仙人日記
 
 その1162ー2015年  文月

7月2週・・・2台の殺人兵器を操りオールド・テロリストになった仙人

あがる!
7月10日(金)曇 テラスから


ゆっくら、ゆっくら
雲海が
山荘を目指して昇ってくる。
大仕事を終え
満ち足りた表情を湛えた雲達。

ほら下界の森や木々が
大喜びして
満面に緑の微笑みを浮かべ
感謝しているよ。

年間日照時間ランキング
1 山梨県 2,358時間 100%100% 72.8 S
2 静岡県 2,269時間 96%96% 68.1 A
3 埼玉県 2,255時間 96%96% 67.3 A
【出典】年間日照時間:2012年

山荘降雨量は1年間に1004ミリ、
屋久島では4477ミリ。つまり山荘では
屋久島の4分の1以下しか
降らないと云うわけだ。
山梨県の格付はS、その中で更に山荘は
Special なのでSSじゃ!

雨でが出たかな!
7月10日(金)曇 テラスから


何しろ此処は雨が降らないんだ。
山梨県は年間日照時間2,358時間で
日本一。
その山梨県の中で
雨量が一番少ないのが甲州市。
つまり山荘周辺は
日本で一番雨の少ない砂漠じゃ!

まーそれだから桃や葡萄が
豊かに実り
甘さも日本一と云う訳さ。

此処に3日間も続けて雨を
降らせたんだから
この雲海は
実に大したもんさ!


  山荘の東壁に設置された
屋外温度計は昨日44℃を記録。
東壁は日陰ではないので
大気温にはならないが、
気象台発表では甲州市の
本日の最高気温は34℃だとか。

そこで畑作業は
夕刻までお預けにして、
バイクに跨り颯爽と上条山へ。

 最初は小倉山を水晶峠から
登ろうかとバイクを走らせたが、
水晶峠ルートは登山道が
無いのでこの時期に入ると、
藪漕ぎとなり蝮にやられる懼れあり。

そこで涼しい上条の森から
上条山の稜線歩きを愉しもうと、
水晶峠登山口から上条林道へと
ゆっくりツーリング。


黄金山鳥(コガネヤマドリ) 
 上条山へ!
7月11日(土)晴 上条の森


竹森川を挟んで扇山の裾森に
ひっそり佇む山荘を観ながらの
ツーリングは初めて。
いつもはテラスから
逆に眺めている小倉山麓の小道。

この小道から観る山荘が、
森の憂鬱を総て呑み込み、
すっかり森に成りきって、
ひっそり佇むさまに心打たれる。
お前はそんな風にして
森と生きて来たのかと、
言葉を掛けてやりたくなった。

通い慣れた上条の森は
先週降り続いた雨で、
草が生い茂り
まるで見知らぬ森に変貌。
茸の写真を撮っているうちに、
何だか覚えのない急斜面に出てしまい、
そのまま詰めたら
道なき稜線に出てしまった。

「あれ、上条峠が消えてしまった!」
 焦って太陽を観て現在位置を
確認しようとしたが、
森が深くて太陽が観えない。
稜線を下り始めた処で、
僅かに鉄塔山からの送電線が観え、
このまま下ると、
上条山には出られずと判明。

元に戻る途中で登山道発見。
熊よけ笛を忘れたので、
山の歌を歌って、
熊との遭遇を避けながら、のんびりと
上条山の頂を目指し稜線逍遥。
あーこんな山歩きが
出来るなんて嬉しいな!


 三井紅山茸(ミイノベニヤマタケ)?

脳茸(ノウタケ)

山鳥茸(ヤマドリタケ) 
 
汗をかいている栂猿の腰掛(ツガサルノコシカケ)

毒紅茸(ドクベニタケ) 

硫黄箒茸(イオウホウキタケ)  


勿体無いけど果しなくちゃ!
7月11日(土)晴 葡萄畑  撮影:村上映子

実に美しい!
最初は何処か遠くで微かに聴こえたような、幻聴だったような感じだったが、
やがて山荘を包むように大きなオーケストラのような響き。
うっとりと聞き惚れてしまった。ここ連日雨模様で寒くて羽化した蜩も演奏チャンスを失っていたのだろう。
一気に堰を切ったように満を持して、高らかに啼き出したのだ。

今年は真面目に葡萄の摘果を実行。
もう既にかなり立派な実を着けているので、摘果には遅すぎるのだが、
ここで摘果しなければ、
今年もまた房が大きく育たないことは明明白白。


どれも美味しそう

悩むなー
「ホテルローヤル」の桜木志乃は、
思わぬめっけもん。
原田康子の「挽歌」で
文学に目覚め、
原田康子も所属した文芸誌
「北海文学」の同人として活動。

北海道釧路で暮らし、
地元の背景に塗り込められた性を
それなりの説得力を持っ
て描いている。

読みながら「挽歌」を連想したのは
中学生にして「挽歌」によって
文学に目覚めた桜木の
心象風景の為せる業だったのか
と妙に納得。

15歳のときに
父親が釧路町に
「ホテルローヤル」
という
ラブホテルを開業し、
部屋の掃除などで
家業を手伝って
いたという経験が

死刑執行人の執拗な目が次なる獲物を見定める
性愛への冷めた
視点を形成したという。
デビュー作
「氷平線
絶賛されているとか。
よし暫く桜木志乃を
読み進めてみよう。

そんなことをつらつら思いながら
死刑執行人となって
未だうら若き葡萄の実を
ちょん切る。

より豊かな稔りを願って
さて次に死刑を執行するのはどれか?
誰にとっての豊かな稔りなのか、
考えてはいけない。
唯ひたすらに死刑を執行せよ!


近接の実は落とさねば!

籠に捨てられた葡萄



2015年6月30日第一刷発行(文芸春秋)
新刊ほやほや11日前の発売

村上龍です。
文藝春秋の連載原稿・今月締め切り分を
書き終えました。

(ぼくの隣は宮脇氏です)

添付は、「海洋堂」という、模型というか、
世界に誇るフィギアを制作販売する
会社の社長である宮脇氏が所有する、
旧ドイツ軍の「88ミリ対戦車砲」です。

なぜこんな写真を添付するかというと、
『オールド・テロリスト』というタイトルの、
文藝春秋の小説に
この対戦車砲が登場するからです。

どんな感じで登場するかは、すみません、
秘密です。
秘密と言っても、
連載を読んでいる人は知ってるわけですけど...。

 
次は芝刈だが、芝刈り機より刈払い機で! 7月12日(日)晴 奥庭
何とこの刈払機で
首をちょん切る2番目の

テロ
が実行されるのだ
 

ここ数日嵌っているのが
「オールド・テロリスト」。
まー相変わらずの村上龍お得意の
暴力と破壊が語られるのだ。

閉塞状況にある老人、アパシーな若者、
アメーバのように独立して
分散するアル・カイーダ組織、
旧ドイツ軍の88ミリ対戦車砲を、
旧満州から分解して密かに持ち込み、
原発に撃ち込み
日本壊滅を企てる光石。

それらを俎上に載せ、
今、静かなる怒りを湛えて
オールド・テロリストによる
テロが始まった。

休日の平和な商店街で

刈払機
による残忍なテロ発生


標的のトップはNHK、
ガソリンに燐を混ぜた液体を流し放火、
次に刈払機による首切りを
大田区池上柳橋商店街で、
更に毒ガス・イペリットによる大量殺人を
新宿ミラノ座で・・・。

アル・カイーダ組織論にしても、
原発の実態資料調べも、
洞察も徹底している。
特に旧ドイツ軍の88ミリ対戦車砲など、
実際に所有者である「海洋堂」の
宮脇修一社長を訪ね
見せてもらっている等、
手を抜かぬ取材、背景調査には
ぶっ魂消る。

如何にも龍好みの
途轍もない変な超美脚カツラギが又、
しっちゃかめちゃ化に面白い。
幼年期に預けられた叔父ナガタに
小学4年生からアナルセックスされ続け
精神異常をきたし、
犬になって売春していたらしいカツラギ。


今年は芝の生えもいぜ!



鹿威しから芝生へ

突然溢れ出した水に吃驚
ナガタはアナルセックスの償いに
左腕を落とされるが、
この男をユリちゃんことカツラギは
呼び出し、
「オールド・テロリスト」の黒幕に迫る。

563ページもの長編だが、
僅か3日で読み終わってしまいそう。 

おりゃ黒で装甲した厳めしい
88ミリ対戦車砲が
お出ましじゃ!
敵は鹿威しから奥庭の芝生に
流される疎水か。

かんかん日照りで
干からびた芝にとっては
命の水だが
胡麻斑髪切り虫には生活圏の侵害。

慌てふためき
氾濫する疎水に突っ込み
標的は何処じゃ?
と叫ぶ88ミリ対戦車砲は
滑稽そのもの。
観てしまったぜ龍の正体!

焦る胡麻斑髪切り虫

芝生自動散水これ実にいいアイディア


危うし仙人
危険
まりない
樹上の伐採

7月12日(日)晴 ゲート

 「二人はあんまり心を痛めたために、
顔がまるでくしゃくしゃの
紙屑かみくずのようになり、
お互にその顔を見合せ、
ぶるぶるふるえ、
声もなく泣きました」 

顔がまるでくしゃくしゃの紙屑に
なってしまったに違いない。
そう思わざるを得ない程
へとへとになって、
ゲート脇の伐採を終えた。

気にはなっていたが
手を付けられなかった、
林檎畑のアスパラの救出作戦を終え、
更に酷く雑草が蔓延り
立ち入るのさえ憚れる、
葡萄畑の南柵側の雑草取りを行い、
さてそれでは全身の筋肉を(ほぐ)す為に
夕刻散歩に扇山へと。

登山靴に履き替えストックを翳し、
ゲートを出ようとした途端、
「何かを忘れてはいませんか?」
と呼びかける声。



キウイを襲う雑木
そうだった、
このゲート南側の樹木が
キウイに覆いかぶさり、
以前から
「これじゃ美味しいキウイの実を
着けることは出来ませんよ」と
キウイに嘆かれていたのだ。

急な崖で伐採は難しい

さて無視して
夕刻登山に出かけるか、
はたまたキウイの長年の
嘆願に耳を貸し、
登山を断念し
伐採を実行するか? 

考えるまでも無い。
やらねばならぬと答えは
解っているのだ。

しおしおと倉庫に引き返し、
チェーンソウと
保護ゴーグルを出し
伐採準備完了。
こいつ急斜面の崖っぷちに
生えているので、
伐採するにはかなり
アクロバティックな
作業となる。

危険なバランス伐採 
落ちぬ様足を踏ん張り、
重くて危険極まりない
チェーンソウを操作する
位置を確かめ、
チェーンが食い込まぬ様
イメージトレーニングを繰り返し、
一気に伐り込み、
数本太い幹を伐り落す。
 ・
その後、互いに絡み合い
崖下に落ちた枝を
引き上げるのは、
恐ろしいまでの力仕事。
引き上げてからが又大変!

枝を伐って
運び易いようにして、
森の奥へ捨てに行くのだが
重労働であることは
言うまでもない。

山荘野菜と陶器のオンパレードじゃ!

な、訳で作業が終わった時には疲労困憊の極値にあり、
顔がまるでくしゃくしゃの紙屑になってしまったのだ。

その後太陽風呂に入り、山荘野菜と鰈、ラムを調理し、よく冷やした山荘ビアで今日の充実した仕事に乾杯!
でもって何か面白い映画でも観ようかとTVのスイッチを入れたが、
ものの数分もしないうちにバタンキュウ! 
8時にはベッドでスヤスヤ。 

刃が食い込んで動かない
  今朝、蜩の物哀しくも美しく
澄んだ音色に
起こされたのが、4時だから
8時間も寝たことになる。
健康優良児じゃ!

さてこれから目白に持って帰る
野菜を摘まねば。
茄子、ピーマン、胡瓜、トマト、レタス、
大根、蕪、モロッコ、玉葱、
じゃが芋、総て汗の結晶じゃ!

やべーこちらに倒れるぜ!




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