その87の2ー2013年如月 |
2月2週・・・北岳からパラグライダーで山荘へ
北岳 小倉山から |
遥かなり北岳への想い 2月10日(日)晴 小倉山頂より 小倉山から高芝山へ まるで山は《北岳》しか知らないかのように 北岳にばっか通い詰めた日々。 夏は二俣にベースキャンプを張って バットレスを登り黒褐色の黒百合や純白の 北岳草に夢中になって・・・。 冬は長い池山吊り尾根から重い荷に喘ぎ 登り詰めた北岳。 ・ 大好きな北岳と山荘を結んでみよう。 そうだったのか! 僅か45kmしか離れていないんだ。 北岳の息吹が時折風に紛れているような 気がするのはその為だったのか。 |
山荘 小倉山から |
離陸準備する仙人 1995年10月29日晴 富士見高原 |
北岳からパラグライダーで山荘へ 1995年10月29日(日)晴 富士見高原 小倉山の頂からじっくり北岳と山荘を眺めて いたら嘗ての飛行体験が刺激され 何だか体がむずむず。 そうか僅か45kmしかないのなら 北岳山頂から山荘までパラグライダーで 飛ぶことも出来なくは無いな。 |
パラグライダーのクロスカントリーでの記録を観ると 風の条件が良かったのだろうが 423.4kmも飛んでいる。 山荘から北岳への東風が吹き幾つかの 上昇気流を巧く捉まえれば 45kmなんてそう難しい距離ではない。 八ヶ岳を眼前に飛行中の仙人 1995年10月29日晴 後方:入笠山(1955m) 問題は途中で降下を余儀なくされ 不時着せねばならなくなった時である。 無断で勝手に学校のグランドに降りたり 畑に突入する訳にはいかない。 やっぱ、現実には狭い日本国土では実現不可能かな! |
無事着陸 1995年10月29日晴 富士見高原 |
竹森林道から直上する急斜面 |
小倉山から高芝山へ 2月10日(日)晴 高芝山南西尾根 よーし、それなら空を飛ぶ代わり 小倉山よりもっと高い高芝山に登って 天空から北岳と山荘を見据え 擬似飛行体験を愉しむことにしよう。 と、のこのこと 小倉山から高芝山へとやって来たのでした。 ・ 山荘から見上げる高芝山には殆ど雪が無いので アイゼンも持たず登り始めたら 森の中は未だ未だたっぷりの雪。 こりゃ擬似飛行体験どころの話しではないぜ。 ・ 鉄塔を超えて南西尾根と竹森林道が 交わる地点まで登ると 雪に覆われた林道から急峻な雪稜が 突き上げ手招きしているでは。 招かれて黙っている訳にはいかない。 ・ アイゼンも装着してないのに早速挑戦。 靴を堅くクラストした雪面に 2度3度蹴りこみ バランスを取るため左手で固定ザイルを 掴んだ途端 鋭い痛みが左肘を襲う。 骨折の罅割れた痛みだと直感。 ・ だが最近、左肘を傷めた覚えは無い。 老化による疲労骨折以外に原因は思い至らない。 くそー久しぶりの雪壁が 愉しめるかと思ったのになんつーこった。 |
氷面上の固定ザイル |
予期せぬ新雪に大喜び!
2月10日(日)晴 上条峠から南西尾根
稜線に出るとふかふか雪 |
新雪ラッセルは気分いいね! |
1年で一番寒い2月は 山荘が陸の孤島になるシーズン。 山荘ゲートに到る 森の中の2か所の急斜面が凍てつき 3月下旬まで融けず 冬タイアにチェーンを穿いても 登れぬ日々が続く。 ・ ところがどうだ。 2日前の雨が氷を融かし急斜面が 車で登れるではないか。 しめたこれならバイクで高芝山の 登山口まで行けるかも。 と甘い期待を抱いてバイクを飛ばして みたが、とんでもない。 林道は何処も彼処も雪だらけ。 ・ 仕方なくバイクを林道に捨てて雪道を のんびりと歩き始めたが 改めて余りにも甘い判断に愕然! 森が雪を隠していただけで 森の下は雪山讃歌。 老化している上にこう読みが浅くては 最早生き延びる術はないぜ!。 |
昼さがりの頂に早い夕陽 |
落葉樹の森は燦々と陽が降り注ぎ 雪は融けているが 常緑樹が混じる森に入ると まっさらな処女雪が現れる。 ・ あれほど毎週山荘では 雪に苦しめられていて今日も バイクが走れず 長い林道を歩かされたと云うのに まっさらな雪稜に出ると 嬉しさを押え切れず鼻歌気分で 飛びまわるなんて! ・ 尾根上部の岩場は氷と雪に覆われ アイゼン無しでの登下降は かなりヤバイ。 流石にハミングは出なくなり 滑落の危険を 森の木々に援けられながら幾つかの 偽ピークを超えて頂へ。 ・ 驚いたことにツエルト、寝袋を持ち しっかりアイゼンを締めた 単独行者に逢う。 地図にも載っていないルートを 冬によくぞ一人で。 |
降りは豪快なグリセードが愉しめそう! |
太陽がいっぱいの雪稜 |
山荘が見えるかな?(頂から) |
鳥になって絶景かな! 2月10日(日)晴 高芝山頂 サングラスを掛けた高芝山 「山頂の標識、あれ焼き物、 陶板で出来ているんですよ。 私が焼いて付けたんです。 紅い目立つマークも 鈴庫山から付いていたでしょう」 とさっそく宣伝。 ・ 「そうですか、ご苦労さんでした。 マーク無しではとても 此処まで来られませんでした。 滑沢山から鈴庫山を超えて 来たんですが笹藪が多いし 雪に覆われ道は見えないし 肝心の処にマークは見つからず 難儀しました」と単独行者。 ・ さて飛行体験を愉しむ天空に 飛び出すには この何も見えぬ森の中の 頂から少しでも 高い処に登らないと駄目だな と木登り開始。 ・ 木々が邪魔をして どうしても枝がアングルに入って うーん、鬱陶しいな。 カメラを構えるが手前の枝に 焦点が取られ何度試みても ピントが無限焦点に出来ない。 ・ こうなったらズームアップを 諦めて駄目もとで シャッターを切るしかない。 流石に高芝山からでは 山荘は遠すぎて視認出来ないが それでも どうにか大きな空の彼方に アルプスが見えた。 ・ 冬の早い夕陽が顔を射る。 赫奕たる光の中に 朝登った小倉山が蒼い海の 底に静かに横たわり その遙か彼方で アルプスの峰々が 遠い銀の光を放つ。 ・ さあ、あの蒼い海に沈む 小さな山荘に還ろう。 |
山荘が見えたぞ!(稜線から) ↓ |
高芝山からの超望遠 |
高芝山からの超パノラマ 2月10日(日)晴 高芝山南西尾根より |
がびちょう・・・ヒヨドリ・・・ほおじろ
林檎とキウイとは御馳走だ! |
おや?嘴の先に? |
向日葵の種まであるぜ! |
画眉鳥とオブジェ 2月10日(日)晴 居間から 食卓にグラス、皿を並べ フォークやスプーン、箸を揃え サラダ、焼きたてパンを 運ぶと野鳥はやって来るのだ。 ・ 先週作った餌台には キウイ、林檎、蜜柑を乗せて あるのだから別に 山荘主に食事時間を合わせる 必要はないのだが鳥は 律儀に同じ時間にやって来る。 ・ この餌台は野鳥観察出来る 居間の食卓の まん前の奥庭に置いてある。 直ぐ目の前に野鳥が 観えると云うことは当然 鳥からも人間は丸見え。 ・ 人の気配に敏感な野鳥が慣れて 餌台にやって来るまでには 相当時間が掛るだろう。 と思っていたのだが驚いた事に 餌台周辺は既にラッシュ。 |
ジョン・シルバーと呼んでくれ |
いつも最初にやって来るのは 銀のアイシャドーを 眼の後ろまで引いた画眉鳥。 こいつ鳥のくせに飛ぶのが苦手で 地面すれすれにしか飛ばない ・ 僅か1m程の餌台も 画眉鳥にとっては高すぎるのか いつも餌台の真下で 忙しく動き回っている。 大きな図体しているのに臆病で 白頭鳥が現われると 直ぐ逃げてしまう。 ・ 前庭の銀髪に染められた鹿が 画眉鳥に語りかける。 「おい、黒のアイシャドーじゃなくて シルバーだなんて中々 にくいぜ! 先週からここでお世話になることに なったんだが一本足のジョン・シルバー と呼んでくれたら嬉しいぜ」 ・ 「ふーん、銀の餌台の次は銀の鹿か! どうせならその背骨の辺りに 銀の餌台でも着けてもらったら! きっと似合うよ」と画眉鳥。 |
こんなに食べていいのかな? |
二羽で仲良く |
食べ過ぎてゲップが! |
画眉鳥に負けてたまるか! |
胸の白斑が星烏に似ているって? |
食いしん坊の白頭鳥 2月10日(日)晴 居間から 食いしん坊の白頭鳥が それを聞いて大歓び。 「そりゃいいね。大賛成だ。 奥庭だけでなく前庭にも餌台が出来たら こりゃ山荘は天国じゃ」 |
「だが餌台がジョン・シルバーとなると ちょっと気になるな。 あいつ確か悪名高い海賊フリント船長の 手下の操舵員で片足でありながら 危険な男で 根っからの悪党だとか。 そうなると餌台に何か仕掛けてあると 考えて間違いなし。 まー近寄るのは遠慮しとこう」と白頭鳥。 |
この頬の半月マークが見えぬか? |
それにしてもこのキウイうめー! |
僕も仲間にに入れて!(♀) |
小さいからそんなに食べないから |
駄目かな? |
頬白と山繭 2月10日(日)晴 居間より 「まーなんと鮮やかなグリーン。 ハンゼの頭から バイクに乗せられてやって来た 蔓梅擬があんまり寂しそうだから 仙人が森から連れてきて 一緒に山繭を飾ってくれたんですね」 ・ 富士山のよく見える南の窓から 覗き込んで山繭と 蔓梅擬を見つめているのは頬白。 先ほどから奥庭の餌台に 近づこうと南の中庭から白頭鳥の 様子を伺っているが 一向に白頭鳥が去らないので うろうろしている。 |
蔓梅擬も仲間が欲しかったんだね! |
頬白の眼の横に縞が見えるだろう。 この縞を過眼線と云うんだけど 茶色が雌で黒が雄なんだ。 独特な鳴声は 「ピッピチュ・ピーチュー・ ピリチュリチュー」と聴こえるんだけど 昔から「一筆啓上仕候」 (いっぴつけいじょうつかまつりそうろう) と鳴いているなんて云われているんだ。 ・ そら、飛びたった。 パラグライダーのように大きく翼を広げ 北岳までだって飛んでいけるのだろうね。 高芝山の頂から仙人が観た あの広大な蒼い大地を眼下に従え 何処までも何処までも 遥かに命の限り 飛んで行くのだろうね。 |
ぼく孤独だなー |
何処に行こうかな? |
そら!飛びたった |
そら、飛びたった。 パラグライダーのように大きく翼を広げ北岳までだって飛んでいけるのだろうね。 高芝山の頂から仙人が観たあの広大な蒼い大地を眼下に従え 何処までも何処までも 遥かに命の限り飛んで行くのだろうね。 ・ そして自分の体がいま燐の火のような青い美しい光になってしずかに燃えているのを ・ よだかのように見るのだろうか。 |