仙人日記
 
 その111の12015年  如月

2月1週・・せせらぎに落ちていた宝石


せせらぎに落ちていた宝石
福生里のせせらぎ
2月3日(火) 晴 -6.7℃(2日の山荘ー8.1℃)

「地獄のような極楽」と云っては、地獄の品位を傷つけてしまうから遠慮しておく。
しかしー8℃の凍てついてかちんかちんのコンクリートのような畑で鉄のスコップを握って穴を掘っていると、
地獄と呼びたくなるような状況。
金属スコップは手袋を通してー8℃をストレートに伝え、冷たさを超えて痛みをもたらす。

鼻水が滴り、拭うのも面倒なので放っておくと
ありゃ!長く糸を引いた鼻水の先端が凍り始めたでは!
掘った穴に有機肥料である鶏糞を入れて土と良くかき混ぜるのだが、
なんせ土が凍てついてコンクリートになっているので、
粉末状の鶏糞はコンクリート化した石のような土に絡むだけで、混じってはくれない。


 
凍てついた流れの飛沫

冷たさで痛む手指、凍り付く鼻水、
コンクリートのように固い土との闘いを、
このバロックの音色と
小倉山の山稜から昇る夜明けの太陽が
地獄から極楽へと変えてしまうのだ。
嘘だって!ほんとなんだ!

妙なる調べに耳を傾け、暁の光を目にすると
凍てつく指も、凍る鼻水も、
凍結した土も得難い素晴らしい試練であると、
すんなりと納得して、
そんな地獄のような阿呆なことしてる自分が可笑しくて、
思わずニンマリ笑ってしまう。
  何度も何度もスコップを振るう。
このシベリアの強制労働のような状況を
地獄と比べてみたくなる気持ち、解るよね!
処が、これが実は極楽なんだ!
この夜明け前の時間、
葡萄棚に吊るしたFMは「古楽の愉しみ」と題して
バロックを奏でている。
 
重なり合う氷柱


竹森川のせせらぎ
2月3日(火) 晴 -6.7℃

うんうん、「地獄のような極楽」とは正にこのことじゃわい、
なんぞと独り言ちるのである。
さてその後、畑作業を終えて土で汚れた洗濯物を洗って、干そうと奥庭に出る。
ステンレスの物干し竿に洗濯物を干そうとした瞬間である。
あれれ!シャツもズボンも竿を通らないのだ。

腕に通した濡れた洗濯物が、
竿に通した瞬間、凍り付いて竿と接着、動かなくなってしまったのだ。
焦ったぜ!バリバリに凍てついたシャツやズボンを、竿から剥がしながら、
どうにか干し終えたものの、
どの洗濯物も凍てついてバリバリ、まるでガラス。


凍てついた泡立

この調子なら、きっと宝石が落ちている。
さてそれじゃ、今朝の夜明け散歩は
谷のせせらぎ巡りにしよう。

ほらほら、ご覧よ!
未だ闇を宿したままの宝石が
蒼と漆黒を発して
ぐいぐい迫って来るね。
耳をよーく澄ましてごらんよ!
そら聴こえてこないかい?

太陽が出て暖めてくれるまではとても、
乾きそうもない。
直ぐお隣の野辺山では今朝、-24.4℃の
最低気温を記録したとか。
それに比べれば、まー山荘は天国じゃ!
 
氷塊の連なり

のハープ 
タリエ・イスンジェ

ほな、ちょっくら
凍てついた宝石の調べについて
アバンギャルドな
ノルウェー出身の作曲家、
タリエ・イスンジェに
訊いてみようか。

「100個の氷のうち、
良い音を生むのは僅か10個。
だからこそ僕は丁寧に氷を
扱わなければならないんだ。

演奏する場所もとても重要で、
例えばマイナス33度の
ものすごく寒い場所なら、
音はよりサクサクした音になって
多くの高周波や低周波を
発するようになる。

だから、演奏の為に
すべてを把握するには、
氷と、とことん
仲良くなる必要があるんだよ」


   
     


Really cool music:  Avant-garde composer uses instruments  made out of ICE

氷のハープをでるタリエ
Chillingly beautiful:
A fellow musician wraps up warm to perform on one of Terje's ice harps.

(参照:dailymail.co.uk(http://p.tl/de-A ))


奥庭の滝も凍てついて! 

鹿威しの竹筒からにょろり
2本の氷柱が降りてきて、あれ、すっかり
タリエ・イスンジェに成りきって
なにやら喋っているよ。

「自然の氷は色々な音を出すけれど、
人工的に作った氷は形こそ美しいけれど、
音まで人工的でなんだかゾッとする。
だから僕は自然にできた氷しか使わない。
お気に入りは、
スウェーデン北部にある氷河でできた氷だよ」
奥庭の演奏はお休み

鹿威しのお尻に折角、鈴を付けて
岩と竹だけのパーカッションに
澄んだ鐘の音色を加えてやったのに、
すっかり凍り付いて
山荘滝の演奏会は、どうもお休みのようなのです。

鹿威しも氷柱が下がって! 


     
  のクラブサン

 タリエじゃなくったって
この氷達に回り逢ったら
氷晶が奏でる
透明な音色が静寂の彼方から
迫ってくるよね。
 
     


タリエの創った様々な氷の楽器
Polar grooves:
Norweigan musician Terje Isungest
performs with some of his incredible ice instruments

氷の球を生み出す氷柱群
夜明け前のせせらぎ

で、タリエは氷で、どんな楽器を作っているのかなと呟いたら
待ってましたとばかり、蒼白く輝くマリンバのような氷柱群が教えてくれたんだ。

タリエが作った氷の楽器のレパートリーは、実に様々なんだ。
ハープにトランペット、ホルンにギターにマリンバ。
さらにはオーストラリア先住民族の楽器として知られる「ディジリドゥ」ならぬ「Iceridoo」
まであるんだよ。
若しかしたら、この氷柱群マリンバも、タリエの作品じゃないかって?
鋭いね!確かめるには、何と云っても我々の演奏を聴いてみることさ。
どうだい!ノルウェーの香りがしたかい?


   ペルーのキハダ (quijada)か?

この氷達は何やら
動物の顎の骨で作った楽器に
似てないかい?
ほら ロバや馬の顎の骨で作られた
キハダとか云われてる楽器さ。

前歯部分が支点になり、
片頬部分をたたくと、
奥歯がカタガタと音を出す奴さ。
こんなもんまで作っちゃうなんて
冬将軍め、中々やるね。

 
     


≪あのさ、氷で楽器を作って演奏するなんて、確かにお話しとしては面白いけど
氷のトランペットなんて、口に当てただけでマウスピースは
融けてしまうし、演奏会場の熱気で朝顔だって直ぐ水になって、演奏なんて出来る筈ないじゃん!≫

氷で出来た漏斗状の朝顔が、蒼い光を放ちながらタリエの演奏スタイルを語ってくれました。

氷晶のトランペット
竹森川のせせらぎ

「現在タリエは、アコーディオン奏者の父とともに、
氷の楽器を使うアイスバンドのパーカッショニストとして様々な場所でライブを行っているんだ。
会場は
凍った滝やノルウェーのアイスホテルなど、どこも変わった場所なんです。
タリエが立ちあげた氷の楽器でパフォーマンスを行う「アイスミュージックフェスティバル」も、
ノルウェー・
ジェイロの山腹で2006年から毎年行われているんです。
この竹森川にだって現れて、演奏するかもしれないよ。
聴きたいって!ほなら、ライブが決まったら仙人だけには招待状を送ってやってもいいかな!」


そんな嬉しいことを言って森のせせらぎは、益々見習い仙人から人間を奪っていくのでした。
果たして、人間がすっかり融け落ちてしまったら、見習い仙人は、ほんとの仙人になれるのでしょうかね?
それとも未熟なまま、ぐだぐだと人間的欲望を引きずって
未練たらしく朽ちていくのでしょかね?


タリエの創った氷トランペットを自ら奏でる
Blowing his own trumpet: Terje blasts away on a hand-carved horn

アナと雪の女王 『氷の心』

木枯らし吹けば川さえ凍る
切り出せ 掘り出せ 氷の心を
清らかで硬い氷求めて
深く切り込め
 引き上げろ 力合わせ
 あれ、聴こえてくるのは
アナ雪の「氷の心」ではありませんか!
確か、7歳のみさきと10歳の恵太が
連弾しながら
6歳の綾、11歳の亮哉や
4歳のリッキーまで
加わって、歌っていたあの歌。

   



畑仕事、陶芸、山歩きを終えて
生日おめでとう!
カラオケで高得点をクリアするゾロ目のシェフと落ち込む馬淵君

「えっゾロ目だって!11番目の三角数なんだ。
それじゃ今夜は、ゾロ目誕生日を祝し、歌会始と洒落てカラオケでもしようか」

先ず馬淵君登場、あれ、いつも高得点をマークする馬淵君が、何と32点、こりゃ有りえないぜ。
続いてゾロ目シェフの出番、しっくりと安定した歌いっぷりでいきなり88点。
綾ちゃんが山荘に忘れていった、小さな靴が忘れられないらしく、仙人はいつもの
「赤い靴はいてたおんなのこ・・・」を歌い始める。

えっ!カラオケで童謡を歌うなんてありなの?そうか仙人は巷の流行り歌なんか知らないんだな。
残念でした。鐘は2つの84点。
さてさて2015年最初のカラオケ大会は、この先どうなったんでしょうかね?


この寒さに敢然とブロッコリー育つ (葡萄畑)

敗けぬと蕪も頑張るが
 (居間)
勿論此処まで大きく育つと
(す)が入り
あの繊細で滑らかな蕪の食感は
失われてしまうが、
どっこい、こいつが滅法美味いのだ。

スライスして軽く塩を振り
水洗いして
柚子、又はレモンなどを少し
加えサラダにしても良し。
煮込んだら
もう頬っぺたが落ちてしまう。

さすがに、この寒さでは蕪の
成長は止まり、
何とか生き残ってるだけ。
それに比べると
ブロッコリーは凄い。

このマイナス8度を下回る厳寒で
昂然と頭を上げ
ご覧の通り無数の蕾を着け
「ふんふん、
中々小気味いい寒さだわい」
と云わんばかり。
 
スペアリブと鶏の骨付肉&ブロッコリー (居間)
 
土作りに勤しむ馬淵君もファイト! (葡萄畑)



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