仙人日記
 
 その104の22014年文月
7月2週・・偉大なる紫皇帝の光臨


一年に一度だけの引・国蝶の大紫
山荘前庭成虫は年に1回だけ6–7月に発生、蝶になって26日間の生涯を終える。

 飛翔能力が高く、
近くに居る時にはその音が聞こえる程、鳥の様に力強くはばたいて、
あるいは滑空しながら雄大に飛ぶ。

(wikipedia)



ははーん、解ったぞ!
狙いは蜜ではなくて、永劫の闇に煌めく紫の光だな。
そうだお前の英名は確か、
Great purple emperor(偉大なる紫皇帝) とか。
お前は自らの翅の紫を紫陽花の光に共鳴させ
紫の聖玻璃の風を、あふあふと食べ
森羅万象を呑み込む永劫の闇に
敢然と闘いを挑むつもりだな!

栗や臭木の蜜が大好きで
小楢、桑、柳、椚、楡の樹液の匂いなんか嗅ぎ付けると
大きな甲虫や恐ろしい雀蜂が居ても
平然と押しのけて樹液を吸い取ってしまう。
でも紫陽花の蜜に、興味を示す大紫なんて聞いたことないな。
 

 
大紫の6齢幼虫   6齢幼虫の大きさは5~6センチ。
マクロレンズを通して
頭部をアップで見ると、
角のある顔には
可愛い目と口、鼻があり
なんとも愛らしい 姿が浮かび上がる。



レンズを近づけると、
顔を伏せたり、
避けたりするところを見ると、
完全な知能と判断力を
持っていることは確かである。
しかし、サナギ化(蛹化・ようか)する際、
不思議にもこの頭部は、
最初に離れ落ちてしまうのである。

つまりこの頭部は
蝶になった時の頭部とは
異なる食欲だけを司る頭脳であって
成虫後の頭脳は
性欲専門の頭脳と云う事なのか?

だとすれば
こりゃ凄い生命体だぜ!
 ウェブ アニメーター
初夏6月、最後の6回目の脱皮を目前に食欲旺盛な6齢幼虫。
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この顔を観たら誰だって
あんまりの可愛らしさに、一辺で心を抉り取られてしまう。
とてもこの姿があの蝶たちの青虫や毛虫と
同じだなんて思えない。
そら、もうすぐ繭造りが始まるよ!

繭造りが始まらないって!
観たかったらもう一度このページを開き直して、真っ先に此処を観てごらんよ!
ほらほら、繭が形成されカオスの眠りに融けていく、大紫の赤ちゃんが観えるだろう。
でも観えるチャンスは2回だけだぜ!




濁りのない透き通った水晶の聖玻璃の風を食べるため、大きな口をアフアフさせ
男はこう云ったのさ。
「 おれはひとりの修羅なのだ」

この紫の文字を反芻しながら、立鍬を大地に振り下ろした瞬間、
視覚の左端に、紫の聖玻璃の一陣の風が行き交った。
山荘では7月にしか観られないオオムラサキが、風に紛れているに
違いないと立鍬を放り出し、
カメラを構えて、紫の聖玻璃の風を追った。
 






近づくや否や、せせら嗤うが如く、
翅音が聞こえる程、鳥の様に力強くはばたいて、
中庭を超え、橙のノウゼンカズラの咲き誇る
石段に大紫は消えた。

うーん、今年のたった一度の大紫との邂逅チャンスは
これでお仕舞かな!
とすごすごカメラを置いて畑仕事を再開。
昼間の蝶は活動が活発で
余程のシャッターチャンスに恵まれない限り
画像をものにすることは難しいのだ。
山荘ゲートの前に在る大好きな臭木の蜜を
鱈腹吸って
山荘森に混在する小楢や栗の樹液をたっぷり堪能し
紫の聖玻璃の風をあふあふと食べ
大紫は池の上を滑空しながら、
悠然と舞っているでは。
 



 
かと云ってヒグラシの謳う夕刻になると
森の上空に飛び立ち
あたかも鷹でも在るかのごとく大きく旋回飛翔し、自らのテリトリーを宣言しているので
とても大紫の撮影なんぞ無理。
そう、若しシャッターチャンスが有るとしたら
気温の低い夜明け。
寒さで体が充分に動かず、未だ目覚めていない、その瞬間での邂逅、
其処にしかシャッターチャンスはないのだ。




今朝の畑仕事はここまでにして、
さてそれでは扇山までちょっと、ひと登りすっか!
と立鍬など農具を仕舞おうと葡萄畑の農具置場に戻る。
と、あれ、再び視界の片隅に
昨日と同じ紫の聖玻璃の風が行き交うでは。
風の行方を追って目を凝らすと
観えた!大ムラサキだ!
すっかり冷えた翌日の夜明け、
西畑にある西瓜の雑草を取って、段ボールの座布団を
西瓜の実の下に敷きながら
「大きく甘く育っておくれ!」と声掛け。
 



白い蘭の花弁の上で 紫の翅を惜しげもなく大きく開き、
まるで手招くように緩やかに翅を上下させ
聖玻璃の風を振動させたのです。
その振動が大紫の言葉であると察した仙人は
全神経を集中させ耳を傾けたのです。


そん時の仙人の歓び様、想像できるかい?
顔なんてまるでくしゃくしゃになって
仕舞う筈だった立鍬を
ストンと大地に立てて右手で柄を掴み
左手を腰にあてて
スキップしながら
ぐるぐる鍬を中心に踊りだしたんだぜ!

山荘で最初に大紫に逢ったあの日だって
これ程ではなかったぜ。
「そんなにも、俺の紫が撮りたいのか?
まあ、昨日は山荘の蜜や樹液をたっぷりご馳走になったし
そんなら暖かくなって飛び立つまでの
僅かな間だけ、モデルになってあげようか」

どうも仙人の自分勝手な都合のよい解釈によると
そう言っていることになるらしいのです。
 

 ウェブ アニメーター
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渦巻きだけで姿が観えないって!
もう繭の中でカオスの眠りに融けてしまったんだ。
大紫の赤ちゃんが観たかったらもう一度このページを開き直して、
真っ先に此処を観てごらんよ。
脱皮が始まるぜ。
でも観えるチャンスは5回だけだぜ!


榎の芽や葉をばりばり食べる6齢幼虫



捨てられた子猫や子犬にじーっと見つめられたらもう
黙って知らんぷりして
通り過ぎるなんて中々出来ないよね。
実はあの可愛らしさは、ひ弱で如何なる防衛手段も持たない子猫や子犬の
唯一の武器なんだ。

勿論、その武器は肉食獣の獰猛な鷹や狐には通用しない。
おそらくその可愛らしさが、武器として効力を発揮出来るのは知的生命体だけ。

 
 薔薇アーチに絡む凌霄花に大
山荘石段

となるとだよ、一体なぜ大紫の幼虫は、あんなにも愛らしい顔しているんだ?
知的生命体にしか通用しない武器でもって
生命を脅かす鳥や無数の外敵から身を護れる筈がないじゃないか?
「ふふん、上手そうな幼虫を見つけたぞ!」と
飛んできた百舌鳥や鵯に、あの可愛らしい顔を向けてにっこり笑っても
ぜーんぜーん通用しないよ。





例えばだよ、国蝶として最有力候補だった揚羽蝶の幼虫は
オレンジ色の2本の臭角を隠し持っていて
敵の脅威を感じると、そいつをにょきっと出して、
テルペノイドを主成分とした強い臭い物質を分泌し、外敵を撃退するんだよ。


揚羽蝶幼虫の臭角 
 

collage Ⅰ
山荘居間に飛来した間方舟
レーザーで飛ぶ翅幅1500kmの星間方舟
(コズミックフロント:最初の遭遇より)

あれっ!この空間、何処かで観たことあるような!
輝く火星の下に浮かぶ方形の闇は、イオから観た木星を描いた山荘の壁画では?
壁画右の方形は玄関に通ずるドア、左は電話機。左右が逆。
となるとこの空間は存在しない虚像。
山荘そのものが実像を失い、光として宇宙空間に漂い出してしまったのだろうか?
 ・
総てが何の抵抗もなくするりと突き抜けられる虚像空間にあって、
大紫だけが、≪力強くはばたいて、あるいは滑空しながら雄大に飛び≫、確かな存在を誇示する。
しかしその蝶の影は4枚の1500kmに及ぶ星間方舟のレーザーパネル。
何故、お前の肉体を透過した光は、レーザーパネルの影を落とすのだ?
若しやお前の真の姿は星間方舟?



(資料:北杜市オオムラサキセンター)



collage 
山荘壁画・木星上空を飛翔する大

レーザーで飛ぶ翅幅1500kmの星間方舟
(コズミックフロント:最初の遭遇より)

そうだったのか!
紫の聖玻璃の風を、あふあふと食べ森羅万象を呑み込む永劫の闇に
敢然と闘いを挑む為に、
お前は1500kmにも及ぶ翅を広げ、時速60万kmもの高速で飛んで来たんだな。
お前の故郷は1万光年彼方の蠍座に在るパルサーと白色矮星の
連星を巡るPSR B1620-26C。

あの幼虫の愛らしい姿は、もしやPSR B1620-26Cの知的生命体に向けられたメッセージ?
(PSR B1620-26 bは、さそり座の方向に約12,400光年の位置にある太陽系外惑星である。
メトシェラ(Methuselah)という非公式な名前があり、PSR B1620-26 cと書かれることもある。
パルサーPSR B1620-26と伴星の白色矮星WD B1620-26からなる連星系の惑星である。
現在知られている太陽系外惑星の中では最も古い部類で、約127億歳だと考えられてる。)

wikipediaより


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