロンvgを塗ってガーゼを当てて固定したが、
考えてみると、リンデロンvgは、細菌をおさえる抗生物質の“ゲンタマイシン”が配合されてはいるが、
虫刺されやかゆみ止めの薬では!まっいいか!


秋桜に抱かれた想いを胸に山荘は長い冬を迎える



これぞまさしくサバイバルの原点じゃ!

でもって出血してから未だ30分も経っていないが、ドジの罰として扇山に向かった。
アキレス腱から踵に掛けての傷口なので、登り坂では当然体重が傷口に掛かり出血は酷くなるだろうが、
2度と同じドジを踏まぬ様、肉体と脳に教訓としてこの痛みを刻み込まねばならぬ。・・・
とここまでくると如何に仙人は狂っているかがバレてしまうな。
しかしこれが山中で起きた事故ならば、歩き続けなばならないのだから、そんなに異常でも無いか!
これぞまさしくサバイバルの原点じゃ!


ドアに切り裂かれた踵
果てしなき ドジ惚け
負傷後の山登りで更に出血

と、一応勇ましく吼えてはみたものの、畑や山の土には当然のことながら元気もりもりの病原菌がうじゃうじゃ。
吼え声なんぞ、病原菌にはなんの威喝にもなりはしない。
山荘に戻るや否や即、血だらけガーゼを替え、
今度は刺し傷にも効くことを確かめアロ軟膏を塗って一件落着。
やれやれ、ジャンダルム、槍ヶ岳から南岳と、遂には山荘で、どうしてこう、左脚ばかりば受難に逢うのかね?




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