仙人日記
   その79の2ー2012年水無月

6月4週・・・・親になったが百年目・・・親離れ進行中


しりこん谷からのお手紙

ごぶさたしております。
いつものごとく急なことで恐縮ですが、6月23日の週末のご都合はいかがでしょうか?
もしよろしければ、一家四人でお邪魔したいと思っております。
広介が今年こそは犬と遊びたいと言っています。 
(二人は)高一と中ニです。 相変わらず幼稚なままで、体だけ(横にも)デカくなって…
私は木曜日に日本に着きます。 金曜日(22日)の午後には山荘に行けますが、日曜日の夜には大泉に戻らないとなりません。
あまり時間もないし、我が家としては子供らが畑仕事をやらせてもらえればハッピーです。 こき使って下さい。

第一日目6月22日(金) 雨後曇 

 
ビア仕込み・芋苗植え・夕散歩、
レーニン峰ビデオ鑑賞、蛍観賞
 

陽介一家の登場(前庭)
三年ぶりの山荘です
6月22日(金)曇 記録:陽介

前回の山荘訪問からいつの間にか三年が過ぎてしまいました。
 あの時のこと、あるいはそれ以前の山荘でのことも、
子供たちには良い思い出となっているらしく、
犬たちとの“サバゲ”、畑仕事のこと、ログハウス、岩登りのことなどなど、
最近でもよく話題になっていました。
 山でべそをかいていたりしたこともあることを考えると親としても不思議ながら、
子供たちはまた山荘に行ってみたいと言っていました。
考えてみれば大介が最初に山荘に来たのはまだ2歳のころ。
 
あの頃はかわいいさかりで誰にでもニコニコして可愛がられていた彼も、
いまや高校生。 
ニコニコしたら負けとでも思っているのか、
いつもふてくされたような態度を見せている彼が、
今年の山荘でどういう姿を見せてくれるのか、楽しみです。 
それに対していまだ無邪気な広介は、残り少なくなってきた子供時代に
貴重な思い出を作ってくれればと思います。

It's been three years since we visited Sanso last tume.
It was great experience for the kids - Survival Game with dogs,
wroks at farm, rock climbing... they still talk about these things at home.
 Knowing that the kids had tough time on a mountain, it:s a kind of strange,
but they said they want to visit Sanso agai.
Daisuke was two years old when he first visited Sanso.
At that time, he was always smiling to anyone, and loved by anyone around hiim.
Now those days are gone, I wonder how the teenage grumpy Daisuke would act...
.


奴隷売却計画? 擬態編 MonologueT

そう俺は孤独だ。1学年で12クラスもある高校で俺のクラスは生徒数30人、その中で日本人は俺独り。
学校は早い日は昼頃下校出来るので時間はたっぷりあるが部活動はやらない。
家に帰ってからはゲームに熱中している。
ネット上で不特定多数の者とプレイできるオンラインゲームを始めたら時間は幾ら有っても足りないしネット上での仲間が出来るので
孤独であっても退屈はしない。

韓国や中国では、10代や20代の人間が寝食を忘れてゲームに熱中し過労死してしまうというオンラインゲーム依存症が問題になっているのは
勿論知ってはいるが、俺はそこまで莫迦ではないと自覚している。
英会話に不自由はないが学校でも家でも最小限の会話しかしないのは、鬱陶しいからだ。
親は寡黙なのと運動不足からの脂肪太りを気にしてるが余計なお世話である。いつまでも親を卒業出来ない鬱陶しい奴等だ。
えっ!「しりこん谷からのお手紙」がどうしたって!なんだって《こき使って下さい。》だって。
親を卒業出来ないどころか俺を奴隷として売り飛ばそうと画策してるなんて陽介と広江はどうゆうつもりなんだ。許せねえ。


お久しぶりです
6月22日(金)曇 記録:広江

台風4号が去り、蒸し暑くなる一方まだまだ梅雨時でお天気が心配でしたが、
今回は出発時は雨模様でしたが、
天候には恵まれて爽やかなスタートを切りました。
山荘のドアを開けるとほのかにいい匂い。村上シェフが早くも参上。
次から次へとお料理がしあがります。やった!今回も炊事は覚悟してましたが、
強力なメインシェフがいるので、私はヘルプとして頑張ります!

美味しい食事と楽しい会話の後は、ワイルド蛍を見に連れて行ってもらいました。
といっても自力!
やっぱり山荘だ!蛍は幻想的で珍しいけど、歩くんですか?
思わず自分の日々の怠惰なマダム的生活を
呪いました。なにしろほんとに重いんだわぁ〜。
歩きながら大介と「明日は大丈夫?ムリかもねぇ。
でもやらないとなぁ。」
いよいよ明日は早朝サバゲトレーニングに挑みます。


覚えているかい悠絽!(奥庭)


怒髪天を突く
 
擬態編 MonologueU

まあ、高校の成績もトップクラスを維持しているので親もそうがみがみ云うわけではないし孤独ではあるが平和な日々を過ごしていたのに
どうも最近、3年前の山荘での日々を話題に出すことが多いと思ってはいたが、さては奴隷売却を画策していたのか?
3年間の時のカタルシスを利用してマインド・コントロールし今回の山荘活動に何とか参加させようと愚かな企みは如何にも陽介。
自らの堕落した肉体と精神を曝け出しバケツでなくえーと(米国呆けか?)、墓穴を掘ることになるとも気づかず
陽介の謀略に乗ってホイホイと山荘活動計画に賛同する広江も広江だ。

だが、そこまで醒めた頭脳で読み込んでいる俺が
「うっせいよ!臭せい汗流してどん百姓やったり、阿呆みたいに何時間も山に登ったり誰がやるって、ふざけんな!」
と怒髪天を突く怒りをぶちまけたら明らかに俺の負け。
完全に経済的にも実生活でも陽介と広江の支配下に在る俺としては、3年前の唯ひたすらに疲れた山荘活動に幾許かの懐旧の情を見せ
不貞腐れた態度をやや軟化させればいいのだ。
まっ、経済的支配から逃れるまではこの程度の妥協はせねばなるまいな。



仕事は愉しいぜ??? 笑顔でビア仕込み(居間)

6月22日(金)曇 記録:広介

雨が降り続いていて天気が心配だったけど山荘に着いたときはやんでました
最初にビールを造ってみました
砂糖をボトルに配るとき何回かこぼしました
ビールの入っていたバケツを洗うとき4−5センチのスズメバチを見たから
逃げたらユーロに噛まれました
晩御飯は肉料理ばっかりで美味しかったです
コロッケが特に美味しくて5個食べました。食後に蛍を見にユーロと
一緒に川まで行きました
蛍の飛び方がホンワカとゆっくりできれいだったです


悠絽、蛍が飛んでる!(竹森川)


仮想空間の住人
 擬態編 MonologueV

とまあ、現実と妥協して遥々太平洋を超えてカリフォルニアから飛んできたものの山荘活動の現実は仮想空間の住人には堪えるぜ。
草だらけの山畑を開墾して薩摩芋の苗を植えるだなんてOh My God !
この時のOh My God を正確に訳すとマジかよドン百姓だぜ!となるがそれは単に様態を表現しただけで
現実の肉体労働はそんなもんじゃないぜ。

先ず敵が無数に居やがってこいつが小さくて見えない上に、やたらめったらしつこくて足、手、首と云わず目ん玉まで襲ってきて
防虫剤と称す小賢しい都会人の武器なんて、てんで役に立たず敵はせせら笑うのみ。
たかが草と侮っていたがされど草とばかり草までもが莫迦にしやがって、立ち鍬を何百回振っても雑草は果てしなく続く。
やっと雑草をやっつけたと思ったら今度はマルチだとか云って段ボールを切らされ
開けた穴から移植した芋苗を出して段ボールに土を被せると云う訳の分かんない仕事をやらされる。

この時点で俺は完全に切れたぜ。
このマジギレを顔に出すな
と云うのは無理だが行動にまで出すのは
俺の知性が許さない。
そこで堪えに堪え「こっち向いて!」と
写真の小うるさい注文には無理に無理を重ねて
ちょっとだけ笑顔を見せたり。

げげー!畑仕事で終わりかと思ったら次は
何やら犬連れて《夕散歩》だって!
ざけんなよ!と思って怒ったが
《夕散歩》なんて実に甘いもんだと云う事が
夜の蛍鑑賞で判明。

微笑む大介(奥庭)
《夕散歩》との優雅なタイトルと実態は
大違いで山道を登ったり下ったりで
汗びっしょで不愉快この上なかったのだが
蛍鑑賞では唯歩くだけではない。

街灯も無い山道を歩いて川まで下り
蛍を観てからは真っ暗な山道に放り出され
ガイドも無く歩いて自力で
山荘まで戻らされたのである。

車が在るのだから車で行けばこんな苦労は
不要なのだ。
くそーこんな処に連れて来やがって!

高校生になりました
6月22日(金)曇 記録:大介

山荘に来て一番最初にしたことはビールをボトルにつめることです。
この前来たときも、同じ事をやったので、割と簡単でした。
ビールをつめた後は、畑仕事をやらないといけなくて、結構つらかったです。
食後、蛍を見に、川まで散歩に行きました。
暗かったので、蛍の光がよく見えました。
蛍を見た後、真っ暗なのに山荘まで戻らないといけなくて大変だったです。


マジかよドン百姓だぜ!(葡萄畑)

散歩に行こうぜ!(中庭薔薇アーチ)


《遁ずら》こそSurvivalか?  

雑草取り用の立ち鍬を力無く振り降ろす。ひ弱な雑草にすら弾かれてしまい仕事はさっぱり捗らない。
それでも愚痴をこぼさずいつ終わるとも知れぬ農作業を延々と続ける2人。
と、突如雑草の中から現れたるは巨大ではなく恐ろしくも無い一匹の爬虫類・蜥蜴。
2億5千万年前から2億年近く(中生代)も栄えた恐竜の末裔・蜥蜴なんぞ身近に観ることも無いだろうと捕まえて彼らに見せた。

「触ってみろよ。
咬まれても毒は無いし痛くもないから
手に乗せてごらん」
真っ先に広介が興味を示し
手にするかと思いきや恐る恐る
覗き込み触れようとはしない。

それどころか君子危うきに近寄らず
とばかり早くも《遁ずら》態勢。
大介も最初腰は引けていたが
押しつけられた蜥蜴を払うでもなく、
平然と掌に乗せ観賞。

ふーん、悪ガキ広介は
蛇や蜥蜴なんぞ
屁とも思わずとっ捕まえて手下に
してしまうのかと思ったが、どうも本当は
繊細で臆病なのかも?
仮想空間に生きる大介こそ
小さいとは云え現実の爬虫類に怯え
嫌悪し逃げるかと思ったが、
予想外に強く逞しい。

爬虫類の蜥蜴だぞ!(葡萄畑)
と、ちょっとしたハプニングの後で
「うーん虫が・・・」との
呟きが聴こえてから暫くすると
姿が見えない。
防虫スプレーをかけに?
それともトイレ、水呑み?
30分経っても1時間経っても
姿は消えたまま。

こうして《遁ずら1》の成功に
味をしめた広介は、その後も遁ずら2.3と
遁ずらを続け苛酷な山荘生活を
生き延びていくのだが
大介は泰然自若。

若しかすると肝っ玉が太く大きな権力をも
物ともせず、果敢な闘いを
挑むことが出来るのは喧嘩に強い
広介ではなく大介?
さてこの2人、無尽蔵の才能を秘めたまま
如何なる本質を今後
顕現していくのか興味津々。


第二日目6月23日(土) 曇後晴   
高芝山登山・じゃが芋収穫
雑草取り・夕散歩
 

何故か遅者に合わせ寄り添い始めた一家(高芝山)
減量しなくちゃ!
6月23日(土)曇 記録:広江

最初の30分は本当に辛かったです。
昨晩の自分の写真を見て「こりゃやばい、
本当におばさんになっちゃった!普段めったに自分の全身体の写真は見ないので、
うろたえました。
これを機会に日々の生活を改め、スマートな熟女になるべく
精神と肉体をどうにかして鍛えていきたいと気持ちだけ決心しました。

お約束は
できませんが、
次回参上するときにはちょっと身軽に
してきます。
でないとここでの生活は悪夢と
なりかねません。.
身をもって
お伝えできます。

早朝サバゲは

無念無想で登るしかない(高芝山)
先生の3倍近く
時間はかかりましたが子供たちより
早くに完歩できたのでほっとしました。
明日はこの
棒のような足が
心配ですが、なんとか温泉を楽しみにして、
早朝サバゲ、
引き続き頑張りたいと思います。


立派な虐待 
擬態編 Monologue A

 俺は正しい事をしてるつもりなのに担任教師が手に負えないとか何とかほざいたもんだから
校長が俺をとっ捕まえて広江に電話なんかしやがって、実に参るぜ。
まー親ももう、その程度の電話や呼び出しには慣れているからどうってことないんだけど。
俺が粗暴だって、ざけんなよ!これ程までに繊細で想いやりも人一倍強く優しいのに何処をどう探したら粗暴なんて言葉が出て来るんだ。
これだから大人と云うのは訳が分かんない糞やろうなんだ。

朝の4時半だぜ。俺にとっちゃ真夜中みたいなもんだ。
その時間に起きろだって。それで5時出発で朝飯抜きで高芝山登山だって。一体どんな権利が在ってそんな命令を俺たちに下すんだ?
どっからどう観たって立派な虐待に値するぜ。
だから昨年も山荘活動の話しが陽介から出た時は断固断わったんだけど「しりこん谷からのお手紙」を見ると
いつの間にか今年は《広介が今年こそは犬と遊びたいと言っています。》となってるでは。
とんでもねー親父だな。



足が限界なのに。。。
6月23日(土)曇 記録:広介

今日朝の4:30に起きて朝ごはん抜きで塩山でいちばん高い山を登りました
何も考えず一歩一歩に集中しユーロと登りました
第一ピークで坂原さんが降りてきたときにユーロが
坂原さんの所へぐいぐい引っ張りましたがこらえました
帰りはくだりでペースを崩し抜かれてしまいましたが最終的には一番でした
帰ってきてから芋ほりをしましたが
サボりまくりで最終的に帰って寝ました
足が痛くて芋ほりの段階で倒れそうでした

Today, I woke up at 4:30am and went to the tallest mountain at ensan.
I didn`teat breakfast so I was a bit hungry,
but I made to the peak point at 7:40am with Euro.
On the way back, I slowed down because I was scared
I was going to slip.
After we got back on the road,
I followed EurobecauseI didn`t know the way home.
1 hour after we came back, Sakahara-san told us to dig the potatoes,
but I was too tired and my legs could`nt hold it so
I went back to the house and rested while sakahara-san,
my brother and my dad was digging. Truly I thought tody was a horrible day.


稜線は深いガス(高芝山)


文句あっか? 
擬態編 Monologue B

レーニン峰、確か7134mだとかの観たくもねえ登山ビデオを昨夜観せられて25年前の22歳の陽介に出逢ったけど
何で死の危険すらある苦しいだけのヒマラヤ登山なんかをするのかさっぱりわからん。
自分が若い時登ったからと云って息子の俺にまで強要して山荘活動とやらをやらせようなんて、そりゃ了見違いと云うもんだぜ。
ログハウスで良い気持ちで熟睡している俺様を4時半に叩き起こしゃがって、
いつまでも親の言いなりになると思ったら大間違いだぜ陽介。

いいか、朝飯抜きで5時出発で山荘に辿り着いたのは11時。つまり飯も食わず標高差840mの高芝山を6時間も登り続け
朝飯兼昼飯を食ったら今度はじゃが芋掘りとやらに駆り出され、これを虐待と云わず何と云う。
「広介はとんずらの名人だな。まさか3回も畑仕事からとんずらするなんて山荘始まって以来、前代未聞の記録だ」
とか云いながらとんずらする度に《とんずら1、とんずら2》とか名づけて嗤ってやがる。許せねえぜ!
とんずらこそ山荘で生き延びる唯一つの知恵であり自己防衛策なんだ。
俺が今ここでこうして生きながらえ独白していられるのもとんずらあっての賜物さ。文句あっか?



遂にやったね!明日への脱脂肪盟約を結ぶ(高芝山頂)
やったねお母さま!
6月23日(土)曇 記録:大介

今日は朝の五時くらいから起こされて高芝山を登らされました。
朝ごはんがなかったので結構つらかったです。
霧がものすごく多くて十メートルも見えませんでした。
偽の山頂が四個くらいあって途中でめげそうになりました。
帰ったら芋ほりをして、また散歩に三十分くらい行きました。


我等が頂標識(頂)

交信しつつ登頂(ケルン)



1つの絆で 
擬態編 Monologue C

そりゃ悪いことばっかじゃなかったような気もしなくはない。
22歳の若い陽介を誘惑してレーニン峰とやらに連れだしその後も8千m峰のヒマラヤやアンデスに誘い出し
人生を狂わせた陽介の数学教師に一矢報いようと悠絽と共にぴったり後について登った。
最初は距離が開く度に数学教師は待っていてくれたが,やがて悔しいが置いていかれてしまったのだ。

何度か追い着こうと頑張った。喧嘩には自信があるし校長と張り合っても負けはしないがどうも自分自身の苦痛と闘うのは苦手で
悔しいが老いぼれ数学教師に追いつけずやがて教師は霧に消えてしまった。
そこでどうしたかって云うといつも喧嘩ばかりしている兄大介とも、煩くて唯ウザッテーだけの母広江とも
人生を狂わされた父陽介とも、何となく一緒にかたまり協力して山頂を目指したんだ。

不思議だな、4人の心がなんだか1つの絆で結ばれているような錯覚すら起こしてしまったぜ。
その錯覚らしきものが悪いことばっかじゃなかったことなのさ。


やりました陽介ファミりー
6月23日(土)曇 記録:陽介

最初の1時間ほどは大介も広介もブリブリ文句を言い、(早起きをしたため?)
イライラしていたので、もう帰るなどと言い出すのではないかと
ちょっとヒヤヒヤしていたけど、途中からはのってきたのか不満を口にすることもなく
頂上を目指して(遅いけれど)着実に歩き続けてくれたのは嬉しかった。
頂上に着いたときのまんざらでもない表情からすると
何かを感じてくれたのではないかと思うが、どうだろうか。
いろいろ言いたいことも無いではないけど、
とりあえず登頂成功、お疲れ様でした。

For the first hour or so, both Daisuke and Kosuke were complaining
and seemed to be frsutrated (because of early wakeup?),
and so I was afraid of them giving up. However, they stopped whining,
and kept moving toward the peak, although slowly. I was glad to see that.
From their happy faces at the top, I thought they felt something
when they got there. I don't claim it was perfect,
but I'm happy they made it. Congraturation.

高芝山の頂にて(高芝山頂)

見つけたような錯覚も・・・ 
擬態編 Monologue W

いいか自宅から高校まで歩いて10分足らずの平地を1日に1往復するだけの毎日を送っている仮想空間に生きるデブ男がだよ
いきなり標高差840mもある山に登らされたらどうなるか、如何に多くの苦痛を伴うか解っているのか?
下手すりゃ心臓麻痺をおこして死んじまうかもしれないではないか。
マゾヒストではあるまいし苦痛と深刻に闘うつもりはなかったので、途中でリタイアしてさっさと下山すると云う手も在るには在った。

が、しかしだ。後を見ると「最近重くて生きてるのが辛いのよね」と日頃ルフランしている広江がストックを握り締め
時々瞑想するかのように目を閉じて、それでもしっかり登って来るではないか!
こりゃ驚きだぜ。口先だけでまるっきし実行力の無い女だとばかり思っていたがこの強力な意志を何処に隠し持っていたんだ。
俺は紛れも無くこの女の強力な意志から生み出された子供なのだ。
であるならば俺に登れないことはない、と妙な自負心と誇りのようなものが湧いてきて俺は初めてこの登山に
自らの意志を投入して登頂を決意したんだ。

なんちゃって格好つけてはみたものの、実はどうして意地を張ってまで登頂に拘ったか自分でもよく解らないのである。
が、まあしかしこうして見晴らしもない霧だらけのつまんない山の頂に立った事だけは確か。
で、そのつまんない頂に立った自分の中に何かを見つけたような錯覚を抱いたのも確かなような・・・。

第三日目6月24日(日) 曇   
小倉山朝トレ・じゃが芋選別・果樹畑芋収穫
カレー作り、ログ掃除・ほったらかし温泉
 

収穫したじゃが芋の選別(奥庭)
早速カレーを作ろうぜ
6月24日(日)曇 記録:陽介

昨日の朝は子供らを起こすのにかなり苦労したけど、
今朝は素直に起きてきた子供たち。
しかし感心したのもつかの間、仕事が始まればぶつぶつ文句を言い、
サボることばかり考えている。 小倉山への登りも、
大介は例によって不機嫌そうな顔で不満を訴えつづけていたが、
とりあえず今日もギブアップしなかっただけでも良しとしましょう。 
下りは重力の力を借りてかすたすたとご機嫌で降りてきた模様。 
体重をちょっと減らそうな。
帰ってからはカレー作りを開始。 
先ほどまでの苦しげな表情もどこへやら、それなりに楽しそうに仕事に取り組んで、
おいしいカレーができました。

It was really hard to wake up kids yesterday, but they woke up smoothly today.
I was impressed, but once the works begun, they started whining
and trying to get away.
While ascending to Ogurayam, Daisuke was complaining with grumpy face
as usual. But he didn't quit. That's one good thing. He was able to descend easily,
probably with gravity's assist.
The kids were assignd a task to cook curry rice on return.
They turned to be happy kids and executed the task seriously.
It was not perfect, but we enojyed their curry rice.

 
カレー
6月24日(日)曇 記録:広介

今日カレー作ったでござるアイディッグ芋
美味しかったけど味見でおなかいっぱいドスユーロに腕をかまれた痛かったよ、
もの凄くマジ死ぬかと思った
あ〜イタカッタナー梅ジュース美味しかった
まだ腕痛いお米がとっちゃんのせいで焦げマクリングまだ腕痛いけどガマンするッス
ユーロって意外と噛力が凄いあーやっと帰れるヤッターでも腕が痛い....

俳句:::ユーロ君僕を噛むのは何故なんだ


怠け者には噛みつくんだよ(奥庭)

悠絽、滝の上に登ろうぜ!(座禅草公園)
      


[1] 少年たちの夏      Chef

三年ぶりに逢う少年たちの成長した姿を見たくて山荘シェフ役を買って出た。
元気な声と共に玄関に現れた広介くん、背丈がぐんと伸びた。
大介君は縦横共に数まわり大きくなって、二人とも母親をとうに見下ろす男の子たちである。
性格はそれぞれ異なり、長男は無口、ぶっきらぼうで心の内側を大人たちには見せないようにガードしている。
尤も、言葉にして語らなくてもそのからだの動き一つ、動作の反応ひとつでも彼の心の動きはかなり明瞭に読みとれてしまうのだが、
そこがまだ狡さのない本来の素直さが顕れてる証拠だろう。
対照的な次男坊は親が「垂れ流し」と称するほどに、あっけらかんと感情を表出させる言葉を口に出す。
つまりはオシャベリクンだ。
3年前と基本的には変わらないが、二つの個性がさらに際立ってきたと言うべきか。

この個性的な二少年をどう育てていくべきか、夫婦それぞれにささやかな葛藤と共に心を砕いている様子が、
微笑ましくもあり、頼もしくもある。

赤ん坊時代からの彼らを見て来た者としては、子どもの成長のみならず、
親たちが<親>として育っていく姿もまた見せてもらっていることとなり、二重の感慨を味わう。
隊長の考案するプログラムは、いつも通り早朝から寝るまで、目いっぱい心と体を鍛えてくれる・・・筈だが。
二少年はことごとく反応鈍く、または文句だらだら、おまけに途中脱走も何度か企て、遂には隊長に
「お前たちの少年時代は完全に去ってしまった!」と嘆きの言葉を吐かせるほど。

無理とは知りつつも、少年が少年らしくあることを心の底では切望しているであろう隊長の期待を、
生身の少年達はことごとく見事なまでに裏切ってくれる。
(3年前彼らと過ごした感想で「少年が少年でいられる時間の儚さを、愛おしく思った日々でした」と書いたが
まさにその感を強くした。
まだ子供時代のしっぽを僅かに残しながらも、彼らは少年と呼ぶには大きくなりすぎたようだ)

      


米国ボーイスカウトではインスタント食品でチョンボ多し
カレーも作れないかな?
(前庭)
飯盒の飯炊き
6月24日(日)曇 記録:大介

今日は朝五時から起こされて、仕事をやらされました。
じゃが芋の選別はさぼりましたが、雑草取りはやりました。
仕事が終わったら朝ごはんも食べずに小倉山を登らされました。
昨日のせいでまだ筋肉痛なので、かなり痛かったです。
帰ってきたらカレーを作りました。思ったより美味しかったです。


童心に還り(小倉山の森で)
 
     
[2]少年たちの夏      Chef

自分自身でも覗き込むのが不安、
まして大人には決して見られたくない不可解なゾーンを、自らの内部に抱えていることを漠然と自覚し始めたであろう十代の少年達。
激しい夏の太陽のように内側から照射するエネルギーを、受け止め昇華させるため、
彼らは多くの闘いに挑まなければならないのだろう。
多分孤独で暗い道でもあろう。
山荘の夏は、少年たちの心に生まれる光と影をどんな模様に織りあげていくのか、
傍観者でしかない私だが、
古い大樹のように佇み、その心模様を見続けていけたらなあと叶わぬ思いを抱いたりする。
3日目の朝の散歩は小倉山へ。私と広江さんはのんびりとお喋りしながら、まさにお散歩ペース。

稜線へ出たところに標識がある。先行していたはずの大介君が
何やら呪詛の言葉を吐きながらその標識にしがみつく格好で前進を拒んでいる。
昨日の高芝山登山の筋肉痛が出ている模様。毎朝の散歩と称する強行軍に嫌気がさしているのだろう。
彼の肉体は反乱を起こしているらしい。
追い抜きながら広江さんが励ましの言葉をかけるが、彼は頑として動かない。

大分離れてから広江さんが大声で叫んだ。
「皆が上で待っているよ。
大介が行かないとみんな帰れないんだからね。迷惑かけるよ。姿が見える処にいてよ!」

後は振り返らず山頂を目指す。さて彼はどうするか?不貞腐れて留まるかと思いきや、
山頂に着いたらいつの間にかすぐ後ろを登って来ていた。

さすが母親、ごちゃごちゃ言わずとも的確な言葉を放ったのだろう。
高芝山登山で見せた母親の意地が子どもに伝わった証拠でもあるかもしれない。
親が本気で頑張ってる姿を子どもは見てないふりしてちゃんと見てるんだね。未だ軍配は母にありかな。
大介君の日記にはことごとく「〜させられた」「〜しなくてはいけない」と、いかに主体性がないかを強調しているのが読み取れる。


大体が、書きたくもない日記を書かされていることへの強烈なブーイングなのだ。
「書くのは苦手」と広江さんが心配しているが、幼いころから本を読むのがあれほど好きな少年なのだから書けない筈がない。
今は心の中に言葉を蓄えつつ、いつか己の言葉を獲得したら、爆発的な発信をするかもしれない。

今回の稚拙に見える文章こそが、彼の最大の抵抗の証、わざわざ期待に背く作文を書いたのだろう。

山荘下の放置された梅林の実は持ち主から好きに採っていいと許可されている。
散歩帰りに持参のビニール袋に梅詰め放題もぎ取り作戦開始。
      

食べるほどに味が増すカレー
6月24日(日) 記録:広江

今朝は少しリラックスしてということで、5時起きで活動がはじまりました。
忘れてはいけない朝の散歩は小倉山まで。
筋肉痛で動きたくない大介と私は励ましあいながらなんとか登頂。
私は村上さんとおしゃべりしながら久々にゆっくり話せてよかったです。
朝食は子供たちが作るカレー。
朝からカレーなの〜?という文句もありましたが、
せっせと小人のように魔法のような美味しいカレーを作ってくれました。
その間、村上さんと私は、散歩中にみんなで採った小梅を梅シロップにするため、
一連の作業に没頭していたので、
子供たちのカレーに口出しは一切しませんでした。
しかしながら、それこそあっという間に出来上がったカレーは本当に美味しかったです。
やっぱり人に作ってもらったものは、感謝の賜物です。

これから温泉に行ってきます!

坂原先生、村上さん、いろいろとご指導ありがとうございました!


御代わり3杯もしたカレー(前庭)
     
[3] 少年たちの夏      Chef

山荘主が「一人最低30個は採るんだぞ!」と号令。鈴なりの実はいくらでもその気になれば採れる。
ところが広介くん早々と道端に座り込んでいる。「もっと採れるよ」と声をかけると、「ぼくはもう30個採りました!ちゃんと数えたよ」
そうか、楽しい梅もぎではなく、仕方ない大人へのお付き合いなのでした。
子どもたちが二階で休憩タイムを過ごしている間、大人達は食後の会話を楽しむ。
いつの間にか広江さん陽介さんの子育ての悩み(?)や、しつけや教育の夫婦間のちょっとしたすれ違いなどが話題になった。
かなりシリアスな会話が飛び交ったあとで、不意に二階の出窓から声が降ってきた。
「全部聴こえてるよ!!」
あはっ、子どもたちの方が一枚上手かも。

帰りのJR車中で「夏はお父さんについて行こう」というキャッチフレーズを目にした(ライオン・キングの宣伝)。
JR東海の「そうだ京都、行こう。」もあったな。
栗田家の今年の夏を表せば、<そうだ山荘、行こう!夏はお父さんについて行こう>はどう?
ひょっとしたら、<おとうさんについて行く>最後の夏かもしれないしれないね。
霧の山中で不安と怖れと空腹を抱えながらも、登頂を果たした体験は、
二人の少年たちの心にどんな心象風景を残したろう。
家族が互いにかばい合い、親子で同じ方向を向いて行動するという体験は親にとっても貴重な時間だったかもしれない。
最年少記録でレーニン峰の登頂を果たした、彼らの知らない22歳の父の姿を映像で観たとき、
広介君は「ギネスに載ったの?」と呟いた。


途中でリタイアしても不思議でない母が皆と共に頑張って山頂まで登りきった。
日常では見られない両親の素の顔を見せられると、
きっと子どもたちの心中には思いがけない化学反応が起こったりすることだってあるだろう。
いつか、もっと大人になった彼らが自らの意思で<そうだ山荘、行こう。>と、思い立つ日が来ないとも限らない。
それは霧の中で人生に迷った時かもしれないし、何かを語りたくなった時かもしれない。

それともただ自分が少年だった日を確かめたいだけかもしれない。
       



宴 で語る擬態ソクラテスの挑発
そうやって喰らうのは無知の知か?それとも累積した自己弁護の脂肪か?

悪ガキに哲学らしき物が芽生えているならば、仮想空間に肉体を拉致された優等生にそれでもポリシーが在るならば
挑発を試みるのも悪くは無い。


乾杯の後に語られる擬態ソクラテスの挑発・・・さてさて明日のサバゲは?
「いいか、この山荘には幾多の
高校生、中学生がやって来て山荘の森に
幕営し自炊し地図上に道の無い
山を登りサバゲ(Survival Game
を行い畑仕事をし
岩壁を登り
自らの肉体と精神を切り拓いてきた。

雪を目前にした晩秋の山で
高校生が一人道に迷い
行方不明になり警察が出動し、
夜の山を
捜索したこともあった。

幸い凍死の恐れのある夜半前に
救助できたが、明日の高芝山も
地図上に道は無く、
獣道が幾つもあり遭難した高校生の
二の轍を踏む
恐れは充分にある。

つまり明日のサバゲは仮想空間の
ゲームでなく本当にドジを踏めば
遭難すると云うことだ。

そこでだ、地図を渡す。
山荘から高芝山までの説明を行う。
しっかり聞いておけよ。

尚、この説明は君たちが遭難
しない為に行うのではなく、
若し遭難事故が起きた場合
このサバゲを企画したこの俺が
責任を取らなくても
済むように、警察に弁明
出来るように行うのだ。
解ったか?」
とそこで更にビアをぐびっと一杯!
珍しく神妙に聞いていた広介がマジな顔して問う。
「酔っ払ってるの?」
「そうか脅しだと思っているな。それじゃ次に遭難した場合に備えてウオーキー・トーキーの
使い方を説明しておこう。
ここに3台用意してある。大人は遭難してもどうって事はないので子供2人に1台づつ渡す。
もう1台は俺が持っているから遭難したら発信し状況を知らせよ。もちろん遭難しても迎えには行かない。
猪に襲われたり熊に喰われそうになった場合のアドバイスくらいはしてやれるだろう。」

擬態ソクラテスの挑発に対して予想される反応は2つである。
「馬っ鹿らしい、その高校生や中学生は山岳部や探検部で自ら志願して山荘にやって来たんだろう。
そりゃ積極的に活動するのは当然さ。俺たちだって長年ボーイスカウトで活動してきたけれど
云ってみりゃありゃ、おままごとみたいなもん。一緒くたにされて堪るか。
明日はさっさと遁ずらするに限るぜ」・・・若しくは仮病を使って穏やかに高芝山登山を避けるか。

つまり積極的に高芝山登山をボイコットするか、はたまた消極的に避けるか2つに1つである。
まさかもう1つの選択肢に自らの意思で頂を目指す項目が在ったなんて、正に驚天動地。
遁ずら3回の広介と1回の大介の遁ずら常習犯に、いったいなにが起きたのか?
悪い病気に罹ったのでなければいいが?

暮れなずむ高芝山



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