《D》 ロタ島・ジョッグ&さいくりんぐ



海の藍に染まる 朝のジョック ホテル前のビーチ 4月2日(火)

日の出直前の浜も気分良し 東港のビーチ

とても朝が待ち遠しい。
海があまりにも美しくて、その海に抱かれるようにしてジョッグ出来るなんて考えただけでワクワクしてしまうのだ。
果てしなく碧い海に 夜明けと共に忍び寄るアポロンの光。
如何なる彩にも決して染まらぬ碧が僅かに朱を帯び、アポロンにひれ伏すその瞬間
ロタホールのパンテオンはデルフォイの神殿と化し、アポロンの神託が高らかに鳴り響く。
その神託を聴く為にロタホールのパンテオンにあなたはやってきたんだよ,と朱を帯びた海の碧が囁く。
碧の囁きを確かめる為にも神託の鳴り響くパンテオンに行かねば。




ソンソン展望台の十字架 
 
ソンソン展望 


太平洋を望む街の中心展望台から

フィリピン海を臨む西港 展望台から



1本目のダイブからロタホールへ潜れるとのことで期待が膨らむ。
ダイブショップはホテルから歩いて3分の距離にあるが、初日だけはピックアップの車がやってきて器材ともども運んでくれる。
ブリーフィングの後、車に再び乗って西港へ。海面が荒れているため、ショップに近い東港からの出航が出来ないそうだ。
と言っても車なら
5分ほどで西港へ到着。船が停留している港はエメラルドグリーンに澄んだ水面である。
船に乗って港の外に出るとみたことも無いほどに濃いブルーの海面が何処までも広がっている。
地元でウエディングケーキマウンテンと呼ばれている半島の先にロタホールはある。





人攫いじゃ無いってば!
洞窟管理人の子供と

未だ生まれて間もない赤ちゃん。
怖ーいサングラスの
人攫いから逃れようと必死に泣き叫ぶ。
お母さんが出てきてあやすと
にっこり!
「ジェス・ボーシナスって云うの、女の子よ。
スペルはJess Baucinas よ」

観光客なんて来ないもん!

苔生す洞窟入り口

堆積された珊瑚から成る石灰岩に穿たれた洞窟
であることは一目でわかる。
しかし珊瑚の堆積だけでは島は出来ない。
どうもプレートの沈み込み帯で噴火して出来る安山岩を
基盤にして珊瑚が堆積し隆起したらしい。

入り口から奥に進むと天井にぽっかり穴が開き
光が差し込む構造は
海中のロタホールと同じで洞窟散歩は何だか
ダイビングしているような気分。
陸のロタホール・神威洞窟
4月1日(月)晴 トンガ洞窟

 
奥は深いが天井から光が




天井には大きな穴が

穴の外は森に続く

巨大石筍に登れないか?

巨大石筍の廻廊
如何に規模の大きな穴か
村上と比べてみると一目瞭然。
正に壮大な大伽藍。
石筍にしても天井と床を結ぶ
大きな物は直径数bにも及ぶ。

洞窟は島の中心街にあり
我々のホテルからも軽いジョックで
数分の位置に在るが
全く人影は無い。
島滞在中にも観光客は絶えて無く
何処もかしこも
シーンと静まり返っている。

この朝の散歩も洞窟の
管理人家族に会わなければ
廃墟と化した無人島にでも居るような
錯覚すら起こしそう。

気に入ったぜこの島!

石筍の下に佇む

2つに分かれた穴 海のロタホールのように

石筍シルエットが歯のように



1本目だからということで、ロープのある場所から入る。
最近とみに1本目の潜水は慎重にしないと耳抜きが上手くいかないので、ロープがあると安心だ。

ガイドの和地氏の後に着いて海底洞窟への入り口を潜る。内部はかなり広く海面から光が差し込むようだ。
雲の流れが速かったが、太陽の光が雲に遮られているらしく柔らかな光が入ってはいるが、何か物足りなさが残る。
一緒に潜ったダイバーの年配女性が、昨日はもっと光がたくさんなのに残念だったと言っていた。彼女は今日が最後で明日には帰るとのこと。
一人旅のダイバーで、ロタホールは毎年一度は来ているというのだから、よくよく惚れ込んでいるのだろう。




てられた複写機?
ロタ島の圧政史

1672年から断続的に
スペイン・チャモロ戦争が起こり
スペイン人が武力鎮圧する。
一部はロタの山中(アラグアン・ベイ)に逃れ
残りはグアムに強制移住させられ、
グアム島を除きマリアナ諸島は
一時期ほとんど無人状態になった。
もともと
40,000人程いたチャモロ人が
100年ほどで約
1,500人まで減少し、
250年程スペインによる
圧政の時代をすごす。

スーパーも閉鎖

ベニヤでわれたカラオケ店
廃墟の街

海が美しすぎて魚が棲まない。
従って漁業は発達しない。
珊瑚の隆起した島は
やたらゴツゴツしていて農業にも
適さず島には畑と思しき
風景は何処にも見当たらず。

1935年12月には日本の製糖工場が
出来たけど砂糖黍の収穫も
うまくいかず、三年余りで
操業停止してしまったらしい。
当時の機関車が錆付いて
ボロボロになって捨てられている。

で、観光地として売り出してみたが
どうやら失敗。
街は空き家と廃墟、巨大ゴミ捨て場が
目立ち働く場が無い。
となると一体島民はどうやって
生きていくのだろうか?

「米国の自治領だから
米国の生活保護を受けている人が
多いいんですよ」 

ビルにも住む人無し

車や建築資材の捨て

ありゃ!此処にも捨てられたゴミ
 
ち果てた78年前の機関車

パスポート事務所も閉鎖 

れた日本製糖工場跡 



2日目は午前の2本目にロタホールを目指したが、実は直前までスコールに襲われ、ぎりぎりまで待機して、
雲の切れた隙を狙ってホールの前で潜行した。
ホールの中で待つことしばし、ふっと頭上の水面が揺らぎ瞬間光のベールが広がった。
慌てて捕まえようとしたら、一瞬でまたその光のベールは融けて消えてしまう。
もう一度現れて欲しいと祈ると、またふっと揺らぎが起こり白い光の束が解ける。
それは何とも幻想的で華麗な瞬間である。
光が洞窟の底まで届くと、ちょうどそこには大きな岩があり、
まるで海底に舞台が出没したかのようにまあるいスッポトライトが大岩を浮かび上がらせる。

天に意思があるごとく、白く透明な光のベールは緩やかに広がり、波打ちながらきらめきを放ち、現れたり姿を消したりで、見る者は翻弄される。
翻弄されながらも海中の素晴らしい光のドラマにすっかり虜にさせられた。




トンガ洞窟前の花

さてどっちへ行こう!

トンガ洞窟前の花

腕に刺青マラチタ君 

ロタ動物園があるぞ! 

先ず椰子の実で歓迎 
人影の絶えた廃墟の街の
動物園が開いているとはとても
思えなかった。
が、覗いてみたら右腕に刺青を入れた
マラチタ君が大歓迎。

客がこの動物園を訪れるなんて
何日ぶりなのだろう。
その驚きと嬉しさを満面に湛え
マラチタ君、張り切って
先ずは採れたて椰子の実をご馳走。

大きなフルーツ蝙蝠 
「これ実はフルーツ蝙蝠の大好物で
毎日切って食べさせるんだけど
どう、美味しいでしょう?」

パプア・ニューギニアのマダンで
街路樹に無数に群れる蝙蝠に圧倒。
このフルーツ蝙蝠を何とか
カメラに収めようと彼方此方
駆けめぐったがどうしても撮れない。

木の高い処に止まっているので
バックが明るい空になってしまい
それでなくても黒い蝙蝠は
唯黒い影としか撮れず。

ちゃん蝙蝠 
何とかこの大きなフルーツ蝙蝠の
表情が撮れないかと
村人に尋ねまわったが徒労であった。
こんな近くでお目に掛れるとは
全く想定外の歓び。

あれ、この眼、この表情
何処かで観た覚えがあるぞ!
そうだ、ボホール島で見た
体重100g程の世界最小の小型霊長類
ターシャだ。
中に入って撮ってもいいかなと尋ねたら
マラチタ君、どうぞと
大サービス。

あれずかしや! 

翼を広げると2mにも

夕日が落ちるまで走ったぜ!

何だか熊みたい



長い時間動かないでいたせいか、体がすっかり冷えてしまった。
3日目ももちろんロタホールが本命である。早朝激しいスコールがあったらしいが、そのお蔭か今までになく空は晴れ渡っている。
ロタ島の内奥部には小高い山が陣取っている。
その為雲が湧きやすい。朝が晴れていても、あっという間に湧き出した雲が雨を運んでくる。
降らないまでも、雨雲が太陽を隠してしまえば、洞窟のドラマは扁平で退屈なものになってしまう。

この日初めて西港から船が出た。
海面の彩はたとえようも無く鮮やかな青さを見せる。原色の絵具を絞り出したような混じりけのない深い青。
その青が波立ってかなり激しくボートを揺さぶる。しかし気持ちが良い。ボートの揺れすら快適に感じられるほど、海の上は素晴らしい。
今まで幾つもの海を潜って来て、美しい海の彩にも何度も接してきたが、そのどの海にも無かった純粋な青さが此処にはある。




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