仙人日記
   その95の32013年神無月

10月3週・・・ジョン、一攫千金を夢見る

 森の中の葡酒仕込み
10月11日(金)晴 前庭

ずらした眼鏡をかけてトボケタ顔して何処で聴いてきたのか
ジョン・シルバーは語るのです。
「AP通信によれば、今年のナパヴァレー・慈善ワインオークショ
米カリフォルニア1991年産スクリーミング・イーグルに50万ドル(約5500万円相当)の
高値がついたそうだよ」

「何だって!5500万円だと、高がワイン1本でか!
1本が750mlだから1mlが73万3千円もするのか、僅か1ccが73万だなんて許せねーぜ!」
と怒るは森の住人達。
「まーまーそう怒るな、こうして葡萄樹の苗木から育てて造った山荘ワインと較べてごらんよ。
どちらが美味しいかは、勿論造った本人にしか解らないのが問題ありだが
山荘ワインに決まっているのさ」とジョン。シルバー。

そうか、ジョンはそれが云いたくて敢えて、
何処かで仕入れてきたワインオークションのニュースを喋ったんだな。



醗酵させた葡萄をワインプレスに入れて


プレス機のハンドルを回すと
一粒一粒の葡萄が声を張り上げて歌うんだぜ。
きゅ、きゅと身を震わせ
いい香りの紅い液を滴らせながら
ステンレス籠の穴から
ワインに変身して出てくるんだ。
透明な秋の陽射しの中で
森とお喋りしながら
葡萄を搾るのはなんとも愉快だね。
 
プレスして葡萄液をり出す



うーん、良いり!

ステンレスのに入れて
あの宝石のように
煌いていた山荘畑の葡萄が
光を香りに変えて
ワインになってしまうなんて
どう考えたって
愉快だね。
先ず一次醗酵樽させた葡萄を
樽からプレス機に移して
ハンドルを回し
醗酵葡萄を搾るんだよ。

そうすると、ほらほら
甘酸っぱい香りを漂わせて
濁った紅い汁が出てくるだろう。

そら、葡萄が出て来たぞ!

これを瓶めして2次醗酵



下界から吹き上げて来たもご挨拶


更に2ヶ月目に再び詰め替えると
美しい透明なルビーになって
ワインが生まれるんだ。

未だ甘さの残っている未熟なワインが
刻々と香りと味を変るのを
味わえるのは、杜氏だけの極上の歓び。
これをペットボトルに詰めて
1ヶ月寝かせて
再びボトルに詰め替えるんだよ。
これはワインの濁りを沈めて
透明な紅にするためと
醗酵を促すのが目的なんだ。
 
8kgの葡萄が11本のワインになりました



ワインに現われた怪人
びジョン・シルバー登場

「そら樽のワインを覗いてみろよ!」
ジョンに言われて搾り出したワイン樽を覗いて吃驚!
怪人がこちらを睨んでいるではないか。

「あたしの名は、さっかろまいせす・せるびっしぇ(Saccharomyces cerevisiae)
つまり葡萄に着いた天然の出芽酵母なのさ。
あたしがバクバク葡萄を食べてアルコールと炭酸ガスを吐き出すのさ。
葡萄を食べる酵母や雑菌は葡萄に無数にくっ付いているけど
あたしの亜種だけがワインを造り出すのさ。
そこで天然酵母を元に何百何千もの亜種を分離し、それぞれ発酵試験を行って
選ばれたのがあたし。

あたしによってワインの出来は決まるので何処のワイナリーでも
あたしの存在は厳重な企業秘密なのさ」
さてさて仙人はこの企業秘密を如何にして手に入れたのでしょうかね?
きっと狡猾極まる海賊船長ジョンが絡んでいるに違いありません。

そう云えばジョンのニックネームは《海のコック》とか。
狡猾極まるコックなら調理場の企業秘密も、いとも簡単に突き止め、
掠め取るのはお茶の子さいさい。
ジョンの狙いは一攫千金を夢見ての
ナパヴァレー・慈善ワインオークションへの出品か?
さてはジョンめ、1cc73万円に眼がくらんだな。

ワインに現われた怪人

 眼がんだか!ジョン・シルバー
あたしの名は、さっかろまいせす・せるびっしぇ



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